果たして今後どうなることやら……では、どうぞ。
次元遺跡へ侵入した銀時やキリト達を待ち構えていたのは、マッドネバーの新たな戦士。彼らもまたダークライダーへと変身を遂げて、瞬く間に勝負を仕掛けていた。
現在は二つの通路にて、銀時らとキリトら六人ずつで戦闘を繰り広げている。
「行くぞ、新八君!」
「言われなくても分かっていますよ!」
「ウゥー!」
互いに声掛けをして、多数の屑ヤミーを相手にする近藤と新八。刀や木刀を使いこなして、瞬時に相手へダメージを与えていく。
現在彼らの戦う屑ヤミーは、寂れた包帯を模した不気味な怪人である。攻撃力は低いが、耐久力には優れており、数の差もあって撃破に手間のかかる相手だ。それでも彼らは諦めず、勇猛果敢に挑んでいく。
「ホワッチャー! ……くっ」
常時日傘や格闘戦で戦う神楽にも、ちょっとした苦痛に悩まされていた。数分前のダークキバ戦で体力を消耗しており、肝心な状況で力を発揮できていない。
悲痛な表情で傷んだお腹を抑え込むと、そこへ沖田が駆け寄り茶々を入れてくる。
「大丈夫か、チャイナ? またゲロでも出して、読者を引かせるんですかい?」
「うるせぇ。オメェに言われなくても大丈夫ネ! ほら、そっちの奴は任せたアルよ!」
「へいへい」
減らず口に怒りを覚えた彼女は、適当な返答で返す。体勢を整え直すと、改めて攻撃を再開していた。つられるように沖田も、刀を振りかざして屑ヤミーを切り倒していく。戦いが激化する一方、銀時と土方は共にポセイドンへ挑んでいた。
「はぁぁあ!」
「たぁぁ!!」
「フッ、ハァ!」
両者は気合を込めて武器を振るうが、ポセイドンはすぐに長槍で防御に徹している。一進一退の攻防が続く交戦。二対一にも関わらず、やはり苦戦を強いられてしまう。
すると二人は、一旦場を離れて体勢を整え直す。ポセイドンも同じく身を引いて、戦況を見定めていた。
「中々の手応えだ。だが俺に勝つことは出来ないだろうな」
有利だと判断して、自身良く言葉で挑発している。勝利の見込みもあり、態度からもその自信が滲み出ていた。
そんな言動に惑わされず、銀時らは冷静に場を見極めていく。
「……なるほどな。こいつも厄介な相手だぜ」
「一筋縄じゃ行かねぇだろう。こうなったらしゃくだが、お前と手を組んで奴を捻じ伏せるぞ!」
「あたぼーよ! やってやろうじゃねぇか!」
むやみな攻撃は考えず、互いに協力を心がけることで気持ちを一致させている。
珍しくも共闘する場面が見られると思いきや、
「というわけだ土方。お前が前線に立って囮になれ! その隙に俺が仕留める。それでいいよな?」
「いや、ちょっと待て!! なんで俺が囮役なんだよ!?」
「俺が嫌だからに決まってんだろ! 四の五の言ってないで、さっさとやれや!」
「ふざけんな!! そういうテメェが囮役をやれや!!」
「何を指示してんだ! 俺の作戦だろうが!」
「関係ねぇだろうが!!」
作戦の囮役を巡って揉め事を始めてしまう。互いの意見が反発して、意固地にも譲り合おうともしない。戦闘への緊張感は薄れて、場には微妙な雰囲気が流れ込んでいた。
もちろんポセイドンも、少なからず影響を受けている。
「はぁ? 何を喧嘩している? さっさと俺にかかってこい――!」
そっと空気を読んで、戦闘へ戻るように促してきた……その時である。
「うるせぇ!」
「邪魔するんじゃねぇ!」
「ブフォ!?」
なんとも理不尽な拳が、彼の仮面へと当たってしまった。喧嘩へ夢中になるあまり、二人は戦闘のことなどすっかり忘れていた。
未だに意地を張る彼らに対して、ポセイドンは鮮烈な怒りの感情が湧き上がる。
「お前ら……! 戦いを何だと思っている!!」
怒号を上げた途端に彼は、次々と槍をぶん回して、青いエネルギー波を解き放ってきた。
「何!? ぐはぁ!?」
「またか!?」
喧嘩する二人の手前に衝撃波は当たり、両者は壁際に吹き飛ばされてしまう。土方は右側、銀時は左側の壁に叩きつけられていた。中でも後者は、遺跡の仕掛けが隠れている壁である。いずれにしろこれで、喧嘩への対抗心が薄れたのは事実だろう。
「銀ちゃん! 何やってるアルか!」
「土方さんもふざけないで戦ってくだせぇよ」
「うっせぇ! ほぼアイツのせいだからな! 勘違いするなよ!!」
二人のグダグダな光景には、仲間達からも呆れた声が上がる。神楽、沖田共に冷めたような目線を向けていた。土方は未だに銀時へ責任を押し付けているが……。
一方の銀時は、首筋を抱えて自身の痛みを確認している。
「痛ぇ……って、この声は?」
そんな中で彼は耳を澄まして、壁の向こう側にいるキリト達の様子を聞いていた。こちらも苦戦しているようだが……?
