剣魂    作:トライアル

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 突然ですが、遊園地篇はもう一話分延びます。予想よりも文体が多かったので……。

前回のおまけ・女子達が酔う直前の会話

シリカ「アレ? 急に意識がぼやけて……って、シノンさんもですか!?」
シノン「シリカ……沖田さんにまんまとやられたわ。あのパウダーは恐らくまたた――」
シリカ「シノンさ――あっ。アタシももう無理……」
 こうして二人は倒れてしまい、起き上がった頃にはまたたびが全身に回ってしまった。

 気付いた時にはもう遅かったんですね。ちなみに設定上は、僅かでも体に入ると泥酔しちゃいます。


第六十二訓 マタタビの与えすぎには注意しよう

 大江戸遊園地には現在、多くの事情を抱える者たちが入場していた。キリト達と猫探しに奔走する銀時、シリカ、シノンの三人。銀時を探しているキリトら万事屋の仲間達。辺りで迷子になっているソリートの父の飼い猫達。

 客に紛れ込む動物ハンターを探す真選組の土方と沖田。そして真選組から逃れる動物ハンターの二人。

 まるで追いかけっこのように、誰かが人探しをしたり、逃げ出したりしていた。

 

 そんな状況下でも、キリトら一行は銀時探しと併行してアトラクションを満喫している。現在はお化け屋敷に挑戦しており、長い時間をかけてようやく出口に辿り着いていた。

「キャャャ!」

「やっとゴールに出たネ!」

 一足先に出てきたのは、アスナと神楽の女子二人。前者は怯えた表情で悲鳴を叫んでおり、後者は生き生きとした表情で屋敷の仕掛けを楽しんでいた。

 出口に着くや否や、神楽はアスナの激しいリアクションに驚いている。

「って、アッスー。そんなに怖かったアルか? 結構安い作りだったアルよ」

「それでもこういう類は苦手なのよ!! 私は待つって言ったのに……」

「いやいや、大袈裟ネ」

「私にはどうしても受け入れられないの!」

 彼女曰く、仕掛けの出来は関係無い。オカルト系には敏感に反応しており、誰よりも恐怖に圧倒されたという。あまり仲間には見せたことが無い臆病さに、神楽も驚きを隠せていなかった。

 すると仲間達も屋敷から出てきて、二人の会話に入っていく。

「ママはいつまで経っても、幽霊に抵抗心がありますね」

「この時だけは、普段よりも子供っぽく見えるけどな」

「って、キリト君にユイちゃんもおちょくらないでよ!!」

 ユイやキリトも彼女の弱点を知っており、それを踏まえた上で煽っているように見える。これにはアスナも、タジタジになって困り果てていた。

 神楽らにもバレてしまった弱点。これに新八は、とある人物と照らし合わせている。

「でも幽霊が苦手なら、銀さんも同じですよ」

「えっ、そうなの!?」

「はい。怪談の時でも耳を塞いだり、異様に自分のビビリを隠したりしていますよ」

 それは同じくオカルト系が嫌いな銀時であった。アスナが恐怖におののく様子から、彼の姿を思い起こしている。(その本人もお化け屋敷に入って、シリカやシノンの前で情けない姿を見せたのだが……この時の万事屋は事情を知らない)

 少しでも元気づけようとしたが、むしろ逆効果であった。

「私って、銀さんと同じ苦手意識を持っているんだ……」

「いや、ショックを受けるのそこですか!?」

 銀時の弱点と同類だと分かって別のショックを受けている。物怖じする性格だけは彼に知らせないでおこう。そう心に誓ったアスナだったが、

「あっ、そうアル! 銀ちゃんと合流したら、アッスーも連れてもう一回お化け屋敷に入ってみるネ!」

「おっ! その考えは良いかもな!」

「ママや銀時さんが一緒に驚く姿も見てみたいですね!」

「だからー! みんなで私を追い詰めないでって!!」

意向に反して仲間達は、良からぬ提案ばかり思いついている。無情にも銀時とアスナを同時にお化け屋敷へ放り込んで、反応を見てみたいらしい。彼らの悪ふざけはまだまだ続くようである。

