剣魂    作:トライアル

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 本来は二話で終わるはずだった遊園地篇。事前の予定よりも書きたい事が増えてしまい、またも話数がオーバーしてしまいました。ようやく完結を迎えます。
 そして最後には、今後の投稿予定についてもお知らせします。見逃さずにご覧ください。



第六十三訓 デタラメな男ほど、たまには役に立つ

 遂に念願の合流を果たした銀時達とキリト達。前者に課せられた猫探しも、いよいよ佳境を迎えている。残る二匹の宇宙猫を発見するために、仲間達もどさくさに紛れて協力をしていた。

 

 その最中で、単独行動を続けるのは沖田総悟。シリカらをマタタビで弄んだ後、彼は遊園地内にある乗り物の貸し出し場に辿り着いている。

「おい、おっちゃん。ここにあるゴーカートを借りて良いですかい?」

「あぁ、好きにしな。ただし三十分後には返せよ」

「へーい」

 管理人らしき男性に許可を取ると、彼は停車していた小型のゴーカートに乗車した。

「さて。ハンターと土方さんを探しに行きやすかね」

 そう呟くと沖田は、早速アクセルを入れてゴーカートを走らせていく。乗車したまま遊園地を巡り、気ままにハンターや土方等を探索するそうだ。緊張感は無く、普通に楽しんでいるようにも見えるが……。

 そんな彼の姿を、背後の柱からこっそりと眺める者がいる。

「ほぉー。これは使えるかもしれんな……」

 その正体は、未だに逃亡を続ける動物ハンターの一人だ。指示を与えた側で、身分は相方よりも高いと思われる。

 ゴーカートの存在を認知した彼は、ふと良からぬ作戦を閃いていた。

「エンジンを多少いじれば、強奪も可能だな」

 ニヤリと悪い笑みを浮かべた後に、彼はすぐに行動へと移している。

 

 

 

 

 

 

「えっと、ここなのですが」

「この木々の中から発見したアルか?」

「もちろんです! しっかりとこの目で見ましたから!」

 一方でこちらは、銀時達と行動を分担しているキリトら五人。先に走っていたユイと合流した彼らは、彼女の証言を頼りにして、お化け屋敷近くの木々に入っていく。周りをまんべんなく見渡しながら、丸っこい体をした宇宙猫を探索している。

「この辺りのはずですが……」

「もしかしたら、まだ近くにいるかもしれませんね」

「隅々まで探しましょうか!」

 行動範囲を予測した上で、仲間達は互いの雰囲気につられて勢いよく走り出していた。

「って、みんな! そんなに急がなくても」

「いやいや、キリ! ここは急いで探した方がいいネ!」

「そうよ、キリト君!」

「……そう言われてもな」

 キリトが声をかけても、四人はまったく足を止めない。彼はやれやれと思いつつ、マイペースにゆっくりとついてきていた。

 だが――この行動は後の命運を大きく分けてしまう。

「あっ! 避けてください! 皆さん!」

「あい? って、ウワァァァ!!」

「キャャャ!?」

「えっ、みんな!?」

 咄嗟にある仕掛けに気付いたユイが、仲間に呼びかけたものの時すでに遅い。草木に仕込んでいた網が露わとなり、ユイ、神楽、アスナ、新八の四人を捕らえて、木々に吊るしてしまった。

