剣魂    作:トライアル

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皆さま、お久しぶりです。


特別訓 スリーピング・ナイツ THE FIAST

 次元遺跡篇ラストにて鮮烈なる登場を果たした銀魂版スリーピング・ナイツ。彼女達が出会った経緯を、今回はご紹介しよう。

 

 時は過去へと遡り、五年前のこと。地球よりも遠くに離れた星、ALO星の中心街アルンには妖精や天人達が商売や観光目的で集まっている。城下町としても役目を果たすこの街に、今日もまた領地から上京する者がいた。

「もうすぐですね。これからどんなことが待っているのでしょうか」

 そう穏やかな口調で呟き、女性は微笑みを浮かべている。大きめのバッグに杖を突き刺し、期待を高めて道を進む彼女の名は、ウンディーネ族出身のシウネーだ。元々は領地にて学問を学んでいたが、自分を変えたいと思うようになり、思い切って上京を決意したという

 そんなシウネーの容姿は、淡白な水色で髪の毛や服装を統一しており、凛とした印象を持ち合わせていた。髪は足元まで伸びており、一部は二つ結びに縛っている。全身を覆う緩やかなワンピースは、両肩のみを露出していた。ちなみに背丈は160cm程度である。

 心機一転と新生活を楽しみにするシウネーだが、まだ大きな目標は見つけられていない。それが彼女にとっての悩みだった。

「これからのことも決められれば良いのですが……」

 先ほどとは打って変わり、不安げな表情を見せている。自覚はしているが上手くいかないのが現状だ。今の段階では興味のある仕事を見つけて、そこからやりたいことを探すそうだが……。

 そう将来を考え込みながら道を歩んでいると、彼女はとある人だかりに出くわしていた。

「ん? あの集まりは?」

 通りすがろうとした川辺にて発見したのは、数十人ほどの集まり。妖精や人間、天人が一堂に会して、何やら戦いを観戦しているようだが?

 シウネーもつい気になり、道を外れて川辺方面へ降りた。

「あの……何が行われているのですか?」

 人だかりに近づくと、彼女は近くの男性に状況を聞く。

「ん? あぁ、俺もさっき来たばかりで分からんが、何やら強者がいるらしくな。そいつと宇宙の帝王っぽい奴が、決闘しているみたいだぞ」

「……随分と情報量が多いですね」

 どうやら行われているのは白熱と化した決闘らしい。場の熱気は否応なしに盛り上がっていく。

「あの女の子強いよな。若いのに一体何者だよ」

「これで六十七連勝目だぞ」

「もしかしたら、騎士団を目指せるじゃないのか?」

「いやそれがさ、元候補生の妹って噂らしいぞ」

「それ本当かよ」

 次から次へと発せられる強者の情報。その正体は年端も行かない少女らしいが。

「えっと、あの子が強者でしょうか?」

 頑張って背伸びをしつつ、シウネーも強者の正体をマジマジと発見した。周りの情報通り、そこには堂々と振舞う小柄な少女が見えている。見たところ種族は闇属性の力を持つインプで、武器に細長い片手剣を所持していた。髪の色や服装は紫で統一しており、前髪にかけられた赤いバンダナが目に止まっている。見た目といい雰囲気は、快活で明るい印象を与えていた。

 そう。彼女こそが巷で強者と噂される剣士、ユウキなのである。

「さて、アンタが次の挑戦者だね。全力全開で戦おうね!」

 ユウキは対戦相手にも、明るく元気に接していた。笑顔を振りまく姿は、強者の印象は皆無に見えるが……。

 そんな彼女に挑戦を申したのは、観戦客の言う通り宇宙の帝王っぽい奴である。

「フフ。何をたわけたことを。全てはこのブリーザ様が勝利を収めるのですよ」

 彼は自信満々と勝利を確信していた。小さく呟き、表情もニヤリと笑っている。この宇宙の帝王っぽい奴の正体は、かつて土方十四郎と対峙した天人のブリーザだった。白い体色にオレンジ色の髪と、某サイヤ人系漫画の敵役にも見えなくないが、あくまでも別人である。そんな彼がひょんなことからALO星に立ち寄り、強いと評判の女の子に戦いを挑んだのだ。

「なんともこれは、異色の決闘ですね……」

 ようやく状況を把握したシウネーでも、この混沌とした展開に思わず苦笑いを浮かべてしまう。連勝続きのユウキももちろんだが、ブリーザの奇抜な容姿にも衝撃を隠せていない。