 賑やかな雰囲気で一行が話を続けていると、ある知り合いと遭遇していた。

「ん? なんだよ、オメェらじゃねぇか」

「あっ、土方さん?」

 その正体は、動物ハンターの捜索を続ける土方十四郎である。手には真っ黄色なソフトクリームを持ち、随時食べながら一行へ近づいてきた。

「おぉ、トシネ! お前も遊園地に来ていたアルか?」

「馴れ馴れしくすんな。つーか、そんなに距離感近く無かっただろ」

「それより土方さんも、遊園地へ遊びに来ていたんですか?」

「遊び? 違ぇよ。ただのパトロールだ」

「へぇー。そうアルか」

 神楽や新八は慣れた様子で、遠慮なく話しかけていく。少なくとも仕事の関係で、来ていることが明かされていた。

 だが一方で、アスナは例の件が聞かれてないか心配になっている。

「ま、まさか土方さん。私のあの話、聞いていた?」

「あの話? 何のことだかさっぱりだな。一体何だよ?」

「いいや、何でもないわ! 大したことじゃないから!」

 気になって聞いてみたが、特に目立った反応は無かった。物怖じする性格が知られずに、まずは安心している。

「あっ、アッスーのビビ――」

「神楽ちゃん……!!」

「いや、なんでもないネ」

 余計な一言を発した神楽だったが、アスナからの威圧で口を止めてしまう。彼女の覇気に溢れる姿勢から、つい怯んでしまった。

(ひとまず大丈夫ね。もし土方さんに知られたら、沖田さんにも伝わってめんどくさいことになりそうだから……)

 必死に自分のメンツを守るアスナだったが……実を言うと土方は、先ほどの話の一部は聞いている。

(本当は聞こえていたんだが……俺も人のことを言えねぇからな)

 自分も物怖じする性格なので、あえて深くは追及していない。さり気ない優しさを見せていた。

 一方でユイは、土方が口にしているソフトクリームが気になっている。

「そういえば、土方さん。さっきから何味のソフトクリームを食べているんですか?」

「あぁ、これか? オープンカー限定で売っていたマヨネーズ味だよ。牛乳の代わりにマヨネーズが入っていてな。結構おいしいぞ」

 その正体はやっぱり一味違った。マヨネーズ好きの彼にはぴったりのソフトクリームである。見た目は彼の言う通り、ほとんどマヨネーズで構成されていた。

「牛乳の代わりにマヨネーズって……」

「ほぼ本物では……?」

「オメェらも食うか? 案内してやるよ」

「いいえ、結構です!!」

「土方さんだけで楽しんでください!!」

 土方のマヨネーズ好きは初対面から知っているが、やはり何度見ても受け入れられない。久しぶりにキリトやアスナは、心からドン引きしていた。

 同じくユイも苦笑いを浮かべる中で、ふと視線を外すとある生物を見つけている。

「おや? あの生物は……」

 近くの木々から発見したのは、銀時らが探している宇宙猫の一匹だった。

「どうしたアルか、ユイ」

「いや、なんでもないですよ」

 しかし、事情を知らないユイは特に気にしてはいない。誰かの入場者のペットだと解釈していた。

 一方で話題はさらに変わって、土方が出会った銀時について挙がっている。

「てか、お前等。アイツともう合流したんじゃねぇのか?」

「アイツって……銀さんのことか?」

「そうだな。どういう訳か知らんが、猫耳娘共と一緒に探していたみたいだぞ」

「猫耳娘? シリカちゃんとシノノンのことかしら?」

「って、もう入場していたアルか?」

 ここでキリト達はようやく、銀時がすでに入場している事実を知らされていた。彼と同じくして、シリカやシノンも来ているようだが……。

 より詳しい情報を聞き出そうとした――その時だった。

「ど、どうなってんだぁぁぁ! これはぁぁぁ!!」

 突然にも聞こえてきたのは、聞き覚えのある情けない声。万事屋一行はもちろん、すぐに声の主を理解している。

「今の声って……」

「銀時さんの声っぽかったですよね!」

 特徴のある響きから、すぐに銀時だと理解していた。大声でツッコミをしているようで、増々彼の行方が気になってしまう。

「近くにいるのか? 行ってみようか」

「そうネ! トシもついでに来るアルよ!」

「はぁ? 俺はいい――って、オイ!? 勝手に掴むなよ! 離しやがれ!!」

 そしてキリト達は揃って、声の聞こえてきた広場方面まで走り始めている。神楽は道連れとして、近くにいた土方を連れだした。彼の意志とは関係なく、手を掴んでそのまま引きづっている。

 ようやく動き出した銀時との再会。シリカやシノンを連れた彼の身に何が起きたのか? 仲間達は動向が気になって仕方無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして銀時らは、現在とんでもない事態が起きている。

「ねぇねぇ、銀しゃん! 私達のことを構ってよ~!!」

「猫じゃらしとかで、遊んでほしいにゃ~ん!!」

 そう。シリカとシノンがマタタビで泥酔したのだ。共に赤い表情となり、普段よりも型を外した陽気さを見せつけている。緩めた目つきで甘えており、さながら子供っぽさを彷彿とさせていた。