 運良くキリトだけが、この事態を上手く回避している。

「網が隠れていたのか? てか、みんな大丈夫か!?」

「うん……何とか平気よ! でも、狭い!」

「少し息苦しいです……!」

 仲間の元に駆け寄った彼は、すぐに様子を確認していた。幸いにも仲間達に怪我は無いが、

狭い網の中をぎゅうぎゅうに詰められてしまい、皆息苦しさを感じている。抜け出そうと必死に体を動かすが、何度やっても網はびくともしない。

 苦しい表情を浮かべるアスナやユイに対して、神楽は怒りに満ちた表情を見せている。

「うぉぉぉ!! 誰アルか!? こんな姑息な悪戯仕掛けたヤツは!! 早く解放させろヨ! コラァ!!」

「落ち着いて神楽ちゃん! 叫び散らしても何も変わらないから!! だからむやみに揺らさないでって!」

「うるせぇ、新八ぃ! さっきからオメェの足が背中に当たってんだよ! 余計な口出しで怒らせるなアル!!」

「足は関係ないでしょ!! てか、この状況で触らない方が難しいですからね! 一応触らないように、配慮はしていますよ!」

「って、二人共落ち着いてくださいよ!!」

 閉鎖された空間に我慢が出来なくなり、彼女は思わず怒鳴り散らしてしまう。宥めてきた新八にも当たっており、互いにバチバチと険悪な雰囲気に変わっていた。

 言い争いを危惧して、ユイにも一喝される始末である。

「まぁまぁ、みんな落ち着いてって! とりあえず助けるから!」

「お願いするわ、キリト君!」

 とここでようやく、蚊帳の外へいたキリトが動き始めていた。背中に装備した長剣を引き抜こうとした時である。

「待てぇぇ!!」

「モコー!!」

「ん? この声は……あの猫?」

 唐突にも聞こえてきたのは、宇宙猫らしき特徴的な鳴き声。同時にそれを追う男性の声も聞こえており、キリトはその行方を気にしてしまう。

「みんな、ちょっと待っていてくれ。すぐに戻るから!」

「えっ、キリ!? どこへ行くアルか!?」

 仲間の救助を後回しにして、彼は急いで場を去っていく。走り出してから間もなくすると、

「モコモコー!」

「あっ、やっぱり」

読み通りに丸っこい猫が目の前に現れていた。体を上下に激しく跳ねて、彼の足元へとすり寄ってくる。存分に震えた様子であり、何かに怯えているようにも見えるが。

「って、ユイ! 見かけた猫ってアレアルか?」

「はい。あの猫で間違いないですよ!」

 遠くから猫を見ていたユイも、数分前に目にした個体だと判断していた。

「そうか。でも一体、誰に追われていたんだ?」

「モコ……」

 迷子の猫が見つかって、ひとまずは安心する一行。しかし猫が怯えている原因は、よく分からない。ひとまずキリトは、猫に手を差し伸べようとした――その矢先である。

「ようやく追いついたぞ! 希少猫め!」

「えっ? 誰だ、アンタは?」

 続けて姿を見せたのは、迷彩服や季節外れのマフラーを身にまとった謎の男性。彼こそが、相方からの命令で動く動物ハンターの一人だった。

 もちろんキリトらは正体を知らない為、見知らぬ男性の登場に理解が追い付かない。

「いや、本当に誰ですかアレ!?」

「きっと不審者ネ! アッスー、ユイの目を隠すアル! ヤツは絶対に顔芸したまま、女子にいやらしいことをしてくるタイプネ!」

「えっ、そうなの!?」

「いや、違ぇーよ!! そんな描写、一斉無かっただろ!」

 仕舞いには神楽から、思いっきり不審者扱いされてしまう。勝手な憶測に本人は、ムキになって反論していた。

 キリトのみが動ける状況で、目まぐるしく訪れる変化。仲間達や猫を気遣いながら、正体不明の男性に警戒心を高めていく……。

 

 

 

 

 

 

 その一方で、銀時ら四人は未だに広場へと留まっている。彼は暴走気味の女子達を抑え込みながら、ずっと促されていた話にも蹴りを付けていた。

「とにかくだ! こういう話は、俺じゃなくて日輪か月詠にでも相談しろ! アイツらの方が分かってくれんだろ!?」

「……まぁ、それもそうね」

「分かりましたよ、銀時さん!」

「って、本当に酔いは冷めてんのか?」

 結局は二人の保護者である月詠と日輪に、全て丸投げしている。肝心の女子達は妙に納得した表情を浮かべていた。

 あれから数分間、酔い関連について質問攻めされた彼は、少々疲れを感じている。同時にキリトが与える影響力も、痛いほど思い知っていた。

(あの女たらしめ……! いい加減はっきりと答えを言えや! 困るのはこっちなんだからよ……)

 不満げな表情のまま、内心ではキリトに対する文句を吐いていく。

 そんな彼とは対照的に、シリカやシノンは早くも打ち明かす構想を練っていた。

「月姉だったら、私達の気持ちを分かってくれるはずよね」

「だと思いますよ! でも月姉さんは、酔った後が厄介というか……」

「人が変わったように暴れるわよね……」

「まずは日輪さんに話してみますか」

「そうね」

「って、おい。もうその話はいいから、さっさと猫探しを再開させるぞ」

 いつまでも肝心なことが進まずに、痺れを切らした銀時がようやく声をかけてくる。未だに事態が解決してないソリートの猫探しを、改めて二人に提示した。

「あっ、そうでした! まだ二匹とも見つかっていませんよね?」

「内一匹はキリト達が探索しているからな。それが上手く行きゃ、残すは後一匹だろ」

「遂にここまで来たのね。だったら、私達の手で最後の一匹を捕まえましょう!」

「ったく、調子の良い奴等だな」

 女子達はすぐに気持ちを切り替えて、猫探しへのやる気を高めている。銀時からは軽口を言われたが、特に気にしていない。

 すると彼は保護した猫達を落ち着かせて、再度懐へと隠していく。共に準備を整えると、三人は煙草を吸い続ける土方に話しかけてきた。

「という訳だ、土方。俺達はここを離れるからよ。キリト達が戻って来たら、猫探しに行ったって伝えておけよ」

「俺に指示するなよ。大体なぁ、俺も煙草を吸い終わったらハンター探しをしなきゃいけないんだよ。悠長にいる時間はねぇんだよ」

「いや、とても悠長にしているとしか思えませんが……」

 後に合流するキリトらとの伝達役を依頼したが、あっさりと断られてしまう。彼曰く時間は無いと言うが、主張に反して無駄に時間を潰しているように見える。

 これには銀時やシノンも、ぼそぼそと皮肉を口にしていく。

「やっぱり自分に甘く、他人に厳しいヤツじゃねぇかよ。鬼の副長が聞いてあきれるな」

「そうね。土方歳三に土下座してほしいくらいだわ」

「オメェら絶対ワザと言ってんだろ。大体俺は休息しているだけであって――」

 二人の言葉に感化されて、土方も立ち上がり反論しようとした時である。彼の顔色は瞬く間に固まり、あるモノに注目していた。

「えっ?」

「ん? どうしたんですか、土方さん?」

「お前等、後ろを見てみろよ……」

「後ろ? 一体何があるんだよ? マヨネーズか? ニコチンか?」

 彼の様子が気になって、銀時らも冗談半分に後ろを振り向いてみる。そこで目にしたものは……

「モコ―!!」

「えっ、はぁ!? えっ!?」

「ね、猫ですか!?」

まさかの探し求めていた宇宙猫であった。舗装された道にポツンと止まっており、銀時らとの距離はもう目と鼻の先にある。

 自ら公の場に姿を見せており、この急展開には銀時らもまったく理解が追い付かない。

「こんなすぐに見つかるなんて……」

「ということは、これで全匹揃ったんですか!?」

「いやいや、こんなあっさりで良いのかよ!? 絶対に投稿者、展開考えるのを面倒になっただろうが!!」

「って、気にするところそこかよ」

 特に銀時はメタ的な視線から、一人ツッコミをする始末である。あまりの正直さに、土方もさり気なく指摘を入れていた。

「と、とにかく保護しましょうよ!」

「そうね、銀さん行くわよ!」

「おっ、おう! 分かった」

 とりあえずは互いに心を落ち着かせて、三人はゆっくりと猫に近づく。このまま優しく保護しようとした時であった。

「隙あり!!」

「モコ!?」

「えっ?」

「「はい!?」」

「あ、あいつは……!?」

 またも予想だにしない出来事が起きてしまう。彼らの目の前を横切ったのは、猛スピードで園内を走る一台のゴーカート。それに乗車した男によって、発見した猫を略奪されてしまった。