彼女達が相手取っているのは、魔法使いに似たダークライダーのソーサラーと、彼女に呼び出された魔石の戦闘員グール。中でもグールは四体しかいないが、屑ヤミーと同じく耐久力があり、しぶとい相手に変わりはない。
槍を用いて女子達へと襲い掛かるが、彼女達は恐れることなく立ち向かっている。
「はぁぁ!」
「セイ!」
「フッ、ハァ!」
「いっけぇ!」
シリカ、リーファ、シノン、リズベットと各々が気合を込めて、戦闘を優位に進めていた。得意な武器を生かして、接近戦や遠距離戦に応対している。
「グ~ル!」
対してグールは鳴き声を上げながら、愚直に戦闘を続けていく。槍を叩き落とされようが、周到に女子達を足止めしていた。
グールらが一旦身を引いてきた後、女子ら四人も引き下がり呼吸を整えていく。
「こいつら、中々しぶといわね……」
「着実にダメージは与えているはずなのに……」
やや苦痛な一言を呟くシノンやリーファに、
「それでも突き進みましょう! アタシ達だって強くなったんですから!」
「ナー!」
「そうね、みんな! 怯まず行くわよ!!」
シリカ、ピナ、リズベットは真逆にも情熱的な掛け声を発している。これまでに培った百華の修行を思いつつ、彼女たちは自信を高めていた。リーファやシノンも二人の考えに乗っかっている。
「分かったわ!」
「もちろんよ!」
真剣そうな表情を浮かべて、再びグールへ立ち向かう。決着が付くのも遠くはないだろう。
一方キリトとアスナの二人は、体力の消耗などお構いなしに、ソーサラーと交戦していた。
「ハァ! タァ!」
「ソリャ!」
接近戦を中心に、長剣や細剣で相手のベルトを狙い続けている。険しい表情で連続攻撃を試みるも、中途半端に集中力が途切れて、上手い具合には決まらない。
軽い身のこなしでかわすソーサラーにも、二人の現状はお見通しであった。
「フフフ。中々の腕筋ね。でもアンタ達の体力は大丈夫かしら?」
「くっ……気付かれているか」
「さっきの戦いの消耗が響いているのかも……」
鈍った動きを目にして、すかさず指摘を加えてくる。核心を突く一言に、二人は動きを止めてしまった。その隙にソーサラーは、指輪の魔法を発動させる。
〈コネクト! ナウ!!〉
ベルトに手をかざして起動音を鳴らすと、目の前に魔法陣が出現。その中から主武装でもある長柄の斧、ディースハルバードを取り出していた。
「今度はアタシの番よ! ハァァ!!」
その斧を使用して、彼女は早速金色の衝撃波を繰り出していく。
「伏せろ!!」
「フッ!?」
向けられた攻撃を避けようと、キリト、アスナの両者は横側へと退ける。行き場を失った衝撃波は、床へと落下して消滅した。
と二人がソーサラーと対峙していた同じ頃。
「「「「ハァァ!!」」」」
「グラァ~!」
グールを相手にしていた女子達にも決着が付いていた。シリカ、リズベット、リーファは接近戦から、シノンは遠距離から武器を使いとどめを加えている。時間はかかったが、どうにか勝利を勝ち取っていた。
戦いを終えた四人は、真っ先にキリトやアスナの元へと駆けつけてくる。
「大丈夫ですか、キリトさん!? アスナさん!?」
「あぁ、なんとか」
「でもちょっときついかも……」
ひとまず様子を確認するものの、二人の調子はあまりよろしくない。心なしか顔色も悪いように見えている。
「大丈夫! ここは私達も加わるから!」
「あんな魔女なんかに、絶対負けないんだから!」
だからこそ仲間達は、威勢よく元気づけていた。リズベットやリーファの言う通り、仲間の手を借りればなんてことない。自信を高めた彼女達に、恐れるものなど無いと括っている。
しかし仲間達が加勢しようとも、ソーサラーの気も変わらない。
「フフ。何人かかってこようが、結果は同じよ」
「それはどうかしらね?」
「そんなことはないです! ピナ! ソーサラーの動きを止めてください! バブルブレス!!」
「ナー!!」
反抗するようにシリカは、お見舞いにピナの得意技を指示していく。相手の動きを止める泡攻撃で、戦況の起点を作ろうとしている。
するとソーサラーは、
