「「「ト、ト、トトン! トンキー! トンキーホーテ!!」」」
館内に流れる専用BGMを口ずさみ、スキップを続けるのは神楽、ユイ、リーファの女子三人組。仲良く手を繋いで、浮かれた気持ちで出口へと進んでいく。
九月のこの日、万事屋一行はリーファと共に夕食の買い出しに付き合っていた。向かった店は、以前にユイらも訪れたことのあるトンキーホーテ。多くの商品が並ぶ有名な販売店である。
その帰り際に女子三人が元気に振る舞う一方、銀時、キリト、新八、アスナの四人は後ろから彼女達を見守りつつもついてきていた。アスナを除いて、男子達は荷物持ちと化していたが。
「ったく、すぐに調子に乗るな。あのトンキー娘共は」
「まぁまぁ、銀さん。そう言わずに見守ってあげようよ」
「そうよ。リーファちゃんなんて、トンキーって聞いてからずっとテンションが上がっているのよ」
文句を呟いた銀時に対して、横にいたキリトやアスナがそっと宥めていく。彼ら曰く今日の買い物では、特にリーファが気持ちを上げているようだ。
「はいはい。つーか、トンキーって一体何だっけ?」
「トンキーは確か、キリトさん達の世界にいたモンスターの一種ですよね」
「そうね。名前自体はリーファちゃんが名付けたけど」
「結構大きくて、移動するときも助かったよな」
四人の間では、すぐにトンキーが話に挙がってくる。キリトらにとっても思い出深い存在であり、共に懐かしく思い始めていた。
しかし銀時にはイメージが掴めず、二人の話を聞いてもさっぱり分からない。そこで思い付きから、勝手な予測を立て始めていた。
「そんなに大きいのかよ? あのペンギンマスコット、あっちの世界では巨大化していたのか? ダイマック〇じゃねぇんだからよ」
「あの、銀さん。多分勘違いしていますよ」
「トンキーはクラゲや象と似たモンスターよ……」
「色々とごっちゃになっているよ。というか、〇イマックスって何?」
有名なトンキーホーテのマスコットと照らし合わせており、次々と仲間達からは指摘を受ける始末である。名前が同じ故に、その捉え方にも相違が起きていた。
トンキーの話題が続く一方で、先を歩いていたリーファらにも変化が起こっている。
「なんでも揃う買い物天――ん? アレって……」
「どうしたアルか、リッフー? 急に足を止めて」
「何か見つけたのですか?」
不意にもリーファは足を止めて、自動ドア近くに貼られていた一枚のポスターに注目を寄せていた。ユイや神楽も気になって一緒に見てみると……そこに書かれていたのは、店側の募集広告である。
「トンキーホーテWEBキャラ募集のお知らせ……これって、遂に来たかも!!」
「うわぁ! びっくりしたネ!」
「来たって……どういうことでしょうか?」
概要を読み進めていき、咄嗟にリーファは大声を上げていく。さらにテンションを高めた彼女は、内心にてある計画を思いついていた。
「そのまんまの意味よ! みんなにも協力してもらえるかしら?」
「「……はい?」」
戸惑っている神楽やユイにも気にせず、勢いのままに協力を持ち掛ける。ふとした宣伝をきっかけにして、彼女には大いなる目標が立てられていた……。
日付は変わって、次の日の正午頃。万事屋銀ちゃんには昨日に続いてリーファが来ており、居間にて思いついた計画を仲間達に向けて説明していた。
「トンキーマスコット化計画? って、なんだよ?」
「そのままの意味だって! トンキーホーテで募集しているみたいだし、私も応募しようと思っているのよ!」
熱意を持って伝える姿勢には、一行も本気だと捉えている。彼女によるとWEB用の宣伝も兼ねて、トンキーホーテ側が一般からのアイデアを求めているらしい。この公募に共鳴を感じたのか、リーファは思い入れのあるトンキーをマスコットにしようと、強く願っていた。