 その正体はもちろん、土方らが追う動物ハンターの一人である。彼はこっそりとゴーカートを盗んだ後に、エンジンを微調整して、逃亡用の車として乗りこなしていた。道中にて偶然猫を見つけて、銀時らの隙を見てから奪い去っている。

「ハハハ! おバカな真選組と猫耳娘共め! こいつは俺が頂いたぜ! あばよ!!」

 余裕が出来た彼は、仕舞いには銀時ら一行を煽り始めている。挑発気味の台詞を吐くと、一目散に逃げ出していた。

 不意に起こった多々ある出来事。これには四人も困惑してしまい、揃って言葉を詰まらせている。

「……おい、土方君。さっきのは何だ?」

「……俺達が追っている動物ハンターだな」

「いや、それは分かるんですけど……なんでゴーカート?」

「そんなもん俺が知るかよ」

「どこかから盗んだのかしらね……?」

 皆が苦い表情を浮かべながら、そのまま思ったことを発していく。ツッコミたいことは山ほどあるが、まずは一度冷静になって心を落ち着かせると――

「って、何で捕まえねぇんだよオメェ!! 警察の仕事どうした!?」

「あのタイミングでしょぴける訳ねぇだろうが!! つーか、すぐに猫を捕まえねぇオメェが悪いんだろうが!!」

「うるせぇ! いちいち伝えるのが遅いんだよ、オメェは!」

「あんだと!?」

ようやく感情を大爆発させていた。銀時や土方は怒りのままに、互いの責任を擦り付けて、喧嘩腰で口論を始めている。

 大ぴっらに文句をぶつけ合う二人に、今度は女子達が落ち着かせていた。

「って、喧嘩している場合じゃないですよ!」

「早く追わないと、逃げられるわよ!!」

 一時の喧嘩よりも、ハンターの追跡に行動を誘導させていく。どちらにしろあのハンターを捕まえないことには、土方の仕事も銀時らの依頼も終わらないのが現状である。

「よし、こうなったら追うぞ!!」

「オメェが仕切るんじゃねぇよ!」

「「いいから、早く!!」」

 四人は態勢を立て直しつつ、皆揃ってハンターの跡を追いかけていった。

好機を掴むはずが、いつの間にか窮地を迎えている銀時達。果たして無事にハンターを、確保することは出来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 そしてキリト達の方へと話を戻そう。彼らも動物ハンターの一人と遭遇しており、依然として警戒心を高めていた。

「本当に誰なんだ、アンタは?」

 浮かない表情のまま質問すると、ハンターは自身の本性を露わにする。

「チッ、バレちゃ仕方ないな! 俺は宇宙で名高い動物ハンターのTさ! 俺らの名誉と金の為にも、お前の近くにいる宇宙猫を渡してもらおうか?」

 今まで身を隠していた彼だが、公にバレた反動で堂々と正体を明かしていく。初耳な情報ばかりでキリト達も困惑したが、ひとまず悪人であることに間違いなかった。

「動物ハンターですか!?」

「そんな人が遊園地に紛れていたの?」

「って、犯罪者じゃないですか!」

 ユイ、アスナ、新八と次々に思ったことを呟く。一方の神楽は、網の存在を話の引き合いに出している。

「まさかこの網を仕掛けたのも、お前だったアルか!?」

「そうだな! まさか人間が引っかかるなんて予想外だったが……これはこれで利用できるな」

 怒りながら問いかけると、仕掛けについてあっさりと認めていた。本来は猫を捕らえる罠として仕込ませていたが、会話をする途中である作戦を思いついている。

 ハンターの悪行が浮き彫りになる中、キリトらは彼への敵対心を高めていく。

「さぁ、さっさと渡せ! 黒髪の天人よ!」

「いや……ここまで言って素直に渡すヤツがいるかよ。猫だって嫌がっているじゃないか」

「モコ……」

 要求には一斉応じることなく、断固とした姿勢を続けた。仲間達も息を呑むように、キリトとハンターとの会話を見守っている。

「そうか。なら仕方ないな」

 すると先に動いたのはハンターの方だった。彼はポケットに隠し持っていたスイッチを手にして、勢いよく押してみると、

〈ビリビリビリ!〉

「うわぁぁ!!」

「きゃゃ!!」

「みんな!?」

アスナ達が捕らわれている網にバチバチと眩い電流が流れ込んでいる。その効果はじわじわと現れており、四人の体には痺れるような痛みが駆け巡っていた。何もかもハンターの策の通りに運ばれている。

「この網は電流が流れる仕組みでな。俺の言う通りにしないと、もっとお仲間さんを痛ぶらせてやろうか?」

「お前……」

「さぁ、武器を捨ててそいつを渡してもらおうか!」

 ハンターの狙いは、キリトの仲間達を間接的な人質として扱うことだった。不敵な笑みを浮かばせて、さらなる脅迫までかけている。

 猫と仲間を天秤にかけられたキリトは、彼の狙い通りに行動を抑制されていた。

(どうする……? ここは無視してみんなを助けに戻るか? だけど、電流を強められたら……)

