剣魂    作:トライアル

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 全然SAOの最終回に完成が間に合わなかった……とりあえず今回で第四章は最後です。それではご覧ください。





何故最近桂の出番が少なかったのか?

桂「所沢の病院でずっとスタンバっていたからだ!」
銀時「いや、なんでお前がそこにいるんだよ!! SAOの現実世界に介入してくるんじゃねぇよ!!」
桂「心配するな。ソーシャルディスタンスを保ち、画面には映らないようにしておいたぞ!」
銀時「マジでねつ造するな! 読者が勘違いするだろうが!!」

※一期にてアスナが入院した病院です。ちなみに本当の原因は、本編中に明かされます。


第六十四訓 色恋沙汰は長引かせるな

「やい、銀さん!! この俺と決闘で勝負しろ!!」

「……はぁ?」

 昼下がりの万事屋にて、突如申し込まれたクラインからの挑戦状。思いもしない提案に、銀時だけではなく場にいた全員が驚嘆している。

「ク、クラインさんが決闘ですか?」

「急に来たと思ったら、いきなり何を言い出すんだ……」

 長い付き合いであるユイやキリトも、今回ばかりは彼の意図をまったく読めていない。一方の銀時は、何食わぬ顔で淡々と接していく。

「どうしたんだ、お前? アンダーワールドに行ったついでに、頭がおかしくなったのか?」

「いや、時系列的にまだ行っていませんよ!」

「それはともかく、何でクラは銀ちゃんと戦いたいアルか?」

「またウチの銀さんがやらかしたの?」

「いや、やらかした覚えは無ぇよ!」

 女子達も話に加わるも、彼の日頃の行いから悲観的にしか考えていない。銀時もムキになって否定している。

 しかし……クライン本人には、決闘までに至った経緯があった。

「いいや、そんなことは無いぜ! 思い出してみろよ、三週間前のことを!」

「三週間前? 何かあったか?」

 彼の言われた通り、銀時は三週間前の出来事を思い起こしていく。クラインとの思い出で浮かんだのは、親しい友人と集まった飲み会であった……

 

 

 

 

 

 

 時は八月の下旬頃。夜を迎えたスナックお登勢には、銀時と長谷川が酒を飲みに来店していた。戸を開けて店内に入ると、そこで目にしたのは珍しい光景である。

「あぁー……俺はなんて見る目がない男なんだよ」

「そう気を落とさないでください、クライン様。人生に失敗は付き物ですから」

 ソファーに座っていたのは、落ち込んでいるクラインと彼を励ますたまの姿。前者はずっと顔を俯かせており、対して後者は無表情のまま優しく宥めている。

 見るからに訳ありな雰囲気を漂わせていた。

「珍しいな。たまとクラインが会話しているなんてよ」

「一体何があったんだよ?」

 状況をまったく知らない銀時らは、すかさずキャサリンやエギルに理由を聞いてみる。

「イワバ悪イ女ニ引ッカカッタンデスヨ」

「何でもアイツ曰く、ナンパでお近づきになった彼女が、約二十五人も股をかけていてな。それがバレて別れてから、ずっとショックを引きずっているんだってよ」

「二十五人!? どんだけ欲張りな女なんだよ? ヤ〇マ〇にも程があるだろうが!!」

 突拍子も無い返答に、銀時のツッコミも激しく決まる。エギル達の話によると、好意を寄せていた女性の本性が明るみになり、クラインは心に深い傷を負わされたという。まんじりとも気持ちの整理が付かず、今はたまを介してずっと愚痴を吐いていた。

 この不幸話には、お登勢もつい同情を寄せてしまう。

「つくづくあの男は、女運に恵まれないからねぇ。そろそろ運命の女が、すり寄っても良いと思うんだが」

 これまでの失恋話を理解した上で、せめて幸せになって欲しいと思うばかりである。

「運命の女ねぇ……アイツとウマが合う奴なんているか?」

「少なくとも、俺らの知り合いにはいないよな」

 だからこそ気の合う女性がいれば良いが――残念なことに銀時らに思い当たる節がない。妙や九兵衛と言った一癖も二癖もある女性ばかりで、彼との相性は悪いと勘ぐっていた。

 一方でクラインの愚痴話は未だに続いている。

「折角上手くいくと思ったのに……思えば料理も美味しかったな」

「そうですか。料理までご馳走になったんですね」

「あぁ、まだ味は鮮明に覚えているよ。タバスコとデスソースを絡めたお手製のカレーパン……こうも舌に残る辛い感触は、彼女への未練だろうな」

「いや、未練なんかじゃねぇよ。つーか、絶対その組み合わせは嫌がらせだろうが!」

 どうやら手作り料理に思い入れがあるようだが、傍から見れば愛情もへったくれもない。誤った解釈をしている彼に、銀時はまたもツッコミで返していた。純粋なのか馬鹿なのか、もはやその線引きすら難しい。

 皆がクラインの未練に気を引かせる一方で、たまだけはこの話を機にある作戦を思いついている。

「カレーパンですか……ちょっと待っていてもらえますか?」

「たまさん!? どこへ行くんだ!?」

 突然ソファーから立ち上がって、彼女は店の裏口へと入っていく。そこから聞こえてきたのは、

「オェェェ! ブウォ!!」

「だ、大丈夫かよ!? たまさん!?」

意味深な嗚咽音である。苦しんでいるようにも聞こえており、クラインは思わずたまの心配をしてしまう。だが彼を除く全員は、たまの行動を把握していた。

「おいおい、まさかアレって」

「また始まったか」

「無茶なんかして……」

「って、みんなは知っているのか!? 一体何が起きてんだ!?」

 銀時、長谷川、エギル共に、渋い顔を浮かべている。彼らが察している通り、たまは自分なりの調理を行っていた。説明に時間がかかるので、クラインにはあえて事実を伝えていないが。