 この要因を作り出したのは、予めマタタビを仕込んでいた沖田総悟である。上手い事作戦が進み、彼は邪悪な笑みを浮かべていた。

「お、沖田君……これはどういうことだ?」

「何ィ、ただの遊び心でさぁ。俺も一回だけ、猫耳娘共が酔う姿を見てみたかったんでねぇ。

まぁ、こんなもんなんですか。そんじゃ、満足したんで後は旦那に任せやすよ」

「おい、待てこらぁ!! 勝手に逃げ去るんじゃねぇよ!! せめてこいつらを、元に戻してから帰れや!!」

 混沌とした光景に満足したのか、沖田は彼女達を元に戻さず、そのまま場を立ち去ろうとしている。もちろん銀時は到底納得がいかず、彼の跡を追いかけようとしたが……

「ウヘヘ! 逃がしませんよぉ~銀時しゃ~ん!!」

「私達を置いていかないでよ~!!」

「離せ、オメェら!! アイツを逃がすわけにはいけねぇんだよ!!」

シリカら二人が両手を強く掴んでおり、体を動かすこともままならない。意外な障壁に苦戦を強いられている。

(ちなみに保護した猫達は、現在銀時の懐の中で眠りに着いている。幸いにも、マタタビに影響されていなかった)

 酔い続けるシノン達に、たった一人で対抗する銀時。宥めながら彼は、必死に打開策を模索している。すると、ある考えが閃いていた。

「あっ、そうだ! こういう時は甘いモノだ! 飴玉とか与えれば、すぐにでも覚ましてくれて――って、アレ? 無い!?」

 過去の経験から、甘味を与えて酔いを覚まそうと考えている。ポケットに所持しているはずの菓子類を探ったが……何故かどこにも見当たらない。

「ま、まさか……」

 咄嗟に嫌な予感を察して、沖田の方に目を向けてみる。視線に気付いた本人が後ろへ振り返ると、彼はあるモノをちらつかせていく。

「こいつは証拠品として押収しときやしたよ。時期が来たら、返しておきやすね」

 それは銀時の所持していた菓子類だった。対処法もすでに土方から聞いており、分かった上で盗み出している。

 その表情も嘲笑うように銀時を見下していた。完璧に沖田の悪戯に翻弄されている。

「じゃあな」

「おい、ドS!! 何これ見よがしに見せつけているんだぁ!! 立派な窃盗罪じゃねぇかよ!!」

 銀時の激しいツッコミなど無視して、沖田は口笛を吹きながら、本当に去ってしまった。泥酔する女子達の対処は、全て彼へと丸投げしている。

「ねぇねぇ、銀時しゃーん。アタシ達の遊び相手になってよー!」

「はぁ!? 遊び相手!?」

「うんうん! 爪で銀さんのこと、滅茶苦茶にしても良いのね!?」

「駄目に決まっているだろ!! テメェら酔いながら、何とんでもねぇ遊びを提案してんだよ!!」

 子供のようなキラキラとした目つきで、さらっととんでもないことを発する二人。銀時を遊び相手にしたい様子だが、発想が斜め上を行き過ぎていた。

 普段とは違い、これが本音か冗談なのかも分からない。銀時自身も勢いを抑え込むのに精一杯で、ツッコミをする度に疲れを感じていた。

(おいおい、不味いぞ。早く止めねぇと、こいつらだけじゃなくSAOのファンからもボコボコにされるぞ! それだけは避けなくては……!!)

 内心では、熱狂的なファンからの苦情にも怯える始末である。不安と焦りが生じる中で、彼は意地でも行動に移そうとしていた。

(とにかく、近い店から甘いモノを探さねぇと。こんな光景をアスナにでも見られたら……それこそ俺のメンツが壊れる! 早く動け――)

 二人の酔いが覚めるのを優先して、近くで甘味が売っていないか見回している。ちょうどぴったりの店を見つけた時だった。

(よし、あの店なら――)

「こっちから銀時さんの声がしました!」

「ありがとうアル、ユイ! みんなー! こっちへ!!」

「分かったよ!」

(ゲッ!? アイツらかよ!?)