 仲間も救い出したいのだが、相手の出方が読めずに簡単には動けない。

彼が必死に打開策を考えていた時――思わぬ助っ人が場に駆けつけてくる。

「危ねぇですよ。どいてくだせぇ」

「ん? って、ギャァァァ!?」

「えっ!?」

 ハンターの背後に近づいてきたのは、小型のゴーカート。気の抜けた声と共に、ためらいなく突進してきた。

 衝突してしまった彼は悲鳴と共にスイッチを手放して、ゴーカートに乗っていた男が代わりにそれを入手する。

「よっと。何か来やしたね」

「あ、あなたは……」

「お、沖田さん!?」

 そう、運転手の正体はパトロール中の沖田総悟だった。土方とハンターを探す道中にて、キリトらの姿を見かけてここまで来たと言う。

 意外な人物の登場に、五人はただ驚くしかない。対照的に沖田は、何食わぬ顔のままゴーカートを降りて、立ち止まるキリトへ話しかけてくる。

「なんでい。やっぱりお前等も来てたんですかい?」

「あぁ。ていうか、沖田さんはなんでここに?」

「たまたまですよ。パトロール中にお前等を見かけたんでねぇ」

「パ、パトロール中……?」

 一瞬耳を疑ったキリトだったが、沖田の性格を踏まえると妙に納得してしまう。

 一方で網に囚われている神楽達も、沖田の登場には多少なり反応を示している。

「なんでアイツ、急に駆けつけたアルか?」

「しかもゴーカートって……」

「意外な登場よね」

「本当にパトロールしていたんでしょうか……」

 ユイに至っては、沖田の言葉をまるっきり信じていなかったが。そう反応を交わすうちに、吹き飛ばされていたハンターはようやく起き上がってくる。

「おのれ、許さんぞ!! ハァァ!」

 彼は逆上すると共に、隠し持っていたトンファーを手にして、沖田やキリトへと襲い掛かっていく。

「おっと、まだ立ち上がるんですかい」

「沖田さん! ここは俺達で一緒に!」

「まぁ、一緒に仕留めやすか」

 ハンターのしぶとさに辟易としながらも、ここはキリトと沖田の二人で対処することにする。互いに長剣や刀を引き抜いたところで、

「ハァァ!!」

「ハッ、トウ!」

「セイ」

「何!?」

ハンターの突進を素早く回避して、キリトは前方側に、沖田は後方側へとハンターを挟み込んでいく。そして、

「しめぇですよ」

「これでも食らえ!」

「ん!? ブホォ!?」

遠慮はせずに渾身の一撃を同時に与えていた。沖田は背後の背中を一直線上に描き、キリトは真正面から交差するように切り裂いていく。

 相手にはダメージと共に、着ていた迷彩服やトンファーも半壊するほどに破かれてしまった。

「おのれ……幕府の犬め!」

 攻撃のショックから戦意を喪失した彼は、捨て台詞を吐いてそのまま倒れ込んでしまう。強面な見た目や高圧的な態度に対して、何とも呆気ないハンターの末路である。

「ヤレヤレ。思ったよりも呆気なかったですねぇ」

「でも、すぐに済んで良かったけどな」

「そうですねぇ」

 戦いを終えた両者は余裕気味に呟き、互いの健闘をたたえていた。協力したことに関しては、満更でもなく感じている。

 そっと言葉を交わした後に、沖田は気絶するハンターへ近づいて、両手首と両足を手錠で拘束していた。起きたとしても逃げられないように細工している。

 それが終わると二人は、網に捕まる仲間の元へと戻っていた。

「みんな、大丈夫だったか?」

「えぇ、平気よ。ちょっと痺れるくらいだったけど」

「所詮はただのハッタリネ! さぁ、私達を助けるヨロシ!」

 網に痺れたのは一回限りであり、仲間の様子にも変わりは無い。元気そうな素振りを見せると、神楽は沖田らに向かって命令気味に指示している。妙に鼻につく口調だが、沖田は怯まずに堂々と歯向かってきた。

「助ける? あぁーそんな言葉遣いで良いんですかい?」

「はぁ?」

「そこは丁寧な言葉遣いにしてくだせぇよ。なんせ今、スイッチを持っているのは俺ですからねぇ……」

 彼は悪そうな笑みを浮かべて、神楽にハンターから盗んだスイッチを見せびらかす。ほぼ脅しとも言える高圧的な態度からも、素直に応じないのは間違いなかった。

 神楽もこれには、あっという間に怒りが心頭してしまう。

「てめぇ!! 煽るのもいい加減にしろアル!!」

「落ち着いてください、神楽さん!」

「沖田さんの挑発にまんまと乗っているから!」

「うるせぇ! あのドSの言いなりになんか絶対ならないアル!!」

 彼女は怒りに満ちた表情で、沖田へ感情のままに文句をぶつけていく。手を出そうにも網で動けない為、痒い所に手が届かない状態である。網は激しく揺れており、ブランコのように前後へ大きく動き始めたところで、

