剣魂    作:トライアル

79 / 159
9月下旬から10月は誕生日のキャラが多く、誰をネタにするか非常に悩みます。
アスナ「もちろんこの私よね!」
キリト「俺も祝ってほしいよな」
銀時「おいおい、主人公歴の長い俺に決まってんだろ!」

シリカ「……主張しづらい雰囲気です」

 主人公やヒロイン達に挟まれているシリカちゃん。銀さんを抜きにしても、なんでこうも近い誕生日に設定したのだろう。
 とりあえずキリト。まずは誕生日おめでとう!

 茶番はさておき、いよいよ新長篇が始まります! 前回の長編と同じく、今回も新キャラやオリキャラが多めに出てきます。どうぞ、最後までご覧ください!



第五章 次元遺跡篇
第六十五訓 始動


 銀魂の世界には幾つもの星々が存在している。頭部に触覚の生えた天人が住んでいる央国星、煙草の栽培地として有名なハメック星、ほぼゴリラのような容姿の天人が住む猩々星。どれも尖った個性を持ち、この他にも多くの星々が作中にて登場していた。

 そんな星の中には、SAOの本作に出てきたゲームの世界観と酷似した星も存在している。その内の一つが、地球より遠くにあるALO星。別名アルヴヘイム星と呼ばれるこの星には、原典と同じく九つの妖精種族達が、魔法を使って互いに協力しながら暮らしている。

 自然豊かな風景があちらこちらに広がって、種族ごとの領地には町や村が形成していた。さらに中心では、巨大な神木であるユグドラシルがそびえ立つ。ランドマークのような役割を果たすこの神木の中には、星を収める王女とその一家が暮らしている。

 ユグドラシルの近くには「アルン」と呼ばれる、いわば城下町が星の玄関口として発展を遂げていた。他の星を繋ぐターミナルも近くに常設しており、今日もこの街には多くの観光客が行き交う。ALO星に住む住人達も、昨今の盛り上がり様には嬉しい悲鳴を上げている。

 そんな城下町の日常を少しだけ覗いてみよう。

「あっ、シマノブさーん!」

「カヤノン! 久しぶり!」

 町を巡回していた近衛兵が、本屋で働く知り合いの看板娘に声をかけられている。

 前者は黄土色っぽい髪色をしたプーカの青年。全身に鎧を身にまとっている。一方の後者は、金髪ロングのケットシーの若い女性。ゆったりとした服装とエプロンを着用していた。

 見知ったかである二人は出会い頭に、昨今の事情や出来事について話し始めていく。

「そっちの調子はどう? 確か本屋で働き始めてから、しばらく経ったはずだよね?」

「うん、そうね。全然悪くはないわよ。他の星からもお客さんが来ているから、毎日程よく忙しい感じね」

「そうなんだ。観光客相手にも商売しているのか」

 本屋のアルバイトとして働く彼女は、忙しい日々を送っている様子だ。来店する客は地元住民だけでなく、観光に来ている天人も含まれているという。

 会話の途中で彼らが辺りを見渡すと、町には妖精達に加えて、多種多様な天人達が通りを行き交っていた。観光地としては申し分ない盛り上がりに、二人も満足気な表情を浮かべている。

「僕達の星もだいぶ知られてきたようだね」

「ここ最近のブームのおかげね。でも……良い事ばかりじゃない気がするわ」

「えっ? それってどういうこと?」

 ところが彼女には、一つだけ心配していることがあった。急にしかめっ面な表情を浮かべると、ある人物達に指を差し向けていく。

「例えば、あの人達とか」

「えっと……って、アレは!?」

 二人が遠目から発見したのは――一際異彩を放つ団体の観光客である。

「ヒャッハー! 遂に来たぜ、ALO星へ!」

「最初はどこへ行きまっせ、リーダー!?」

「まずはルグルー回廊だ! その後は領地まで向かうぞ! 挨拶回りだぜ!」

「おぉー! これなら二週間のうちに全て回れそうですね!」

「いや、回るんだよ! そうと決まったら、行くぞ! GO TO アルヴヘイムだ!」

「「オー!!」」

 常時高いテンションでバイクを乗り回すのは、モヒカン姿とジャケットの似合ういかつい男達。彼らは目的地を決めた後に、きちっと隊列を整えながら町中を突っ走っていく。

 恐らく他の星からの観光客であるが、その独特すぎる服装や奇抜な雰囲気には、近衛兵や看板娘もつい気になり見入ってしまった。

「な、なんなんだ。あの人達は……」

「アレはGGO星からの観光客ね。この星とも距離が近いから、最近だともっぱらああいう類の人を見かけるのよ」

「そうだったんだ……モヒカン野郎が増えているのか」

「モヒカンは稀な方よ。奇抜なのは構わないけど、最低限ルールは守って欲しいところね。違法駐車なんてやられたら、町の雰囲気を壊すことこの上ないから」

「確かに」

 どうやら看板娘によると、モヒカン男達の正体はGGO星からの観光客らしい。彼らの大半が移動手段として、バイクを所持したまま来国しているという。妖精らしいファンタジー感が売りのALO星とは、明らかにミスマッチであるが。中でも彼女は違法駐車と言った、町の秩序が乱れる行為を不安視している。