 とそれはさておき、ひとまずは勝負の行方を見守ることにした。シウネーに続き場にいた観客達も、そっと静まり勝負に注目を寄せていく。

「さて……始めようか!」

「望むところです!」

 そしてユウキ、ブリーザと共にようやく準備が整ったようだ。前者は装備した片手剣を振るい突撃、後者はオレンジ色のオーラをまとい本領を発揮していく。

「「ハァァァァァ!!」」

 勢いよく近づくユウキと、真っ向からねじ伏せようとするブリーザ。互いの全身全霊の力がぶつかり、ほんの一瞬で決着が付いていた。

「ど、どちらが勝ったのですか……」

 勝敗が気になり意気込むシウネーら観客達。二人の様子にじっと目を見張ると――

「ア……レ?」

バタンとブリーザは呆気なく倒れこんでしまう。一方のユウキは深く呼吸を整えた後、剣を鞘に戻して元気よく勝利を喜ぶ。

「よし! これでまた連勝達成!」

「おぉー、スゲェ」

「また勝ったのかよ」

「一瞬にして仕留めるとは……」

 ユウキの勝利と共に、観客からは祝福の声が飛び交っていく。あまりの強さに皆が圧倒される中で、シウネーもまた彼女の強さに見とれていた。

「す、凄い……」

 しばらくは拍手やら声援やらで場の熱狂は止みそうにない。

 一方でブリーザは気絶からすぐに目が覚めていた。

「痛ぁ……まさかこの私が妖精如きにやられるなど……」

 彼は敗北したことを悔やみながら、すたこらとすぐに場から去ろうとする。若干気まずさを感じる中で、ユウキは咄嗟にブリーザへ声をかけてきた。

「ねぇ、宇宙の帝王さん!」

「あぁ?」

「勝負に乗ってくれてありがとうね! 突然なんだけど、僕達のチームに入らない? 今メンバー募集していてさ」

 勝負のお礼と共に持ち掛けてきたのは、チームの勧誘である。屈託のない笑顔で誘いをかけたのだが、当然ブリーザには何一つ響いていない。

「誰が入るか! このブリーザ様を何だと思って……」

 激高しつつもあまり深くは接さずに、この場から逃げてしまう。

「アレ、行っちゃった? やっぱり負け時に誘うのは上手くいかないのかなぁ?」

 ユウキはブリーザの行動に疑問を覚えつつも、あまり気にしてはいない様子だ。決闘も一段落したことで、観客達も頃合いを見て場から去ろうとしている。

「そろそろ行こうぜ」

「もう挑戦するやつも流石にいないだろ」

「ありがとうな! 良いもの見せてもらったよ!」

 何人かはユウキに挨拶やお礼を伝えてから帰っていく。一方のシウネーも場を離れようとしたが、

「ん? アレは……」

ふとユウキの様子に違和感を覚えていた。彼女は左腕を微かに押さえており、どこか無理をしているようにも見えなくない。つい気になってしまい、シウネーは思わず近づいていた。

「どうしたのお姉さん? もしかして勝負かい?」

「いいえ、違います!  確認したいことがあって……」

 呑気そうに接するユウキに構わず、シウネーは彼女の左腕を確認してみる。すると掠ったような傷が目に見えてきた。

「やっぱり。怪我しているじゃないですか!」

「あぁ、これのこと。平気だって。そんなに気にすることでもないからさ」

「そう油断するのが一番危ないのですよ! 私に任せてください!」

「ち、ちょっと!? お姉さん?」

 ユウキは気にしないように宥めるも、シウネーは納得がいかず、やや強引にでも治療を始めていた。バッグから応急処置用の道具を取り出すと、覚えたての治癒魔法を唱えながら懸命にユウキの傷を癒していく。

 言われるがままに治療を受けるユウキだが、彼女はこの光景に既視感を覚えている。

(アレ? こんなこと前にもあったような……いや、気のせいか)

 シウネーとは初対面のはずだが、何故だか遥か昔に出会った感覚があるそうだ。とは言ってもあまり詳しくは思い出すことが出来ず、ただの気のせいで一蹴してしまったが。

 この一件をきっかけにして、ユウキはシウネーと出合ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「うぉー! もう傷が治っている! ありがとうね、お姉さん!」