「フッ、かかってわね」
〈コネクト! ナウ!〉
再び指輪の魔法を発動していた。目の前に魔法陣が現れると、泡がその中を通り攻撃を無効化してしまう。さらには……リズベットの目の前にも同じ魔法陣が出現していた。
「うわぁ!? って、なんで!?」
「リ、リズさん!?」
彼女の目の前には、バブルブレスが魔法陣を通して降りかかり、動きを止められてしまう。攻撃すら回避する魔法に、シリカらにも何が起きたのか分かっていない。
「フフ。無様な姿ね」
ソーサラーは上から目線で呟き、さらなる魔法を発動していた。
〈ジャイアント! ナウ!〉
起動音と共に、再びリズベットの前へ魔法陣が出現。動けない彼女の目の前に現れたのは、ソーサラーの巨大化した手だった。
「えっ、嘘!? 何これ!?」
目の前を覆いつくすほどの大きさに、彼女が圧倒されていると……
「ハァ!」
「キャッァァ!!」
「リ、リズ!?」
「リズさん!?」
突然繰り出されたデコピンで遠くまで吹き飛ばされてしまった。叫び声を上げながらリズベットは、息を切らせて倒れ込む。思いもしない攻撃魔法を受けて、ダメージを負っている。
「大丈夫!?」
心配した仲間達も彼女へ駆け寄ろうとした時であった。
「アナタ達も受けるのよ! ハァァ!!」
「ウワァ!?」
「キャッ!?」
隙を見たソーサラーは魔法を解除させず、巨大化した腕で周りを一掃してしまう。狭い通路の中で攻撃を避けれず、ほぼ全員が彼女の腕に蹂躙されている。各々が床や壁に叩きつけられると、ソーサラーはようやく魔法を解除していた。
指輪の魔法の未知なる攻撃に、手が出せずじまいにキリトら六人。遠くから見守っていたフィリアやユイも、この現状に憤りを感じている。
「あぁ……みんなが」
「あの魔法をどうにか防がないと……!」
共に深刻そうな表情を浮かべて、もどかしい気持ちを抑え込んでいた。フィリアに至っては、見ていられずに自ら戦おうとも考え始めている。
こちらの戦況もあまり芳しくはなかった。
引き続き立ちはだかるダークライダー。銀時らやキリトら関係なく、その強さに苦戦を強いられてしまう。
各々が苦い表情で、対策を練っていると、銀時は壁越しに仲間の気配を察していた。その正体はキリトとアスナである。
「おい、待て! そこにいるのはキリトか?」
「って、そっちは銀さんか?」
「あぁ、そうだよ。ちょいとダークライダーにてこずっていてよ……そっちはどうだ?」
「私達も同じよ。ソーサラーの魔法に翻弄されているわ……」
「苦戦はお互い様だな。どっちにしろ打開策を考えないと、この場は乗り切れないか……」
相手側の声を頼りに、三人は壁越しにて本音を漏らしていた。勝利の糸口は未だに手探りのままで、自信も失いかけているように聞こえる。今後の対策を考えつつ、リュウガやダークキバ戦のように、撤退の道も視野に入れていた。
もう一歩と考えを煮詰まらせていた――その時である。キリトはある作戦を思いついていた。
「――そうだ。なぁ、銀さん! そっちのダークライダーを、壁際におびき寄せることは出来るか?」
「急にどうした? 何か良い作戦でも思いついたのか?」
「その通りだよ! だから頼む、俺達はスイッチを探して待っているから!」
自信良く手短に銀時へ伝えると、彼は立ち上がり行動に移している。その姿に困惑するアスナをよそ目に、無我夢中で壁をまばらに触り始めた。
「ちょっと、キリト君? まさか考えていることって……」
不思議そうに問いかけると、彼は落ち着いた姿勢で返答する。
「もちろん脱出だよ。スイッチを探して、銀さん達がいる通路に逃げ込むんだ。このまま戦うよりは、撤退した方がまだ勝ち目があるからな」
「なるほどね。でも銀さん達が戦っているダークライダーはどうするの?」
「それも大丈夫だよ。銀さんだったら、俺の真意も分かってくれるから。きっと上手くいくよ」
「真意? ひよっとして……?」
やはり彼が思いついたのは、壁の仕掛けを使った撤退案だ。敵前逃亡を図るが、アスナは次なる戦闘が始まることを危惧している。それでもキリトには、確実に回避する秘策があるそうだが?