 すると数分も経たないうちに、たまは表の方へ戻ってきた。手にした皿には、茶色いパンのような料理が乗っかっている。

「クライン様……出来ました。私の作ったカレーパンです」

「えっ!? 俺の為に作ってくれたのか……」

「少しでも元気が出ればと思い……さぁ、どうぞ」

 その正体はカレーパンであった。少しでも元気づけようと、彼女なりの優しさをプレゼントしている。ちょっとした無理を負っても、クラインの気持ちを優先にしていた。

 たまからの粋な計らいに彼は、有り難く感じている。反射的にもカレーパンを手にすると、勢いよくそれを頬張り始めていた。

〈サクッ!〉

「お、おいしいぞコレ!? あの子のカレーパンとは偉い違いだ!」

「だろうな。デスソースが入ってないからよ」

 その美味しさはすぐに伝わったようで、いつの間にかテンションも元に戻り、このままカレーパンを食べ進めていく。銀時の皮肉も気にとめず、あっという間に完食してしまった。

「いやー、上手かったぜ! ご馳走してくれてありがとうよ!」

「いえいえ。元気が戻ったなら何よりです。前を向いている方が、クライン様らしく思いますよ」

「た、たまさん……!」

「辛い事もありますが、これからも頑張ってください」

 立ち直った姿を見ると、たまもつられて微笑みを浮かべている。クラインの気持ちを後押し出来て、役立てたことに達成感を覚えていた。

 そしてクラインの方では、平常心と共に別の想いが芽生えている。

(なんで健気な笑顔なんだ……無理をしてまで俺を元気にしてくれて。こんな優しい子が俺の彼女だったら……いや、たまさんこそが運命の相手じゃ!?)

 自分の気持ちを真正面から受け止めるたまの姿勢に感化されて、より彼女の魅力に惹かれていた。気が付くと彼の心は、たまへの興味で埋め尽くされている。次第に彼女の見方を変えて、真っ先にある決意を固めていた。

「どうかしましたか、クライン様?」

「いや、その……たまさん!」

 たまとの目線や顔を自身に合わせると、彼は思い切った気持ちを伝えていく。

「俺はアンタに一目惚れした! 是非俺と付き合ってください!!」

「ん?」

「えっ!?」

「はぁ!?」

 まさかの一目惚れからの告白であった。顔を真っ赤にしながら、たまにありったけの想いを伝えている。肝心の彼女は意味を理解していないが。

 この急転直下な変わり様には、たまを除く全員が激しく驚嘆していた。

「おい、ちょっと待てお前! 切り替え早すぎだろうが!! 迷いなく告白するなよ!?」

「一回冷静になれって! たまさんも困っているから!!」

 今までツッコミを入れていた銀時のみならず、長谷川さえもこの展開に衝撃を隠せていない。共に血相をかいた表情となっている。

「まさかの展開だねぇ。たまに惚れるとは……」

「アイツ。たまさんがロボットだってことを、分かって告白したのか?」

「絶対勢イ任セデスヨ。後先考エテナイ人ニ決マッテマス」

 お登勢、エギル、キャサリンの三人も、落ち着いてはいるものの、クラインの告白には難色を示していた。たまとの関わりが深いからこそ、恋愛絡みでは難しいと予見している。

 そして告白した本人は、周りから何を言われても自分の想いを変えることは無かった。

「いいや、銀さんに長谷川さん! 俺はもう心に決めたんだ! たまさんと俺なら、最高のベストマッチになれるって!」

「いや、何言ってんだよオメェ! さり気なくボケんじゃねぇよ!」

「さぁ、たまさん! 恋にロボットも人間も関係ない! 俺の気持ちを受け取ってくれ!」

「関係あるから! もっと深く考えた方が良いからさ!」

 勢いに乗ったまま求愛しており、たまへ返答を催促していく。男らしい一直線な姿勢に、彼女の反応はというと――

「すいません。ちょっと何を言っているのか分からないので、とりあえず却下させていただきます」

「えっ、マジかよ!?」

「だろうな。それ以外にどんな返答があるんだよ」

あっさりと断っていた。無表情のまま、適当に話を逸らしている。たまの対応には、クラインを除く全員が一安心していた。本人は納得していない様子であるが。

「……じゃあさ! たまさんはどんな人が好きなんだよ!?」

 彼は厚かましくも、たまの好みを続け様に聞いている。すると彼女は、淡々と返答を告げていく。

「好きですか? やはり銀時様やお登勢様のような、強くて頼もしい大人でしょうか? 彼らの行動力には、今でも学ばせられます。私にとっては憧れの人なのです」

「強くて頼もしい……」

 好きよりも、影響を受けた人物として銀時とお登勢を挙げている。さり気なく言った一言に、クラインはまたも違った解釈を広めてしまう。

「おっ、よくぞ言ったぜ! たまさん! もうそいつのことはいいから、早くビールを持ってきてくれよ!」

「了解しました、少々お待ちください。では、私はこの辺で失礼します」

 すると銀時は、タイミングを見計らいたまへ注文を促していく。この話を長続きさせず、クラインの熱意を冷まさせようとしていた。

 彼女も一旦場を離れたが、それでもクラインはある事が心に引っかかっている。

「たまさんの好きな人……」

「ん、どうしたクライン? まだ気にしてんのかよ。さっさと切り替えようぜ」

「そうそう。こういう時は飲むのが一番だ! 俺達の酒席に入って来いよ!」

「……あぁ、分かったぜ」

 まだ考えが定まらない中で、銀時や長谷川からは飲みに誘われていた。場の空気を読んで彼は、二人の元に合流している。一見すると、たまのことを諦めたようにも見えるが?