「大丈夫だって! もしそんなことがあったら、僕がちゃんと注意しておくからさ!」

「そう? じゃ、よろしくね」

 すかさず近衛兵がフォローに入って、さり気の無い約束を交わす。頼りになる彼の一言に、看板娘も少しだけ安心感を覚えている。

 一方で今度は、近衛兵の近況に話題が変わった。

「それでシマノブ君はどんな感じなの?」

「そうだな……今は稽古とパトロールくらいだよ。やれることって」

「えっ? でも近衛兵になったなら、姫様の警護とかはしないの?」

「それはもっと階級が上になってから。今じゃその枠は、別のチームが担っているし」

 彼女のイメージとは裏腹に、彼の仕事内容は思ったよりも現実的である。兵に抱いていた役人の警護も、自身の階級によって決まるそうだ。

 現在ではとある六人体制のチームが、姫様直属の親衛隊として役目を受け持っている。

「別のチーム? もしかして、あの人達のこと?」

「そうそう。確かチーム名はス――」

 近衛兵がチーム名を言いかけた――その時だった。

〈キューン――キューン〉

「ん?」

 彼の耳に聞こえてきたのは甲高い耳鳴り。軽い不快感を覚えており、雑音っぽく捉えている。

「どうしたの、シマノブ君?」

「えっと……変な耳鳴りが聞こえなかったか?」

 思わず看板娘にも聞いてみるが、彼女は特に感じていない。

「耳鳴り? いや、全然」

「嘘だろ!? 絶対確かに聞こえて……いや、待てよ。もしかしてモンスターが町に近づいているのか? 僕ちょっと、見回りに戻るよ!」

「えっ、シマノブ君!?」

 耳鳴りの正体を気にしていた彼は、勝手な推測でモンスターの仕業と仮定。居ても経ってもいられずに、場を離れてパトロールを再開している。

「もう……怪我しないように気を付けなさいよ!」

 彼の無鉄砲な性格に苦労を覚えつつも、看板娘は優しく彼のことを見守っていた。穏やかな笑みを浮かべて、彼女は本屋の接客へと戻っている。

 だが二人は気が付いていない。聞こえてきた耳鳴りの正体が、鏡の世界に潜んでいる漆黒の戦士だと言うことに。

「フッ、能天気な奴等め。もうじき僕等の作戦が遂行されるなどつゆ知らずに……!」

 戦士は赤い複眼を不気味に光らせると、鏡の中から姿を消している。

 平和かつ活気に溢れる町アルンに、邪悪な魔の手が少しずつ近づいていく……。

 

 ALO星では最近、星の統治者が変わったことにより、国の体制にも大きな変化が訪れていた。比較的若い女性が女王を継承したことで、各種族の領主のみならず、他の星との関係も一変。国の治安改善や発展のみならず、他の星との交流もより深めていた。おかげで昨今の観光ブームにも、彼女が一役買っている。日々星や国の発展の為に、自分なりの方法で尽力を注いでいた。

 だがしかし、この体制を快く思わない者たちも中にはいる。彼らは町より離れた洞窟内にて、密かにアジトを形成していた。

 その組織の名前はマッドネバー。いわゆる反逆者とも言える彼らの目的は、気に入らない女王を自分達の手で引きずり降ろして、クーデターを成功させること。

 着々と計画を進めていた彼らの元に、突如として転機が訪れていた。それは他勢力との協力である。資金や技術力は、高杉率いる鬼兵隊から援助。しかしこれは一方的な協定であり、途中でマッドネバー側が自らの手で破棄している。

 そしてもう一方は、サイコギルドの資材提供だった。彼らがサイコホールによって集めた怪人達の欠片は、総帥の技術力によって本体を復元しており、これが組織の兵力拡大に繋がっている。