土壇場にアスナが察していると、壁の向こう側にいる銀時も直感から理解を示していた。
「そういうことかよ……! だったら話は早ぇな!」
ニヤリと面白がる笑みを浮かべた後、彼もキリトと同じく立ち上がる。木刀を握り直して、作戦通りに動き始めていた。
一方の新八や神楽らは、真選組と協力して残った屑ヤミーと交戦している。
「「ハァァ!」」
「ウゥー!!」
新八の振るった確かな斬撃と、神楽の怪力が合わさった拳が屑ヤミーへ致命傷を負わせていた。攻撃に耐えられなくなった彼らは、唸り声を上げてノロノロと倒れ込む。爆発と共に残ったのは、生成時に使用された欠けたメダルのみだ。
「やったな、お前達!」
「これで残るは野郎だけだな」
「覚悟するでさぁ。海鮮丼!!」
真選組の面々も撃破した二人を激励した後、真っ先にポセイドンへ敵意を向ける。沖田は洒落を交えて威嚇をしていたが。
「海鮮丼だ? 俺はポセイドンだ! その生意気な口も、今すぐに葬り去ってやろう……」
べたな挑発には乗らず、彼の堂々とした構えは続く。長槍を握りしめて、新八らへ襲い掛かろうとした時だった。
「ハァ!」
「グハァ!?」
「何!?」
「銀ちゃん!?」
横入りの如く割り込んだ銀時に、その攻撃姿勢を崩されてしまう。彼はとび膝蹴りで衝突して、木刀を構えたまま間髪入れずに次々と攻撃を繰り出してきた。
咄嗟の行動には、仲間達や真選組も戸惑ってしまう。
「万事屋!? 急にどうした!?」
「一体何をする気だよ!?」
「決まってんだろ! こいつを壁側へずらせ! テメェらも手伝えよ! おらよっと!」
近藤や土方の問いにも、銀時は簡略的にしか答えない。力づくでポセイドンを押し切る姿に、仲間達も薄々彼なりの策があると悟っていた。
「旦那なりの作戦ってやつか」
「と、とりあえず僕らも手伝いましょう!」
「そうアル!」
沖田、新八、神楽と次々に仲間達も銀時の流れに乗る。こうして六人はポセイドンの一手を読み、がむしゃらに壁際へ追いつめていた。
一方のキリトも、真の狙いは明かさずに仲間達へ呼びかけを図っている。
「みんな! 壁側に集まってくれ! ユイ、フィリアも!」
「って、キリトさん!?」
「急にどうしたのよ……?」
予想の斜め上をいく指示に、仲間達内でも戸惑いが広がる。シリカやようやく立ち上がれたリズベットも、これには戸惑いしか浮かばない。
もちろんフィリアとユイも同じだ。
「えっ、私達も!?」
「何かの作戦でしょうか……行ってみましょう!」
半信半疑だが、二人はキリトの指示へ従うことにする。アスナらのいる場所まで駆け寄った途端に、
「とりあえず私達も!」
「……そうね」
リーファら四人も空気を読んで次々に戻ってきていた。
「ふーん。とうとう観念したのかな?」
その狙いを読めないソーサラーは、てっきり最後の悪あがきだと解釈をしている。好機と捉えて、じわじわとどめを決めようと目論んでいた。
彼の考えを読めない仲間達は、少なからず不安を露わにしている。一方のキリトは前を向きつつ、後ろでは密かに壁を動かすスイッチを探していた。
「確かこの辺のはずだが……」
「って、キリト? もしかして壁のスイッチを探しているの?」
「あぁ、そうだよ。でも静かにな。バレたら困るか――おっ、あった!」
シノンからの疑問に小声で返したキリトだが、スイッチを見つけた途端に嬉しい声を上げている。これにて脱出への道筋は一応確保された。
「何をしているのか知らないけど、もうここで終わりよ! 妖精ちゃん達……」
それにも関わらず、ソーサラーは未だに彼らの行動に気付かない。勝利を確信して、細かいところは見落としていた。
すぐにでもとどめをさそうとした――その時である。
〈ガタァ!〉
「ん? 今の音は……」
壁の向こう側から、何かが衝突する音が聞こえてきた。これにキリトは、銀時からの合図だと確信している。
脱出へのタイミングを見計らう中、ソーサラーは即座に必殺技を構えていく。
〈チョーイイネ! バニッシュストライク! サイコー!!〉