「本当に収まったのかねぇ」

「なんだか一波乱ありそうだな」

「絶対アリマスヨ」

 お登勢ら三人だけは、密かに嫌な予感を察していた。クラインの言動から、また違った解釈をしていると予見している。

 その後はおっさん三人で飲み続けて、べろんべろんに酔いまくっていた。気持ちの浮き沈みが激しかったクラインも、今では銀時や長谷川と共に大人の恋愛トークに花を咲かしている。

 こうしてこの日は、何事も無く飲み会を終えていた。

 

 

 

 

 

 

 そして話は現在へと戻る。

「って、ことが前にあっただろ!」

「あぁー思いだした! そんなことあったよな」

 回想を終えた銀時は、ようやくクラインとの一件を思い出していた。それに至る過程まで、彼が適宜補足を加えており、仲間達も断片的にクラインの心境を理解している。

「ていうか、クラインさん? アンタ、たまさんに告白したんですか!?」

「私達の知らない間に、そんなことがあったの?」

「オメェの頭、大丈夫アルか?」

 新八、アスナ、神楽と思ったことをそのまま発していく。やはりたまへの告白は衝撃的であり、思わず疑ってしまう始末である。驚嘆とした表情になる一行に対して、クラインは自信満々な態度で話を続けていく。

「大丈夫だよ! ていうか、ここからが本題だ。俺はたまさんの言う通り、強くて頼もしい男を目指した……そしてようやく、胸を張って言えるまでになったんだ! だから銀さんを倒して、俺は自分の強さを証明するんだ!!」

 会話を交わす中で彼は、たまから言われた言葉を大切にしていた。彼女の言う通り強くて頼もしい男になったと括り、代表として挙がった銀時に勝負を申し込んでいた。

 つまり男らしい強さを証明して、たまの心を突き動かすのが狙いらしい。何とも回りくどい作戦である。

「えっとつまり、クラインさんは銀時さんを一つの壁として捉えているんですね」

「だから決闘を申し込んで勝負か……まぁ、分からなくはない理屈だな」

「おい、納得するなよお前等! 俺は決闘なんて、めんどくさくてやりたくないんだよ!」

 それでも彼の不器用さを知るユイやキリトは、妙にこの作戦に納得してしまう。名指しされた銀時からすれば、迷惑も良いところだが。

 そう彼がイライラしていた時である。

「そう言うな、銀時。ここはクライン殿の依頼に応えてはくれぬか?」

「って……その声はヅラか!?」

 突如として聞こえてきたのは、聞き馴染みのある男性の声。皆がその正体に気付いた時、玄関側の戸からあの男達も駆けつけてきた。

「ヅラじゃない、立花桂兵衛だ!」

「なんで初っ端から変装してんだよ、お前等!?」

 現れたのは桂小太郎……ではなく、白いジャケットとズボンを身に付けた立花桂兵衛である。(要は変装した桂小太郎)

 さらに彼の後ろには、同じく変装したエリザベスもやって来ていた。彼の方は青いバンダナとジャケットを身にまとっている。

「桂さんにエリザベスさん?」

「随分と久しぶりね。てか、その格好は何?」

 気になったアスナが質問すると、彼はお馴染みの腕組みで淡々と返答していく。

「あぁ、これか。クライン殿の特訓に付き合うには、やはりこれに限ると思ってな。昭和に名を残した伝説のインストラクター、立花藤兵衛を模した服装だ!」

「思いっきり他者から借りているけど大丈夫か!?」

 やはり変装にはモデルがおり、桂兵衛は某特撮ヒーロー番組のおやっさんに扮して、特訓に付き合ったそうだ。だからどうしたと言う感は否めないが。

 いつものボケだと銀時らは察したが、ユイだけは別の部分が気になっている。

「昭和? あれでも、この世界の年号はまだ江戸では?」

「ユイ君、細かいことは気にするな。設定の無視は他作品でもざらにあるからな」

「いや、自ら公言しちゃっていいんですか?」

 素朴な疑問にも、桂兵衛は元も子もないことで返答した。思わず新八からもツッコミを入れてしまう。さらにそこへエリザベスも加わってきた。

[細かい事は気にするな! BY 霞のエリー]

「いや、気になりますよ! 何ですか霞のエリーって! 似合ってないですからね!」

 桂兵衛の援護と共に、変装の元ネタまで明かす根回しの良さである。(ちなみにエリザベスが変装している元ネタは、仮面ライダーBLACKRXに登場する霞のジョーだ)

「久しぶりに会ったけど、全然変わってない気がするな……」

「そりゃ、ヅラクラエリだからな。変わらずに悪化し続ける三人アルよ」

「悪化は言い過ぎじゃないかしら……」

 彼らの独特な雰囲気作りには、キリトやアスナも気が引けてしまう。改めて桂兵衛の個性に二人は圧倒されていた。

 それはさておき、インストラクターとなった彼は、銀時らに向かいクラインのこれまでの成果を主張していく。

「さて、俺からも言わしてもらおうか。この数週間の間、クライン殿は誰よりも頑張った方だと思うぞ」

「それ本当のことかよ?」

「あぁ。彼の本気を見て、俺達も手伝いたくなってな。本来であれば第五十六訓のトンキー篇と、第五十七訓のリズ君のプレゼント探し篇にも出演する予定だったが、それを全て蹴って特訓する時間に当てていたのだ」

「そんな裏話いらねぇんだよ! つーかお前等の出番、尺の都合で削ったって投稿者から聞いたぞ! 何を程よく改変してんだよ!」

 途中では、伝える必要性の無い裏話までこぼす始末である。逐一銀時がツッコミを入れて、軌道修正を図っていた。その後も話は続く。

「俺達の地獄のような特訓は今でも覚えているぞ……ジョギングにスクワットにメガドライブ、ギプス装着や剣術修行やメガドライブ、宇野や人生すごろくにメガドライブ。いやー我ながら辛い日々であった!」

「途中から遊びになってんじゃねぇか! つーかお前等、どんだけメガドライブしたいんだよ!」

 修行の苦労話を披露するつもりが、何故か途中から論点がずれてしまう。鍛錬よりもメガドライブを強調しているが、実はこれにもある秘密が隠れていた。

「勘違いするな。メガドライブと言っても、息抜き用のゲーム版と鍛錬に特化した修行版があるぞ」

「なんで二つに分かれてんだよ! つーか、修行版って何だ!?」

「何ぃ、簡単なことだ。霞のエリーが乗りこなすジープに追い回されて、強靭な精神力を鍛える修行さ」

「それ東映じゃなくて円谷の方だよ! せめて制作会社くらいは、ネタとして統一しとけや!」

 どうやらジープを使った鍛錬らしいが、その元ネタは円谷作品からである。統一性の無いボケネタに、銀時のツッコミも激しく決まっていた。

「とにかくだ! 俺達の地獄の特訓によって、クライン殿はさらなる強さを得たのだ!」

[新しいクライン君の誕生だ! ハッピーバース・デイ!]