「つまり俺達も、そのマスコットの設定に考えて欲しいのか?」
「そういうこと! 察しがいいわね、お兄ちゃん! みんなにも手伝ってもらいたいけど、大丈夫かな?」
その為にも万事屋に、アイデアを含めた協力を持ち掛けている。平たく言えばリーファの依頼であるが、万事屋一行は皆好意的な反応を示していた。
「別に問題ないアルよ、リッフー!」
「力になれるならなんでもするわ!」
「私もママや神楽さんと同意見です!」
特に女子達は乗り気で、次々と賛成の声を上げる。
「いいですね。僕も協力しますよ」
「もちろん俺もだよ」
「しゃあねぇな。やるからには本気でやるぞ」
一方の男子陣も、軽口は言いつつも素直に受け入れた。これはリーファにとっても、頼もしい後押しではある。
「みんな、ありがとう! それじゃ……」
そしてすぐにでも取りかかろうとしたが――その時、思わぬ賛同者が声を上げてきた。
「ちょっとお待ちなさい!!」
「ん? この声って……」
突如として聞き覚えのある女性の声が響いてくる。皆が気配に気が付くと、その声の主は天井を突き破って姿を見せた。
「とう!!」
「あ、あなたは……」
「あやめさん!?」
華麗な着地を披露した彼女の正体は、銀時のストーカーとしてお馴染みの猿飛あやめである。自信あり気な表情のまま、彼らの会話にズカズカと乱入していく。
「お久しぶりね、みんな! そしてリーファちゃんも!」
「ひ、久しぶりです……ていうか、あやめさん? 一体何をしに来たの?」
彼女は話し出した途端に、リーファとの距離を近づかせている。おかげで本人は苦い表情を浮かべてしまう。あやめとの久しぶりの対面に、緊張感を覚えていた。
一方の万事屋だが、皆そこまで驚いてはいない。あやめの侵入はキリトら加入後も続けられており、故に全員が慣れた様子である。
「またあやめさんが来たのか……」
「今月は初めてでしたっけ?」
「忘れた時にいっつも来るのよね……」
もちろんキリトら三人も同じ気持ちだった。控えめに理解する彼らとは異なり、銀時らの方は冷めた視線をあやめに向けている。
「どうせまたストーカーだろ。冷やかしだったら必要ないからな」
「そうアルよ! こっちは真剣な話し合いをしているネ!」
「フッ……それもそうだけどね、今日の要件はちょっと違うのよ」
「ストーカーのことは否定しないんですね」
銀時や神楽から文句を飛ばされても、彼女の堂々とした姿勢は続く。どうやら彼女なりに、別の目的があるそうだが?
「じゃ、何アルか?」
「フフ。簡単な話よ! アナタ達の計画しているキャラ作りに、私も手伝わせてもらえるかしら?」
「えっ!? あやめさんも参加するの!?」
その目的はあっさりと明かされていた。彼女としては意外にも、自分から進んで協力を申し出ている。予想外の行動には、リーファのみならず全員が驚きの声を上げていく。
「あやめさんがリーファさんの手伝いを?」
「信じられないアル……!」
「あら、何か不服かしら?」
「いや、珍しいと思って……あやめさんにそんなイメージないから」
「失礼ね! 私をどんな人間だと思っているのよ!」
「ただのストーカーだろうが」
やはり善意ではないと全員が察しており、何か裏の考えがあると勘付いている。アスナの指摘では、あやめもむきになって反論をしていたが。
とここで銀時が、彼女の真意を探っていく。
「つーかお前、一体何が目的だ? さっさと吐けよ、ゴラァ」
「目的……? そんなのあるわけないでしょ」
否定はしたものの、顔は僅かながら震えている。怪しいのはもう明白であった。
「怪しいアルナ。なんでリッフーを見つめているアルか?」
「そ、そんなことないわよ! 私はね、あの男殺しの服が欲しいだけ……ハッ!?」
「えっ?」