指輪をベルトへかざすと、彼女の右手からエネルギーをまとった魔法陣が生成。強力な必殺技で、戦いに決着を付けようとしたが――その目論見はすぐに崩れ去ってしまった。
「今だぁ! 来い、キリト!」
「銀さん! よし……みんな! 逃げるぞ!!」
不意にも聞こえてきた銀時からの合図。これを頼りにキリトは、仲間達へと呼びかけて、発見したスイッチを力強く押していた。
〈カチィ!〉
しっかりと起動音が鳴ると、壁が急回転して別通路を繋ぐ隙間が出来ている。
「脱出口!?」
「やっぱりこれが狙いだったの!?」
「さぁ、こっちよ!! 早く!」
僅かに出来た逃げ道を見て、ようやく彼の作戦に気付くフィリアやリズベットら仲間達。驚嘆しつつも時間が限られている為、急いで隙間へと逃げ込んでいく。
彼らが逃げ出したと同時に、別通路から姿を見せたのは、
「クワァ!? あいつら、何の真似だ……」
壁際に追いつめられていたポセイドンである。移動する壁にまんまと利用されて、状況を理解できないまま別通路へ通されていた。
困惑する彼に待ち構えていたのは……
「ハァァ!」
ソーサラーの必殺技である。
「ん、何だ――って、うわぁぁ!!」
「あっ」
気が付いた時には遅く、彼はかわすことなく必殺技を受けてしまった。場には断末魔の如くポセイドンの叫び声が響き渡り、ソーサラーの唖然とした態度が残っている。壁の仕掛けを知らない二人により、作戦は大成功に収められていた。
一方で別通路に逃げ込んだキリト達は、ひとまず危機を回避できたことに安心している。
「なんとか逃げられたみたいね……」
「良かったです……」
「ナ……」
シノンやシリカを始め、女子達も安堵の表情を浮かべていた。一方の万事屋や真選組の面々は、急にこちらへ来たキリト達へ驚きの声を上げている。
「アッスー! みんな!」
「こっちの道へ逃げてきたのか?」
「壁の仕掛けを利用したのか?」
神楽、近藤、土方と質問を投げかけたが、彼らにとってはそれどころではない。
「説明は後! 休んでいる暇は無いわ!」
「とりあえずこの場から離れよう!」
「だな。さっさとずらかるぞ!! オメェら!」
「わ、分かりました!」
「お、おう!」
質問を後回しにして、仲間達へ撤退を呼び掛けていく。ダークライダー達が困惑している隙に逃げ込むことが、キリトの考えた撤退策だ。銀時も彼の真意を読み取り、効率よく作戦に貢献している。
おかげでスムーズに成功したことは言うまでもない。一行は走り出して、さらなる奥部へ突き進んでいく。
一方で作戦にまんまとはめられたソーサラーとポセイドンは、予想外の事態に混乱状態へと陥っている。
「ちょっと、アンタ。大丈夫かい?」
「大丈夫なわけがあるか……何故攻撃を強行した!!」
「だって仕方ないじゃん! まさか扉が開くなんて、思ってなかったから!! アンタが来るなんて、アタシの予想外だったんだよー!」
ほぼとばっちりな攻撃を受けて、激情に駆られるポセイドン。彼の強烈な怒りを抑えつつ、ソーサラーは必死に弁解していた。それでも上手く話がまとまることはなく、言い合いは何分間も続く……。
「そんなのただの言い訳だ! だからお前は甘いんだよ!!」
「……なんですって!?」
一方でこちらは、作戦成功を果たした万事屋一行。戦闘に悔いは残りつつも、最悪の事態を回避できたことには気持ちを楽にしている。心なしか皆の表情は余裕を取り戻していた。
「なんとか上手くいってよかったな!」
「そうね。あの二人も、すぐには戻ってこないと思うし」
銀時やアスナも、作戦成功には安堵の表情を浮かべている。だが一部の仲間達には、不安な気持ちを持つ者もいた
「でも、この先またあのダークライダー達と出会ったら……」
「アタシ達だけで勝てるのでしょうか……」
リーファやシリカは、浮かない表情で本音を口にする。今後また対峙するだろうダークライダーに、勝てる見込みを見失っていた。どれも規格外の能力を持ち、太刀打ちできるか不安視してしまう。
「心配するな。そん時は全員でぶつけあえば、どうにかなるだろ」
「そうだな! 相手の手の内は明かしているんだ! 後はそれを防ぐために、立ち回ればいいだけさ! ハハ!」
