剣魂    作:トライアル

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 プログレッシブ映画は11月6日に直行! それまではネタバレ絶対見ないマン。余裕を持ってツイッターを使える日はいつになるのだろうか……

 そして今日は神楽ちゃんの誕生日! それとお気に入り登録200人越え、ありがとうございます!!



剣魂 妖国動乱篇 今回の出来事は――

シウネー(何故急に力が抜けたのでしょうか……まさかこれもクーデターの一端? だとしたら、早くアルンに向かわないと!)

銀時「何を勘違いしてんだよ。アレこそネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねぇか。それにしても完成度高ぇな、おい」
アスナ「完成度云々じゃないのよ!! あんなのただのわいせつモノでしょ!!」

妙「どこってかぶき町よ。地球の」
タルケン・テッチ「「えっ?」」

リュウガ「……だから何故来ないんだ!? 何が問題だ!?」
レオイマジン「おい、落ち着け」

新八「えっ……!? ウサギが人間に?」
ユイ「これって……どういうことなのですか?」
ユウキ「二人共! ここは僕に任せて早く行って!!」

リュウガ「ようやく手に入れたぞ。ったく手間をかけさせやがって……どんなに足掻こうと無駄だったな!」
新八「野卦……お前!!」

アスナ「……良かったわ。アナタは無事だったのね。もう大丈夫よ……!」
ユウキ「って、アッスーさん? 泣いてるの? 無理しているのかな……?」


第七十八訓 Aの切り札/仲間を取り戻せ

 今回の話はALO星の出来事から始まる。

「アレです! あの町です!」

「分かってらぁ。とっとと行くぞ」

 各々の目的を胸にアルンへと突き進むのは、シウネーと高杉の二人。異なる目的や約束を果たすべく、がむしゃらに走り続けている。

「おい、待つっす! コノヤロー!!」

「その距離では届いていないと思うが」

「なんとか近づきたいものですな」

 一方でその跡を追いかけるのは、来島ら鬼兵隊の一行。無我夢中で高杉に声をかけるも、距離が遠いために届いていない。それでも気づいてもらうために叫び続けている。

 そんな応酬が続くうちに、高杉とシウネーはようやくアルンへと到着していた。

「やっと着いたな」

「そうですね。後は姫様の元に向かえば……!」

 呼吸を整えつつも二人は、今後すべきことを思い浮かべている。シウネーは姫様ことフレイアや騎士団、町の住人の安否確認。高杉は仲間との合流だが――

「晋助様ぁぁぁ!!」

「ん? この声は?」

その瞬間は不意にも訪れた。鬼気迫る声が聞こえて後ろを向くと、そこには凄まじい剣幕で近づく来島の姿が見えている。

「やっと見つけたっす! この女は誰っすか!!」

 出会い頭に彼女は、高杉の横にいたシウネーに敵意を向けていた。その正体や関係性をはっきりさせるために、どさくさと詰め寄ろうとした時である。

「ギャフ!?」

「ん?」

「えっ?」

 なんとアルンに踏み入ろうとした途端、来島は何かにぶつかり、顔に強い痛みを受けてしまう。彼女本人も何が起きたのか分からず、顔を手で押さえながらただ困惑していた。

「ちょっとこれどうなっているっすか!? 晋助様! 私の声、聞こえているっすか!?」

 慎重にぶつかった個所を確認すると、そこには目には見えない透明な壁が張られていることに気付いている。辺り一面が覆われ、容易にアルンへ行くことすらままならない。

 焦る来島に反して、高杉とシウネーは冷静に状況を分析している。

「いつの間に出来たんだ、こんな壁?」

「私達が来た時には無かったのに。これでは高杉さんのお仲間とも……」

「少し厄介なことになったな」

 外部からの侵入を阻む防壁だと捉えており、出来たのもほんのついさっきだと推測していた。これでは合流や脱出することも不可能である。

 深刻そうな顔で今後の対策を練る二人に対して、来島は諦めずに壁を壊そうと画策していた。ちなみにだが、来島の声は高杉らにはまったく届いていない。ようやく彼女もこの事実を察し始める。

「って、声も届いていないっすか!? どんだけ私の神経を逆なでするっすか!?」

 余計に怒りを燃やしながら、壁を叩き続けていると――そこに出遅れていた仲間達も駆けつけていく。

「おい、また子よ。何をやっている?」

「何って、壁を壊しているんすよ!」

「壁? こんな罠があったとは……」

 万斉、武市共にこの事実を目の当たりにして、大なり小なり困惑している。高杉との合流も上手くいかず、状況通りに大きな壁へと当たってしまう。

 願うはこの壁が取り除かれるまで待機したいが……高杉側にそんな余裕は無かった。

「おい、侵入者だ! こっちへ来い!!」

 ふとアルンの町中に現れたのは、マッドネバーの怪人の一体エレファントオルフェノク。彼は高杉らを侵入者だと見立てて、戦闘員を呼び寄せながら捕まえようとしている。

「って、また怪人ですか!」

「見つかったか。逃げるぞ」

「は、はい!」

 怪人を発見した二人は、すぐに逃げる準備を進めていく。近くの裏道に目を付けており、この危機を脱しようと考えていた。

「おい、お前ら! ひとまず合流は後だ! ここで待っていろ!」

「晋助様……って、なんて言っているかやっぱり聞こえないっすよ!!」

 壁越しにいる来島らにも指示を伝えたが、肝心の内容は不運にも聞こえていない。本人はその事実に気付かないまま、シウネーと共に場を逃げ出してしまう。

「あぁ、待ってください!! 晋助様ぁぁぁ!!」

 何一つとして言葉が通らないまま、高杉と再び分かれてしまう鬼兵隊一行。来島が悲痛な想いを叫び続ける一方で、万斉と武市は壁の突破方法を考え始めている。

「まずはこの壁をどうにかせねば」

「困ったものですな」

 高杉との合流はまだまだ先のようだ。

 一方で怪人の魔の手から逃げる二人だが、シウネーはアルンの変わり果てた様子に違和感を覚えてしまう。

(町中にまったく人がいない……もしかして、もう制圧されたの?)

 辺りを見渡しても誰一人として人がおらず、ちらほらと荒らされた跡も見えている。いなくなった人はどこへ消えたのか? フレイアや他の騎士団は無事なのか? 彼女の不安は募るばかりであった。

 こうして度重なる妨害に出くわしながらも、遂にアルンへと到着した鬼兵隊一行とシウネー。この先に待つものとは果たして――

 

 

 

 

 

 

 

 場面は地球へと戻り、江戸の時刻は夕方から夜に移り変わっていく。真選組屯所では、局長や副長らが今日起きた事件についてまとめていた。

「以上が今日捕まえた犯人の情報ですね。暗躍している過激攘夷組織と繋がりがあると見て間違いないでしょう」

「ご苦労だった。後は口を割るだけだな」

 報告に来た山崎の話を聞いて、土方は労いの言葉をかけている。単身犯人を追いかけた山崎は、その後無事に捕獲。沖田らが帰ってくるまで、手短に事情聴取まで行ったという。今日の彼は一段と仕事が早い。

 報告を終えた山崎は、部屋にいた近藤、土方、沖田に対して、彼らと戦ったとされるダークライダーの件も聞いている。

「ところで近藤さん達は大丈夫だったんですか? その……コウモリっぽいヤツとは」

「あぁ、あの件か。実はな、戦闘の最中に相手側が逃げてしまったな。結局何が目的なのか分からなかったんだよ」

「えぇ? そうだったんですか」

 あまりにも予想外な返答に、山崎も驚いて目を丸くした。ダークキバが敵前逃亡した理由は分からず、沖田ら三人も頭を悩ませている。

「地球に来た目的も分からずじまいだったな」

「そもそもなんで町中にいたんだよ。誰かを探していたのか?」

「他にも妙な連中がいたと通報もあったみたいですからねぇ」

 経緯はともかく人目の目立ちやすい場所にいたことから、かぶき町に用があったと土方は推測した。同時多発的に不審な人物も通報に上がっており、組織ぐるみで明確な目的があったのだろうか?