 もはやクーデター実行まで目前と迫る中で、マッドネバーの元にサイコギルドの一員であるアンカーとシャドームーンが、彼らの様子を見に来ていた。

「フッ、来てやったぞ。情報通りに出来たのか? 平成怪人達の記憶と言うのは」

「おぉー。これはサイコギルドの皆さん。よくぞ来てくれた。この僕の研究成果の為に」

「相変わらず自己主張が激しいな。オベイロンよ」

 二人の目の前にいるのは、マッドネバーの総帥兼科学者の――オベイロンである。その姿はかつてキリト達と敵対した須郷信之こと、妖精王オベイロンと酷似しているが、彼とは何も関係はない。いわば銀魂の世界で暗躍する、この世界のオベイロンなのだ。

 その容姿も偶然なのか原典とほぼ酷似している。光沢のある金髪に一段と鋭い目つきやとんがった耳、頭部には金色の王冠を装着していた。全身を覆う緑色の服装は、貴族のような雰囲気を醸し出している。しかし、この世界ではあくまでも科学者の一人だ。

 そんな彼の本性は、原点と同じく傲慢さと野心に満ち溢れている。

「そっちこそ、ふてぶてしい態度は変わらないな。シャドームーンよ」

「やかましい。それよりさっさと、平成怪人達の記憶を渡してもらおうか?」

「まぁ、焦るな。ちゃんとブツは渡すから安心しろ。いやーそれにしても、君達には大変感謝しているよ。君達がくれた怪人の欠片のおかげで、我が組織は飛躍的に進歩した! この戦力ならいずれ、僕がALO星の王として君臨する日も近いな……!」

 長々と自身の想いを語った後に、自信に満ちた表情を浮かべていた。隠し持っていた野望が現実味を帯びて、心の底から気持ちを高ぶらせていく。

(こいつ、まったく変わってねぇな)

 若干慢心気味のオベイロンに、シャドームーンも内心では気を引かせている。

 一方で隣に待機しているアンカーは、彼ともあまり顔を合わさず、今日一日よそよそしい態度を続けていた。

「どうした、アンカーよ。まだあの事を引きずっているのか?」

「別に……なんでもないよ」

 彼から心配されても、冷めた態度で言葉を返す。以前に生じた考え方の違いから、アンカーはサイコギルド自体に不信感を持ち始めていた。

 とそれはさておき、オベイロンは再び自信良く声を上げてくる。

「まぁ、いいさ。約束通りブツを渡す前に、ひとまず僕の研究成果を見てもらおうか」

 彼は指をパチンと鳴らして、復元した怪人の一体を場に呼び寄せた。現れたのは茶色い体色に覆われた、屈強そうなカブトムシ型の怪人である。

「こいつは……グロンギ怪人だな」

「その通り。コイツは僕が最初に復元した怪人でな、戦闘力も高く幹部級に着いてもらっているんだよ」

 オベイロンの言う通り、怪人の正体はグロンギの一種であるゴ・ガドル・バだ。原典でも圧倒的な戦闘力を持ち、最強の戦士として名高い怪人である。そんな彼は現在、復元されるとマッドネバーの幹部怪人として配属されていた。

 このようにオベイロンは、提供された欠片から数多の怪人達を復元させて、マッドネバーの戦力として従えているという。

「ゴラゲロゴセドダダバグバ? (お前も俺と戦うか?)」

「えっ? 何を言っているの?」

 するとゴ・ガドル・バは、濁音を多用した言語を発してきた。これはグロンギの特徴でもあるグロンギ語である。

「アレはグロンギ語だな。まさかここまで再現しているとは」

「当然だ。個の強さを強調するには、完全再現が間違いないからな。この僕の技術力さえあれば、容易いことさ! ハハハ!!」

 その再現度の高さから、シャドームーンは思わず感服していた。機嫌を持ち上げられたオベイロンは、甲高い笑い声を発して、調子に乗っている。自身の才能を自画自賛して、酔いしれているようにも見えなくはない。

(何か分からないけど、すっごくムカつく気がする)

 思い上がる姿に、アンカーも内心では腹を立ててしまう。この数分の間に、彼への印象は最悪なものへと化している。

 だがサイコギルドにとって、肝心なのは彼ではない。マッドネバーとの契約時に結んだ、平成怪人達の記憶の確保が目的だ。

「さてと、話はここまでにしよう。約束通りに平成怪人達の記憶を渡してもらおうか」

「フッ、いいだろう。さぁ、受け取るがいい」

 要件を急かされたオベイロンは、手のひらを広げて禍々しさを放つ緑色の球体を作り出している。それをさっとシャドームーンの元まで飛ばしていた。この球体こそ、圧縮された平成の怪人達の記憶である。