 タイミングが悪く、キリトら一行が近くまで迫っている。もし鉢合わせしようものなら、事態がややこしくなることは想像に難くなかった。

「アレェ……今キリトしゃんの声がしたような?」

「近くまでいるのかなぁ~?」

「ち、ちげーてって! お前等! ただの幻聴だ! とりあえず、こっちへ来い!」

「ぎ、銀しゃん!?」

 薄っすらと声に気付く女子達を誤魔化すと、銀時は彼女達をつれて近くの林まで隠れていた。もちろん自分の身も隠して、茂みの中からキリト達の様子を見ている。

「アレ? さっきまで、銀時さんの声がしたのですが……」

「もしかして、別の場所に行ったのかな?」

「アイツのことだ。まだその辺の近くにいるんだろ?」

 一方で広場に来た土方やキリトらは、早速周りを見渡していた。近くに銀時がいないか、まんべんなく探索している。場を去る気配もなく、見つかるのは時間と運の問題だろう。

「って、なんであいつまでいるんだ……? しかも余計なことを言いやがって」

 彼は意地でも見つからないよう、静かに祈り続けている。土方までいることは、若干不満げであったが。

 銀時のみが緊迫した雰囲気に浸る一方、女子達は能天気にも彼を構い続けている。

「ねぇねぇ、誰がいるんですか~?」

「もしかしてぇ、やっぱりキリトとか?」

「後で教えるから、今は離れて静かにしてろ」

「「はぁ~い」」

 気配を悟らないように、銀時は小声のまま注意を加えていた。この言いつけが効いたのか、女子達は体を丸くして、しばらくの間は静かにしている。

 窮地をやり過ごす銀時だったが、その背後では新たなる脅威が近づいていた。

「モコ……」

「へへ! やしましたね、兄貴! 希少な宇宙猫ゲットですよ!」

「まさか潜伏先で見つかるとはな……このまま脱出して、適当な星へ逃げ込むか!」

「そうしましょう! あわゆくば、もう一匹捕まえたいところだぜ」

 それは同じく気配を潜めていた動物ハンター達である。両者共に軍服のような迷彩服を着ており、顔はヘルメットや季節外れのマフラーで覆われていた。

 そんな彼らは、偶然にも迷子の宇宙猫を一匹だけ捕獲している。猫本人は嫌がっており、口元を無理やり取り押さえられていた。

 現在は遊園地から逃げ出そうとしたが……その道中にて、体を丸めるシリカやシノンの後ろ姿を発見している。

「おっ! この尻尾は、まさか同類か!」

「おい、待て! そいつはこの宇宙猫とは違うぞ!」

 リーダーらしき男が警告したものの、もう一方の男は歩みを止めない。後先を考えずに、女子達の尻尾を力強く掴んでしまった。

「「ニャ!?」」

「あっ」

 彼が正体を分かった時にはもう遅い。

「何すんのにょ!! おじしゃん達!!」

「アンタらには遊びたくないにょよ! ゴラァァ!!」

「ギャャャ!!」

 反撃と言わんばかりに、爪を立てた二人に顔面を引っかかれてしまう。吹き飛ばされると同時に、捕獲していた宇宙猫も手放してしまった。

「おい、逃げるぞ! こいつらヤベェ!」

「あー!! 折角の宇宙猫が!!」

 場が悪いと判断した動物ハンター達は、猫に構うことなく逃げ出している。女子達の野性的な衝動に、つい心を怯ませてしまった。

 彼らが逃亡した途端、銀時もようやくこの騒ぎに気が付いている。

「って、おいどうした! 一体何があった!?」

 問いかけると、女子達は酔ったまま返答していく。

「急に汚いおじしゃん達が、アタシ達の尻尾を掴んだのー!!」

「本当しゃい悪! キリトや銀しゃんの方がまだマシだわ!!」

「いや、俺でもマシな方なのかよ」