「まったく……心配しましたよ」

 応急処置を施してくれたシウネーに、ユウキは明るくお礼を返している。前者は安心した表情を。後者は屈託のない笑顔を見せていた。

 場が一段落すると、二人は川辺に腰を掛けて、自己紹介を含めた会話を進めていく。

「ところでお姉さん。名前は何て言うの?」

「私ですか? シウネーですね」

「シウネー……うーん、やっぱり気のせいかな?」

「どうかしたのですか?」

「いや実は、シウネーさんと会ったような気がしてね。でもどうも思い出せなくて……」

 名前を聞くや否や、ユウキは思っていたことを口にする。本来シウネーとは初対面のはずだが、どうも親近感を覚えているようだ。

(アレ? そう言われると私もそんな気が……)

 彼女の言葉に影響されたのか、当の本人もそう思い込んでしまう。

その件はさておき、ユウキは話題を変えて話を続けていく。

「とりあえず、この件は置いておこう! 改めて僕の紹介もしておくね! 僕はユウキ! ちょっとした目的で、今チームメイトを集めているんだよね!」

「ユウキさんと言うのですね」

「呼び捨てでいいよ! その代わり、シウネーさんも呼び捨てにしていい?」

「呼び捨て!? 良いですけど……」

「よしっ!」

 了承を貰うと、彼女はにこやかな表情を浮かべて、親指を立てたサムズアップで感謝を伝えている。

 無邪気さも兼ね備えながら前向きに振舞うユウキと、対照的に控えめな態度を続けるシウネー。特に後者は相手との性格の違いから、あまりその雰囲気には慣れていなかった。

(強者と言うよりは、どこか子供っぽいですね……)

 数分前に見せた強者の風格からも温度差は異なり、ますます謎が深まってしまう。しかし同時に、ユウキへの興味も沸いていた。引き続き彼女の話を聞くことにする。

「えっと……じゃなんでユウキは、チームメイトを探しているんですか?」

「そりゃもちろん、姫様の騎士団を目指しているからだよ!」

「き、騎士団ですか!?」

 気になっていたチームメイト探しの理由を聞くと、彼女の口からは思わぬ一言が飛び出してきた。この展開はシウネーも予想外で、つい声を失ってしまう。

「ん? どうしたの、シウネー? そんなに驚くことかな?」

「当たり前ですよ! 騎士団って言ったら、姫様を護衛するいわば重要なガードマンなのですよ! 志願者も多くて、倍率も高いはずなのに……」

 そう。彼女の言う通り騎士団は、この星で言う花形の職種なのである。姫様と言った重要人物の護衛を任されることになり、戦力を磨き上げた者のみがなれると言われている。倍率も非常に高いため、シウネーはユウキの目標に驚きを隠しきれていないのだ。

 するとユウキは、少し落ち着いた表情を浮かべてから話を続けている。

「そんなこと僕でも知っているよ。だからこそ、みんなで合格するために頑張っているんだよね」

「その心意気が凄いです……でもなんで、そこまで騎士団にこだわるのですか?」

 そう聞かれると彼女は、ゆっくりとその理由を返答してきた。

「それはね……僕のお姉ちゃんが関係していてね」

「お姉ちゃんですか?」

「そう。僕にはね、双子のお姉ちゃんがいるんだよ。お姉ちゃんも仲間と同じく騎士団を目指していたけど、途中で病気にかかってやむを得ず諦めちゃったんだよね……。別に大きな病気じゃないけど、続けることは難しいみたいで。だからね、僕がお姉ちゃんの夢を叶えてあげようと思って!」

「そんなことがあったのですね……」

 時折空を見上げながら彼女が話したのは、騎士団を目指すまでの経緯である。ユウキには双子の姉がおり、彼女の志に影響を受けて、自分も騎士団に興味を持ったそうだ。そこにあるのは、純粋な気持ちかららしい。

 感心するシウネーをよそに、さらに話は続いていく。

「この決闘を始めたのも、お姉ちゃんやその仲間達の勧めでさ。まずは共に高めあえるような仲間を集めてこいって。最初は戦っても断られることが多かったけど、続けるうちに僕と同じ騎士団を目指す仲間が集まってさ。今じゃチームも、僕を入れて五人に増えたんだよ」