とことん突き止めた途端に、呆気なく本音を漏らしている。この一言により、服装の憧れが明るみになっていた。
「そ、そうだったのか」
「あやめさんもファンタジー系の衣装に憧れているの?」
これにキリトやアスナも、次々に思ったことを発している。ささやかな願望を口にしたあやめは……もう隠すことなく、むしろ気持ちを開き直らせていた。
「ハハハ! バレちゃ仕方無いわね!」
悪役のような不気味な笑いと、弾けた笑顔を浮かばせていく。そしてリーファに向かって堂々と、約束を宣言してきた。
「リーファちゃん! 私もこのアイデア会議に参加するから、代わりに入賞したら一週間だけ服装を交換しましょう!」
「えっ、一週間も!?」
「いや、驚くとこそこかよ!?」
限定的な服装の交換を持ち掛けて、より場を騒然とさせている。当の本人は期間ばかりに注目していたが、あやめは口を止めずに理由を語り出していく。
「この服を着れば、銀さんも誘惑すること間違いないわ! 私のボディを強調させて、必ずやメロメロ状態にするんだから!! これが起死回生の一手なのよ!」
「その一手を俺の前で堂々と言うのかよ」
結局は銀時絡み故の興味だったが、肝心な思惑を本人の前で明かす始末である。身も蓋もないことを彼から言われても、あやめの硬い意志は変わらない。
「……とにかく、良いでしょ! 日ごろからお世話になっているから、そのお礼として!」
「あやめさんから教えてもらうことって、これまでにあったっけ?」
「と、とりあえず、話し合いは多い方が良いでしょ! だからお願い! 交換してよ!」
「で、でも……」
強引にも服装交換を嘆願して、遂には頭まで下げていた。滅多にはないあやめのお願いに、リーファも対応に困り果ててしまう。そこで仲間達から、意見を聞いてみることにした。
「ど、どうしよう。お兄ちゃん?」
「そこはスグの判断でいいんじゃないのかな? でも交換自体は良いとは思うけどな。忍者姿も結構似合いそうだし」
「決めた! あやめさんとの約束を引き受けるわ!」
「って、あっさり迷いを捨てたよ! キリトさんの影響、どんだけでかいんですか!?」
さり気なく言ったキリトの助言により、あっという間に正解が決まる。手にひらを返した変わり様に、新八もツッコミを反射的に繰り出していく。
「それでも、いやらしいことには使わないでよ!」
「分かっているから。約束はしっかりと守るわよ!」
最低限の注意を付け加えて、あやめとの約束を簡単に施していた。彼女は笑顔で受け入れたが……その内心ではふと屁理屈を呟いている。
(行為の時には脱いでいるから、適応外よね……フフ)
気を早めるように、甘い妄想を次々に浮かべていく。服装交換をきっかけにして、銀時との距離を縮めようとしていた。本人にそんな気は全くないのだが。
この展開に万事屋一行では、キリト側と銀時側でかなり反応が異なっている。
「やっぱり、あやめさんって不思議な人ね……」
「でもリーファさんも、なんで急に引き受けたんでしょうか?」
「きっと忍者服に実は興味を持っていたからじゃないかな?」
前者ではあやめの独特な考え方や、リーファの方向転換に驚きを感じていた。きっかけとなったキリトも、自分が原因だとは微塵も思ってはいない。
そして後者はと言うと、
(やっぱり、ブラコンなのか。あいつは……)
(一瞬で考えを変えましたからね)
(キリが賛成だったら、なんでもいいアルか)
共に内心でありのままの本音を吐いている。特にリーファの分かりやすい行動には、ブラコンだとも揶揄していた。容赦のない毒舌である。
何はともあれあやめも加わり、計八人による話し合いがこれより始まっていた。
そして時間は過ぎていき、およそ一時間が経過した頃。話し合いは着々と進み、現在はトンキーの元のデザインをリーファが説明している。
「これが皆さんの言っていたトンキーなんですか?」