「いや、それは平成のネタですから! どんだけブレてんだよ、アンタらは!」

 それでもクラインの成長だけは、より強調する桂兵衛達。何度ツッコミを入れられようが、その意志はまったく変わらない。

「だから銀時! 強くなったクライン殿と勝負をしろ!」

「必ず倒して、たまさんの心を射抜いてやるぜ!」

[さぁ、万事屋! 戦え……戦え!]

 成長した強さを証明する為にも、改めて銀時に決闘を申し込むクラインら三人。一歩も引はずに、勢いだけで結び付けようと目論んでいた。

 中々決闘を諦めない彼らに、万事屋一行も各々が思ったことを呟いている。

「そこまでして、銀さんと戦いたいの?」

「ここまで言われると、断りづらい気がします……」

「別に無視して良いんじゃないアルか?」

 アスナ、ユイ、神楽女子三人は、違いはあれど皆微妙な反応を見せていた。一方で新八らも、同じような不安を覚えている。

「どうします、銀さん?」

「多分クラインの事だから、すぐには諦めないと俺は思うが……」

 彼とは長い付き合いのキリトは、しぶとく諦めないと予見していた。いずれにしろ判断するのは、決闘を申し込まれた銀時だが。

「はぁ……しゃあねぇな。気乗りはしねぇが、やってみるか……」

 彼は勢いに押された形で、この決闘を引き受けることにした。クラインを説得しても無駄だと、察したからであろう。上手いこと願いが叶い、クラインや桂兵衛は思わずガッツポーズを見せている。

 こうして万事屋一行は桂兵衛達に連れられていき、決闘場所である川辺まで移動することになった。

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって、こちらは川辺に近いのどかな一本道。草木が生い茂る急斜面を抜けると、石で覆われている川辺に辿り着く。晴天に照らされた道筋には、散歩やジョギングを楽しむ者たちが行き交っていた。

 そんな活気が満ち溢れる散歩道に、たった一人だけ異様にテンションの低い男が買い物から帰路についている。

「ハァ……今日もあんぱんと牛乳だけ。先が思いやられるよ」

 露骨にため息と弱音を吐く彼の正体は、真選組の監察担当の山崎退であった。彼は副長の土方の指示で、とある指名手配犯の動向を監視している。

 任務を達成するまでは、決まりからあんぱんと牛乳しか口に出来ず、彼にとっては早く仕事を終えたいところである。しかし思う通りに上手くいかず、二週間分溜めていたストックも今日で尽きてしまった。その買い出しを終えても、気分は晴れないばかりである。

「早く犯人動いてくれないかな……たまさんとも最近会えてないし、全然良い事無いな」

 あんぱん等が詰められた紙袋を抱きかかえて、ぶつぶつと小声で文句を発していた。心なしか表情も暗くなる一方である。

 そんな荒み切っている彼の心を支えるのは、たまの存在だ。実を言うと山崎は、彼女に片思いを抱いている。以前にも監察の仕事をそっちのけに、たまへストーカーまがいの監視をした経験があった。

 是非とも彼女と会いたいところだが、今は任務を優先しなければならない。さっさと犯人の尻尾を捕まえないといけないのだが。

「何か面白いことがあればな……って、アレは?」

 そう気が重くなる山崎だったが、ふと視線を逸らすと、川辺に集まっている銀時ら万事屋を発見していた。彼らは決闘に向けて、今一度準備を固めている最中である。

「さぁ、銀さん! いよいよ覚悟は出来ているか!!」

「ハイハイ、出来ているよ。ったく、なんで俺がこんな面倒なことを――」

「おい、銀時ぃ! しっかり本気を出して戦えよ! クライン殿の為にも!」

「分かっているから!」

 適度に距離を離しながら、クラインは刀、銀時は木刀を手にしていた。自信満々の前者に対して、後者は未だにこの決闘に乗り気では無い。桂兵衛からも注意が飛び交う。

「旦那に妖精ゲーマー達!? なんでこの場所に集まっているんだ!?」

 一方の山崎は、久しぶりに見た万事屋やキリト達の様子に驚いている。彼らの一連の会話から、決闘だと予見していた。

 すると彼にとって、寝耳に水な言葉が聞こえてくる。

「いいか! 俺はお前に勝って、たまさんと付き合ってみせる! 俺の力を受け止めてみろよ!!」

「そんな気合入れなくていいよ。どうせ空回りするんだからよ」

「えっ!? たまさんと!? はぁ!? どういうこと!?」

 クラインから飛び出た告白宣言に、山崎は困惑を深めていた。まったくもって状況を理解出来ずに、任務をそっちのけに決闘への興味を寄せていく。

「とうとうここまで来たんですね……」

「本当に銀さんと戦うことになるなんて」

「どうせ銀ちゃんが勝つんじゃないアルか?」

 そんな中で仲間達は、近場のベンチに座り、二人の決闘の様子を見守っている。女子達はどちらかと言うと、銀時の方へ肩入れしていた。

「俺ですらまだ決着が着いていないのに……」

「まぁ、キリトさんが急ぐ必要は無いですよ」

 一方でキリトは、彼と初めて会った時にした決闘を思い起こしている。銀時とはまだ決着が着いていないので、先に勝敗が付くことに少し心をモヤモヤしていた。新八からは宥められているが。

「フッ、いよいよ来るぞ。クライン殿が銀時を越える時が!」

[刮目して見なければ!]