「そうなのですか……」

 仲間が集まったことを口にすると、ユウキはまたも晴れ晴れしい笑顔を見せている。姉からの勧めで始めた決闘を通して、多くの仲間と出合うことが出来たという。楽しそうに話す彼女に、シウネーも知らず知らずのうちに話へ聞き入っていた。

「ということで、僕らが探すべき仲間は後一人! 話を聞いてくれて、ありがとうね!」

「いえいえ、私は大したことは」

「そこで折り入ってお願いがあるんだけど、シウネーも僕らのチームに入らない?」

「そんなチームだなんて――えっ!?」

 そんな矢先に事態は急展開を迎えている。不意にもユウキは、シウネーにチームの誘いを持ちかけたのだ。当然ながらシウネーは、突飛な提案に思わず耳を疑ってしまう。

「絶対頼りになると思うんだよ! シウネーとなら! 僕と一度戦って、実力を試してみない?」

「えっと、私は戦った経験もあまりないですし……」

「関係ないよ! やってみないと分からないから!」

「で、でも……」

 あまり本気にはなれず、彼女は控えめな姿勢でやんわりと断ろうとする。だがしかし、ユウキは中々引き下がらない。シウネーなりの優しさに興味を持ち、一度戦いたい気持ちで頭が一杯になっていた。

 両者共に心が折れたりせず、こう着状態が続いていた――そんな時である。

「大変だ!! ユウキ!!」

 一人の男子が彼女達の会話へと割り込んでくる。彼の正体は、ユウキの仲間であるジュンだった。ジュンは慌てふためいた表情で二人の元に近づいていた。

「アレ、ジュンじゃん。どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないよ! 砂漠地帯で見たこと無いモンスターが暴れて、みんなで抑え込んでいるんだよ!」

「えっ、そうなの!?」

「モンスター……?」

 訳を聞いてみると、どうやら突然現れたモンスターの対処に、ユウキらの仲間達が当たっているという。ジュンの話を聞いたシウネーは、怪訝そうな表情で不安を感じていた。

 同じく不安を悟ったユウキは、真っ先に仲間のいる場所まで飛び立っていく。シウネーも気になって、そっと二人の跡を追いかけていく。

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって、こちらはアルンとノーム領を繋ぐ通行路。その一部は砂漠地帯に覆われており、岩場と熱気が漂う灼熱の通路と化している。本来ならば環境に適応できず、この場所にモンスターなど生息してはいないのだが……

「グルォォォ!!」

何の前触れもなくそいつは姿を現していた。砂を振り払って所かまわず暴れるのは、タコに似た宇宙生物。ALO星には生息していない、いわゆる外来種だ。全長は十五メートルほどあり、巨大生物と言われても可笑しくないだろう。

 周りの被害などお構いなしに暴れ続ける宇宙生物に、武器を手にした三人の男女が立ち向かっている。

「周りの人達の避難は完了したよ!」

「よっしゃ! これで心置きなく戦えるな!」

「ユウキやジュンが来るまで、アタシ達で乗り切らないと……!」

 そう言葉を交わすと三人は、槍やハンマーと言った自分が得意とする武器を構えていく。その三人の正体は、ユウキの仲間でもあるタルケン、テッチ、ノリである。彼らは仲間の援軍が来るまで、自分達でこの場を凌ぐつもりだ。勝ち筋は見えていないが、それでもがむしゃらに立ち向かうしかない。

「グルッタァ!!」

「よっと!」

「はぁ!」

 宇宙生物が振るう腕を上手くかいくぐり、隙を付いたところを近距離から攻撃していく。羽や武器を最大限使いこなして、拮抗した戦いを繰り広げていた。

「くっ……流石に押し切られるか」

「やっぱり私達だけでは限界が……」

「いや、まだまだ! 諦めるのはまだ早いよ!」

 戦況が依然として変わらず弱音を吐くテッチとタルケンに、ノリが力強く鼓舞していく。彼女の言葉を信じて、二人はすぐに気持ちを前向きに整えていく。彼らは決して逃げ出すことはなく、今自分が出来ることに全力で取り掛かっていた。

「「はぁぁ!!」」

「フッ!」

「グル!?」

 宇宙生物との闘い続ける最中で、一瞬だけ相手に隙が生まれていた。その隙へ集中的な攻撃を与えると、瞬く間に動きが止まってしまう。

「えっと、これは……」

「まさかこのモンスターの弱点か?」

「そういうことなの?」

 突然の変わり様に、攻撃を与えた側のテッチ達も何が起きたのか分かっていない。宇宙生物の様子からも、弱点だと予測を立てている。ようやく勝ち筋が見え始めていた――そんな時だった。タルケンが後ろの岩場にいて、ある人の気配を察している。