「そうよ! とっても可愛いでしょ!」
自信満々にノートへ書き記したその風貌は、可愛さとは程遠い白い象のようなモンスターであった。クラゲの触手も加わり、異形さがより滲み出ている。
「あっ、そうだな」
「目以外は可愛いアル」
「なんでそんな微妙な反応なのよ!?」
全てを察したように、銀時や神楽も反応に困っていた。リーファが強く推している可愛さの要素が、いまいち分からないからである。
この邪心系モンスターを、如何に馴染みやすくするのかが会議の難点だった。
「それでここから、どうマスコットらしくするのかよね……」
「何か連想を増やして、イメージを決めるのはどうですか?」
アスナや新八も思いついたことを呟いている。形へと入る前に、特徴を挙げるべきだと発していた。するとあやめは、とある考えを閃いている。
「だったらもう、連想ゲームで言葉を上げて行きましょうか」
「連想ゲーム?」
「つまり、マジカルバナナみたいにやれば良いのよ!」
自信良く勧めてきたのは、連想ゲームの一つマジカルバナナだった。お題に近い言葉をリズム良く人に回していく、何とも懐かしいゲームである。
この提案なのだが、実はSAOキャラには違和感を覚えていた。
「マジカルバナナ?」
「聞いたことないアルか?」
「マジカルレモンなら聞いたことがあるけど」
「レ、レモン!?」
「確か昔に流行ったバラエティ番組だよな」
ユイを除いたリーファら三人は、マジカルレモンの方に共感を寄せている。どうやら世界によって、番組名が微妙に異なるようだ。
「まさか、フルーツの名前が変わるのか?」
「きっと米津玄〇の影響アルよ!」
「いや、多分違うと思いますよ」
万事屋一行も多少は驚いていたが。それはさておき、さらに話を掘り進めると、バナナでもレモンでもルールに目立った違いはない。互いに確認をすると、このまま連想ゲームでテーマを決めていくようだ。
「じゃ題して、マジカルトンキーにして言葉を挙げていきましょう!」
「言葉を次の人に繋げばいいんだな」
「その通り! なるべく多く挙げましょう!」
ゲーム名を改めたところで、一行は準備に取り掛かる。公平なじゃんけんの結果、順番はリーファ、あやめ、キリト、銀時、アスナ、ユイ、神楽、新八となった。こうして計画の一端であるマジカルトンキーが始まっていく。
銀時「それじゃ、いくぞ。せーの!」
全員〈〈マジカルトンキー!!〉〉
リーファ「トンキーと言ったら象!」
あやめ「象と言ったら大きい!」
キリト「大きいと言ったらボス!」
銀時「ボスと言ったらフリー〇」
アスナ「フ〇-ザと言ったら氷?」
ユイ「氷と言えばかき氷!」
神楽「かき氷と言ったら鼻が~! 鼻が~!」
新八「鼻……ちょっと待ってください!」
ところが早くも、新八によりゲームが中断される。銀時と神楽の返答が、明らかにボケを含んでいたからだ。
「あやめさんやリーファさん達はまだ良いですよ。銀さんと神楽ちゃんは、自重をしてくださいよ! 絶対にキリトさん達、元ネタを分かっていませんよ!!」
そう指摘されると同時に、アスナも引っかかっていたことを口にする。
「結局フリーザって何なの? 冷蔵庫の種類とか?」
「いいや、お前らが知らない超人気敵キャラのことだよ。53万の戦闘力とか聞いたことは無いのか?」
「……特には」
キリトらの冷ややかな反応を見ると、やはり何一つ伝わっていなかった。
「それと神楽さんの連想は何だったんですか?」
「決まっているアル! かき氷を食べた時の反応ネ! 某文明の末裔っぽくやるアルよ」
「ただのモノマネじゃねぇか! しかも鼻じゃなくて目ですよ!」
「……はい?」
思いっきりネタを披露する神楽だが、こちらもユイの反応はいまいちである。初っ端からこのゲームは、ネタ要素を交えてよりスムーズさに欠けていた。