〈プツン!〉

「えっ、うわぁぁ!?」

「キャ!?」

重みに耐えられなくなった網が木からほどけてしまった。四人は多少痛みを覚えながらも、無事に地上へと解放されている。

「モコ!?」

「えっ、途切れた!?」

「でしょうね。チャイナ娘の馬鹿力があれば、すぐに解けやすからね」

「って、沖田さんはそれを見越して神楽を煽ったのか?」

「さぁ、どうでしょうね」

 意味深にも含みを持たせた沖田だが、この時のキリトは妙に彼の考えを察していた。計算高くも本当は、良心的な人ではないのかと。

 そんな淡い期待は、真っ先に崩れ去ることになったが。

「フハハ! これで遠慮なく、オメェと戦うことが出来るアルナ!」

「ほぉー、やる気みたいですねぇ。いっちょこの場で、蹴りでも付けやすかい?」

「上等アル! 今度はテメェが木に吊るされる番アルよ!」

 網の呪縛から解放された神楽は、早速散々挑発してきた沖田に勝負を申し出ている。互いに相手を見下すような表情を浮かべて、勝負への熱意を脈々と燃やしていた。彼の悪びれなく堂々とした素振りは、良心的な性格とは正反対だとキリトは悟っている。

(やっぱり一筋縄では行かない人だな……)

 ついつい表情も苦く変わってしまう。

「って、神楽ちゃんに沖田さんも喧嘩は止めてよ!!」

「アンタ達がこの場で戦ったら駄目だから! いいから落ち着いてください!!」

 二人のバチバチとした雰囲気を止めるべく、抑え役として新八とアスナが止めに入っている。事態を長引かせずに、必死になって沖田や神楽を説得していた。

 一方のユイは、キリトの元に単身で駆け寄っている。

「相変わらず二人は犬猿の仲ですね」

「喧嘩していても、相性は良い方だと思うけどな」

「ですね! そう言えば、猫さんはどうでしたか?」

「あぁ、特に変わりは無いよ。怪我もしてないみたいだし」

「それは良かったですね!」

「モコ―!」

 保護した猫にも変化はなく、共にほっと一安心していた。すぐにもこの吉報を銀時らに届けたいところだが、今は二人の言い争いが落ち着くまで待つしかない。

「こうなったら、ゴーカートで勝負しやすかい?」

「乗ったネ! 必ず一番乗りは私アル!」

「だから沖田さんはむやみに煽らないでって!」

「とりあえず、戻りましょうって!」

「……まだ続きそうかな?」

「そうですね」

 

 

 

 

 

 そして銀時らの方も、事態は急展開を迎えている。折角見つけた最後の一匹を、動物ハンターに略奪されてしまい、現在はその相手を必死に追跡していた。(銀時や土方は走りであるが、シリカやシノンは羽を広げて、飛行浮遊しながら追いかけている)