 そう考え込む土方に対して、沖田はとある耳寄りな情報を話していく。

「ところで土方さん。実はとある情報を耳にしやして」

「なんだよ」

「ダークライダーの通報が多数ある中で、一つ妙な情報がありましたねぇ。どうやら攘夷党も戦っていたとか」

「なんだと? そんなことが起きていたのか?」

「それも重要なんですが、俺が気になったのはこの情報でさぁ。見慣れない浪士がいたと。赤髪でおっさん顔だったらしいんでさぁ」

「赤髪だぁ? 誰かいたか?」

「さぁ? 俺もいまいち分からねぇんですよね」

 さり気なく戦いに参加した、新たな攘夷浪士がいたとのこと。身体的な特徴も伝えるが、確かに該当する人物は思い浮かばない。沖田自身も目途は立っていないが。

 実を言うとこの一件は、攘夷志士入りしたクラインが初めて真選組に認知された瞬間である。わかりやすく言うと、彼が指名手配されるまでもはや秒読みということだ。

密かな危機がクラインに迫る中、真選組もまた新しい展開を迎えている。

「副長。万事屋から電話が来てますよ」

「はぁ? あいつらが? なんだよ、一体」

 突然部屋に原田が入り、彼は土方に万事屋からの電話を伝えていた。面倒に感じながらも、とりあえず土方は電話に応対する。廊下にあった黒電話を取り、受話器に耳を寄せていく。

「もしもし。てめぇら、何のようだ?」

「あー!! やっと繋がった!!」

「遅いわよ! それでも警察なの!?」

「って、急に大声出すなや!! てか、なんでお前らだよ? 万事屋の電話だろ?」

「細かいことは後で説明するから、とにかく万事屋まで来てよ!」

「私達の力じゃどうにも出来ないのよ! 頼むわよ!」

「ちょ、ちょっと待て! おい、どういうことだ!?」

 電話から聞こえてきたのは万事屋ではなく、意外にもシリカ、リズベット、リーファ、シノンの女子四人である。揃って焦った態度を見せており、肝心の要件も伝えていなかった。電話も途切れてしまい、土方はさらに困惑したが、一つ分かるのは異常事態だということだろうか。

「何があったんですかい、土方さん?」

「電話の相手は万事屋じゃなかったのか?」

「俺にも分からねぇよ。なんでこんな時間にそもそも呼ぶんだよ……」

 ひとまず仲間にも電話の様子を伝えたが、やはり自身と同じ反応である。近藤だけは少々邪な考えを思いついていたが。

「とりあえず行ってみたほうが良いだろう。ワンチャン、お妙さんのボディガードを任せられるかもしれないからな!」

「そんなチャンスねぇと思いやすけど」

「えっ?」

 妙絡みだと期待を膨らますも、沖田はそんな淡い希望も打ち砕く。とそれはさておき、万事屋の要件が気になって仕方がなく、近藤、土方、沖田の三人は万事屋の元へ向かうことにしていた。

「まぁでも、行って損はないでしょうね。俺も興味があるんで、ついていきやすよ」

「ったく……仕方ねぇな。おい、山崎に原田。すぐ戻るから指揮は十番隊が仕切ってくれ。何か異変があればすぐ報告しろよ」

「「はい!」」

 不在中の指揮も近くにいた原田に託して、三人はぞろぞろと部屋を出る。大した用事ではないとこの時の三人は括っていた。後に起こることも知らずに……

 

 

 

 

 

 

 

 そして真選組一行は、瞬く間に万事屋へと移動していた。

「ようやく着いたが……結局何の要件なんだよ」

「あいつらのことですよ。どうせまたくだらないトラブルが起きて――」

 玄関前にて戸を叩く前に、ひとまずは事態の予測を立てる三人。深刻そうに見えながら実はしょうもない、拍子抜けのする要件だと読んでいる。そう静かに会話を交わしていた時。

〈ガラガラー〉

「あっ、やっと来たわね!!」

「って、リズ君!? それにみんなまで」

 真選組の気配を察して、玄関からリズベットやシリカら女子達が駆け寄ってくる。皆不安げな表情を浮かべており、雰囲気もどこかぎこちなかった。焦りながらも四人は近藤らの手を掴み、無理矢理にも万事屋の中に入らせようとする。

「さぁ、早く来てよ!」

「真選組の力が必要なんですよ!!」

「ナー!!」

「ちょ、引っ張るな! それに入り口が突っかかるから止めろって!」

 ピナまでもが土方らを引っ張るも、狭い戸によって体が突っかかってしまう。異様な焦りようを見て、真選組一行はただ事ではないと勘ぐっていた。

 彼女らを落ち着かせつつ、万事屋の中にようやく入ると、そこで彼らは残酷な現実を目にすることとなる。

「こっちよ、早く!」

「分かったから! 一体何が……」

 と連れられるままにリビングへ入ると――そこに見えたのは、

「えっ? なんだこれ……」

「空気重くねぇですかい」

失意に暮れる銀時、キリト、新八、アスナ、神楽、定春の五人と一匹であった。皆暗い表情のまま顔を俯かせており、人によっては生気すら感じられない。万事屋らしからぬ悲壮感に溢れる光景である。

 流石の真選組一行も、この重々しい空気には気が引けてしまう。咄嗟にシノンらに詳しい事情を聞いていた。

「ど、どういうことだ!? 何があったんだ、万事屋に!」

「それがね……」

 そして彼女達は、万事屋に起きたことを簡略的に説明する。

「えぇ~!! ユイちゃんがさらわれたのか!?」

「シー! 静かにしてくださいよ!」

「そうよ! お兄ちゃん達、めちゃくちゃショック受けてるんだからね!」

「いや、そういう君達も声を小さくした方が……」

 驚嘆とする近藤らを落ち着かせるように注意するも、当の本人達もショックで大声を出してしまう。突然のことにシリカやリーファ達も、まだ心の整理が付いていない。

一方で土方と沖田は、すぐに現状を読み込んでいる。

「なるほど。ダークライダーの目的は、あの女だったのか」

「わざわざ地球まで来るなんて、どこに力を入れているんですかね」

 ダークライダー及びマッドネバーの目的も判明して、心の中で引っ掛かっていた違和感が取り除かれていた。同時にユイを誘拐されたことで、悲壮感に浸る万事屋らの気持ちも密かに汲み取っている。

「まさかユイを狙ってくるなんて思いもしなかったけどね……」

「こう見えても結構ショックなのよ。アタシ達の知らない間にさらわれるなんて……」

 シノンやリズベットも神妙な表情で悲痛な想いを呟いていた。自分達の知らない間に仲間を連れ去られたことが、未だに信じられないのである。しかもその相手は、因縁深いマッドネバー。悔しさと苛立ちが余計に高まるばかりだ。

 この重たい雰囲気が漂い続ける中、真選組一行も空気を読んで口数を少なくしている。

「そんなことが起こっていたとはな……」

「ったく、あのテロリスト共。面倒なこと起こしやがったな……」

「絵に描いたような悪役ですねぇ」

 三人共珍しく気を遣っていると、リーファら女子達は唐突にもある提案を彼らにぶつけていた。

「そう! だから真選組にお願いがあるの!」

「お願い? まさかそれが、俺達を呼んだ理由かよ」

「そうですよ! 一刻も早くALO星まで飛ばす宇宙船を飛ばしてください!」

「ナー!」

 なんと彼女らは無理を承知で、ALO星まで向かう宇宙船を希望している。直接敵の本拠地で仲間を取り戻す算段のようだが――土方らは突然の提案に耳を疑ってしまう。

「はぁ!? おい、ちょっと待て。急に言われても、こちとらすぐに用意なんか出来ねぇよ」

「そうでさぁ。例え申請が通っても、手続きなり何なりで、最低でも三日はかかりやすよ」

 沖田も現実的な考え方で否定するも、気持ちが高まっているシノンらには何一つ通じていない。

「それじゃ、間に合わないわよ! いいからすぐに出しなさいよ!」

「いやでも、松平のとっつさんに頼み込んでもなぁ……」

「じゃ、私達が交渉するわよ!」

「そうですよ! 早くその松平さんに会わせてください!!」

「ナー!」

「いや、会えるか!! お前ら無茶を言いすぎなんだよ! 少しは落ち着け!!」

 仕舞いには真選組の代わりに、意気揚々と交渉相手にまで名乗り出ている。もはやなりふり構っている暇はなく、ユイを助けるためにはどんな手段でも使う様子であった。あまりにも強引なやり方に、真選組一行はタジタジとなり気が引いてしまう。それでもなお女子達の説得は続き、互いに一歩も引かないこう着状態が続くことになる。