 どうやら知らない内に、見知らぬおっさんがセクハラして、自身で撃退したようである。説明を聞いてもさっぱり分からないが、怒りの感情だけは伝わっていた。

 静かに彼女達を宥める銀時が、足元を確認してみると、

「って、猫も増えているじゃねぇか!? どういう訳か知らんが、三匹目もゲットだな」

迷子の宇宙猫を発見している。ハンター達が捕獲したことは知らず、偶然林に紛れ込んだものだと予測していた。これにて、残りの迷子猫は後二匹となっている。

「さて。アイツらはもういなくなったか――」

 しっかりと保護した後に、銀時は後ろを振り返った。仲間達が去ったことに期待したが、

「ぎ、銀さん?」

「あっ」

先ほど起きた騒動によって隠れていた場所がバレている。首を傾げているキリトと、視線が合わさってしまう。

「やっぱり近くにいましたよ!」

「銀ちゃん、今までどこ行っていたアルか!?」

「てか、シリカさんとシノンさんもいるじゃないですか。三人で行動していたんですか?」

 彼に続いて、ユイや新八ら仲間達も集まってくる。数時間ぶりの再会に聞きたいことは山ほどあるが、ひとまずはシリカとシノンの行動理由について聞いていく。

 すると……女子達は誤解されるようなことを言い始めてきた。

「その通りです~! 一緒に猫探ししている内に、気分がハイなんですよぉー! アタシ達!」

「銀しゃんがタピオカをおごってから、ずっとこの調子なのよねぇー!」

「おい、オメェら止めろ! 誤解されるようなことを言うんじゃねぇ!!」

 緩んだ口調で説明したが、肝心の部分(沖田の悪戯)は抜けている。その陽気な風貌から、キリトら側も女子達の酔い具合を理解していた。

 この証言により、誤った捉え方をしてしまったのは――もちろんアスナである。

「へぇー銀さん。もしかして二人に、マタタビを与えちゃったのかな……?」

「って、アスナ!? 何レイピア抜こうとしているんだよ!? これには深い訳があってだな……!!」

 彼女は有無を言わさずに、帯刀しているレイピアに手をかけていた。表情も怒りに満ちた笑顔となり、女子達を酔わせた犯人を銀時だと決めている。

 最悪の予測が当たった彼は、どうにか怒りを抑えようと抵抗していた。

「って、土方! オメェの部下の責任だからな! 俺の代わりに、あのヤンデレ風味の鬼嫁を止めろ!!」

「いや、何で俺だよ!? 原因作ったのは、オメェじゃねえのか?」

 近くにいた土方へ助けを求めるも、まともに取り合ってもらえない。何よりも沖田の一件を知らない為、銀時の主張すら分かっていなかった。

 この余計な一言が、アスナの怒りをより高めてしまう。

「誰が鬼嫁ですって……!!」

「いや、違う! これは言葉の綾で、本当は頼もしいという意味で――」

「問答無用よ!! 恥を知りなさい!!」

「や、やめろ!! ギャャャャャ!!」

 結局は彼女を止められずに、文字通りの制裁を受けてしまった。銀時には死なない程度の、レイピアの攻撃が与えられている。この光景に仲間達は、ただただ複雑な表情で見守り続けるしかない。シリカとシノンを覗いては。

「アレェ~? 銀時しゃんが怒られていますよ?」

「何か悪いことでも言ったのかしら~?」

「……いや、オメェらが誤解を与えたせいだよ」

 今日は踏んだり蹴ったりと、悲惨な目に会うことが多い銀時だった。

 

 

 

 

 

 

 そして時は経ち、互いに落ち着いたところで一行は、ベンチに座ってこれまでの経緯を説明していた。

 万事屋側は遊園地を楽しみながら、銀時を探していたようである。一方の銀時側は、遅れて向かう道中にシリカやシノンと遭遇。共に向かうことになり、万事屋を探しつつ友人からの依頼で猫探しも行っていたという。