 そして桂兵衛達はもちろんクラインを応援している。旧友である銀時を越えて、好きな人にも認めてもらう。欲張りな彼の気持ちを素直に応援していた。

 様々な想いが混在する中で、いよいよ勝負が幕を開ける。

「それじゃ、そろそろ始めるよ」

「おう! いつでも来い!」

「さっさと始めてくれや」

 キリトの掛け声のもと、各々の武器を握りしめる二人。気乗りしない銀時も、戦闘時には目を鋭く豹変させていた。

「本気で行くぞ、銀さん!」

「あぁ、どっからでも来い」

 そう言葉を交わした直後である。

「ハァァァ!」

 先に動きだしたのはクラインの方だった。赤い羽を広げて、空中浮遊から銀時へ襲い掛かっていく。対して銀時は直立不動のまま、彼の攻撃を受け止めようとしていた――その時である。

「ちょっと待ったぁぁぁ!!」

「えっ!?」

「あん!?」

 遂に我慢できなくなった山崎が、決闘中の二人の間に割って入って来た。彼の登場により、戦闘は一時的に中断。銀時、クライン共に刀等を一旦下げている。

「あ、あの人って……」

「山崎さん!?」

「ひ、久しぶりだな……」

 もちろんキリト達にも、山崎の不意の登場には度肝を抜かれていた。特にキリト、アスナ、ユイにとっては、リーファ回収時にしか彼と出会ってないので、実に懐かしく感じている。

「何!? 何故真選組がここに……」

[こいつはヤバいな!]

「いや、アンタらは変装しているから大丈夫でしょ」

 一方の桂兵衛達は、敵である真選組にただならぬ警戒感を露わにしていた。霞のエリーと共に山崎を睨みつけているが、変装を施している為か怪しまれてはいない。新八からも指摘されている。

 そしてクラインからも、思ったことがささやかれていた。

「お、お前は……誰だっけ?」

「って、俺ですよ! 真選組の山崎退ですよ! アンタとは一回会ったことがありますよね!?」

「つーか、本当に誰だお前?」

「なんで旦那まで覚えてないんですか! 俺正真正銘の銀魂キャラですよ!!」

 すっかり忘れされていた上に、銀時からも冗談半分に忘却される始末である。おかげで山崎のツッコミも激しく決まっていた。

「あぁ、あの人か! ていうか、なんでアンタが俺達の決闘を止めるんだよ?」

 ようやく彼の存在を思いだしたクライン。決闘を止めた理由を聞くと、思いもよらない答えが返ってくる。

「それは……俺もたまさんが好きだからですよ!」

「あぁ、そっか――って、えっ!?」

 突然の告白につい目を丸くしてしまった。山崎の恋愛相手も明るみとなり、キリト達も新しい衝撃を受けている。

「嘘だろ……山崎さんにも好きな人がいたのか?」

「しかもたまさんなんて……」

「何だかドラマっぽくなってきたわね」

 初耳な情報に、クラインと同じく驚嘆するキリトら三人。一方で実は知っていた新八と神楽は、冷めたような目つきをしていた。

「そういえば、そんなことあったアルナ」

「一番面倒な人が来ちゃったよ……」

 いずれにしても彼の告白により、場の雰囲気が大いに乱れたのは事実であろう。

「おいおい、聞いてないぞ! アンタまで好きってことは、俺のライバルってことじゃねぇかよ!」

「いや、それよりも……なんで勝手にたまさんを懸けて勝負しているんですか! 俺の方がよっぽどたまさんのことを理解していますからね!」

「何を知った口を! 真選組の一員だろうが、俺の気持ちは譲らないぞ!」

「こっちだって引きませんよ! たまさんに相応しい男はこの俺です!」

「いや、俺だ!」

「俺です!」

 仕舞いにはたまを話題に挙げて、互いに彼女に相応しい男だと言いあう始末である。どちらも一斉譲ることなく、意地っ張りに口論を吹っかけていた。

 これには見守っていた仲間達も、目も当てられない展開である。

[って、段々と企画からずれているぞ]

「おい、クライン殿! 真選組のことは構うな! 今は目先の勝負にだけ集中しろ!」

 霞のエリーと桂兵衛は、冷静になるようにとクラインへ促していく。

「何とも引かない言い争い……」

「普段のシッリー達と同じ光景アルナ」

「まさかあの二人が恋敵になるなんて……」

 アスナ、神楽、新八と万事屋一行も思ったことを呟いていた。

 二人が口論を続ける中で、唯一置いてきぼりにされているのは、対戦相手の銀時である。彼らの言い争う光景に呆れた彼は、ヤケクソ気味にある提案を持ち掛けてきた。

「あぁ、もういいからお前等! こうなったら決闘で勝負を付けろよ!」

「「……えっ!?」」

「勝った方がたまに告白出来る。それでいいだろ? そんじゃ俺は辞退するからな。お前等で勝手にやってろよ」

 自身の代わりとして山崎を、クラインの対戦相手に任命している。同じ好意を寄せている者同士で、戦わせた方が有意義だと彼は悟っていた。反応を伺う暇も無く、銀時は仲間達の元に戻っている。

「って、銀さん!? 勝手に決めて大丈夫なのか?」

「別にいいだろ。俺よりも山崎と戦った方が、クラインの為にもなるだろうが。そうだろ、ヅラ?」

「あまり気乗りはしないが……ここは様子を見ようではないか」

「つーか、変装したままで正解だったな」

 彼はふてぶてしく座りながら、持論をキリトらにも伝えていく。本筋からは逸れてしまい、桂兵衛や霞のエリーは若干不満げであったが……ひとまずは様子見している。

 一方で勝手に提案された側のクラインと山崎にも動きがあった。

「……こうなったら! おい、山崎って言ったか! 俺と決闘で勝負しようじゃないか!」

「いやでも、決闘すると局中法度に反するんで……」

「じゃ、俺がたまさんとお近づきになっていいんだな?」

「それはダメですよ! ……じゃ、俺も戦いますから!」

「おう! そうこなくっちゃな!」

 早くも決闘する気満々のクラインと、ルール破りに恐れを抱く山崎。前者に言いくるめられる形で、彼もこの決闘を受け入れていく。(ちなみに局中法度は真選組が決めた掟。厳重に守らなくてはいかず、その中には決闘も含まれているが……今回ばかりは好きな人が絡んでいる為、山崎もつい気を緩めてしまった)