そんな彼女達へ土方、近藤と真選組の面々が、安心させるフォローを加えていく。難しく考えることなく、柔軟に対応するべきだと教えていた。
これにそっと表情を柔らかくするリーファらだが、フィリアにはまだ別の不安を抱えている。
(でもまた別のダークライダーが現れたら……)
研究所を覗いていた分、さらなるダークライダーの存在を危惧していた。その予感は違った形で、後に現実となるのだが……。
安心と不安が入り交じりつつ、万事屋一行の遺跡探索はいよいよ佳境を迎えていく。
そして、しばらく走り続けて数分が経った頃。
「あっ、アレだよ! 遺跡の奥部!」
「って、とうとう着いたんですかい?」
フィリアらの目の前には、いよいよ奥部へと繋がる扉が見え始めていた。一行は扉の前に立ち止まると、その外観をじろじろと眺め始めている。
「これが奥部に繋がる扉なの?」
「そうだね。でも簡単には開かないはずだよ」
「えっ、そうなの?」
「うん。あの手形に手をかざしたんだけど、電流が流れるだけで何も起きなくて……」
シノンやリーファの問いに、フィリアは事細かに自分の経験を話していた。彼女によると、この扉は簡単には開かない仕組みだという。一筋縄ではいかず、またしても困難に直面している。
銀時ら万事屋の三人も、苦い表情を浮かべていた。
「また面倒な仕掛けがあんのかよ……」
「あぁーまどろっこしぃネ! こうなったら、力づくでこじ開けるネ! ゴリライズアルよ!!」
「って、ダメだって神楽ちゃん!! 何が起きるのか分からないから!!」
神楽に至ってはじっとしていられず、仕舞いには強行突入を試みている。近くにいた新八がすかさず彼女の横暴を止めていた。
一方のキリトやアスナらは、冷静に扉の仕掛けを予測している。
「電流が流れる扉……もしかしたら、指紋認証と同じシステムかもな」
「遺跡自体が人を見極めている可能性もあるわね。あくまで予想だけど……」
どれも推測論でしかないが、確証がない分は断言も難しい。場にいた仲間達も考察に憤っているが、ここで行動派のリズベットが動き出していた。
「ってことは、こんだけ人がいれば一つくらいは開くんじゃないの?」
「えっ? リズさんが行くんですか!?」
「おいおい、大丈夫か? 電流が流れるかもしれねぇのによ」
「心配無用よ! 何事も挑戦第一なんだから!」
「その自信はどっから出てくるんだよ……」
シリカ、銀時、土方と心配されるものの、彼女の意思は変わらない。図太いチャレンジ精神で、遺跡の認証に挑む様子である。
「まぁまぁ、見てなさいって! アタシの直感だと、すんなり扉が開いて――」
そう軽口を叩きつつ、手形に手をかざした時だった。
〈ビリィ!〉
「痛!? えっ、ダメなの!?」
彼女の思惑とは裏腹に、強い電流が一瞬だけ体に流れ込む。フィリアの時と同じく、侵入は失敗に終わってしまった。
「やっぱり失敗か……」
「こりゃどう開くのか分からないアルナ」
経験者であるフィリアも、残念がった表情を見せている。
「あ~! なんかすっごく悔しいんだけど!!」
この結果に納得がいかず、リズベットは悔しさを前面に滲ませていた。今の気持ちを存分に吐き出した時、次なる挑戦者が名乗りを上げてくる。
「ハハハ! そう気にするな! こういう時は、この俺に任せておけ!」
「今度は近藤さんですか?」
威勢のいい声で前に出てきたのは、真選組局長の近藤勲。彼も自信に満ち溢れた態度で、遺跡の認証に挑もうとしていた。
ユイら仲間達が不安そうに見守る一方、彼はジェスチャーを使って自身の想いを露わにしている。
「誰で開くのか分からないなら、次々とチャレンジするべきだ! きっと俺が開けた暁には、奥部にお妙さんがウエディング姿で待っているだろうな!」
「いや、そんなわけないでしょ! どんだけお気楽に考えているのよ!」
ネタか本心かで言っているか分からないが、少なくとも扉を開ける自信は高い。願望を混ぜ込んだ意気込みに、リズベットもつられてツッコミを交わす。
仲間内でも不安が募るばかりである。
「何を言っているんだ! ほらこのように、あっという間に扉が開いて……」