「なるほどです。つまりシリカさんとシノンさんが遊園地へ誘いに来て、途中まで一緒に行動していたと」

「そして友人のペット探しで、この宇宙猫達を探していたのか」

「「「モコ―!」」」

 話を聞きつつユイやキリトが頷くと、目覚めた猫達も共感するように飛び上がる。引っかかっていた部分や、互いの身に起こったことが明かされていた。

 大まかな説明を交わした後に、銀時は再度大事なことを主張していく。

「その通りだよ。後予め言っておくが、マタタビを入れたのは俺じゃねぇからな。沖田総悟だからな!」

「まさか知らない内にやっていたとはな……」

 女子達が酔った原因である。土方自身も沖田が真犯人と分からず、控え目に驚いていた。

 すると銀時は、水を得た魚の如く彼を責め立てていく。

「部下の失態は上司の責任だからな。という訳で土方。俺の代わりに、あの店でソフトクリームを買って来いよ。もちろんお前の金だがな!」

「はぁ、ふざけんな! ただたかりたいだけだろうが! そもそも目の前にあるんだから、お前一人で買って来いよ!」

「それが出来ねぇから言っているんだろ! こいつらがさっきから腕を掴んで、離れねぇんだよ!!」

 連帯責任を持ちかけて、パシリのように扱おうとしていた。もちろん本人は拒否しており、激しく声を荒げている。彼に頼みたいほど、銀時はまだ手が離せない状況なのだ。

「ねぇねぇ、いつになったら遊んでくれるの~? 早く引っかかせてよー!」

「キリト達もいるんだし、揃って私達をもてなしてよ~!!」

「あぁ、分かったから! とりあえず、お前等は元に戻れ! いい加減に手も離せ!!」

 未だに女子達は酔いが収まらず、むしろ時間が経つ度に甘えまくっている。銀時の両手を一斉離さず、無邪気にも遊びのおねだりをしていく。

 増々悪化する状況に、仲間達も思ったことを呟いていく。

「まるっきり子供になっているアル」

「シノンは前に見てから分かるけど、シリカも同じように酔うんだな」

「普段よりもさらに明るく、無邪気そうに見えます!」

「二人共酔うなんて、銀さんが可哀そうな気が……」

「お前等も、口だけ言ってないで早く助けろや!」

 酔い続ける姿に興味を持つ者や、銀時への同情を浮かべる者など、その反応は様々である。

 いずれにしても手が離せない銀時だが、ここで状況を見かねたアスナが助け船を出してきた。

「分かったわよ。さっきは間違って攻撃しちゃったし、お詫びに私が買って来てあげるわ」

「本当か、アスナ!? 流石は嫁にしたいアニメキャラ一位だぜ!」

「すぐ調子に乗るんだから……ていうか、その一位って何?」

「いやいや、気にするな。早く行ってきてくれ、頼む!」

「そんなに焦らないでよね」

 誤解から攻撃したお詫びとして、彼女自らが購入に向かっている。さり気無い優しさには、銀時も調子に乗って心から感謝していた。

 彼女が退席した後に、神楽はこっそりとアスナの想いを打ち明かしていく。

「銀ちゃん! ああ見えてもアッスーって、出発した時から銀ちゃんのことを心配していたアルよ」

「俺のことをか?」

「そうネ! 入場してからも、ずっと心待ちにしていたネ!」

「……そんなことがあったのか」

 道中でも、銀時との合流を待ち望んでいたことが明かされている。神楽のたわいない笑顔と共に、彼もまたつられるように微笑んでいた。何度衝突しようとも、アスナを仲間の一人として改めている。

 そう優しい気持ちに浸っていた時、ようやく彼女は多数のソフトクリームを持ってきてくれた。

「はーい、買ってきたわよ。みんなの分も買ってきたから、好きな味を選んでちょうだい」

「おぉー、有り難いネ! アッスー!」

「早速いただきますね!」

 シリカらの分のみならず、仲間の分まで用意している。すかさず一行は好きな味を選び、ゆったりとした雰囲気で休憩に入っていた。

「ほら、甘いモンだぞ。さっさと戻りやがれ」

 もちろん本命はシリカとシノンの酔いを覚ますことで、銀時は上手く食べさせて、手っ取り早く戻そうとしている。

 すると、一分も経たないうちに効果は表れていた。

「……アレ? ここは?」

「私達、今まで何をして……」

 緩んでいた目つきや表情は締まっていき、徐々に冷静さを戻している。彼女達はようやく、マタタビの呪縛から解放されていた。万事屋一行も、これには一安心している。

「ようやく戻ったか。沖田にマタタビを飲まされたことは覚えているか?」

「あっ、そうですよ! 気づいた時にはもう意識が無くて……」

「その間、ずっと酔っていたってこと?」

「だな。まぁ紆余曲折はあったが、ひとまず飼い猫も保護して、残すは後二匹になったよ」

 女子達も少しずつ、自身の身に起きたことを思い出していた。銀時が適宜補足を入れつつ、泥酔中の出来事を説明している。まずは猫の保護について伝えていた。

「「「モコ―!!」」」

 酔いの戻った女子達を喜ぶように、宇宙猫達もぴょんぴょんと跳ねて、嬉しい気持ちを露わにしている。幸せそうな姿を見ると、女子達も心を落ち着かせていた。

「あー、良かったです。全員保護するのも、近づいてきましたね!」

「後はキリト達との合流ね。かろうじて、酔っている姿を見られなくて安心したわ」

「あの、そのことなんだが……」

「ん? どうしたんですか、銀時さん?」

 とここまでは良いが、最大の難所が訪れてしまう。シリカやシノンはまだキリトらの存在に気付かず、あの事実についても知らされていない。どんなに言葉で繕っても、誤魔化すことはもう出来ないのである。

「やぁ……久しぶり。二人共……」

「「えっ!?」」

 聞き馴染みのある声が聞こえて、二人が前を向くと――そこにはソフトクリームを食べ進めるキリトや仲間達の姿があった。周りからの微妙な視線から、女子達は徐々に真実へと察していく。