「段々とそれているわね……」
「ここは気を取り直しましょう。もう一度行うわよ」
リーファやあやめが声掛けしつつ、場の空気を整えていく。一通り落ち着いたところで、二回戦目が始まる。
全員〈〈マジカルトンキー!!〉〉
リーファ「トンキーと言ったらクラゲ!」
あやめ「クラゲと言ったら――」
とあやめが答えようとした時であった。
「触手で目つぶし!」
「えっ?」
またも聞き覚えのある女性の声が聞こえる。ふと玄関近くの戸を見てみると、そこに立っていたのは、
「偶然来たけど、何だか面白そうなことをやっているわね」
「あ、姉上!」
「お妙さん!?」
満面の笑顔を見せる志村妙であった。突然の彼女の登場により、万事屋一行やリーファらはさらなる驚きに包まれている。
「なんであなたがここに来ているのよ!?」
「さっきも言ったでしょ。偶然通りかかっただけよ。マスコット制作をしているなら、私に任せてちょうだいよ」
「お妙さんも手伝ってくれるの?」
妙はすぐに状況を理解したようで、こちらも協力的に接していた。すると彼女は、あやめのいる方へ視線を向けていく。挑発的な佇まいを見せており、あやめもまたそれに乗り始めていた。
「ここで出会うなんて光栄ね、お妙さん! まさかアナタも、リーファちゃんの服を目当てに来たのかしら? 絶対ブカブカになるわよ!」
「アラ? 久しぶりに会ったくせして、相変わらず好戦的ね。別に狙ってなんかいないわよ」
「ご愁傷様ね。アナタにはシリカちゃんの服装が似合っているわよ。身長で合わないとは思うけど!」
「遠回しにディスらないでくれるかしら? 何ならもっと似合う服装があるはずよ。血盟騎士団しかり、整合騎士しかり。どれも私みたいな隠れ巨乳にぴったりの服装じゃない」
「隠れ巨乳? そんな話初耳ね。アナタにはあったのかしらね……?」
互いに意地を張り続けており、大人げない罵り合いを続けていく。共に笑顔を崩さずに接していたが、内心では密かに相手を見下している。再燃する仲の悪さが、キリトらにも露呈していた。
「この喧嘩って、いつまで続くの?」
「あやめさんとお妙さんって、結構バチバチな関係なんだ……」
「意外な発見です……」
キリトら三人も、次々に思ったことを呟いている。
「ていうか、二人共! 服装如きで争わないでって!!」
そして見かねていたリーファが、思わず止めに入っていく。一方で銀時ら三人は、冷静に妙達の喧嘩を見定めていた。
「姉御の意地っ張りは健在アルナ」
「また面倒くさい奴が増えたな……」
「これ以上揉め事を起こさないでくださいよ……」
と速やかに収まれば良いのだが……さらなる火種が万事屋に訪れてくる。
「おっ! 見つけましたよ、お妙さん!!」
「あっ、ゴリラ!」
「って、近藤さん!?」
何とも悪いタイミングで来たのは、妙のストーカーである近藤勲だった。有無を言わさずに彼は、早速彼女を標的にしている。
「久しぶりの再会! ここは是非、俺のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を受け入れて――!」
ハイテンションのまま両手を広げて、妙に飛び掛かろうとしたのだが、
「フンス!」
「グハァ!!」
呆気なく返り討ちに合ってしまう。妙の容赦のない拳が近藤の腹部に当たっていた。吹き飛ばされると同時に、彼の仲間も駆けつけてくる。
「おい、ここにいたのか! 近藤さん!」
「土方さんまで……!?」
「お前まで来るのかよ」
続けざまに土方もこの場に姿を見せてきた。さらなる真選組の登場に、ユイや銀時らの反応も疲れ切っている。場の収集にも不安を覚えていた。
「アラ。ゴリラに続いて、マヨラーも来たのね」
「いや、本名で読めよ!」