「ありがたい。確かに頂いた」

「それを有効活用してくれよ。なんせ僕の技術力の結晶だからな」

 自分の手柄だと言わんばかりに、研究成果の主張を続けるオベイロンだが――アンカーからは手痛い指摘が加えられていた。

「アレ? でもアンタの手下さんに聞いたら、別組織の資金と技術があったから、出来たって言っていなかった?」

「……ケホン。それはそうと、僕からの約束も果たしてもらおうか」

「いや、なんで無視するの。絶対不都合だったからでしょ」

 核心を突く一言には何も言い返せずに、まるで何事も無かったかのように無視している。意地でも手柄を主張したい、自尊心が垣間見えていた。

 どさくさ紛れにオベイロンは話題を切り替えて、事前に依頼した遺跡の行き方について聞いていく。

「約束? あぁ、あの遺跡の行き方だな」

「そうだ。発見したはいいが、行き方がどうも分からなくてな……何か分かったことはあるか?」

「あの遺跡へ行くには、特定の呪文が必要だ。呪文を唱えながら、ゾロ目が揃う時間帯に近くの扉を開け。そうすれば、行けるはずだろう」

「呪文だと? それも把握しているのか?」

「あぁ、そうだな。確か始まりは――」

 するとシャドームーンは、遺跡へ向かう特殊な呪文をひっそりと教えていた。

「そうか、分かったぞ。これならばも英雄の力も手に入り、僕の研究がようやく完成する……!!」

「それは良かったな。では、もう用が無ければ去るぞ」

「ご苦労だった。サイコギルドよ……」

 マッドネバーとの要件を全て済ますと、彼はあっさりとすぐに場から立ち去っていく。何とも呆気ない別れ方に、アンカーも若干戸惑っている。すかさず彼女もシャドームーンの跡を追いかけていた。

「ちょっと、あれで良いの? あのままアイツを放っておいて?」

「気にするな。俺達が欲しかったのは、平成の怪人達の記憶だけだ。それさえ手に入れば、アヤツのこと等どうでもいい。それにあの男の傲慢な性格は、肝心なところで爪を甘くする。俺達が関わらずとも、簡単に自滅するだろう」

「そうなの……?」

 やはり彼にとっての興味は記憶だけで、マッドネバーには一斉肩入れしていない。仕舞いには自滅するとまで断言している。

 この件からは身を引くサイコギルドだが、アンカーのモヤモヤとした気持ちは未だに収まっていない。

(私もこのまま、シャドームーンと一緒にいていいのかな?)

 徐々に感じている考え方のズレ。それは日に日に大きくなり、彼女の心にも迷いを与えている。それでも今は気持ちを押し殺して、彼についていくしかなかった。

 そんな二人の去り際を、オベイロンとゴ・ガドル・バはじっと見張っている。

「ゾンドグビリボガギデギギギバ?(本当に見逃して良いのか?)」

「ザバデデゴベ。ドブサンロブデビパブビンゲギガヅザ。ゴセザベゾビロビレギジソ(放っておけ。僕らの目的は国の制圧だ。それだけを肝に銘じろ)」

 彼からの指示を受けて、ゴ・ガドル・バはこくりと頷いた。彼らもサイコギルドには興味を示さず、取引を終えた時から他人事のように片づけている。

 探し求めていた遺跡の行き方を知ると、オベイロンは咄嗟にある計画を打ち立てていた。

「さぁ、次元遺跡への扉は開かれた! この僕も、英雄となるチャンスが巡ってきたのだ! 是非ともお前達には、その調査に向かってもらおうか!」

 そう高らかに声を上げると、彼は後ろへ振り返る。そこには話を聞き流していた手下の天人達がいた。声をかけられて、意気揚々と表舞台に姿を見せてくる。

「フッ、ようやく俺達の出番か」

「いよいよこの力を使えるのね」

「存分に暴れちゃうよ……!」

 彼らの正体は、以前にもサイコギルドと邂逅したことのある辰羅や夜兎達だ。皆その手には、指輪やメダルと言ったアイテムを握りしめている。戦闘への意欲も高めており、テンションも徐々に高めていく。

 しかしその人数は一人だけ欠けている。

「おや? 夜兎が一人足りないぞ」

「あぁ、あいつのことか。早速変身したついでに、鏡の世界へ行ったまま帰ってきてないぞ」

「また勝手なことを……早く呼び戻せ! もうすぐゾロ目の時間帯になるんだよ!」

「はいはい、分かったから」

 どうやら暇を持て余したそうで、命令を無視して無断で行動しているようだ。遺跡へ向かうには時間の条件もあるので、彼は思い通りにいかず、怒りを露わにしている。初っ端から予定を大いに狂わされていた。