「キ、キリトさん!? それに皆さんまで!?」

「も、もしかして……私達の泥酔した姿……見てた?」

「うん。しっかりと見たわよ」

「シッリーもシノも、子供っぽくて可愛かったアルよ!」

「とても、子供らしかったです……」

 アスナやユイらの返しに、両者共に猫耳を疑ってしまう。自分では無意識だったが、どうやら自身の泥酔姿をすでに見られたようである。

 途端に二人は恥ずかしさを覚えてしまい、頭の中も急に真っ白になっていた。強いショックが体中を駆け巡り、思考が完全に停止すると……

「「グハァ!?」」

青ざめた表情となって机に顔をうずめている。銀時の予想よりも遥かに大きい、精神的ダメージを受けてしまった。

「おぃぃぃ、なんで項垂れてんだよ!? そんなにショックだったのか!? つーか、シノンは三回目じゃねぇか! 何を今更、引きづってんだよ!!」

 あまりの変わり様に、銀時も思わず激しいツッコミを繰り出す。言いたいことを全て吐き出すと、女子達は気の抜けた表情で後悔を垂れ流している。

「こんな醜態を、キリトさんやアスナさんに見られたなんて……もうお嫁にいけないです……!」

「公の場で酔うなんて初めてだもの……穴があったら入りたいわ……」

「さっきまでのテンションどこ行った!? ちょうどよい調整出来ねぇのか、オメェらはよう!! ていうか、さっさとソフトクリームを食え! 溶けるぞ!!」

 泥酔時の高いテンションとは、まるで態度が一変していた。悲壮感を漂わせながら、計り知れない絶望を味わっている。食欲などとっくに失われており、手にしたソフトクリームは溶け始めてもなお興味が向いていない。

 そんな彼女達を、銀時は激しくツッコミ続けている。彼の苦労が垣間見える場面に、万事屋の仲間達も次々に呟いていた。

「今日の銀ちゃんはツッコミが冴えているアルナ」

「色々と巻き込まれて、仕方のない気がするけど……」

 銀時に肩入れする新八や神楽に、

「別に酔っている姿も問題ないと思うけどな」

「いや、キリト君。必ずしも、そういう問題じゃないのよ」

鈍感らしいことを呟くキリトとそれに注意するアスナ。ソフトクリームを食べ合いながら、多様な感想が出てきていた。いずれにしても、女子達との温度差は広がるばかりであるが。

 そして土方の方は、ソフトクリームを食べ終えてハンターの捜索に戻ろうとしていた。

「俺の出る幕はもう無さそうだな。ここら辺で引き上げるか……って、どうした?」

 だがしかし、彼はユイの考える姿が目に止まっている。実は彼女は、銀時らが保護した宇宙猫を見て、あることがずっと頭に引っかかっていた。

「あの猫って、もしかして……」

「猫?」

「やっぱり同じでしょうか! ちょっとすいません! さっきのお化け屋敷まで見てみます!」

 どうしても気がかりだったユイは、好奇心のままに単身で場を離れている。数分前に見た生物が気になり、居ても立っても居られなかった。

「えっ、ユイちゃん!?」

「一人で行くのは危ないアルよ!」

 飛び出したユイに気が付き、新八や神楽も彼女の跡を咄嗟に追いかけていく。さらにキリトやアスナも、その跡を追いかけようとしていた。

「ユ、ユイちゃんが飛び出しちゃった?」

「猫の方に興味が向いたのか? とりあえず、俺達も追いかけよう!」

「そうね! でも、その前に……」

「あっ、そうだな」

 と出発する前に、まずは落ち込んでいるシリカやシノンに、友人らしい励ましの言葉をかけることにする。

「ねぇ、二人共。そんなに落ち込まないでよ。誰だって恥ずかしいところを、仲間に見られることだってあるのよ(さっきのお化け屋敷みたいに……)」

 アスナは数分前の自分と照らし合わせて、

「そうそう。それに落ち込むほど、二人の酔った姿は悪く無かったよ。むしろ陽気で子供っぽい方も可愛いって思ったし」

((か、可愛い!?))