と言い続けながら、手形に手をかざした時だった。
〈ビリビリビリビリ!!〉
「ギャャャァァァ!!」
なんと彼の体には、先ほどよりも何倍も強い電流が、手形を通して流れてきている。当然この痛みに耐えられないわけがなく、危機に迫った表情で大きな叫び声を上げてしまった。
「こ、近藤さん!?」
「ちょっと、大丈夫なの!?」
もちろんこの光景に、仲間達にも衝撃が走っている。近藤への心配もそうだが、本気を出してきた手形の仕掛けにも驚きを受けていた。
そして数秒も経たないうちに、近藤はその場へ倒れ込む。
「な、なんで俺だけ高圧電流……?」
痺れた体のまま呟くと、銀時はためらいもなく指摘を加えてくる。
「やましい考えが原因じゃないのか?」
「いや、本当に関係しているのか……?」
直球的な返しであった。思わずキリトも、即座に指摘を返す。
一方で近藤の近くにいたリズベットも、この顛末に彼のことを不憫に思っていた。
「なんか、ごめん。近藤さん……」
「いや、謝らないでくれ!! 余計に心が傷つくから!!」
苦い表情で謝りを吐き、善意から同情を寄せている。彼にとっては、さらなる追い打ちでしか無いが。
結局近藤でも開かなかった扉。高圧電流の仕掛けには、名を上げづらい状況と化している。
そんな中でも、周りの状況に流されない男がいた。
「ったく、仕方ねぇですね。ここは俺に任してくだせぇよ」
「って、沖田さんがやるの?」
何食わぬ顔で前に出てきた沖田総悟である。彼もチャレンジ精神から、失敗も覚悟で認証に挑む様子だ。
「何ぃ、心配ねぇですよ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって言いやすから、この次にはきっと開くでしょうねぇ」
「……例え方が雑だけど、大丈夫なの?」
ことわざで心境を例えるものの、あまり仲間達には浸透していない。不安を覚えるメンバーがいる中、この二人だけは密かに失敗を祈っている。
そう、沖田に恨みを持つ神楽とリーファだ。
「きっとさっきよりも強い電流が流れてくるアルよ」
「あの沖田さんだもん……絶対そうに違いないわね!」
「おい、そこの二人。おちょくるのもいい加減にしろよ」
二人の会話はあえて沖田に届かせており、それを聞いた本人は文句を口にする。
まばらな反応には気にもくれず、彼はいよいよ手形に手をかざしてきた。
「じゃ、行きやすよ」
仲間達が見守る中でいよいよ手をかざすのだが……その結果は一行の予想に反するものである。
「アレ、総悟? 大丈夫なのか?」
「あぁ、うん。特に何も起こりやせんでしたよ」
「えっ? 電流とかも流れなかったのか?」
「そうですねぇ。まぁ」
歯切れの悪い返答だが、沖田曰く何も起こっていない。土方やキリトが聞いても、彼は表情を変えずに接している。しかし違和感のある態度から、一行には不信感が広がっていた。
「扉も開かずに電流も流れないなんて……」
「本当に痺れてないの、沖田さん?」
「特には……」
シノンやアスナが聞き直しても、彼は頑なに否定を貫き通す。多くは話さないその珍しい姿勢に、神楽やリーファは一層疑惑を強めている。
すると彼女ら二人は、面白がるように挑発を始めてきた。
「もしかしてお前、痛いの我慢しているんじゃないアルか?」
「あっ、なるほどね! だからさっきから、受け答えがしどろもどろなんだ!」
「アイツもまだまだ意地っ張りアルナ!」
「案外可愛いところもあるんだね~!」
「「フフフ!」」
今までの仕返しと言わんばかりに、リーファらは仲良く沖田の煽りを楽しんでいる。共に目をニヤニヤさせて、相手にわざと聞こえる音量でからかいを続けていく。
これを聞いた当の本人は、
「ムカつく女共だな……後で覚えておけよ」
文句を呟いただけで何も反論はしなかった。二人の予見した我慢説は、あながち間違いではない。故に沖田も反撃できず、聞き流しているだけである。不満そうな表情を見て、神楽ら二人は一層面白がっていた。
いずれにしろ、三人の挑戦は無駄に終わり、銀時らの状況は一向に進展していない。
「三人連続でもダメだったか……」