 

 だがしかし、彼らは誰一人として気付いていない。アジトへと密かに潜入していた、とある少女の存在に。

(へぇー。そんな遺跡があったんだ。英雄の力か……行ってみようかな)

 遺跡の話を盗み聞きした彼女は、足音を立てずに素早く場を跡にした。彼女は予め外見を透明にする魔法を使用しており、おかげでアジト内に侵入しても、誰にも気配を悟られていない。通路を通りかかる怪人達にも気付かれず、気持ちを浮かせたまま走り抜けていた。

 ところが……魔法は徐々に解け始めている。

「ん? あの女は?」

 姿が消えたり現れたりする中で、走り抜ける姿をあの漆黒の戦士に見つかってしまった。鏡の中から覗いている為、当然少女は発見されたことに気付いていない。

「あいつらにも知らせた方が良いな……」

 そう呟くと彼は、急いで同士のいる研究室へと向かう。

 一方の彼女は人気の無い場所に着くと、近くにあった扉の前に立ち止まる。魔法が解けて実体を戻してから、壁に掛けられた時計で時間を把握していた。

「11時10分か。ちょうどいい時間帯ね」

 ゾロ目の時間帯まで約一分を切っている。盗み聞きから遺跡の行き方は知っているので、後は呪文を唱えるだけであった。

「確か呪文は……クウアギリュファブレヒビカブデンキバディ、ダブオーフォウィガイドラゴーエグビルジオ!」

 ドアノブを手で握りしめてから、呪文をそっと唱えている。全てを言い終えたその途端に、時刻はちょうど11時11分11秒を指し示していた。

 すると扉は眩い光を放ち、遺跡までの通路を繋げている。未知なる地への扉が開かれた瞬間であった。

「おー光ってる! よし、行こう!」

 彼女は好奇心の赴くままに、扉を潜り抜けて次元遺跡へと足を踏み入れていく。

 そして同じ時間帯に、マッドネバーに属する夜兎達も次元遺跡に向かっていた……

 

 場面は変わって、こちらは次元の狭間にあると言われる次元遺跡。一般人が立ち入ることは不可能な場所で、その存在を知る者すらほぼいない。

 しかしオベイロンは、独自の研究から遺跡の存在を確認。侵入方法もサイコギルドの協力によって見つけ出していた。彼はある理由から、遺跡に眠っているとされる強大な力に狙いを定めている。

 そんな未開の地に一足先へ降り立ったのは、会話を盗み聞きしていたとある妖精の少女。興味本位で来ていた彼女は、現在遺跡の奥部へと足を進めていた。

「おっ、また扉? もしかして、この先に秘宝とかあるのかな?」

 すると見えてきたのは、分厚く閉ざされた一枚の扉。行き止まりでもあり、ここが遺跡の奥部だと予測していた。まじまじと周りを眺めると、扉の横に配置された手形の痕跡が目に止まる。

「もしかして手を合わせろってこと? これで扉が開くの?」

 彼女は手形の通りに右手を広げた後、その痕跡に手をかざしていく。てっきりこれで扉が開くものだと、信じ込んでいたのだが――

〈ビリィ!〉

「痛!? 何今の電流!? そういう仕掛けだったの、コレ!?」

残念ながら予想は外れてしまう。手をかざした瞬間に、ちくっと電気ショックのような痺れが体に流れ込んでいた。簡単には人を通さない、いわばセキュリティーの対策は徹底しているのだろうか?

「もう一度やってみようかな……?」

 仕掛けにお見舞いされても、簡単には諦めない。電流による痛みよりも、全貌を知りたい好奇心が遥かに上回っているからだ。また手をかざそうとした――その時である。

「ねぇ、今声がしたわね!」

「間違いなくあいつだ! さっさと捕まえるぞ!」

 彼女はふと耳を澄ますと、こちらに近づく男女の声を聞き入れていた。これでようやく、遺跡には自分以外の人間がいると把握している。

「えっ、なんでバレてんの!? てか、早く逃げないと!」

 咄嗟に危機感を覚えて、すぐに場から逃げ出していく。黒い羽を広げて空中速度を上げると、遺跡へ降り立った扉まで一目散に向かう。常に警戒心を高めて周りを注視していた。

 するとようやく目的の扉が目に入ってくる。

「あった、あの扉だ! アレで元の世界に……」

 誰にも見つからずに、無事に帰れると確信した時であった。

「行かせるか! この盗人め!」

「うわぁ!? って、コウモリ!?」

 突如として彼女の目の前に、奇怪な生物が姿を見せている。小さい羽をパタパタと動かし飛行する、黒色のコウモリだ。しかも厄介なことに、人間と同じ言葉で話せるようである。