 そんな騒がしいやり取りが続く一方、未だに気持ちが立ち直らないのは万事屋一行。重い雰囲気が彼らの周りのみに漂い、誰一人として声を発していなかった。ただ一人を除いて。

「ど、どうしょう……凄く気まずい」

 苦い表情でこの深刻な現状を憂うのは、またウサギとなってしまったユウキ。元気そうだった万事屋の暗い姿を見ているだけで、無意識に心が痛んでしまう。

「帰ってきてから、ずっとこの調子だって。ここはメンタルを持ち直さないと!」

 励ましたいが言葉すら通じないため、どう行動すれば良いか悩んでいる。女子達が来たことで空気は和らいだが、それでも気持ちを持ち直すには程遠い。ユウキの心配をよそに、万事屋の重々しい空気は続く。

「俺も一緒に行けば良かったのか……」

「いいや。どっちにしても、数の暴力で連れ去ったんだろうよ。お前のせいじゃねぇよ」

「もう止めて! 自分を責めないで前を見ようよ! 僕の声届いてって!!」

 キリトや銀時も数時間前のことを引きずり、未だに後悔の念に苛まれてしまう。この言葉に耐え切れないユウキは、反射的に檄を飛ばしていく。

 さらに万事屋の辛辣な呟きは続いている。

「ショックでご飯も通らないアル。今日なんて三杯しかおかわりしなかったネ」

「いや、十分食べてると思うけど……」

「今日は本を読みながら、一緒にお通ちゃんの曲を聴くはずだったのに……お前の姉ちゃん〇にお金貢ぎすぎ」

「どんな曲!? 流石に子供と聞く曲じゃないよね!? ボケてんの? この重い空気を壊そうとボケてんの!?」

 神楽や新八もつられて現在の心境を声に出したが、二人に比べるとボケにも聞こえてしまう。ユウキも我を忘れて激しくツッコミを入れる始末だった。

「こういう時こそ前を向きたいのに、そのきっかけすらないなんて……」

「いや、アッスーさん? さっき二人が渾身のボケを繰り出してたよ。空気を変えようとしていたよ?」

 顔を俯かせながらアスナも自身の気持ちを吐露したが、ユウキからはまたもツッコミを入れられてしまう。

 彼女だけは万事屋の無自覚なボケに困惑したが、依然として場面はシリアスかつ重い雰囲気のままである。どんな表情をすれば良いのか、つい困ってしまう。

 そんな中でアスナは、困っているウサギ(ユウキ)を見て、彼女にある言葉をかけていた。

「大丈夫よ。もうすぐ立ち直るから、心配しないで……。もうちょっと待ってね」

 優し気な表情で、率直な思いを発している。ウサギが心配していると思い込み、不安を与えないように接していた。

 気遣いを忘れないアスナの姿を見て、ユウキもその芯の強さに打たれている。

「アッスーさん……ここは僕がどうにかしないと! 残ったメモリなら、必ずどうにか出来る方法があるはずだ!」

 万事屋を立ち直させるためにも、自身がきっかけを作るべきと真っ直ぐな想いに駆られていた。そう決意した彼女は、辛うじて残っていた三本のメモリを取り出している。その中から見つかったのは――

「えっとこれは……A? 妖精の耳?」

とんがった片耳があしらわれたAのガイアメモリだ。直感からこのメモリに可能性を見出したユウキは、勢いのままにそれをメモリスロットに装填していく。

〈アルヴヘイム! マキシマムドライブ!!〉

「うわぁ!?」

 音声が鳴り響くとともに、スロットからは眩い光が解き放たれている。その光は万事屋の壁にぶつかり、とある物体に変わり始めていた。

「えっ!? なんだ?」

「扉が出来ている……?」

 この異様な光景には万事屋の中にいた全員が気付き、落ち込んでいた銀時達も一瞬にして暗い気持ちが払拭される。彼らの心配をよそに光の物体は、オーラをまとったドア状の物体に変化していた。そんな最中に銀時達は、数分前に来ていた真選組の存在にようやく気が付いている。

「ていうか、なんでお前らがここにいるんだよ」

「今気づいたのかよ! 無理矢理この女子共に呼ばれたんだよ!」

「って、それよりも! 皆さん、見てくださいよ!!」

「それよりもってなんだ!」

 土方のツッコミを気にすることなく、一行の注意は光の扉に向けられていた。すると扉が開き、その中に広がっていた光景は――

「アレはアルン?」

「ってことは、元の世界に繋がる入り口なの?」

「いいや、違う! これはもしや……ALO星じゃないのか?」

ALO星の街並みである。シリカやリズベットらは元の世界にあったALOだと予見したが、街並みの僅かな違いからキリトはALO星の方だと理解していた。

「そう言われればそうだけど……」

「でもなんで急に扉が出来たのかしら……?」

 この状況を一旦は飲み込んだ一行だが、まだ扉が出来た原因は分かっていない。リーファやシノンらは周りにきっかけがないか探していると、アスナはメモリを触っているウサギの姿が目に入っていた。

「……まさかアナタの仕業なの?」

 両手でウサギをすくい上げて、真っ直ぐに目を見て問いかける。するとウサギはゆっくりと頷いて返答していた。

「そ、そうだね! いや僕もこんなことになるとは思ってなかったけど……」

 言葉が聞こえていないことを良いことに、ウサギことユウキは照れ気味に本音を漏らしている。彼女自身も確証からメモリを差し込んだわけではなく、いわば偶然の結果であった。しかしユイの救出に希望を差し込んだことには嬉しく思っている。

「このメモリの力で扉が開いたアルか?」

「そんな偶然が起こるなんて……」

 一方の新八や神楽も、偶然に起きた出来事に騒然としていた。しばらく光の扉を眺めている一行だが、徐々にこの扉がユイを救う好機だと考え始めている。

「いいや、これはチャンスだ! ユイを取り戻すための!」

「そうだな……まだ運には見放されてねぇみたいだな!」

 銀時やキリトの一言と共に、その意味を理解していく仲間達。深刻そうな表情も和らぎ、失いかけていた活気が戻り始めていた。

「行こうよ! ユイちゃんを取り戻すためにも!」

「もちろんです! アタシ達も一緒に行きますよ!」

「ナー!」

「リッフーにみんな……ありがとうネ!」

「ワン!」

 シリカやリーファ、さらにはピナの心強い言葉に、神楽や定春も元気よく返答する。女子達は皆ユイの救出に快く賛同しており、果敢にもサイコギルドに立ち向かう様子だ。ダークライダーとの決着も付いていない今、余計にこの好機を逃すわけには行かないのである。

 一方でシノンやリズベットは、やや戸惑っている真選組にも協力を促していく。

「真選組のみんなももちろん来てくれるわよね?」

「お、俺達か? いや急に言われてもまだ心の準備が……」

「何弱腰になってんのよ! 市民の味方だって言ったのは近藤さんでしょ! ここはもう乗り込み一択でしょうが!」

「た、確かにそう言ったが……」

 中々判断の付かない近藤に対して、リズベットは強気に急かしている。以前に彼が言っていた言葉も用いており、上手く言いくるめようとしていた。

「どうしやす、土方さんは?」

「乗り掛かった舟だ。ダークライダーとも決着が付いてねぇし、このまま行ってやるよ」

「奇遇でさぁ。俺も同じでい」

 一方で土方と沖田は、共にALO星に向かう意思を一致させている。ユイの救出の他にもダークライダーとも蹴りを付けたいらしく、概ね目的のために決めていた。

「よし! 一気に空気が変わった!! もちろん僕も行くよ!」

 偶然にも一筋の希望を作ったユウキも、万事屋内の風向きの変化に喜ばしく感じている。バラバラになっていた気持ちをまとめ上げて、この勢いのままに全員がチームとして一致団結すれば良いが……そう易々と上手くいかない。