キリトは無意識にも立ち直りそうな一言をかけていた。このさり気ない言葉が、彼女達の心にある変化をもたらしている。

「じゃ、銀さんに土方さん。後は任せていいかしら?」

「おう、良いぜ。もしユイが猫を見つけたら、この広場に戻って来いよ」

「あぁ、分かっているよ。それじゃ、また後で!!」

 後のことは銀時へと一任して、再び万事屋は分かれて行動していた。ほぼ成り行きだが、キリトらも猫探しに協力するようである。

 約束を交わしてキリトらが一時的に去ると、場に残ったのは銀時、シリカ、シノン、土方の四人だった。土方だけは巻き込まれ気味であるが。

「なんで俺まで含まれてんだよ」

「別に良いじゃねぇかよ。旅は道連れ、世は情けって言うだろ」

「お前、その意味を分かって言っているのか?」

 場が静まり返ってもなお、二人の屈託のない会話は続いている。それから銀時は、未だに項垂れてそうな女子達に声をかけてきた。

「どうだ、お前等? いい加減後悔も薄れただろ? そろそろ普段通りに戻って――」

 軽い感覚で接した――その刹那である。

「「やったぁぁぁ!!」」

「はぁ!?」

「えっ?」

 何と女子達は吹っ切れたように、突然大声を上げてきた。拳を強く握りしめて、共にガットポーズで高らかに喜びを表現している。

 またも態度が一変した要因には、キリトの励ましの言葉が関係していた。

「やりましたよ、シノンさん! キリトさんが酔った姿も可愛いって!!」

「これは嬉しい誤算ね! いざという時は、マタタビで酔って誘惑すればいいのよ!」

「ケットシーならではの利点ですね! これだったらキリトさんにも、新しい魅力が伝わります!」

「上手く体をコントロールして、意識を維持できるようにしましょう!」

「はいです!」

 そう、可愛いという言葉だけで泥酔した印象を一新している。良くも悪くもキリトの言葉を真に受けており、恥ずかしい感情はとっくに無くなっていた。今は酔った姿で魅力を伝えられるかで、話が持ちきりになっている。表情からも喜びに浸り、もう勢いは誰にも止められなかった。

「おい、ちょっと待てぇぇぇぇ!! アレこそただの慰めじゃねぇか! 何本気で間に受けているんだよ!! 図々しいにもほどがあるわ!!」

 当然銀時は、この展開にツッコミを入れ続けるしかない。女子達の態度の一変、キリトの言葉を素直に信じ込む性格と言った点が、気になって仕方ないのである。

 彼のみならず、土方にも思う節があるようだ。

「酒を覚えた女子大生みたいなやり方だな。末恐ろしい奴め」

「テメェも冷静に分析してないで、激しくツッコめや! こいつら勘違いして、ずれた思考になってんだぞ!」

 楽観的な視点から、冷静な佇まいで分析している。それでも銀時のツッコミが収まる気配は無いが……。さらに女子達は、銀時にあるアドバイスを貰おうとしていた。

「早速ですが銀時さん! 泥酔した時の対処法を教えてください!」

「どうやって、酔った体をコントロールするのかしら!?」

「興味深く聞くんじゃねぇよ! オメェら未成年なのに、読者に誤解されるようなことを言うな!! マタタビを自発的に食う猫耳キャラがどの世界にいるよ!?」

「お願いします! 今後のアタシ達の戦略が懸かっているんです!」

「知るかコノヤロー! いいから落ち着け!!」

 泥酔した時の対処法を、彼に直接聞く始末である。酔うまでの過程は異なるが、やはり大人としての意見が聞きたいのだろう。もちろん銀時は返答するはずがなく、感情の赴くままに激しいツッコミを続けている。ボケとツッコミが逆転する珍しい光景であった。

「フッ。こりゃ長くかかりそうだな」

 それでも賑やかな雰囲気に変わることは無く、土方はそっと微笑みを浮かべている。活気のある会話につい共感していた。

 彼はこの空いた時間を利用して、しばらく加えていなかった煙草に火を付けている。口元から煙を吐いて、一服の一時を過ごしていた。

 

 

 

 

 その一方で、シリカらから逃げ出したハンター達は、再度態勢を立て直している。

「チッ! 折角の獲物を手放してしまったぜ」

「あの猫耳天人、許せないっすね! チョイとお仕置きでもしますか!?」

「あぁ、そうだな。ここは並行してやろうじゃねぇか。お前は事前に仕掛けておいた林の方に向かえ。ここからは単独行動とする」

「承知しました!」

 彼らも同じく分かれて行動しており、互いに違う目的地へと向かっていた。取り逃した猫の再捕獲と、猫耳女子達の逆襲を誓っているが……?

「何としても、あの猫だけは捕まえてやる……!」

 いよいよ全てに決着が着くのか?




余談
 最近思ったのですが、SAOのキャラも銀魂らしいボケをするようになりましたね。昔の流れだと、必ずツッコミ役として役割を固定していましたが、条件が揃うとボケ役もこなすようになっていきました。
今回の件で勘違いしているシリカやシノンや、ユイのことであらぬ不安を掻き立てるキリトやアスナ。トンキーホーテのマスコットで誤った影響を受けたリーファなど、少しずつですが彼らの役割も増えたように感じます。
 それでも過剰にはせずに、微妙な匙加減が重要だと思います。機会があれば、ボケとツッコミが逆転するような話も作りたいですね。





 そして次回! 散々伸ばしましたが、遊園地篇の最後を送ります。残りの猫は見つけられるのか! 動物ハンターはどうなるのか! 是非ご覧ください。





次回予告
シリカ「酔う事の大切さを、この話で学ぶことが出来ました!」
シノン「一歩大人になった感覚よね。そうと決まれば、今からマタタビに慣れる必要があるわ!」
シリカ「もちろんです! だから銀時さん、酔いの操り方を教えてください!!」
銀時「だーかーら! 真に受けるんじゃねぇよ!!」
土方「次回、デタラメな男ほど、たまには役に立つ……って、タイトルこれで合っているのかよ?」
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