妙だけは相も変わらずに挑発を続けていたが。いずれにしても、より賑やかになったことは間違いない。
「お妙さんや真選組は、聞いてないわよ……」
予想外の来客者達に、リーファの表情も思わず苦く染まっている。ほのかに浮かぶ嫌な予感を察していく……。
そして時間の経過と共に、まずは来客者達を一行が落ち着かせていた。
「いや~失礼した。お妙さんを見つけたら、つい追いかけてしまってな!」
「ついって、レベルじゃねぇよ」
あっさりと態度を変えた近藤に対して、土方は小言を呟いている。共にソファー近くに立ち続けながら、どさくさ紛れに会話へと割り込んでいく。
「それでついでに聞くが、一体何をしていたんだよ?」
「何も関係ねぇよ。トンキーについてだよ」
「「トンキー?」」
「つまりですね――こういうことなんです」
ここで親切なユイが、ここまでの経緯を分かりやすく二人に説明している。マスコットにする為に、連想ゲームを行っていると伝えていた。
「なるほど! それで連想ゲームを行っていたのか!」
「そういうことだから、オメェらはさっさと帰ってくれ。面倒だからよ」
面倒に感じて銀時が追い払おうとするが……近藤はお節介にも興味を示してしまう。
「いいや。折角だし、俺達も加えてもらおうじゃないか」
「おい、近藤さん。俺達もやるのか?」
「そうだぜ、トシ。リーファちゃんには迷惑をかけたことだし、せめてもの罪滅ぼしで協力しようぜ」
「ほとんどアンタが原因だけどな」
リーファへの汚名返上も兼ねてゲームにやる気を見せていたが、土方からは手痛い指摘が返ってくる。彼だけはあまり乗り気では無かったのだが。
妙に続いて真選組の加入は、仲間内でも微妙な反応が見受けられていた。
「どうします、リーファさん?」
「わ、私? まぁ、特に構わないけど……変なアイデアが浮かびそう」
「それは間違いねぇよ」
主催者でもあるリーファ本人は、可もなく不可もなくである。しかし折角の機会でもあり、わざわざ返さずに残そうと自然に決まっていた。
「それじゃ真選組も参加ってことで良いわね?」
「おうよ! よろしく頼むぜ!」
「一回限りだがな」
こうして真選組も加わり、また新しくマジカルトンキーが始まっている。
「もう! こうなったらなるべく長く続けましょう! 出来る限り多くのアイデアを浮かばせて!」
「おうネ!」
「任せてちょうだい!」
あやめも大声で仕切りつつ、ゲームを再開させていく。順番を一新させると、リーファ、あやめ、妙、土方、近藤、キリト、銀時、アスナ、ユイ、神楽、新八と決まっていた。
妙「では始めましょう! せーの……!」
全員〈〈マジカルトンキー!〉〉
リーファ「トンキーと言ったら白!」
あやめ「白と言ったら銀さん!」
妙「銀さんと言ったらクズ人間!」
土方「クズ人間と言えばストーカー」
近藤「ストーカーと言えば俺!」
キリト「俺と言えば一人称!」
銀時「一人称と言えば個性」
アスナ「個性と言えば万事屋!」
ユイ「万事屋と言えばポジティブ!」
神楽「ポジティブと言えばリア充!」
新八「リア充と言えば憧れ!」
リーファ「憧れと言えば芸能人!」
あやめ「芸能人と言えば歌手!」
妙「歌手と言えばBZ!」
土方「BZと言えばバンド」
近藤「バンドと言えばチャゲアス〇!」
キリト「チャゲ〇スと言えばコンビ?」
銀時「コンビと言えば芸人」
アスナ「芸人と言えば高収入!」
ユイ「高収入と言えば難関クエスト!」
神楽「難関クエストと言えばカブト狩りじゃゃゃ!!」
新八「カブト狩りと言えばロクでもない思い出……」
リーファ「ロクでもない思い出と言えばお兄ちゃんのからかい!」
あやめ「お兄ちゃんのからかいと言えば惚気!」
妙「惚気と言えば火種の元!」
土方「火種の元と言えば不祥事」
近藤「不祥事と言えばチャゲ〇スカ!」
キリト「チャ〇アスカと言えば……コン……えっと」