「って、なんでお前らまで来るんだよ。足手まといだから止めろ」

「うるせぇ! わざわざ協力してやってんだから、少しは感謝しろや!!」

「まぁまぁ、落ち着いて! 喧嘩じゃなくて、ここは協力しようよ!」

 早速銀時と土方が喧嘩寸前にまで衝突してしまう。キリトら仲間達が宥めながら二人を収めたものの、相性の悪さはいつ何時も続いている様子である。

「大丈夫だよね?」

 二人の言い争いを目にして、若干今後の動向を不安に感じてしまう。

 そんな苦笑いを浮かべるユウキに、アスナはそっと彼女の体を掴んで礼を伝えていた。

「ん? アッスーさん?」

「ありがとうね。私達を助けてくれて。アナタが作ってくれたチャンスは、絶対に無駄にしないから!」

「うん。どういたしまして!」

 感極まった表情で感謝の気持ちを告げると、ユウキは屈託のない笑顔で返している。言葉が通じなくとも、自身の想いが伝われば良いと彼女は理解していた。

 そして遂にALO星へ向かう準備を整えた一行。万事屋の五人と一匹、真選組の三人、女子達四人と一匹の合計十二人と二匹で殴り込みするという。ユイを連れ戻すために。はたまたマッドネバーのダークライダーと決着を付けるために。皆が譲れない気持ちを背負って、この不透明な戦いに赴くのだ。

「よし、みんな……準備は出来たか?」

「うん!」

「こっちもよ!」

「同じくな」

 キリトからの掛け声に、仲間達は一斉に声を上げる。後悔など恐れずに立ち向かう、勇気ある者達がここにいた。

「アナタも力を貸してもらえる?」

「もちろんだよ、アッスーさん! 街のことも気になるし」

 アスナはウサギことユウキにも問いかけており、これを聞いた彼女は威勢よく頷く。共に戦う意思を示していた。

 改めて全員の意思を確認したところで、

「じゃ、行くぞ。ALO星に!」

「「「おう!!」」」

銀時の掛け声と共に一行は光の扉を潜り抜けていく。目的に多少の違いはあれど、気持ちだけは一つに合わせている。この先にどんな困難が待ち受けようとも、すべて打ち砕く面持ちであった。

 

 だがしかし……扉が消えようとした途端に、一人また一人とつられて潜り抜けた者がいることを、この時の彼らはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「到着と」

「さて……ここが噂のALO星か」

 光の扉を潜り抜けていき、そのまま地上へと降り立った銀時とキリト。そこに定春やシリカといった仲間達も駆け寄り、周りの様子やアルンの街並みを確認していた。

「街の外観からしてアルンよね? ここ」

「この星での呼び名は分からないけど……中心街であることに間違いないわね」

 元の世界での知識から名前を決めつけるリズベットに、シノンがそっと補足を付け足す。あくまでもここはALO星。街並みが似てようとも、名前が同じとは限らない。

 街の雰囲気は至って西洋的であり、古風な民家や商店が立ち並ぶ中、看板は比較的現代のような電飾が付いたものが多い。他にも観光客専用の看板や注意書きも建てられ、ここがキリト達の知るALOと異なることを示していた。

 皆が不思議そうに辺り一面を確認すると、ある違和感をシリカは覚え始めている。

「何か……おかしくないですか?」

「えっ? 何でだ?」

「だって中心街なのに、誰一人として人がいませんよ」

「ナ?」

「確かにこれは妙だな」

 そう。あまりにも人の気配がないのだ。さらによく見ると、荒らされている場所がちらほらと見受けられる。アルンに異常な事態が起きていることは明白で、一行は得体のしれない恐怖心を感じ始めていく。

 皆が神妙な表情を浮かべる中で、銀時はとある事実に気が付いている。

「アレ? ていうか、全員揃っているのか?」

「そういえば……来た時と人数が足りないな」

 よく見ると周りには、出発前にいた仲間が一部だけいなかった。扉を潜り抜けた後に、別の場所へ飛ばされたのだろうか。

 ひとまず銀時やキリトらは、近くにいる仲間だけでも点呼がてらに確認していく。

「おい、とりあえず点呼とるぞ! 俺はいるぞ」

「俺もだな」

「ワン!」

「アタシとピナもいますよ!」

「ナー!」

「アタシもいるわよ」

「私もね」

「そして俺もだな」

[桂さんに同じく]

「じゃ、扉を抜けた後に離れ離れになったのか……って、ちょっと待てぇ!!」

 点呼に応じたのは、銀時、キリト、定春、シリカ、ピナ、リズベット、シノンと順調に続いたが、突然明らかに違和感のある声が発せられる。銀時もノリツッコミをかまして、前を見ると……そこには万事屋に来ていないはずの桂とエリザベスの二人が立っていた。

「ん? なんだ? 何かおかしいところでもあったのか?」

「おかしいというか……えっ!?」

「か、桂さん!?」

「なんで桂さんも来ているのよ……?」

「ていうか、いつの間に?」

 リズベット、シリカ、シノン、キリトと、目の前の光景が信じられずに驚嘆とした表情を浮かべている。彼らの素直な反応を良いことに、エリザベスもプラカードを上げて反応した。

[おい、俺も忘れるなよ]

 だがしかし、四人の反応は特に無い。

[まさか存在感が薄かったか?]

「いいや! むしろ存在感大アリすぎですよ!」

「久々に見たけど、本当に得体がしれないわね……」

 再びプラカードを上げたところで、ようやくシリカから反応が返ってくる。リズベットも久しぶりに見るエリザベスの圧倒的な存在感に、恐れおののいてしまう。未だにペットとして扱っていいのか、甚だ疑問だった。

 とそれはさておき、銀時はたかが外れたように桂へ激しいツッコミを繰り出す。

「おい、ちょっと待て! なんでお前までALO星に来てんだよ、ヅラァ!」

「ヅラじゃない桂だ! というか、この台詞自体久しぶりな気もするな」

「そうじゃなくて!!」

 桂は依然として冷静さを保っており、お決まりの台詞まで言い放つ。銀時を宥めつつも、彼の言い訳は続く。

「まぁまぁ、落ち着け。俺達も不本意ながら話を聞いていてだな……ユイ君を取り戻すためにも、こちらも手を貸そうではないか」

「どっから話を聞いていたんだよ……」

「天井からだ」

「なんで俺の家の天井にお前らがいるんだよ! やっぱりバカだろ、お前!!」

 どうやら桂によると、たまたま万事屋の天井に潜り込んだところ、ユイやマッドネバーの件を聞いて、自発的に参加したようだ。表に出られなかったのは、途中で真選組が来たことだと思われる。想定外のことが起きて、銀時は不満をぶつけるかの如く桂へ強く当たっていた。しかし一方で、キリトらの反応は少々真逆である。

「ど、どうしましょう……」

「うーん。まぁでも桂さんもそれなりに強いし、一緒にいた方が安心な気もするな」

「あぁ見えても、戦争帰還者だからね。二人とも」

「全然そうは見えないんだけど……」

 かぶき町へ戻そうにもどこかもったいない気もするので、このまま同行することで考えを一致させていく。もし今後戦闘が必要ならば、少しでも戦力が多い方が一安心だからだ。ましてや桂は銀時と同じく攘夷戦争の英雄。濃い性格で微塵もその面影は感じ取れないのだが……そこは彼の実力を信じるしかない。未知数とも言える桂やエリザベスの加入によって、四人は微妙な表情を浮かべてしまう。

「フゥ……」

「ナフ……」

[俺もため息だ]

 定春、ピナ、エリザベスも同じような反応であった。明らかに最後だけは違う気もするが……。と未だに銀時と桂の言い争いが続く中、キリトはある人物の動向が気になっていた。

「アレ? ちょっと待ってくれ、桂さん。まさか……クラインも一緒にいたのか?」

 その人物の名はクラインである。普段から桂と共に行動しており、今回も同じ流れかと思いきや――

「あぁ、クライン殿だ! そういえば見かけないが、途中ではぐれてしまったのか?」

やっぱり合っていた。どうやらクラインも同じようにアルンへ来ているようだが、この近くにはいないらしい。となるとキリトや銀時らの脳裏には、ある悪い予感が思い浮かぶ。

「……もしかして、今アスナや真選組と一緒にいるのって」

「まさか……」

 来訪する最中ではぐれてしまったアスナや神楽らの元に、クラインがいるのではないかと推測した。それだけならまだいいが、最悪の事態は真選組とうっかり鉢合わせすることである。ただでさえいつ攘夷志士とバレるのか分からないため、仲間達はかなり彼の行く末を心配してしまう。

 そんな悪い予感は、ことごとく当たることになるのだが。

 

 

 