「早く来い! 妖精の女を見つけたぞ!」

「って、何を知らせてんの!? いいから黙って……」

 コウモリは冷静な態度で、追っ手に少女の存在を知らせていた。告げ口を聞くと、彼女は必死にコウモリの動きを封じ込もうとしている。迷惑この上ない仕様に、手を煩わせていた。

 だがしかし、少女を追うのはこのコウモリだけではない。

「クワァー!」

「キャ!?」

 突如として横から現れた物体と衝突してしまい、床に叩きつけられていた。ふと足を覗くと、そこには大きく噛みつかれた歯跡が刻まれている。

「痛! 何この跡……って、今度は黒い龍!?」

 軽い痛みを伴いつつも、彼女は自身と衝突した正体を目にしていた。そこには見たことも無い大型の黒き龍が、こちらをじっと睨みつけている。赤い目を禍々しく光らせて、少女に威嚇を続けていた。

「グワァァァ!」

「うわぁ! こっちに来るなー!」

 黒き龍の咆哮に恐れて、取り乱してしまう。右手を上下に振りながら、必死に抵抗した時であった。

〈カチ!〉

「えっ、スイッチ!?」

 壁に手を当てた途端、何かが起動する音が聞こえてくる。嫌な予感を察しているが、それは見事に当たっていた。

〈ヒュル!〉

「えっ!? キャャャャ!!」

 なんと寄りかかっていた壁が回転して、少女はそこに出来た隙間に落下してしまう。その先には次元同士を繋ぐ紫色の歪な空間が広がり、そのうちの一つの世界に吸い寄せられてしまった。

「どこに行っちゃうの、これー!?」

 悲痛なる叫びは空間全体へと響き渡っている。もちろん誰の耳にも聞こえず、彼女は光の彼方へと消えてしまった……。

 

「逃がすか!」

「待ちなさい!!」

 一方でこちらは少女を追跡する追っ手達。彼らが追いついた時には、もうすでに少女は遺跡外に放り出されていたが。

 すると黒いコウモリが、二人に状況を伝えている。

「遅かったな。あの女なら遺跡の外に放り出されたぞ」

「えっ、本当に!? これじゃどこへ行ったか分からないじゃないの……」

 対象の行方が不明となり、がっかりとしてしまう女性。しかし彼女とは対照的に、青年は前向きに気持ちを切り替えていた。

「いや、心配は無用だよ」

「ん? 何か策でもあるの?」

「そうそう。ドラグブラッカーがあの女に噛みついたんだ。この匂いがあれば、どこに行ったのかも分かるかもね」

「へぇー、そうなのね。やるじゃんアンタも」

 どうやら彼によると、黒き龍――いやドラグブラッカーの作戦で、事前に少女へ印を付けておいたらしい。これさえあれば、現在地も特定できるようだ。

「仮にも僕達は異形の力を手にしたんだ。使える者は有効活用しないと。そのコウモリのようにね」

「もちろんよ。ねぇ、キバットバットⅡ世」

「そうだな」

 彼らの柔軟な考え方には、コウモリ――いやキバットバットⅡ世も共感していた。

 夜兎達が手にしたとされる異形の力。それはかつて、別世界で猛威を振るった漆黒の戦士の力である。使役するモンスターらに感謝しつつ、彼らは周到に少女の尾行を再開していく……。

 

 一方で次元の彼方へと消えた妖精少女はというと、

「ここは……どこなの?」

真っ暗な闇が広がる森林にて力尽き倒れこんでいる。落ちていた無数の木の葉を埋もれながら、ひっそりと眠りについていた。

 彼女が辿り着いた世界は、幸いにもALO星と同じ宇宙に存在する地球の某所である……。

 

 再び場面が変わって、こちらはかぶき町にある万事屋銀ちゃん。時期は九月の中旬頃。秋の夜長にと彼らは夕食を食べ終えた後に、テレビで放送されている特番、カマシスギ都市伝説を興味深く見入っていた。