「待て、コノヤロー!!」

「逃がすかぁぁあ!!」

 血相をかいた表情で足を走らせる男性陣と、

「猫を返してください!!」

「いい加減、止まりなさい!!」

大声で相手をけん制する飛行中の女子陣。共に目的が一致している為、隊列を乱さずに突き進んでいた。

 それでも、ゴーカートに乗るハンターとは中々距離を縮められない。

「ハハ―! 追い付けるかよ、このスピードに!」

 調子に乗った彼は、さらにスピードを上げて銀時らの追っ手を撒こうとしている。人通りが少ないエリアに逃げ込み、遊園地からも脱出しようと企てていた。

 相手に追いつくことが出来ず、銀時ら四人も苦戦を強いられている。

「おい、中々距離が縮まらねぇぞ!!」

「あのスピード、絶対改造しているだろ!」

 銀時や土方は走りながら、高らかに文句を発していた。このまま追い抜くことは無謀だと察した彼らは、別の方法でハンターを捕まえる策を思いつく。

「こうなったら……タイヤを壊すしか無いわね!」

「おっ、その手しかねぇな! だったらオメェら、耳を貸せ!」

「ぎ、銀時さん? もう考えが浮かんだんですか!?」

 シノンからの提案で、ゴーカートのタイヤを破壊することに決めた一行。瞬く間に銀時はとある作戦を思いつき、仲間達へその手順を説明している。

 それを聞いた一行は二手に分かれて、銀時と土方は先回りが出来る裏口方面へ。シリカとシノンは引き続き、上空からハンターを追っていた。

「どうやら撒いたようだな。随分と呆気なかったぜ!」

 一方のハンターはというと、すっかり勝利の余韻に浸っている。捕獲した猫を抑え込みながら、狸の皮算用のように早くもその後の妄想に腑抜けていた。

「さぁ、Tよ待っていろ! このままこの遊園地ともおさらばして……」

 警戒心も薄れて、油断をしていた直後である。

「それはどうかしら?」

 ちょうど上空には、ハンターに追いついたシノンとシリカが浮遊していた。とっくに追い越した二人は、共に弓やダガーと言った武器を手にしている。そして、

「ハー!」

真っ先にシノンが先端の尖った普通の弓矢を発射してきた。

〈シュ―、プス!〉

「えっ!? って、うわぁぁぁなんだ!?」

 彼女達の気配に気付かず、弓矢は何事も無くゴーカートの後方のタイヤに刺さっている。当然空気は抜けていき、次第にゴーカートの速度は徐々に下がっていく。

「今よ、シリカ!」

「はいです、シノンさん!」

 だが彼女達の作戦はまだ終わらない。今度はシリカが最高速度でゴーカートに近づいて、もう片方のタイヤを自慢のダガー裁きで引き裂いていた。

「はぁぁぁ!」

「ぐわぁ、またか!?」

 またも空気が抜かれてしまい、徐々に制御不能に陥るゴーカート。ここでようやくハンターは、仕掛けた犯人が女子達だと把握していた。

「おのれ……あの猫耳娘共め!」

 奇襲を受けて悔しさを前面に出すが、それでもなお止まることは無い。無理にでも操作しようとした時、彼の目の前にはさらなる脅威が立ちはだかる。

「銀時さん! 土方さん! 今です!」

「後はもう思いっきりやっちゃって!」

「何!? いつの間に!?」

 すかさず前を見るとそこには、木刀や刀を構えた銀時と土方の姿が見えていた。彼らも全力疾走で先回りして、タイヤを破壊しようと懸命になっている。

 ただ先を急ぎすぎたのか、両者共に若干だが息切れしていた。

「はぁ……何とか追い越したな」

「何息切れしてんだよ……はぁ。さっさと態勢を立て直せ」

「うるせぇ! ただ深呼吸していただけだ! そういうお前も息切れすんなよ」

「はぁ!? そんな訳ないだろ、俺だって深呼吸して――」

「そんな喧嘩、どうでもいいですから!」

「さっさと猫を救出しなさいよ!!」

 ハンターが迫る最中でも、二人は見栄を張って、作戦そっちのけで口論を展開している。あまりの緊迫感の無さに、上空から見ていたシリカやシノンからもツッコミを入れられてしまった。

「おっと、そうだった。そんじゃ行くぞ、息切れ副長!」

「指図すんなよ! 息切れニート!」

 それでも二人はすぐに態勢を立て直していく。互いに軽口を叩きあい、操縦不能のゴーカートへと向かっている。

「させるかぁぁ!」

 ハンターは力尽くで避けようとするも、時すでに遅かった。銀時と土方は狙い通りに近づくと、前方部分のタイヤを勢いよく突き刺していく。

「はぁぁぁ!!」

「せいやぁぁ!!」

「な、何!?」

 するとどうだろうか。タイヤに入っていた空気は見る見るうちに無くなり、ゴーカードの速度も失速する一方である。ここまで破壊されると、ハンターにとっては何をしようと無意味だった。そして行動不能に陥ったところで、

「お疲れさんでした!」

「あばよ、三流ゲストキャラ!」

「ブハァァァ!!」

銀時ら二人の力を込めた拳が、彼の顔面にくらわされる。その反動によってハンターは気を失い、抱えていた猫も手放してしまった。相方に引き続き、こちらも呆気の無い顛末を迎えている。

「モ、モコ―!」

「よしよし、もう大丈夫だぞー。お仲間もここにいるからな」

 ようやくハンターから解放された猫は、救い出してくれた銀時に人懐っこく抱きついてきた。彼の懐に隠れていた猫の存在を知り、より嬉しさを露わにしている。

「ったく、手こずらせやがって。後できっちりと吐いてもらうからな」

 一方の土方は小言を吐きながら、ハンターの手首を手錠で拘束していた。逃げられないようにした上で、屯所へと連行する予定である。

 銀時の功を奏した作戦により、場の空気は達成感に満ち溢れていた。とそこへ、ようやく女子達も羽を閉じて地上に戻ってきている。

「やったわね! 銀さんに土方さん!」

「無事に猫を保護出来て良かったですよ!」

「あぁーそうだな。オメェらも援護ありがとよ」

「いえ、アレくらい大したことないですから!」

 彼女達も猫を奪還出来たことには、嬉しく感じていた。同時に作戦へ役立てたことにも、誇らしく思っている。

「銀さんや土方さんも、たまにはかっこいいところがあるのね」

「たまにはは余計だよ! いっつもかっこいいだろ!」

「さぁ、それはどうでしょう? フフ……」

「さり気なく失笑するなよ! そんなに可笑しいこと言ったか、俺!?」

 相変わらずの彼の強気な態度には、思わず失笑していたが。だがしかし、内心では態度には見せない密かな想いがあった。

(でも、頼りにしているのは事実ですよ)

(少し情けない人だけど、素直に信じられるのよね。銀さんって)

 決して一言では言い表せない、確かな信頼性が銀時にはある。今回の一件も含めて、より彼のことを大人として見直していた。

 銀時はそれに気付かないまま、ただツッコミを入れ続けている。

「何をアイツは、ムキになったままなんだよ」

 事情を知らない土方からすれば、まったくもって分かっていない。

 そんな温かな雰囲気が続く中で、タイミングよく仲間達も合流してきた。

「おーい、銀さん!」

「ここにいたのねー!」

「あっ、オメェら。その猫って……!」

「しっかりと保護しましたよ!」

「色々と苦労したけどナ!」

 森での一件を終えたキリトら五人達もやって来て、早速銀時らに保護した猫を見せびらかしていく。

「モコ―!」

「「「「モコココ!!」」」」

 迷子だった猫達は全て集結して、再会を喜んでじゃれ合っている。念願が叶った合流は、猫達のみならず銀時達にも喜びを与えていた。

「ってことは、これで本当に全匹揃ったのね」

「ようやくかよー。あぁーやっと終わったー!」

「これで気兼ねなく、遊園地を遊べます……!」

 長く時間がかかった依頼が達成されて、ようやく一安心する三人。大きく深呼吸をして、再び達成感に酔いしれていく。

「お疲れ様ね、みんな!」

「よく頑張ったと思うよ」

 彼らの頑張りを祝して、アスナやキリトも優しく労いの言葉をかけている。これだけでも、三人にとっては十分なご褒美であった。

 一方でキリトらにさり気なくついてきた沖田は、ゴーカートから降りると真っ先に土方へと話しかけてくる。

「ここにいたんですかい、土方さぁん。探しやしたよ。こっちはハンターを捕まえたのに、どこで油を売ってたんですかい?」

「それはこっちの台詞だ。つーかお前も、どこに行ってんだよ? 俺もとっくにハンターなら捕まえてんぞ」

「あらま。そうでしたかい? そんじゃさっさと、屯所に戻りやしょうや。もちろん俺の手柄ってことで」

「はぁ、ふざけんな! 一人ずつで良いだろうが!! 俺の努力を無駄に済んじゃねぇよ!」

 こちらも相変わらずの手慣れた反応であった。互いの手柄をまったく認めず、仕舞いには沖田の口調に土方はまんまと乗せられている。

「冗談ですよ。本気にしないでくだせぇ」

「ったく。お前よ……」

 冗談だと分かっても、彼の不満そうな表情は続いていた。対して沖田の、ぶっきらぼうな姿勢も変わっていない。それでもハンターを検挙したことは、素直に嬉しく思っているはずだが……