 

 

「到着ネ!」

「あっという間だったけど……人数が足りなくないですか?」

 一方でこちらは、同じくアルンへと到着した神楽や新八ら一行。早々に彼らは、仲間と途中で分かれたことに気付いていく。

「途中ではぐれちゃったのかな?」

「だとしてもこの街にいそうな気もするが」

「まぁ、いずれ再会できるだろ」

 つい動向を心配してしまうリーファに対して、沖田や土方は特に気にしてはいなかった。銀時を始め簡単にやられるとは思わず、いずれは再会できると括っている。

「ていうか……沖田さんと一緒なの?」

「何でい。何か文句でもあんのかよ」

「別にないわよ。協力とはいえ、あんまり私をおちょくらないでよね」

「はいはい、分かってやすよだー」

「本当に分かってんの?」

 一方のリーファは、早くも沖田と険悪な雰囲気を作ってしまう。相性のあまり良くない二人だが、今回ばかりは否が応でも力を合わせるのか。

「やっぱり荒らされている……もう遅かったのかな?」

 そしてユウキの方は、変わり果てたアルンの街並みに大きな不安を覚えてしまう。自分が不在の間に果たして何が起きたのか? 考えるだけで気が遠くなるが、しっかりと受け入れる準備だけはしていた。

 多種多様な想いが寄せ合うこちらのチームには、アスナ、新八、神楽、ユウキ(ウサギ)、リーファ、近藤、土方、沖田と実力者が集結している。

ひとまずは街の探索に向かおうとした時だ。彼らはとある人物と遭遇している。

「ど、どひぁぁぁぁ!!」

「えっ? 誰の声?」

 腑抜けた叫び声を聞きつけて、一行が周りを見ると――一人の見知ったかと目を合わせていた。

「こ、こんにちは……」

「ク、クラインさん!?」

「えっ! 来てたの!?」

 控え目そうな表情を浮かべて挨拶を交わしたのは、密かにアルンに来ていたクラインである。意気込んで桂と共に光の扉を潜り抜けたところ、不運にもアスナや神楽側と合流していた。ちなみに彼が普段よりも怯えているのは、真選組が近くにいるからである。幸いにもまだ正体はバレていないが……もはやそれも時間の問題だ。

「おぃぃぃぃ! なんでお前がいるアルか! さては盗み聞きしていたな、コノヤロー!」

「って、止めてくれ! 神楽ちゃん! 急に揺らしたら、酔うだろ!」

 クラインとの再会早々に神楽は、彼の服を掴んで前後に揺らしていく。勝手に盗み聞きと決めつけているが、これは偶然にも間違いではない。しばらく彼は、神楽の釈明に時間をかけている。

 一方で真選組一行は、久しぶりに会うクラインに妙な懐かしさを覚えていた。(実際には何度も会っているが、どれも変装した時の姿である。素の姿として会うのは、実に約一か月振りだった)

「なんか妙に久しぶりに会うな。クラインって名前だったか?」

 土方の素朴な疑問に、リーファと新八が応えていく。

「そう……だね。私達の仲間で、とっても頼りになるお兄さんかな?」

「今はかつ……いや、カツ丼屋で働いているんですよ!」

「何ぃ、カツ丼アルか! どこにアルネ!?」

「いや、ここにはねぇよ! 急に眼の色を変えるな、お前は!」

 空気を読んで彼らは桂や攘夷志士のことは話せなかったが、誤魔化した結果神楽がその話に飛びついてしまう。目の色を変えてカツ丼を探す彼女に対して、新八は高らかにツッコミで返していく。

「ハハ……流石は神楽ちゃん」

神楽の熾烈な食い意地を目の当たりにして、リーファも苦笑いで呟いていた。

「ヒィ、危なかった……」

 一方で神楽の呪縛から解放されたクラインに、アスナが近づいて話しかけてくる。

「ところで、クラインはどうやってここまで来たの?」

「いや実はな――」

 そして彼も桂と同様、ここに至るまでの経緯を話していた。

「てか、なんでウチの天井にいたのよ」

「まぁ、こっちも色々あったんだよ。それでよ、ユイちゃんがさらわれたんなら、俺達も黙っちゃいられねぇってわけだ! あの人とははぐれちまったが、絶対に探しているはずだ。だからよ、俺も手伝わせてくれよな!」

「はいはい、事情は分かったわ。一応頼りにしているからね」

「おうよ! 一応は余計だぜ、アスナさん」

 天井にいたことは納得していないが、それでも彼なりの優しさと熱意はしっかりと受け止めている。アスナ側も銀時達と同じく、突然やって来た助っ人を受け入れる所存だった。どちらにしても、人数が増えることには有難く感じている。

「頼もしい仲間なのかな? 一見微妙そうに見えるけど……」

 ユウキもクラインの活気のあるやる気に注目しているが、そこまで重要視はしていない。頼もしい仲間である認識に変わりはないが。

 一方で真選組一行も、クラインの加入は好意的に受け止めていた。

「うむ。頼もしい味方が加わったものだな!」

「思い出した。確か一回街でばったり会ったっけな。つーか、こんな年上の奴とキリトは友人だったのか?」

「一応二十五歳みたいですけどねぇ」

「俺の二個下じゃねぇかよ」

 近藤は彼と親近感が湧きつつ、土方と沖田は意外な年齢の発覚に若干驚いている。そう色々と考えを思い浮かべる中で、土方らはある情報を思い起こしていた。

「アレ? そういえば赤髪って……」

「あっ、そうだ。まさかアイツなのか?」

 沖田より聞いた新たな攘夷浪士の件である。赤髪という共通点からクラインとは一致するが、それではまだ証拠は不十分だ。けれでも疑いはそれなりに持っており、今後は彼の動向にも注意を払っていく。知らぬが仏とはまさにこのことなのだろうか。

 こうして新たにクラインも加わり、ようやく探索を開始する一行。まずは人気のない街の探索から始めようとしたが――

「おい、みんな! 一旦隠れるぞ!」

「こ、近藤さん?」

突然にも近藤は何か嫌な予感を察知して、全員を建物に囲まれた裏路地へと避難させる。

 そっと呼吸を整えて街の広場に目線を向けると、

「フッ! ハァ!」

そこには怪人の大群と戦う男の騎士の姿が見えていた。彼は共に逃げていた女性をかばいつつ、懸命に町中を逃げていく。

(ちなみにだがこの二人の正体は、物語の序盤に登場したシマノブとカヤノンである)

「アレは……!」

「やっぱり敵がいたみたいだな。あの奇妙な怪人達もマッドネバーか?」

「大方それで間違いないわね」

 近藤の悪い予感は当たっており、危機を回避したことには一安心している。マッドネバーの脅威をマジマジと眺める一方、クラインは彼らを助け出すために動き出そうとした。

「って、早く助けに行かねぇと!」

「おい、待て! ここは無暗に動くんじゃんぇよ。てめぇまでお陀仏になるぞ」

「で、でもよ……」

 がむしゃらに飛び込もうとした時、土方は彼を間一髪で取り押さえていく。勝てる見込みが無いと察して、冷静に状況を見極めるべきだと説得している。クラインに限らず、場にいた全員が助けるべきか戸惑っていたが。

「シマノブさん!」

「カヤノン……早く逃げろ! 君まで閉じ込められるぞ!」

「で、でも! アナタを置いていくわけには!」

 一方で騎士ことシマノブは、怪人の一体であるゴ・ジャラジ・ダやダスタード、魔化魍忍群の大群を相手にしつつ、守っていた女性ことカヤノンに逃避を促す。このままじゃ共倒れになると考え、僅かでも彼女が生き残る道を選んでいた。だがしかし、

「隙アリ!」

「キャ!?」

「カヤノン!?」

その隙をつかれ、もう一体の怪人であるプテラノドンヤミーにカヤノンは捕まってしまう。もはや二人にとっては一巻の終わりである。

 この絶望的な状況にとうとう我慢が出来ず、様子を見ていたクラインらは勝手に動こうとしていた。

「やっぱりダメだ! 俺は助けに行くぞ!」

「私も行くわ!」

「私もネ! みんな、行くアルよ!!」

「おい、ちょっと待て! 無暗に動くんじゃねぇよ!」

 彼に続いてリーファや神楽も動き出し、揃って二人を助け出そうとする。沖田らは引き止めるものの、もはや衝動的に動いておりブレーキなどは効かない。この判断が不利に働こうとは……三人にとっては思ってもいないだろう。