新八「って、ストップ!!」
ついに我慢できなくなった新八が、半場強制的に止めに入っている。最長記録を達成したのだが、彼にはツッコミたい気持ちで一杯だった。
「アンタら! 逐一ネタを挟まないと気が済まないのか!!」
「何を言ってんだ! 俺はしっかりと答えていたぞ」
「んなわけないだろ! ほぼア〇カじゃねぇか! ミュージシャンの方の!」
何よりもまずは、狙ったように某歌手の名を挙げる近藤である。カオスな雰囲気をさらに強調させていた。
「そもそもチャゲアス〇って誰なの?」
「アスナさん! そこにピー音入れたら、アナタの名前みたいに聞こえますよ!」
ピー音が上手く当てはまり、アスナにまで被害が及ぶ始末である。
「アッスー! チ〇ゲアスカっていうのは、この世界のバンドネ! でも今は、すったもんだあって見れないアルよ!」
「ストレートに言うな!!」
「そんなアナタには、BZを推すわよ! リーファちゃん達は知らないけれど、この世界で最高最善の音楽家なのよ!」
「そ、そうなのか? 知らなかったな」
「姉上も! 嘘を吹き込まないでくださいよ!!」
さらには対抗するように妙まで乱入にして、場の収集をより遠ざけてしまう。各々の主張が飛び交う、混沌とした雰囲気に成り立っていた。
冷静に見ているのは、銀時、土方、ユイくらいである。
「てか、本当にこんなんで思いつくのか?」
「知るかよ。後はリーファ次第だから、俺達が言えることは何も無ぇよ」
「随分と無責任な……お前はそれで大丈夫なのか?」
「リーファさんの助けにはなったのでしょうか?」
心配からつい彼女に目線を向けると、そこには意外な光景が映っていた。
「おぉ、来た! とっておきの形が閃いたかも!」
「えっ?」
あるきっかけから刺激を受けたようで、リーファはノートに向かってマスコットのアイデアを綴っている。表情も生き生きとしており、楽しそうな印象が見受けられていた。
「おぉー。流石よ、リーファちゃん!」
「この調子ね! 入賞させて約束通り、服交換よ!!」
周りにはおだてるようにして、妙やあやめがよいしょをかけている。結果的には前進した連想ゲーム企画に、仲間達も各々の反応を見せている。
「なんか急にやる気が上がっているんだが!?」
「良かったじゃねぇか。俺達が役に立った証拠だぜ!」
「近藤さんはア〇カしか言ってねぇけどな……」
一段と喜んでいる近藤には、土方が改めてツッコミを入れていた。
「でも、良かったな。アイデアも浮かんで」
「そうね。どんな仕上がりになるのか楽しみね」
「ところで何がきっかけだったアルかな?」
「ま、まさかな……」
万事屋一行も一安心をしていたが、彼女を突き動かしたきっかけに少し気がかりである。銀時や新八は嫌な予感を察していたのだが……こうして話し合いは一旦ヤマを越えていた。
そして時は一週間が過ぎた頃。万事屋の六人が何気なく休みを過ごしていると、突然にもリーファが訪れてきている。玄関先にいた彼女は、あの格好を早くも用いていた。
「こんにちは! みんな!」
「ス、スグ? その姿って……」
そうあやめと約束した彼女の忍者服を着こなしている。マフラーやブーツ類もあやめと順当なものに変えて、髪型も自然なロングに変えていた。見違えるようなイメチェンには、皆が目を丸くして驚嘆としている。
「どう、似合っている?」
「結構、目新しい印象だな……髪まで下ろすなんて」
「って、それよりも! 衣装交換ってことは、入賞したアルか!?」
「ううん。落選よ。でも協力してくれたお礼に、交換したのよ」
「そうだったの……」
一瞬入選したかに思えたが、結局は落選止まりだったらしい。それでも協力してくれた礼として、服装交換を引き受けたようだ。
そこで気になるのが、トンキーの完成品なのだが?