「ん? ちょっと待って」

「どうした、タルケン?」

「今、後ろに人の気配が!」

「えっ、ちょっと!?」

 逃げ遅れた人だと思い込み、タルケンは即座に後ろへと走り出す。仲間達も思わず彼の跡を追いかける。

 岩場にたどり着くと、そこには逃げ遅れたと見られる二人の天人がいた。

「あの、大丈夫ですか!」

 大きい声をかけたが、天人達はタルケンらの存在に気づいていない。それどころか悪態を付きながら、互いに悪口をぶつけあっている。

「うぉぉぉ! じい!! お前のせいだからな!! お前が暇ぶっこいたせいで、こんなことになったのじゃぞ!!」

「黙れ、バカ皇子!! そういうお前も、飼い主のくせして見逃したじゃねぇか!! 俺に責任転嫁するんじゃねぇよ!!」

「うるせぇ! 余の責任はお前の責任じゃ!!」

「ジャイア〇かてめぇは!」

 相手へ決して譲ることはなく、責任を擦り付け合う二人。その正体は、銀時らとも面識のある央国星出身のハタ皇子とじいである。会話の様子からも、暴れまわる宇宙生物と何かしら関係があるそうだが?

「……どういうこと?」

 首をかしげながら、タルケンもその喧嘩の様子を見ている。密かに関係性を疑っていると、テッチらも駆けつけてきた。

「タルケン! まさかまだ人がいたのか?」

「そうだけど……人と言うか天人と言うか」

「あの二人のこと? どこの星の人だっけ……?」

 当然二人も何が起きているのか、分かっていない。揃って困惑気味の表情を浮かべる中、ハタ皇子はノリ達の存在に気付いて声をかけてきた。

「あっ! おい、ちょうど良いぞ! そこの現地民共! 余のペットを、どうにか落ち着かせてくれ!!」

「ペ、ペット?」

「はぁ? まさか、あのモンスターが!?」

 モンスターこと宇宙生物の正体を知るや否や、驚嘆とした表情を浮かべる三人。正体がハタ皇子のペットだと知り、彼への不信感が生まれていた。

「その通りじゃ! じいが見張りをさぼったせいで、勝手にオアシスの湖へ入ってしまってのう。ちょうど湖の温度も高くなっていて、温水のせいで巨大になったわけぞよ。だからお前たちには、止めてきてほしい……」

「おい、お前! ここでも俺の責任にするのか!! 言っておくが、お前の見張りの番だったぞ! 勝手に擦り付けるな!」

「うるせぇ! 余の責任ではないと言っておるじゃろ! 余は絶対認めんぞ!!」

 説明の途中でも起きたハタ皇子とじいの口論。頑なに譲らない言い争いに、テッチら三人は呆れ返り言葉を失ってしまう。

「つまり、お二方が騒動の原因だと」

「呆気ない犯人だな」

「余は犯人じゃないぞよ! こいつじゃ!」

「お前だろ!」

「うっさい!! くっだらない犯人当てはいいから、さっさとモンスターを止める方法を教えなさいよ!! さもないと……」

「お、落ち着けノリ!」

「そうですよ! 冷静に対処しないと……!」

 仕舞いにはイライラが募ったノリが、恐ろしい表情を浮かべて、ハタ皇子らに返答を催促していく。傍にいたタルケンとテッチが、力づくで彼女を静止している。その威圧さには、ハタ皇子達も恐縮してしまう。

「ヒィ……! えっと、時間が来れば元に戻る仕様じゃったか? じい!?」

「俺に聞くな! とりあえず、傷は付けずに生け捕りしろ。こちらとしても、国家間の問題には発展したくはない――」

 一方のじいからは淡々と説明が促されたが、あくまでも保護を前提とした生け捕りを要求している。傷は付けるなと注文を付けてきた――その時だった。

「エイヤァァ!!」

「グラァァ!」

 突如として聞こえてきたのは、少女の雄たけびとモンスターの叫び声。場にいた全員が思わず後ろを振り返ると、

「「えっ?」」

「おっ!」

「「ユウキ!!」」

そこにいたのは援軍として駆けつけたユウキとジュンだった。共に透明な羽を広げて、刀剣や大剣を手にしている。当然二人はじいの要望など知らず、勢いに乗って攻撃を与えていた。援軍の登場により、ノリ達は彼らの元へ駆け寄っていく。ハタ皇子達は思わぬ展開に呆然としていたが。