「へぇー、人間にも生き返る術があったんですね」

「その通りです! 死んでしまった人間は十五人の英雄の力を集めることで、この世に生を戻すのです! この話、信じるか信じないかはアナタ次第です!」

 番組内では話の締めとして、セキさんの有名な台詞が決まっている。彼はゴーストになった人間の隠された蘇生方法について熱弁していた。

 あくまでも噂程度の話だが、ユイはこの話に強い興味を示している。

「十五人の英雄ですか……!」

「おっ、ユイもこの噂が気になったアルか?」

「もちろんです! セキさんの話はどれも不可思議で、とっても興味深いですから!」

 神楽からの問いに彼女は、満面の笑みで返答していた。相当この都市伝説系の番組を気に入った様子である。

「そういえばユイは、オカルト系の番組を見るのは初めてだったな」

「オカルトじゃありません! 都市伝説ですよ、パパ!」

「ハハ、ごめんって」

「でも確かに、ユイちゃんが気に入る理由も分かるよ。どれも意味深なものばかりだし」

「なんたって、都市伝説ですからね!」

 新八ら仲間達とも面白さを共感しながら、彼らは引き続き会話を弾ませていた。より場は賑やかになる一方で、二人ほど会話に入れていない者達がいる。

「あっ、ところで銀ちゃんとアッスーはまだビビっているアルか?」

「そうだな……まだ一向に振り向かないし」

 神楽やキリトが目線を向けたその先には――居間の隅っこで耳を塞ぐ銀時とアスナの姿があった。共に正座をしながら、幽霊系の話が終わらないか、今か今かと待ち続けている。普段から相性の合わない二人だが、今回ばかりは互いに協力しあっていた。

「おい……あの話って、もう終わってんのか?」

「私に聞かないでよ! ずっと耳を塞いでいるんだから、いまいち進行が分からないのよ!」

「それくらい把握しとけや! 仮にもお前、元血盟騎士団の副長だろ? そういう気配りくらいできないのかよ?」

「私に何を期待しているのよ! そもそも銀さんだって、攘夷戦争の英雄の一人なんでしょ? そんな人がお化けくらいにビビって、恥ずかしくないのかしら?」

「あんだと!? そっくりそのまま返してやるよ! ヤンデレ症候群!」

「言ったわね、ニート侍! 私と違っていい大人なんだから、怖いのくらい我慢しなさいよね!!」

「何を……!」

 はずが、途中から不満が爆発して喧嘩寸前の空気に変わり果てている。銀時、アスナ共に互いの顔を睨みつけて、一時の意地を張り続けていた。負けず嫌いな性格が、悪い方向へと向かっている。

 見るに堪えない二人の言い合いに、仲間達も思わず仲裁へと入っていた。

「って、銀ちゃんにアッスー! この辺にしとくアルよ!」

「そうですよ! 幽霊の話はとっくに終わりましたから!」

「えっ、そうなのか?」

「なんだ、良かったわ……」

 新八らからの補足を聞いて、二人はほっと心を落ち着かせていく。次第に冷静さを戻して、喧嘩の予兆もすんなりと収まっていた。

「って、じゃ今は何をやっているの?」

「今は確か、セキさんがロケをしているな」

「空川町ってところで、あるモノを探すみたいですよ!」

 アスナからの質問に、キリトやユイが返答していく。どうやら番組はトーク形式からVTR形式に変わり、またもセキさんが視聴者に概要を語りかけていた。

「おぉー、来たね! 空川町! こののどかな町の奥には、自然豊かな森があるんだよね! 森の奥を潜り抜けると、そこにあるのはそう! 古びた遺跡! 最近皆さんはこんな噂を耳にしたことはありませんか? 次元の狭間にある遺跡の存在を。もしかするとこの二つの遺跡、妙な関係を秘めているのかもしれませんよ! さぁ、早速向かいましょうか!」