「さぁ、お前も鏡の世界に幽閉されるが良い! ハァァ!!」

「キャァァ!!」

「カヤノン!!」

 プテラノドンヤミーに捕まったカヤノンは、突如彼の口から発せられた黒い霧を全身に浴びてしまう。すると見る見るうちに、彼女の体はスッと消滅してしまった。

「えぇ!?」

「消えただと……?」

 この予想外の展開には、リーファら三人や真選組、ユウキらですらも驚きを隠せずにいる。同時に街に人がいない理由も、この怪人を始めとした影響だと察していく。

「ゴラゲロビゲスグギギ!(お前も消えるがいい!)」

「ウゥ……うわぁぁ!!」

 ショックを受けるシマノブの隙を見て、ジャラジは容赦のない攻撃を次々に浴びせていた。ヤマアラシの如く針状の物体を被弾させていき、彼に大きな痛みを与えている。そして攻撃を耐え切れなくなったシマノブも、ゆっくりと倒れて体が跡形もなく消えてしまう。

「また消えた!?」

「ってことは、もうあの二人は……」

 一連の様子を見た新八やアスナは、彼らの消滅が死を意味していると推察する。ましてやアスナは何度も同じような光景を目にしているので、余計に心が痛んでしまった。悲しみに暮れる彼らとは対照的に、ユウキはある光景を発見してむしろ驚いている。

「いいや、違うよ! アレを見て!」

「ん? どうしたの――」

 アスナの服を口で引っ張りつつ、周りにもこの事実を伝えようとした。両手を使って向けた先には、広々としたガラスの窓が配置されている。そこに映っていたのは、

「なんだ、ここは。って、ウッ!」

「大丈夫ですか、シマノブさん……って、私も? イヤ!」

先ほど消滅したはずのシマノブとカヤノンだった。彼らは自分達の現状を把握しておらず、さらには謎の痛みに苦しみ続けている。

 あまりにも不可解な光景に、一行の理解も追いついていなかった。

「鏡の中にいるだと!?」

「まさかマッドネバーは、住人を全て鏡の世界に閉じ込めているのか?」

「でも、なんで?」

 段々とマッドネバーの計画が分かり始める中、まだ肝心の個所は分からずじまいである。それでも二人が無事なことは、アスナらもつい一安心していた。

 ところがその脅威が、今度は自分達にまで牙を向こうとしている。

「おや? ここにもまだ反乱分子がいるようだな」

 プテラノドンヤミーは、表舞台に出ていたクライン、リーファ、神楽の三人を発見。先ほどの二人と同じように標的として定めて、同じく鏡の世界へ幽閉しようと企てていく。

「って、おいおい! もう見つかるのかよ!」

「逃げるアルって、ギュフ! コンニャロー、お前! ぶつかるなよ!!」

「えっ!? 俺のせいなのか?」

「って、ここで揉めないでよ! 早く逃げないと!!」

 いち早く逃げようとしたものの、途中で神楽はクラインと衝突してしまい、彼にその責任を擦り付けてしまう。足並みが揃わずリーファが叱責するものの、あまり通じていない。

 混乱のせいで三人は思わぬ窮地を迎えていた。

「おい、何やってんだ! お前ら!」

「早くこっちへ来てくださいよ!!」

「もうこうなったら……」

「僕らがいくしか!」

 近藤や新八らは引き続き声掛けをするも、リーファと同様に効果はない。ここはもう意地でも連れて帰るべく、アスナやユウキが助け出そうと動き出す。そんな時である。

「ジャヅサゾドサゲソ(奴らを捕らえろ)」

「そうはさせない!」

「何?」

 彼らの元に思わぬ助け船が現れていく。上空から華麗に一人の少女が場に降り立つと、

「くらえ!!」

勢いよく丸い球を地上に投げつけている。すると辺り一面に煙が発生して、場にいた全員を目くらましさせていく。

「こ、これは煙幕か……!」

「ボゴブバデゾ!(姑息な手を!)」

 視界を遮られた怪人達は、行動を制限されてしまい、瞬く間に行き場を失う。彼らが怯んでいる隙に、煙幕を仕掛けた少女は神楽らを誘導させている。

「こっちだよ、みんな!」

「えっ? ちょっと!」

「どこへ連れて行くアルか!」

「おい、おいていくなよ!」

 神楽とリーファの二人の手を握って、アスナらの元までに戻していた。それを見たクラインも必死に追いついていく。

 窮地を脱したところで、一行はようやく少女の正体を目の当たりにする。

「って、フィリアちゃん!?」

「そう! 早く逃げよう!」

 突然の再会に驚く一行を気にせず、彼女は歩みを止めなかった。助っ人として現れたのは、以前にアスナや真選組らと共に、次元遺跡を冒険したことのあるフィリアである。

「こっちへ来て! 安全な場所まで逃げよう!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 余韻に浸らせぬまま走るフィリアを追いかける一行。とりあえずは彼女の言う通りについていくことにする。

 ALO星で起きた思わぬ出来事の数々。崩壊寸前のアルン、消えた街の人々、暴れ回る怪人に生き残っていたフィリア。彼女との再会で、その大半は判明するのだろうか?

 

 

 

 

 

 そして銀時達もまた、アルンの真実に直面することになる。

「ん? ちょっとみんな! こっちへ来てくれ!」

「どうしたのだ、キリト殿」

 キリトがある光景を発見しており、桂ら仲間達を呼び止めていた。彼は商店にあったガラス張りの大きな窓に、一行の注目を集めている。

「このガラスを見てもらえるか?」

「ガラスに一体何が……って、えっ!?」

「これは……!!」

 ガラスを凝視していた一行が目にしたのは――幽閉されている街の人々だった。

「おい、出してくれよ!」

「く、苦しい……!」

「誰かぁ! 助けて!!」

 老若男女あらゆる人間……いや、妖精達が鏡の世界に囚われている。皆必死に助けを欲しており、苦しんで徐々に弱まる姿は、一行に多大なる衝撃を与えていた。

「酷い……!」

「街の人達を出られなくさせてるってこと?」

「だからこの街に誰も人がいなかったのか?」

 シリカ、リズベット、キリトと各々が神妙な表情で想いを呟く。街に人がいない理由は分かったのだが、あまりにも酷い仕打ちに一行は思わず憤りを感じている。

「こいつもマッドネバーの仕業なのかよ」

「なんて奴らなのよ! 外道にもほどがあるわよ……!」

 銀時やシノンを始めとして、増々マッドネバーの卑劣な行為に怒りを燃やしていく。定春やピナも苦い表情でこの状況を憂いていた。

「これはとんでもない敵と戦いそうになるな」

[正面では絶対倒せないな]

 一方で桂やエリザベスは、冷静に敵の狙いや規模を分析している。いずれにしろ強敵と捉えており、壊滅させるには手の込んだ手段が必要だと認識した。

 そう考え込んでいた時である。

「ギャァァァ!! 助けてくれ!」

「ん? うわぁ!? モヒカン!?」

 唐突にも彼らの目の前を、バイクに乗った男性の集団が駆け抜けていく。その容姿はカラフルなモヒカンをした癖の強い見た目であり、どうやら何者かから逃げているようだ。

(ちなみにだが、こちらも次元遺跡篇の冒頭で登場したモヒカン観光客の一人である。今回が二回目の旅行のようだが、到着早々にマッドネバーの襲撃に遭い、現在は敵の魔の手から必死に逃げているようだ)

「びっくりさせんじゃねぇよ! なんでこいつだけ世紀末ファッションだよ!」

「恐らく観光客じゃないでしょうか……」

 過激な格好を見て、銀時は激しくツッコミを入れてしまう。シリカは冷静にも彼らを観光客だと決めつけている。ただの勘だがそれは見事に当たっていた。

 一方でモヒカン観光客の集団に続いて、キリト達の目の前にとある脅威が近づく。

「取り逃がしたか。いや……こいつはちょうど良い奴らを見つけたな」

「ん? 誰だ!」

 ノイズのような声が響き渡り、一行は反射的に前を向いている。するとそこには――多数の怪人が群れを成して現れていた。マッドネバーの一員と見て間違いないだろう。

「ワフ……」

「ナ……」

 魑魅魍魎とした怪人の数々を見て、定春とピナは鋭く睨みつけていく。

 彼らの前に現れたのはナイトローグ率いるマッドネバーの部隊の一つ。マグマ・ドーパント、カマキリヤミー、オリオン・ゾディアーツ、ミノタウロス、ビヤッコインベス、アイアンロイミュード、刀眼魔、ソルティバグスター、ストロングスマッシュ、数体のカッシーン。どの怪人も一部を除いて、平成仮面ライダーが最初に戦った敵ばかりである。