「みんな、お待たせ! ここからは僕達も参加させてもらうよ!」

「もらったぁぁ!!」

 仲間に一声かけると、二人は早々に宇宙生物との戦いを始めていく。

「今だ、ユウキ!」

「オーケー! ジュン!」

 大剣を振るって相手の隙を誘うジュンに対して、ユウキがその突きを狙って着実な攻撃を与えている。完成されたコンビネーション技を披露していた。

「「ハァァァ!!」」

「よし、二人に続くぞ!」

「えぇ!」

「はい!」

 果敢に宇宙生物へ立ち向かう姿に感化されて、ユウキの仲間達も釣られて戦闘へ参加していく。

「おい、お主ら! 極端に傷は付けるな!! 余の言う通りにしろ!!」

 ハタ皇子は依然として、ペットに傷が付くことに恐れを抱いていた。そんな忠告などつゆ知らず、ユウキ達五人の戦いは続く。

 一方のシウネーはというと、崖近くに隠れて戦いを見守っていた。

「アレがユウキの仲間達なのですね……」

 ひたすらに攻めの姿勢を続ける姿に、思わず目を見張っていく。

 仲間の様子を見ながら、刀剣の攻撃手段を変えていくユウキ。大剣を振り回し、確実な一撃を与えているジュン。ハンマーを用いて、相手の隙を伺うノリ。反対側に回って、槍を使い仲間の補佐を行うタルケン。自ら前線に立ち、盾で相手の注意を誘うテッチ。

 それぞれが今出来ることを、全力で行っていた。

「かっこいい……! こんなにも強い方々だったなんて」

 優し気な表情を浮かべたまま、彼女はそっと想いを呟く。ユウキらの戦う姿に惹かれて、増々興味が湧いていたが――

「私とはまるで違う……とてもじゃないけど」

自分の強さと比較してしまい、上手く行動には移せないようだ。未だに迷いが生じているらしい。

「ユウキ、ジュン! ヤツの怯んだ隙がチャンスだ! ありったけの攻撃をぶつけろ!」

「オーケー! 分かったよ!!」

「僕達で隙を作るぞ!!」

 その一方でユウキ達にも動きがあった。事前に戦っていた仲間から弱点を教えられて、早速行動に移していく。宇宙生物の隙を伺いながら攻撃を続けようとした時、

「おい、止めろ!」

「ん?」

「「えっ?」」

唐突にも地上から大声が響いてきた。皆がその声に気を取られて、下や横へ振り向く。もちろん声の正体は、側近のじいである。

「生け捕りにしろと申しているだろ! じゃねぇと、このバカ皇子がまた駄々をこねるんだよ! 分かってんのか!?」

「そう……って、ジジィ。また火種作りやがったな」

「はて、何のことやら」

 再度ユウキ達へ忠告を加えたが、流れ弾の如くハタ皇子にも文句が伝わっていた。不穏な雰囲気がまたも漂い始めていた時、空気を読まずに宇宙生物が動き始める。

「グルァァ!!」

「あっ、危ない!」

「避けろ、あんたら!!」

 両端の触手を大きく振るい、ハタ皇子らに狙いを向けてしまう。ユウキらが警告するも、時すでに遅い。

「えっ? ギャァァァ!!」

「何だと!?」

 予想外の行動に慌てふためき、辺りを右往左往としてしまう。二人共に逃げようとした時である。思わぬ助け舟が繰り出されてきた。

(カチッ!)