 と仕切り直してようやく二人の戦いが幕を開く。

「さて、始めようじゃないか!」

「いいですよ……容赦はしませんからね!」

「こちらこそ!」

 山崎自身も帯刀している刀を引き抜き、クラインの方へ標準を定めている。(お馴染みのミントンは、今回残念ながら所持していない……)

 再び場には緊張感が漂い始めていた。

「一体どんな勝負になるんだ?」

「クラインさんには是非勝ってほしいです!」

 対戦相手が変わると、思わずクラインに肩入れしてしまうユイやキリト達。期待感を高めつつ、彼の勝利を切に願っている。

 一方の銀時達は、若干冷めた見方をしていた。

「つーか、この対決需要あるか?」

「おっさん同士の女の取り合いアルからナ」

 ごもっともな意見には、新八も突っ込まずについ頷いている。

「相手は変わったが、気を引き締めて頑張れよ……」

 そして状況が変わっても、桂兵衛達の応援する立場は変わらない。彼らもクラインを愚直に応援している。

 さらなる思いが混ざり合って、遂に決闘への火蓋が切って落とされた。

「じゃ……」

「始めだ!」

「はぁぁ!!」

「うぉりゃぁぁ!!」

 銀時やキリトの掛け声と共に、相手へ立ち向かう二人の侍。強さを証明したいクラインと、巻き込まれながらもたまの好意を貫きたい山崎。

 多少の年の差があるおっさん同士の勝負は、万事屋や桂兵衛達の予想以上に、泥臭くも長い戦闘を繰り広げていた……

 

 

 

 

 

 

 こうして一時間が経過した頃。肝心の決闘は意外な結末を迎えている。

「はぁ……はぁ……」

「終わった……」

 両者共に戦う気力が尽きてしまい、地面へ大の字になって寝っ転がっていた。ほぼ互角に渡り合ったせいで、勝敗もつかない始末である。

「いや、結局引き分けかよ!」

「散々引っ張っておいて、こんな結末アルか!」

 あまりスッキリしない結果に、思わず文句を吐く銀時と神楽。特に前者はクラインに振り回されているので、優劣が付かないのは若干憤りを感じていた。

「山崎さんって、意外に強い方なのね」

「まぁ、アレでも真選組の一員ですからね。剣術に関しても、高い方だと思いますから」

 一方のアスナは、山崎の実力に目を向けている。クラインの強さは昔から知り得ている為、彼と張り合う山崎を見直していた。さり気なく新八もフォローを入れている。

 いずれにしても、一行にとっては期待以上の戦いだった。キリトもユイも、彼らの姿には感銘を受けている。

「中々迫力のある戦いだったな」

「クラインさんも山崎さんもどっちも頑張っていました!」

「やはり俺の指導力あってだな。さぁキリト君達も、俺の元で学びに来るがいい! ついでに攘夷浪士としても……」

「いや、丁重に断っておくよ」

「えっ?」

 乗っかるようにして桂兵衛が自己主張を始めたが、キリトは構うことはなくスルーしていた。彼の応対よりも、今は決闘を終えたクラインと山崎の会話が気になっている。

「アンタ……見かけによらずに強いな」

「そういうアンタこそ……ゲーマーのくせしてしぶといよ」

「俺は惚れた女の為ならば、命を懸ける人間なんでねぇ……」

「清々しいほどのバカさ加減だよ……でもそういうの、俺は嫌いじゃないよ」

「ヘヘ、あんがとよ!」

 互いの強さを認め合った二人は、クスッと笑った後に両者の手を固く握っていた。二人の間に新しい友情が芽生えた瞬間である。

「えっ!? まさかの友情エンドですか!?」

「恋敵からの良きライバルに……!?」

「この展開は予想外です……!」

 思わぬ結末を目にして、仲間達からも次々に驚きの声が上がった。新八、アスナ、ユイと皆一瞬だけ困惑した表情を見せている。それは桂兵衛も同じだ。

「不味いな。クライン殿と山崎の交流はやや危険だ。下手したら寝返る可能性も……」

「おめぇは何の心配してんだよ」

[しかし桂さん。二重スパイとして活躍させれば……]

「あぁ、その手があったか!」

「いや、活躍させる気あんのかよ!?」

 真選組との友情に危機感を抱いたが、エリザベスの提案で言いくるめられている。またも銀時からツッコミを入れられていた。

「これはこれで良い締め方なのか?」

「まぁ、下手に決着が着くよりかは良いんじゃないアルか?」

 旧友の新たなる友情を見て、若干モヤモヤしてしまうキリト。表情も困り果てている彼に、神楽が適当に促していく。

 だが今回の決闘で、存分に自身のさらなる強さを発揮したクライン。自分でも持てる力を出し尽くして、気持ちの面でも満足していた。

 そのきっかけを作ってくれたたま、特訓に付き合った桂とエリザベス他攘夷党の面々、一時だけ協力してくれた銀時、ライバルとして戦った山崎と、彼は多くの人々に感謝している。

(あぁー、なんかスッキリしたな! 心から楽しめる決闘だったぜ。これでたまさんにも心して会える! 山崎さんに負けてたまるかよ!)