「それで一体、どんなマスコットにしたんだよ?」
「原案ってもしかして持っていますか?」
「もちろん! これを見てちょうだい!」
彼女は快く応募した原案を万事屋一行に見せていく。手渡されて見てみると、そこに描かれていたのは……
「えっ!? これって……」
「トンキーとロック系を足したパンクロックキャラ! 名付けてチャアンキーよ!」
実に刺激的なマスコットである。トンキーの要素を加えながら、歌手のようなキャラクターに仕上げていた。一見可愛らしく見えるが、やはりどこか違和感を覚える仕上がりである。あのチャゲ〇スの絡みが、リーファに良くも悪くも影響を与えていた。
「いや~みんなのおかげで助かったわよ! トンキーに足りなかったのは、やっぱり激しさだったね!」
本人は満足気な表情を浮かべるが、万事屋の反応では……
(どこで間違ったんだ……!?)
全員がツッコミたい気持ちを隠している。彼女には悪いが、落選した方が良かったのかもしれない。そう思わざるも得なかった。
するとここで、新八があることに気が付いている。
「アレ? てことは今、さっちゃんさんがリーファさんの服を着ているんですよね?」
「その通りよ!!」
彼の読み通りに、今度は上空からあやめが颯爽と現れていた。こちらも衣装チェンジによって、だいぶ印象が異なっている。眼鏡を除けば髪型も踏まえて、リーファとほぼ容姿を寄せていた。
「またこの流れアルか!?」
「って、イメチェンが意外に似合ってる!?」
「さて! 折角のイメチェンだから……銀さ~ん!! 私を妹に認めてぇぇぇ!!」
万事屋からも高く評されると、調子に乗った彼女は勢いよく銀時へと抱きつこうとする。興奮状態で突進した彼女であったが、
「バーストストリームゥゥゥ!!」
「ギャャャ!!」
銀時お得意の奇襲技モモバーンで容易く吹き飛ばされていた。玄関を飛び越えて、地上にまで叩き落されてしまう。
「って、さっちゃんさん!?」
「吹き飛ばされてしまいました!?」
「てか、バーストストリームってそんな技じゃないぞ!!」
「って、あやめさん!! 私の服でいやらしいことしないって、約束したわよね!!」
こうして場はまたも、グダグダとした雰囲気に繋がっている。衝撃や指摘、怒りと激しい感情が散りばめられていた。その一方で、
「衣装チェンジか……」
「ん? どうしたネ、アッスー?」
「いや、何でもないわよ」
アスナにはある考えが思いついている。神楽にははぐらかしたが、一体何を思いついたのだろうか?
その話はまた別の機会にて。
トンキーも今とならば懐かしいですね。当時は銀魂にも似た名前があって、かなりテンションが上がっていたのを思い出します(笑)
なお今回は稀ですが、ゲーム場面のみ台本形式にしました。流石にキャラ名を付けないと、分からないですね……
※第五十七訓は事前に掲示された題名や内容を変更しました。ご了承ください。
次回予告
銀時「なんでプレゼントに花束って送るんだろうな?」
アスナ「それは感謝の気持ちからよ。結構花束を贈る人は多いと思うわよ」
キリト「どうやらリズも探しているみたいだからな」
銀時「マジかよ。じゃあの店に行かないことを勧めるぜ」
キリアス「「あの店?」」
銀時「次回! プレゼント選びは慎重に」