 すると沖田は一度場を離れて、銀時から奪った物を一式返却していく。

「あっ、そういえば旦那。預かったもん返しやすよ。ほら」

「預かったもんって、オメェから盗んだんじゃねぇかよ!」

「まぁまぁ、落ち着いてくだせぇ。その分増量しておいたんで、後はもうチャラってことで」

「からあ〇君みたいに片づけるなよ! ったく、そんなことしても嬉しくねぇんだよ!」

 シリカらを酔わせた隙に奪った菓子類を手渡していた。彼曰く詫びとして増量したらしいが、正直そこまで嬉しくない。グダグダと文句を言いつつも、銀時はすぐに懐へ菓子を戻していた。

「フッ、上手くいくと良いですねぇ」

「あん、何か言ったか?」

「いいや、別に」

 その途端に沖田は、小言で意味深な一言を発している。幸いにも銀時には勘付かれていないが、何を仕掛けたのだろうか? このまま彼は特に目立ったことは言わず、土方の元まで戻っていた。

「そんじゃ、土方さん。まずはゴーカートのおっちゃんに謝りに行きましょうよ」

「そうだな……てかなんでお前は、ゴーカートに乗っていたんだよ?」

「ただの気分ですよ、さぁ行きましょう」

「って、おい!! 俺を置いていくなよ!! ついでにハンターまで置いていきやがってよ!! 待てや、コラァ!」

 今後の予定を把握した後に、沖田は一人ゴーカートに乗って、土方と気絶中のハンターを置いてきてしまう。仕方なく彼は両者を抱きかかえて、沖田のゴーカートに追いつこうとしている。すると彼は最後に、銀時らに向かい一言だけ伝えていた。

「とりあえず、協力した事だけは感謝しているぞ。後、万事屋! あの事だけはあんまり広めんなよ!」

「分かっているよ。だからさっさと行けよ、V字ハゲ」

「うるせぇ! 天パに言われたくねぇわ!」

 結局は最後まで文句をぶつけるだけで、土方はどさくさと場を跡にしている。締まりの悪い真選組との去り際であった。

「じゃあな! マヨラーにドS!! ……ふぅ。ようやく帰ったアルナ」

「変なモンに巻き込みやがってよ、あいつ等」

「まぁまぁ、銀さん。とりあえず依頼も終わりましたし、後はもうみんなで遊園地を楽しみましょうよ!」

 大きな依頼も解決して、枷の無くなった万事屋一行と女子達は、いよいよ待ちに待った遊園地巡りを再開させる。保護した宇宙猫も連れながら、閉園時間まで有意義に楽しむそうだ。

「そうね! それじゃ、再開ついでにどこから行きましょうか?」

 アスナがそう問いかけると、そっとシリカが提案している。

「あの、人数を分けて観覧車はどうですか?」

「観覧車ですか。まだ行ったことが無いので、良いかもしれませんね」

「それじゃ、みんなで乗ってみるか」

「そうアルナ。みんな、ついて来ヨロシ!」

 彼女の一言によって、一行は観覧車へと向かうことにした。もちろんシリカらの狙いは、キリトと一緒に観覧車へ搭乗することである。

「上手くいくと良いですね」

「密室で仲良く話したいわね」

「おーい。願望だだ漏れだぞ」

 まだ確定はしていないが、シノンらは彼との楽しい一時を妄想していた。広大な景色を見ながら、楽しく駄弁っていたい。浮かれた表情で期待値を高めていく――

 

 

 

 

 ところがどっこい。そんな期待は簡単に打ち砕かれてしまった。

「……いや、なんで銀時さんなの?」

「お前等がじゃんけんで負けたからだろうが」

 観覧車に乗った二人の目の前にいるのは、見慣れた銀髪パーマの坂田銀時。彼女達は惜しくもチーム決めのじゃんけんに敗れてしまい、折角のチャンスを無駄にしてしまった。

 手前に見える観覧車には、キリト、アスナ、新八、神楽、ユイの五人が景色を見ながら、おしゃべりを続けている。対してこちらは、銀時、シリカ、シノン、ソリートの飼い猫達と数分前とほぼ見慣れた光景であった。