 それはさておき、マッドネバーの登場により警戒心を最大にまで強めていく銀時やキリトら一行。慎重に状況を見極めつつ、彼らとの会話に応戦していく。

「お前ら、マッドネバーか?」

 最初はキリトが切り出した。

「ご名答。俺の名はナイトローグ。アルン制圧部隊のトップで、優秀なる科学者だ」

「アルンの制圧だと?」

「見ての通りだな。この街にもはや人など数少ない。ほぼ全てをミラーワールドへと送ってやったのさ」

「ミラーワールド?」

「まさかあの鏡の世界のこと?」

 次々と明かされる事実を聞き入れる一行。怪人を率いるコウモリのような怪人は、疑似ライダーであるナイトローグ。ノイズの混じった耳障りな声が特徴的である。そんな彼は自分の身分を明かした後、ミラーワールド及び真の目的についてもシノンらに話していく。

「そうだ。あの世界には予め魔力を吸収する装置を配置してある。住人の魔力が奪いつくされるのも、時間の問題だな」

「魔力の吸収? だから鏡の中の人達は苦しんでいたの!?」

「その通り。これで誰もオベイロンには逆らえまい。新たな王の前に、障害となるモノは全て排除しなければな! ハハハ!」

 そう豪語したナイトローグだが、傍から見ればキリトらの怒りを買ったに過ぎない。マッドネバーはクーデターとして、ミラーワールドに次々と街の住人や観光客を幽閉。その生体エネルギーや魔力を奪い、逆らえないように仕掛けていた。

 研究成果を世間が認めない故の逆恨みだが、あまりにも度が過ぎている。銀時やキリトらは沸々とさらなる怒りを燃やしていく。

「て、てめぇら……!」

「許さないぞ……どこまで自分勝手なんだ!」

 二人に続き、リズベット、シリカ、シノン、定春、ピナも怒りを声に出している。

「あったまおかしいんじゃないの、アンタら!」

「そうですよ!! 最低最悪です!」

「紛れもなく妖精の敵ね……その根性、叩きのめしてあげるわ!」

「ウゥゥ!!」

「ナァァ!!」

 敵意を存分に剥きだす一行。全員に共通するのは、マッドネバー及びオベイロンに一切の同情の余地がないことだ。自分の利己的な野望を実現させるために、彼らの大切な仲間であるユイや、何の罪もない一般市民すらも巻き込む姿は、暴君と言っても過言ではない。

 全員の気持ちが反マッドネバーに一致する中で、桂も同じ想いである。

「まったく卑劣な奴らめ。おい、エリザベス。天誅を下してやれ」

[了解]

 一段と冷静な振る舞いで、彼はエリザベスに指示を与えていく。すると彼の黄色い口元からは、桂の身の丈ほどあるロケットランチャーがにゅと飛び出していた。

「えっ? 桂さん!?」

「何やってんの、アンタ!?」

 突然すぎる彼らの行動に、驚嘆とする仲間達。それでも桂は、彼らの反応を気にせずに突き進んでいる。

「行け!」

〈ヒュー! ドーン!!〉

「何? くぅ……!?」

 ためらうことなくエリザベスは、マッドネバーにロケットランチャーを発射。彼らに被弾すると同時に、ドカーンという轟音が響き渡る。

 強引すぎる攻撃手段に、銀時らはつい目を丸くしてしまう。

「やったな」

[迎撃成功]

「じゃねぇだろ!! なんでお前、急にロケットランチャー撃ってんだ!?」

 とうとう我慢が出来なくなり、銀時は桂らにツッコミを入れていく。何よりも見せ場を奪ったことが、彼にとっては許せないらしい。桂は一切気にしていないが。

「ハハハ! ヘイトを買うような輩は、スカッとさせた方が良いからな! これで読者も満足しただろう」

「そういう問題じゃねぇんだよ! ここは潔く全面的立ち向かう雰囲気だろうが!」

「ていうか、なんでエリザベスからミサイルが出てんだよ!?」

「一番の驚きですよ!!」

「もう何がどうなってんのよ!?」

 銀時に引き続いてキリトやリズベット達も、この行動に激しくツッコミを入れる。何よりもエリザベスの予想外の攻撃には、どこから突っ込めば良いか分からない。増々と謎が深まるばかりである。

 と桂達へのツッコミが続く中、ミサイルを受けた敵陣営もまた動き出していた。

「おのれ……許さないぞ! お前ら、やれ!」

「「はぁぁぁ!!」」

 やはりあの攻撃だけでは倒されておらず、ミサイルを仕掛けてきた桂らに敵意を向ける。反撃と言わんばかりに、彼らへの集中攻撃を指示していた。

「ワン!!」

「ナ!?」

 先ほどとは異なる殺気を感じ、定春やピナも仲間達に危機を伝えている。そしてようやく一行も、この現状を理解した。

「おぃぃぃぃ!! いつの間にか襲撃しているよ!!」

「早く戦闘準備を――」

 と焦りながらも戦う準備を進めようとした――その時である。

「ハァァァ!」

「アァァ!?」

 彼らの元にも、とある助っ人が駆けつけていた。緑髪の男性のようで、彼は剣を振るって怪人の大群に応戦している。

「えっ? 誰だ?」

「何者なの?」

 到底銀時達には知らない人物であり、マジマジと彼のことを見つめていく。するとキリトは、ある人物を照らし合わせていた。

「早く行け! 右側の路地だ!」

「わ、分かった!」

 一方で男性は戦いつつも、銀時らに逃げ道を教えていく。それを聞いた一行はすぐに戦場を離れて、彼の言う通りに右の路地から脱出している。

「今のは誰だ?」

「生き残りの街の住人でしょうか?」

「にしては、装備もしっかりしていたがな」

 逃げる最中で助っ人の正体を探るが、無論誰の知り合いでもない。装備もしていたことから、この星における騎士の一人と捉えている。

 だがしかし、キリトにとってはとある人物が思い浮かんでいた。

「やっぱりあの人……この世界のシグルドか?」

 そう。かつて彼も元の世界で出くわしたことのある、シルフ族の一人のシグルドである。恐らくはこの世界での彼だと思われるが、どこか嫌な予感をキリトは察してしまう。それは元の世界でのシグルドの所業が原因なのだが……

 思わぬ出会いと真実に出くわした銀時やキリトら一行。この先に待ち受けるモノとは果たして。助っ人に来たシグルドは希望なのか。無事にユイを救出することは出来るのか。

 物語はさらに波乱を迎えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 時を同じくして、アルンに侵入していたシウネーと高杉は、中心部へと向かう最中でようやくある人物と再会している。

「あっ、姫様!」

「シウネー!」

 偶然にも合流したのは、ALO星の王妃であるフレイアだった。緑がかった金髪に、程よく露出のある神秘的な服装。そして腰元には、自身の武器である金色のハンマーが付けられていた。

(風貌や雰囲気はまさにSAOのキャリバー編に登場したフレイアそのものだが、あくまでも彼女はALO星の住人。身分や立ち位置もまったく異なっている)

 そんな彼女は別れていたシウネーとようやく再会。互いの無事を喜んで、内心では一安心している。

「やっと見つけられたか。こんな路頭で再会するとはな」

「私も意外でした……大丈夫でしたか、姫様?」

 高杉もシウネーの願いが叶ったことには、少しばかり安心していた。けれでも気になったのは、世界樹にいるはずの王妃が何故城下町であるアルンに紛れていたのかだ。

「私は無事でした。ですが、アルンに残っていた騎士たちは……」

「そうですか。世界樹はどうなったのですか?」

「それもダメでした。生き残った騎士たちが私をかばって、どうにかここまで逃げ出しましたが、恐らく彼らも」

 シウネーからの問いに、フレイアは深刻そうな表情で返答する。どうやらアルンに残留していた騎士はマッドネバーに倒されてしまい、さらには世界樹も混乱の最中で乗っ取られたという。辛うじてフレイア自身は逃げ延びたが、その代償はあまりにも大きかった。