 そっと内心で本音を呟きながら、彼は新たなる目標を掲げていた。強さを確かめた以上は、次にたまから認められたいのである。そんなクラインの願いは、真っ先に叶いそうであった。

「アレ? あの人ってたまさんじゃないですか?」

「えっ、本当か!?」

「ど、どこにいるんだ!?」

「あそこですよ」

 ふと辺りを見ていたユイが、たまの姿を発見している。その一報を聞いたクラインと山崎は、すかさず彼女が指す橋方面に目を向けていた。

「うぉー! たまさ――えっ?」

「あ、あれは……」

 大声で気付かせようとした――その時である。彼らにとっては、衝撃的な光景が目に入っていた。

「ありがとうよ。源外の仕事を手伝ってくれてよ」

「いえいえ、お構いなく。人手が足りないと事前に聞いていたので」

 なんとたまの横には、共に荷物を運ぶ金髪の男性が並んでいる。彼は親しげな雰囲気で、たまとの会話を楽しんでいた。

「「だ、誰だあの男!?」」

 クラインらにとっては当然の反応である。また驚嘆としているのは、キリトら三人も同じであった。

「いや、本当に誰なの!?」

「妙に銀さんっぽいんだが……」

 困惑を深めている彼らに、唯一正体を知る銀時らが補足を加えていく。

「おいおい、このタイミングでアイツが出てくるかよ」

「アイツ? 銀時さんのお知り合いなんですか?」

「知り合いだけど、凄く説明が必要な人で……」

「ユイ達には別の機会に教えるアル」

 説明が面倒で省略しているが、金髪の男性の正体は銀時に似たカラクリロボの坂田金時である。現在は源外の補佐を行っているので、たまとの行動はなんら珍しいことではない。

 その事情を知りもしないクラインと山崎は、早くも行動へと移していく。

「こうしちゃいられねぇぜ! おい、山崎さん! 跡を追いかけようぜ!」

「そうですね! あの男の正体を突き止めましょう!」

 互いの利害が一致した後、二人はバレないようにたまと金時の跡を尾行することにした。真実を知りたいが為に、一段と躍起となっている。

「ちょっと待て、クライン殿! 不覚に真選組と行動を共にするな! 一旦戻ってこい!」

[待て~!]

 さらには尾行した二人の跡を、桂兵衛と霞のエリーが追いかけていく。

 こうして場に残ったのは、巻き込まれた側の万事屋の六人である。

「い、行っちゃった」

「あのまま放っておいていいのかしら……?」

「別に良いんじゃねぇの。アイツらの好きにして」

「そうアルナ。後はあの馬鹿共に任せるネ!」

「それじゃ、僕等は帰りましょうか」

「はいです!」

 クラインや桂兵衛の行方も気になるところだが、後のことは彼らに任しきっていた。やることの無くなった万事屋一行は、六人揃って家路に着くことにする。決闘での感想を言い合いながら、万事屋に続く一本道へと進んでいった――

 

 一方で任務に戻った山崎はと言うと、

「おい、山崎! 張り込みはどうした? 滞在先を訪ねたら、不在だったんだが……」

「いや、あの副長! これには深い訳があって……」

「それとお前が、クラインってヤツと戦っていたと目撃があったが……」

「それも深い理由が……」

「屯所に戻って来たら覚悟しとけよ!」

「いや、話を最後まで聞いてください!!」

携帯電話越しに上司の土方からこっぴどく叱られている。

 

 

 

 

 

 

 

決闘の下準備パート1

 銀時との決闘を決意したクライン。桂に鍛錬を頼み込んで、しばらくの間は彼と共に自身の実力を高めていた。

 そんな彼らのとある日の一幕。柳生家にわざわざ乗り込んで、九兵衛に一日だけ稽古を付けてもらっている。

「行くぞ、九兵衛さん!」

「いつでもかかってこい!」

 お互いに竹刀を持ち、相手に標準を定めるクラインと九兵衛。共に刀の腕に自信があり、一斉手を抜くつもりは無い。辺りは一瞬にして、真剣な雰囲気に変わっていた。

 その様子を見守るのは、変装済みの桂兵衛と霞のエリー。そして九兵衛と共に実力を高めあうリーファの三人である。

「九兵衛さん、いつになく真剣ね……」

「フッ、だが問題は無い。今のクライン殿であれば、九兵衛君も打ち倒してくれるだろう」

「さぁ、どうかしらね……ていうか、桂さんにエリザベスさん!? その格好は何なの?」

〔一般人に紛れ込む為の変装だぞ、リーファ君!〕

「どうやって紛れ込むの!? 色々と古臭くて、むしろ目立っているわよ!」

 やはり彼女も桂達の癖のある格好が気になって仕方ない。二人の一騎打ちに集中したいが、横にいる為かどうも気になってしまう。

 そう気を散らしているうちに、とうとう二人の戦いが始まった。

「いくぞぉぉぉ!!」

「こちらこそ!!」

 同じタイミングで勢いよく走りだし、竹刀を高く振り上げていく。相手に攻撃しようと接近した――その刹那であった。

〈チョン〉

「ハッ!? うわぁぁぁ!! 僕に触るなぁぁぁ!!!」

「なんでえぇぇぇぇ!?」

 不覚にもクラインの肘が九兵衛の脇腹にかすってしまい、本人は反射的に彼を投げ飛ばしてしまう。肝心のクラインは投げ飛ばされた後に、

「グハァ!!」

壁に激突してそのまま倒れ込んでしまった。折角の勝負が彼女の弱点によって、うやむやとなっている。

「ク、クラインさん!? それに九兵衛さんも大丈夫!?」

「おのれ九兵衛め! 自分の弱点でオチを作るとは……あちらが上手だったのか!?」

「上手も何も無いでしょ!! 早く助けないと!!」

「理不尽すぎるぜ、九兵衛さん……」

 この状況に戸惑いながらも、仲間達はクラインの元に駆け寄っていく。一方の九兵衛は、深刻そうな表情で自身の弱点を悔やんでいた。

「……済まなかった、クライン君」

 その後は無事に稽古が出来たらしい。

「こうなったらリーファ君にも出てもらうしか……」

「えっ、私まで!?」

 

 

 

 

 

 

決闘の下準備パート2

 一目惚れした女の為に自身を鍛え続けるクライン。彼は自分だけではなく、愛用している刀も今一度鍛え直そうとしていた。

 今回は桂兵衛や霞のエリーと共に、リズベットと鉄子がいる刀鍛冶屋を訪れている。

「決闘用の刀をすぐに鍛えて欲しい?」

「頼む! 俺の一世一代の決闘が懸かっているんだ!」

「リズ君と鉄子殿なら出来るぞ! この通りだ!」

[是非頼む!]