 彼が熱弁したのは、密かに噂されている遺跡の存在。次元の遺跡を話に挙げて、ある町の遺跡との関係を示唆していた。

 意味深かつ不可思議な内容に、万事屋一行もつい気になってしまう。

「今度は遺跡の謎ですか!」

「こっちも面白そうアルナ!」

 特にユイと神楽は、好奇心を震わせてテレビに食いついていた。一方の銀時らは、別の視点から遺跡に興味を向けている。

「空川町って、結構近い場所じゃねぇかよ」

「えっ? そうなのか?」

「確か列車で行ける距離なんですよ。キリトさん達の世界で言うと、東京から埼玉に行く感覚なんですよ」

「そんなに近いんだ……」

 空川町の所在地を知って、キリトやアスナは小さくも驚いていた。彼らも元の世界では埼玉県に住んでいるので、妙に距離の説明には納得してしまう。

 するとここで、聞き捨てならない一言が飛び出ていた。

「ハハーン。こちらの方にお伺いしましょうかー。何か最近変わったことはありますか?」

「いやー実はね、最近見たんですよ。銀色の怪獣みたいなやつと、槍を持った女の子をね。アレは幻だったのかなー」

「そうですか! これは貴重な情報ですね!」

 映し出されたのは、セキさんが町の老人から情報を得る一幕。町人が例えた表現に、一行は思わず耳を疑っている。

「えっ? 銀色の怪獣……?」

「槍を持った少女って……!?」

「もしかして、サイコギルドでは!?」

 そうこの情報は、サイコギルドの面々とまるで特徴が一致していた。思いもしなかった情報提供に、キリトら三人は目を丸くしてしまう。

 もちろん銀時らも、多少なりとも驚いている。

「おいおい、まさか本当にあいつらなのか?」

「確かに。次元を行き来する能力があるとしたら、一枚咬んではいそうですけどね」

 特に銀時や新八は、冷静に物事を判断していた。サイコギルドに関する情報がわずかしかない中で、この手掛かりは大変貴重である。無いよりはマシと言ったところか。

 さらに神楽は、早とちりである行動に移っている。

「こうしちゃいられないネ! ねぇ、みんな! 明日は空川町に行ってみるアルよ!」

「って、神楽ちゃん!? 急すぎるって! まだ本人だって、確定してないんですよ!」

「それでも行ってみるべきですよ!」

「そうね。私達から行動して、真実を確かめに行きましょうか!」

「それじゃ、シリカやリズ達にも声をかけてみるか」

「いや、アイツらまで誘うのかよ!? 遠足じゃねぇんだぞ、おめぇら!」

 いてもたってもいられずに、ほぼ決めつけで空川町へ行くことを決めていた。番組そっちのけで、サイコギルド関連にテンションを高めている。

 こうして万事屋一行は、仲間と共に空川町へ行くことを決めていた。サイコギルドの足取りを探すため、各々がやる気を高めている。

 ALO星で暗躍する反逆者。地球に転移した妖精の少女。彼女を追いかける夜兎達、サイコギルドの謎を追う万事屋一行。様々な出来事が重なり合い、新たなる物語が幕を開けた……。




※没になった前書き
今日は10月4日! この日と言えば……

シリカ「はいはーい! アタシの誕生日なんですよ! 皆さん、祝ってくださいね!」

ゴースト「そしてこの俺、天空寺タケルの誕生日でもあるんだ!」

シリカ「うんうん……って、誰!?」

ゴースト「細かい事はいいから! という訳で、剣魂の新長篇が始まるぞ! 読者のみんなもバッチリカイガンして見てくれよな!」

シリカ「だから誰なんですか、アナタは!?」




おまけ予告 カマシスギ都市伝説!

今宵もアナタを惑わす噂の数々をお送りしよう……

「実は一昔前に起こった大量殺人事件は、戦闘民族の人殺しゲームが絡んでいるんですよ」

「本来の人類は一万年前に起きたサバイバルで勝ち残って、地球の支配者となったという記述が最近出てきたんです」

「超能力者が何故公にならないのか? それは神に近づく人間を恐れる生命体によって、抹殺されているから」

「人は絶望すると体の中から化け物を生み出すらしいですよ」

「宇宙を侵食する森が多くの星で持ちきりになっているんですよ」

セキさん「さぁ、これらの噂。信じるか信じないかは、あなた次第です!」








 新たなる長篇はいかがだったでしょうか? ALO星で暗躍する反王権組織、マッドネバーとその総帥のオベイロン。彼に味方するのは数多の怪人達と、ごく少数の天人達。そして後者が従えていたモンスターや、所持していたアイテムとは一体? 次元の遺跡も明らかとなって、増々謎が出てきましたね。今後銀さんやキリト達とどう絡むのか、注目してください!
 そしてこの長篇に関係するのは、話を盗み聞きしていた妖精少女。実はSAO出身のキャラクターなんです! 全貌は次回以降に明かしますが……
 ちなみに冒頭から出ていた近衛兵と町娘は、特に長篇とは関係ないのですが、名前は少し小ネタっぽくしました。分かる人には分かるはずです。
 ではまた次回、第二回目でお会いしましょう!

諸事情でコメントを返すのが遅くなるかもしれません。そこはご了承ください。







次回予告

神楽「電車なんて、物凄く久しぶりアルよ!」

沖田「どうしたんでい、俺に警戒して」
リーファ「いや、だって……沖田さんだし」

ユイ「公衆電話なんて、私初めて見ました!」

銀時「って、まさかの帰宅オチかよ!?」

キリト「君は……?」
フィリア「私は……フィリア」

――目覚めろ、その魂!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。