「……そんな。やっぱり戦力を分散させたのか、ダメだったのでしょうか……」

 この話を聞いて、シウネーはつい後悔の念に苛まれてしまう。襲撃前に戦力を分散させたことが最悪の結果を生んだと考えたが、フレイアはまったく彼女のことを責めることは無かった。

「そんなことはないですよ。アナタ達の情報通りに、他の領地にも怪人が進行してきたそうです。事前に返り討ちにしたと、情報も受け取りました。ですので、そう自分を責めないでください」

「姫様……」

「大丈夫です。住人達も皆鏡の世界に幽閉されていると聞いています。恐らくは奴等を倒せば、きっと元通りになるはず!」

「そうですね、まだ頑張れるはずです!」

 数多の情報を基にして、フレイアは前向きに事を捉えている。戦力を分散させてもなお他の領地が攻められたのも事実であり、事前に教えてくれたシウネーことスリーピングナイツには感謝していた。まだまだ逆転できる余地はあると括り、決して諦めない姿勢を見せている。これにはシウネーも大いに共感していた。

「やれやれ。随分とポジティブな騎士と姫様なこった」

 ただ話を聞き流している高杉も、二人の精神力の強さには脱帽している。自身の仲間との再会は遠ざかったものの、面白い見物だと彼は括っていた。

 そんな中でフレイアは、シウネーに他の仲間の動向を聞いている。

「ところでユウキや仲間達はどこへ行ったのですか?」

「えっと、それは……」

 とても言いづらかったが、ここはしっかりとありのまま起きたことを彼女に話していく。

「幽閉された!?」

「そうですね……ユウキは後で合流する予定ですけど」

「敵は思ったよりも強いということですね……」

 ユウキ以外の仲間が幽閉されていると聞き、フレイアはつい衝撃を受けてしまう。同時に敵組織のただならぬ技術力には、大いに危機を感じている。

 一筋縄では勝てないとフレイアが思い浮かべる中、ようやく彼女はシウネーと共にいた高杉に目を付けていく。

「ところでシウネー? この男性は」

「あっ、この方は――」

「おい、ちょっと待て。隠れろ、お前ら!」

「えっ? ちょっと!?」

 と紹介をしようとした時、彼は邪悪な気配を察して二人を裏路地へと誘導させる。息を潜めながら三人が先ほどいた大通りに目を向けると、そこには二体の怪人が現れていた。

「あの怪人達は?」

「恐らくマッドネバーの怪人だろうな。さしずめ、あの野郎のおもちゃってところだ」

「マッドネバー……それが奴らの名前なのですね」

 意外にもここでようやく、シウネーとフレイアは敵対組織の名を知ることになる。だが聞いてもあまり思い浮かばず、名の知られていない組織だと彼らは察していた。

 一方で大通りにいた怪人は、ヨロイトカゲを模したサンゲイザーファンガイアと水牛をモチーフにしたバッファローロードである。二人は連れてきていた少女の今後について話し合っていく。

「少女を捕獲してきたぞ」

「よくやった。後は連れて行くだけだな」

「それをお前に任せる。俺はダークライダーに呼ばれたからな」

「よし、分かった。引き受けよう」

 そう言われてサンゲイザーは、バッファローロードから一人の少女を手渡された。もちろん少女の正体は、リュウガにより誘拐されたユイである。現在は気絶したまま眠っており、お姫様抱っこの如く彼女を両手で持ち上げていた。

 この光景を見て、意外にも高杉に激震が走っている。

「あのガキは……!」

「どうしたのですか、高杉さん?」

 一度声を震わせた後に、彼は一転させて不気味な笑いを浮かべていた。

「なんとまぁ、滑稽なこった。おい、お前ら。この先にその世界樹ってトコに入る入り口はあるのか?」

「確かにありますね……隠し通路ではありますが」

「一体何をするのですか?」

 世界樹の入り口の有無を聞いた後、怪人の動向を見計らいつつ彼は単独で動き始める。

「なら話は早い。行くぞ」

「は、はい!?」

「ちょっと、シウネー!?」

 サンゲイザーらの姿が消えた後に、高杉は迷わず彼の跡を追いかけようとした。彼の行動に戸惑いつつも、シウネーは反射的に高杉を追いかけて、彼女に続きフレイアも追いかけている。あの間にフレイアはシウネーに対して、高杉のことを詳しく聞いていた。

「何を考えているのですか。なんであの人のことを頼るのです?」

「えっ? なんでって……」

「あの人は鬼兵隊の総督、高杉晋助。宇宙を駆ける極悪な過激攘夷浪士よ」

「えっ? そんな大物だったのですか?」

 しばらくの間忘れていたが、高杉は紛れもない過激攘夷浪士の一人。あくまでも目的が一致しているために、行動しているに過ぎない。フレイアは仕事柄宇宙中の出来事の触れる機会が多く、そこで高杉や鬼兵隊の情報についても知っていた。最初こそまだ確証は無かったが、徐々に高杉の正体に気が付き、現在では味方としても認識していない。

 シウネーも彼がテロリストである事実をようやく思い出す。さらにはフレイアの話から、ただのテロリストではないことも理解した。僅かに感じていた信頼が揺らぎ始めている。

 一方の高杉は、ユイがこの星に来ていることに衝撃を受けている様子だ。

(何故あのガキがこの星にいた? てことは、あのキリトって野郎も来てんのか? まだ分からねぇな)

 マッドネバーの陰謀に巻き込まれたのか、まだまだ謎が残るばかりである。それでもその謎を突き止めるべく、彼は動いていた。

 銀時側、キリト側、高杉側、鬼兵隊側。ALO星のアルンを中心に、数多くの想いが渦巻いていく。危機的な状況の中で、彼らはどのような戦いに赴くのか。

 さらに一方で、アルンにはもう一組だけ侵入者がやって来ている。

「着いたわね」

 果たして彼らの正体とは――




マッドネバー怪人軍団

アルン北東エリア組
ナイトローグ
マグマ・ドーパント
カマキリヤミー
オリオン・ゾディアーツ
ミノタウロス
ビャッコインベス
アイアンロイミュード
刀眼魔
ソルティバグスター
ストロングスマッシュ
カッシーン

アルン南西エリア組
ゴ・ジャラジ・ダ
プテラノドンヤミー(オス)
ダスタード
魔化魍忍群

その他
エレファントオルフェノク
バッファローロード〈タウラス・バリスタ〉
サンゲイザーファンガイア



 さて遂にALO星へと皆さんが突入しました! 物語が大きく進みましたね。
 そのカギを握ったのは、アルヴヘイムメモリ。その効果はどこにいても、ALO星に帰れる効果となっています。何気に凄いのでは…… おかげで展開もスムーズに進んだと自負しています!
 前章に出ていたフィリアも再登場。シグルドもまさかの参戦と増々物語が盛り上がっていきます。今回のお話の何気ないこだわりは、平成2期の一話に登場した怪人の集団です。本当はアナザービルドも入れたかったのですが……アナザーライダーは特殊な立ち位置の敵なので、今回はマッドネバーに含まれていません。カッシーンはいるけどね。
 それにしてもオベイロンの計画はつくづく利己的ですね。街の住人達をミラーワールドに閉じ込めて魔力を吸い尽くすとか鬼畜すぎませんか? 怪人達に支配されたアルンを取り戻すことが出来るのか? ぜひ注目してください!
 ちなみにナイトローグの正体は、幻徳さんではないです。
 ではまた次回!

小話
 茅場晶彦は別世界に思いを馳せていたけど、果たして彼はカシワモチトピアやバカンストピア、テニストピアに鬼ごっこトピア等を見て何を思うのだろうか。




次回予告

万斉「領主とな」

フィリア「街はもう制圧されたのよ……」

シグルド「我らと手を貸してくれぬか」

高杉「助けに来てやったぞ」

キリト「オベイロンは絶対に倒す!」
銀時「手伝ってやるよ、俺もよ」

アスナ「神楽ちゃんに話したいことがあるの」

神楽「大丈夫ネ、アッスー!」

ユウキ「そんなことがあったの」

妖国動乱篇五 再会と潜入と危険な男
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