「これじゃマッドネバーにも追い付かれちゃいますよ!」
「せめてこの認証の謎さえ解ければ……」
土方、シリカ、近藤と各々が嘆きを呟く。停滞する現状を変えたい気持ちは皆同じだが、手形の謎を解かない限りは前に進めない。残された猶予も少なく、次第に仲間達の間には焦りが生じていた。
「やっぱりどんなことをしても、開かない仕組みなのかな?」
「そんなことは無いですよ! 何かきっと方法があるはずです!」
弱音を吐くフィリアに対して、ユイは威勢よく否定している。後者は特に頭を使い、謎を解こうと必死に模索を続けていた。
そんな彼女が、また新たに仮説を立て始めた時である。
「ん!?」
遺跡の扉から彼女は、何か強烈な波動を感じ取っていた。それは熱気のあるとても温かい感触である。
「どうしたの、ユイちゃん?」
「えっと、直感を感じました! あの中にある何かが、問いかけているみたいで……ちょっとやってみます!」
「って、ユイちゃん!?」
「おい、まさかお前やる気か!?」
それを直感だと察したユイは、アスナらの静止を振り切り、一人扉へと近づく。真剣そうな表情から、静かに大きな覚悟を決めていた。
「ユイ!? 本当にやって大丈夫なのか?」
「きっと平気です! 今の私の自信なら!」
キリトらや仲間達が不安を向ける中でも、彼女の意思は一切揺るがない。ためらいはせず、そっと手を手形に合わせている。
その後のユイの様子は……特に何も異常はなかった。
「えっとこれは……」
「どうなったんだ?」
変化が起きないことにまたも戸惑いを覚える一同。しばらく様子を伺っていた――その時である。
〈キーン!〉
「ん? うわぁ!?」
頭に残るような起動音が響き渡り、瞬く間に扉がゆっくりと動き始めていた。ユイの直感通りに、扉の開錠に成功している。
これには仲間達にも驚きが広がっていた。
「と、扉が……」
「開いているだと!?」
シノン、近藤と次々に仲間達は言葉を詰まらせていく。開錠した喜びよりも、なぜ開いたのかという疑問が多く残っていた。
その張本人でもあるユイも、なぜ成功したのかさっぱり分かっていない。
「ユイのおかげで開いたのか……」
「でもなんで、ユイだけアルか?」
「私にも分からないです。でも直感が私を動かしてくれたんですよ!」
直感を強調しているが、やはり具体的な理由は分からない。増々遺跡の謎が深まっただけであった。
「何かまだ謎は残っていそうね」
「そうですね。でもまずは、遺跡の奥部に行ってみましょう!」
「だな。マッドネバーに先を越される前にな!」
それでも開錠出来たことは、彼らにとって大きな一歩である。謎解きは後回しにしつつ、万事屋一行は皆、未知の領域である遺跡奥部へと足を進めていた。
そこで待ち受けていたのは――
「えっ!? これは……」
「この人達は……って銅像?」
二十体ほどそびえ立つ巨大な銅像達である。果たして彼らの正体とは如何に――
どんどんと物語が動き始めています。遺跡の奥部にあった銅像とは? マッドネバーの狙う力とは?
そしてユイにだけ反応した仕掛け。この真相とは如何に……。増々見逃せなくなってきました……!
ちなみに今回のお気に入りは、我慢する沖田を神楽とリーファが煽るシーンです。 とっても可愛げがあったと思います。
そして次回ですが、12月の投稿を目指しています。恐らくですが、再来週になると思います。予定では次元遺跡篇終了まで後四訓分。今年中には次の長編の妖国動乱篇まで掲載したいです……無理はしないで頑張ります。また報告がありましたら、ツイッターで報告するのでよろしくお願いします!
次回予告
リズベット「これが次元遺跡に刻まれた英雄なの?」
ユイ「タイムブレーク?」
シリカ「何かアタシにも見えたと思います!」
神楽「私にも聞こえるネ! 噂のドンドコドーンが!」
土方「奴等の狙っていた力はこれか?」
ダークキバ「ようやく見つけたぞ、ゲロ吐き娘!!」
ソーサラー「フフ。この方こそが、アタシらにダークライダーシステムを与えたのさ」
?????「僕はダークライダーすらも越える、アナザーライダーとなるのだ!!」
次元遺跡篇六 運命を切り開く者