 攘夷党の三人が揃って、リズベットや鉄子に向かい頭を下げている。彼女達の鍛冶の腕を必要としており、真摯な姿勢で刀鍛冶を委託していく。

 肝心の彼女達はというと、少々微妙な反応を示していた。

「あのね……こっちだって私情に構っている暇は無いのよ。鉄子さんと一緒に打っても、三日は返却出来ないからね」

「いや、頑張っても二日だね。それでもいいなら預かるけど、大丈夫かな?」

「構わないぜ! 俺の刀をよろしく頼む!」

 不満げな表情で文句を呟きつつも、条件付きで委託を受け入れている。知り合いでも特別扱いはせずに、あくまでもお客として彼らを捉えていた。

「分かったわ。そんじゃ、はい」

「はい?」

「依頼料のことよ。知り合いだからって、安くするつもりは無いからね。きっちり耳を揃えて払いなさいよ」

 さらに彼女は続けて、鍛冶の依頼料を請求している。

「だったら心配はない。これで依頼を引き受けてもらおうか」

 すると桂兵衛は自信満々に、懐から封筒を取り出して、リズベットへ手渡してきた。

「これって……こんなにいらないわよ! アンタ達、気合入りすぎじゃないの?」

 その封筒の分厚さは十分にあり、少なく見ても三十万は入っていそうである。驚いた表情のまま彼女は、封筒を開いて中身を確認すると――そこには予想外の代物が入っていた。

「えっ、これって?」

「リズ君専用に作った肩たたき券だ! 俺達が君の疲れを癒してやるぞ!」

「特訓の中で覚えたツボ術を見せる時だぜ!」

[気がれなく申し出てくれ!]

 ご丁寧にも紙に一枚一枚書かれたお手製の肩たたき券である。要するにツッコミありきの小ネタを、彼らは挟み込んでいた。

 だがもちろんのこと、リズベットにとってはストレス以外の何者でもない。三人のバカっぽい発想に、カチンと頭に怒りを沸かしてしまった。

「……アンタら、いい加減にしなさい!! こんなもので騙せるわけがないでしょうが!」

「痛!? 落ち着け、リズ君! 棍棒の先端部分で突っつくな! くすぐったいから!!」

「うっさい!! この三馬鹿トリオ!! 冗談言うなら、もっとマシなことを言いなさいよ!! 余計な小ネタとかいらないのよ!!」

「分かったから、もう突っつかないでって!!」

 彼女は自身のメイスを握りしめて、クライン達に制裁と言う名の罰を与えている。今回ばかりはネタに乗っかる余裕もなく、ただただ怒りとストレスを感じただけであった。

「まぁ、怒るのも無理は無いな」

 一方の鉄子は、冷静に状況を読み取っている。今は彼女の気が収まるまで、ゆっくりと待つしかない。

 結局はちゃんと料金を払い、刀鍛冶の委託を済ましていた。

「なんでこうも、小ネタを挟まないと気が済まないのかしらね……」

「これが俺達の個性だからな!」

「だったらタイミングを見極めなさいよ!!」




 山崎と仲良くなった初めてのSAOキャラがクラインって……。てか山崎って、エギルよりも年上みたいですよ。ちなみに決闘シーンは長くなりそうなので、カットしました。

 そして地味に坂田金時が剣魂初登場! 本当はもっと登場を先にしたかったのですが、オチにちょうどよかったので出演してもらいました!

 ようやくですが、今回で第四章は終了します。まさか自分でも一年近く続くなんて、思いもしませんでした。途中からは投稿頻度が極端に下がってしまいましたが、現在はもう大丈夫です。状況に変化が起きれば、また後書き等で伝えようと思います。
 今回の章では、銀魂世界に来たキリト達と銀さんの日常をより深掘りした話が多かったです。中にはリクエストされた話もあって、ネタ提供には有り難く感じました。
 本章だと銀魂のキャラクターが、次々と剣魂に初登場したのも見どころだと思います。特に高杉客演の回は、今までの話でも一番作業速度が早かったです。彼は長篇にも関わるキャラなので、今後の活躍にも是非期待をしてください
 文体にもまだ悩むことが多い未熟者ですが、今後より精進していくので、これからも応援のほどをよろしくお願いします!!
さて、いよいよ次回からは新長篇が始まります!




さらに余談
 長く続いていたSAOのアニメが遂に終わってしまいました。私は見れていない回もあるので、時間が出来次第一気見しようと思います。(他にも見たいアニメガたくさんあるので、見終わるのは先になりそうですが……)




次回予告!

桂「遂に攘夷党が剣魂を乗っ取るぞ! 次回の日常回からは、お待たせ桂魂を掲載だ!」
クライン「俺と桂さん達が描く日常回を楽しみにしてくれよ!」
桂「それでは早速ユーチューバー篇の構成を練ろうでは――」
銀時「もうテメェらはいいよ! これ以上出てくるんじゃねぇ!!」

※本当は長篇の前に小ネタ集か没ネタ集を出してみたいです。







次回予告!(本当)

2000年―2006年―2012年―2020年

平成と令和の時代を駆け抜けた者たちに、この物語を告げる……。

剣魂 新長篇 次元遺跡篇スタート!

?????「この僕の技術力さえあれば、容易いことさ!」

?・???・?「ゾンドグビリボガギデギギギバ?(本当に見逃して良いのか?)」

????「へぇー。そんなお宝があるんだ」

??「逃がすか!」
??「待ちなさい!!」

????「ここは……どこなの?」

EPISODE 1 始動

セキさん「信じるか信じないかはアナタ次第です!」

銀時「おい、もう幽霊話は終わったか?」
アスナ「前を向いて良いのよね!?」
神楽「いいや、まだアルよ」

2020年 9月下旬or10月上旬より掲載スタート!
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