「ん?」

「お、お主は……」

 自らの手を挺してハタ皇子らを守ったのは、傍観者としてずっと様子を見ていたシウネーである。荷物に加えていた杖を手に、真っ向から触手を防いでいた。

「シ、シウネー!?」

「あの人が守ったのか……?」

 勇気ある行動を目の前にして、ジュン達も驚きを口にしている。特にユウキはシウネーとの面識がある分、想定外の行動により大袈裟に驚嘆としていた。

 そんな騒然とした状況下で、シウネー本人は苦しそうな表情を浮かべたまま、ハタ皇子らの安否を確認している。

「だ、大丈夫ですか……?」

「こっちはなんとも。じゃが、お主は?」

「平気です……これくらい!」

 無事を確認すると彼女は、前を向いて杖に力を入れていく。相手の隙を伺った後、大きく事態を動かしていた。

「いい加減、大人しくしなさい! ハァァァァ!!」

「はぁ!?」

「えっ!?」

「何!?」

「おいおい、嘘だろ!?」

 なんとシウネーは一か八かの如く、杖を宇宙生物に向かって投げ飛ばしてきた。その姿はまるで、砲丸投げの選手のようである。あまりの思い切った行動に周りが驚きの声を上げる中、宇宙生物も同じように戸惑いを見せていた。

「グラァ!? ラァァァア!!」

 咄嗟の攻撃に対処することも出来ず、そのまま杖は頭部へと突き刺さってしまう。自分でも何が起きたのか、まったく分かっていない。杖を抜くことに必死となり、次第に隙が生まれてしまう。

「シ、シウネー……?」

 そんな好機を作ったシウネーに対して、ユウキらは逐一驚かされる始末である。そう動きを止めていると、本人からは思わぬ激励が飛ばされてきた。

「今です、ユウキ!! とどめを刺してください!」

「う、うん! 行くよ、ジュン!」

「あぁ、任せろ!!」

 力強い言葉を受け取り、ユウキはジュンと共に決着を付けようとする。互いに刀剣や大剣を握りしめて、相手の隙を密かに伺い、最大の攻撃をぶつけていく。

「「ハァ!!」」

〈シャーキン!!〉

 相手の頭上へ交差するように切り刻み、二人は羽を操作して地上にゆっくりと降り立つ。後ろに振り返って、宇宙生物が倒れる様子を確認している。

「グラ……」

 悲痛な叫び声と共に、彼は砂煙を起こしながら横へと崩れ去った。あくまでも気絶しただけで、鼓動や呼吸する様子から生存状態が確認出来る。後に元の小さいサイズへ戻ることも予見されており、宇宙生物による騒動はようやく幕引きとなった。

「お。終わった?」

「落ち着いたか?」

「そうみたいだね」

 空中にいた仲間達も事態の鎮静化を再確認して、ようやく安堵の表情を見せている。もちろん地上にいるユウキやシウネーらもだ。

「ふぅー、良かった!」

「そうですね!」

 一言ずつ掛け合って、互いに屈託のない笑顔を見せている。

 その一方でハタ皇子らは、思い通りの展開にならず複雑な心境を抱えていた。

「な、なんて奴らだ……」

「余のべットがぁ……」

 開いた口が塞がらず、体も固まってしまった、後に宇宙生物も元のサイズに戻ったが、刻まれた傷跡は今なお残っている。肉体的にも精神的にも。

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙生物との戦いも終わり数分が経った頃。現場検証のために砂漠地帯には、騎士達が駆けつけてきた。彼らはユウキ達やハタ皇子から、一連の騒動について聞き出している。