今回ばかりは女子達も、あまりの引きの悪さに失望してしまう。

「本当はキリトさん達と一緒に乗りたかったのに……」

「はぁー。残念だわ……」

「いや、がっかりしすぎだろうが! そんなに俺じゃ不満かよ!」

 大きなため息を吐く彼女達に、つい銀時も大声でツッコミを繰り出す。ずるずると結果を引きずっているようにも見えるが……実はそこまで深くは思っていない。

「いや、案外そうでもないけどね」

「はい? つまりどういう事だよ?」

 突然顔を上げると同時に、シリカやシノンは銀時に対して、率直な気持ちを伝えていた。

「今回ばかりは、このメンバーで乗るのも悪くないってことよ」

「一緒に猫探しをした仮万事屋ですもんね! アタシ達!」

 そう言って二人は、そっと微笑みを浮かべている。猫探しを通じて芽生えた信頼を、不器用ながら彼へと伝えていた。

 二人の温かな笑顔に触れて、銀時自身もその気持ちを悟っていく。

「お前等……まぁ俺も同じだな。手伝ってくれて、どうもありがとさん」

「どういたしまして!」

「こちらこそありがとうです!」

「モココ!」

 穏やかにも平和な雰囲気につられて、猫達もまた元気よく鳴き声を上げている。昼下がりの青空を窓から眺めながら、三人はゆったりとした安らぎの一時を過ごしていた。

「そんじゃ菓子でも食うか? 小腹も空いたし、ちょうど良い頃合いだろ」

「それはいいわね」

「是非もらいたいです」

 すると銀時は思い付きで、沖田から返却した菓子類を取り出していく。箱詰めされたチョコ類やキャラメルを取り出し、女子達や猫におすそ分けしようとしていた。

 何のためらいもなく箱を空けると、そこには一枚の紙が封入されている。

「あん、なんだコレ?」

 手にして見開くとそこには、沖田からのメッセージが書かれていた。

『旦那へ。お菓子増量の件ですが、アレは嘘ですよ。本当に入っているのは――』

 とその刹那である。

〈ボフゥ!!〉

「な、なんだ!?」

 何の前触れもなくお菓子が爆発して、辺り一面に黄色い粉がばらまかれていく。そして手紙には最後、こう書かれていた。

『マタタビ爆弾でさぁ』

「はぁ、えっ!? てことはまさか……」

 そう。彼の言う通り、この粉の正体は猫を酔わせるマタタビである。運が悪く個室で爆発してしまい、それを浴びたシリカ、シノン、宇宙猫達はもちろん……

「ニャフフー! 銀時しゃ~ん!」

「またテンションが上がってきちゃいました~!!」

「モキョー!!」

思いっきり酔いが体に回ってしまった。銀時を除く全員が顔を赤くしており、女子達は爪を光らせて、猫達は牙を剝き出しにして、ただ一人困惑する彼に狙いを付けている。無意識のままに、襲い掛かろうとしていたのだ。

「ま、マジかよ……落ち着けお前等! さっきまでの感動的な流れでいいだろ! こんな蛇足展開、誰も喜ぶわけが……」

 落ち着かせようと説得する彼だが、何を言われようとも彼女達は止まらない。

「銀時しゃ~ん!!」

「覚悟―!!」

「ギャャャ! こんなオチかよぉぉ!」

 酔った勢いのままに、銀時をサンドバックのように攻撃してしまう。女子達は爪で体をひっかき、猫達は牙であちこちに噛みついていく。地上へと戻るまでに、彼はこの苦痛に耐えなければいけなかった……

 もちろんキリト達は、一斉この状況に気が付いていない。

「おっ! あっちも話が盛り上がっているな」

「でもなんかやけに激しくない?」

「何かあったのでしょうか?」

「まぁまぁ、気にするなアル。どうせ銀ちゃんが失言して、シッリーとシノにボコボコにされてるだけアルよ」

「それもそうね」

 神楽らは呑気にも制裁を受けていると勘違いしたが、新八だけは薄っすらとその変化を察している。

「いや、なんか違くね?」

 結局五人が真実に気付いたのは、地上に戻ってきた時だった。またも仲間達の手を借りて、女子達や猫を元通りにしたという。

その後も遊園地を巡っていたが、銀時が受けた爪痕や噛みつき痕は残ったままであった……




おまけ・ソリートと猫達の再開
ソリート「ありがとうございました! 全員分、見つけていただいて!」
シリカ「……は、はい」
シノン「どういたしまして……」
ソリート「えっ? なんでそんなに落ち込んでいるのですか? それに、銀時さんのその傷は?」
銀時「姫様。察してやってくれ……」

※沖田が仕掛けた爪痕は大きい。銀時に残った爪痕のように。
銀時「いや、上手くねぇよ。勝手に締めるな」





 結果四訓にまで渡った遊園地篇はいかがだったでしょうか? 結局良い雰囲気のままでは終わらせてくれないのが、銀魂らしく思います(笑)
 個人的な意見ですが、ノートに書いたものをパソコンで打つと、自然と文体が増えてしまいます。まさか一ヵ月も続くなんて、自分でも思っていませんでした……

 さて、肝心の次回投稿ですが……実はクラインと桂の出番が本章だと少ないので、もう一訓だけ日常回をやります。七月から再三言っていた長篇は、九月の下旬(最低でも十月中)には投稿出来るので、暫しの間お待ちください。

 そしてちょっとしたご報告です。過去に投稿した話にて、キリトのリーファの呼び方を「スグ」に変更しました。ALOなどのゲーム内だと呼び方に違和感が無いのですが、剣魂では日常での場面が多いので、普段現実で呼んでいる呼び方の方が良いと個人的に思ったからです。ご了承ください。

次回予告
クライン「という訳で次回は俺達攘夷党が主役だぜ!」
山崎「いや、待ってください! 久々に俺の出番ですから、枠を取らないでくださいよ!」
クライン「てか、誰だっけアンタ?」
山崎「山崎退ですよ! 一回会ったことあるでしょうが!」
銀時「ちなみに剣魂での前回の登場は、第二十一訓らしいぞ」
山崎「そんなプチ情報はいいですから!!」
桂「次回! 色恋沙汰は長引かせるなだ! この俺桂小太郎が、クライン殿のコーチを務めるぞ!!」
山崎「アレ? この話、俺の出番本当にある?」
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