「それでどちらが原因ですか?」

「そんなのコイツに決まってんだろ!」

「おい、ジジィ! いつまでその話、引っ張っているんだよ! いい加減、お前が譲れよ!」

「なんだと! 俺は意地でも認めねぇからな!」

「いつまで、このやり取りしてんだ……」

 騒動の原因を作ったハタ皇子らは、未だに罪の擦り付け合いを行っていたが……。対処している騎士達も、往生際の悪さに呆れ返っている。

 一方でユウキらの聞き込みは終わっており、彼女達は仲間内で今回の戦いについて振り返っていた。もちろん話題はシウネー一択である。

「凄かったよ、シウネー! まさか杖を投げて、モンスターの動きを止めるなんて!」

「いえいえ、私もがむしゃらにやっただけで大したことはしてませんよ」

「そんなこと無いよ! あんな度胸のある人、中々いないって!」

「もっと誇っていいと思うよ! アンタの強さだからさ!」

 ユウキ、ノリ、ジュンと、興味津々に彼女をベタ褒めしていく。当の本人はあまり実感が無いが、高い称賛を受けて嬉しく感じていた。その証拠に表情も満更ではない。

 一方のタルケンやテッチは、相手にした宇宙生物を話題に上げている。

「ところで、あの宇宙生物はどうすんだろうな?」

「あぁ、後は騎士達に任せるらしいよ。あの天人達も央国星の皇子だったみたいで、しばらく時間がかかるみたい」

「うへぇー、そうなの!? あの天人、そんな偉い人だったんだ。もしかして僕達、悪いことしたかな?」

「まぁ、原因作ったのもあの皇子達みたいだし、そんな気にすることでもねぇと思うよ」

「そっか」

 今更ではあるが、ユウキはハタ皇子が本物の皇子だと知った。驚きと共に罪悪感も生まれたが、ジュンの一言により気にしなくなった。気持ちの切り替えは案外早いようである。

 するとユウキは、再度シウネーを持ち上げてきた。

「でもこれも、起点を作ってくれたシウネーのおかげだよ! 本っ当にありがとうね!!」

「いえいえ、だから言っているでしょ。私は大したことはしていないって。チームの一員でもないですし」

「……チームの一員か」

「どうしたのですか?」

 途端にとある言葉が引っ掛かり、ユウキは言葉を濁してしまう。シウネーが素朴に問いかけると、仲間達はユウキの気持ちを察して、次々に彼女へ要件を伝えていく。

「ねぇ、アンタ。これも何かの縁だし、僕達のチームに入らないかい?」

「えっ!?」

「ぴったりだと思うよ! アタシは賛成するよ!」

 そう。ユウキが伝えたかったことは、改まったシウネーのスカウトである。先ほどの戦い方や振る舞いから、より魅力的に感じ取っていた。当の本人は不意に驚きの表情を浮かべていく。対してジュンやノリと言ったユウキの仲間達は、まるで歓迎するように屈託のない笑顔を見せていた。

「わ、私もです……!」

「同じくな」

 同時に話を聞いていたタルケンやテッチも同じ想いである。突然のスカウトに、シウネーの戸惑いは強くなっていた。

「み、皆さん……」

 そしてユウキが再度、気持ちを念押ししていく。

「ねぇ、シウネー。君の度胸と優しさは、誰にも負けない個性だと思うんだよ! きっと僕らのチームでも、上手くやっていけるよ! だからお願い! 僕らのチーム、スリーピングナイツに入らない?」

 率直に感じた気持ちを前面に出して、誠実にスカウトをしている。ユウキの強い気持ちと仲間達の温かな雰囲気に触れていき、シウネーの気持ちは瞬く間に変わり始めていた。

(この人達となら、きっとやれることが見つかるかもしれない……私自身も強くなれるはず!!)

 本当に自分がやりたいこと。自分自身を変えたい本音。新たに作られた目標に、仲間と共に進みたい気持ちが強くなっていった。

 深く深呼吸を交わした後に、シウネーは自分の出した決断をユウキらに伝えていく。

「……分かりました。この私で良ければ、よろしくお願いします!」

 彼女達の想いを信じて、スリーピングナイツの加入を決意したのだ。

「よしぃ! ありがとうね!! それじゃ早速、僕と決闘してしよ!」

「えぇ!? ここでですか?」

「大丈夫だって、手加減するから! 強さを見るだけだからさ!」

「でも私、戦ったことはあまりな――」

「行くよ!」

「勝手に始めないでください!!」

 望み通りの答えを聞くや否や、ユウキは早速シウネーを決闘に誘っていく。本人も突然の提案に困惑しており、ジュンらに助けを求めている。ところが彼らからは、「いいぞ」や「頑張れ」と言った悪乗りしか言葉が返ってこなかった。初加入と共に決闘へ巻き込まれてしまったシウネーである。

 かくしてこの世界のスリーピングナイツは結成した。彼らが努力を積み重ねて、夢を叶えようとするのはまた別の話である……。




 さて、今回は復帰もかねて銀魂版スリーピングナイツの過去篇をお送りしました。いかがだったでしょうか?
 まさかブリーザも加わろうとしていたとは……予想も付かなかったと思います。本編とは別人ですが、彼女達の性格や個性は概ね変わっていません。ご安心ください。
 次回は次元遺跡篇の振り返りをしつつ、新章へと繋げていきたいと考えています。

 と言うわけで、まずは長い間投稿出来ず申し訳ありませんでした!!
 遅れた理由ですが、端的に言うと就活で上手く時間が取れなかったからです。現状だとようやく一段落したので、また定期的に投稿していきます! また順次追っていただけると、ありがたいです!!
 それでは今回はここまで! 次回の投稿は8月頃を予定しています。
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