剣魂    作:トライアル

94 / 159
 ALO星にある世界樹は原典と違って、ツリーハウスみたいな木々で出来た城みたいなものです。皆さんはツリーハウスと聞いて、何を思い浮かべますか? 僕はKNDハチャメチャ大作戦です。流石に誰も知らないか……

 後はプログレ映画面白かったです! ツイッターに感想上げてますー

 それとオーズがまさかの新作!? 
 ※この題名は事前に決まっていて、本当に偶然でオーズ新作とぶつかりました……こんな偶然ある?




剣魂 妖国動乱篇 前回の三つの出来事

一つ! ユイを取り戻す為に、万事屋達はメモリの力でALO星に向かう。

二つ! 中心街アルンはすでにマッドネバーに占拠。住人や観光客は鏡の世界、ミラーワールドに幽閉されてしまう。

そして三つ! 万事屋達はバラバラになり、銀時側はシグルドと邂逅。アスナ側はフィリアと再会していた。

カウント・ザ・メモリーズ! 現在ユウキの持っているメモリは……

A アルヴヘイム L リード O オンライン


第七十九訓 再会と潜入と危険な男

「うむ。どうやら上空にまで、この見えぬ壁は広がっているようですねぇ」

「はぁ!? なんて面倒なことしやがったんっすか! あのバカ妖精王!!」

「落ち着け、また子よ。嘆いたところで、変わるもんも変わらぬでござる」

 自分達を阻む障壁の存在を再度確認して、来島は人が変わったように怒り狂ってしまう。そんな彼女を万斉はそっと宥めていた。

 結果的に高杉と再度はぐれた来島、万斉、武市の三人は、進行を阻む透明な壁に悪戦苦闘してしまう。抜け穴が無いか探すばかりで、一行に事が進まずにいた。願わくはこの壁ごと破壊出来れば良いが……そう簡単に上手くいかない。

 場にいた全員が途方に暮れる中、武市は諦めずに策を練り続けていた。所持していた望遠鏡で世界樹近辺を覗き込み、事態を解消するヒントを探ると――

「ん? アレは……!」

「どうしたんすか、武市先輩! まさか晋助様を見つけたんすか!?」

幸運にも彼は大きなリアクションを示している。感極まっている様子から、重要なヒントを見つけ出したと、この時のまた子は察知していた。

 ところがそんな期待は、粛々と崩れ去ることになる。

「あの子は……いつぞやの少女ではないですか! でも何故ここに?」

 ……どうやら武市が見つけたのは、ヒントではなくただの幼女だ。しかも以前に出会ったことがあり、何故この星にいるのかは彼自身も分かっていない。驚嘆とする武市とは対照的に、来島はこの言葉を聞いてただならぬ怒りを覚え始めていた。

「って、ロリコンも大概にするっす! 期待して損したっすよ!」

「いや、また子さん!? また銃口を向けないでくださいよ! いつもの私のクセじゃないですか!」

「誤魔化されないっすよ!!」

 ためらいもなく彼女は武市に拳銃を向けていく。それを見た本人は困惑して説得するも、頭に血の上った彼女には何一つ通じていない。この光景を見て、万斉も内心では気が遠くなってしまう。

 もはや三人だけはどうすることも出来ない状況。こう着状態が続く中、突然彼らに助け船が舞い込む。

「おや? 君達もアルンに入れなくて、困っているのかい?」

「って、お主らは?」

「誰っすか?」

 不意にも聞こえてきたのは穏やかそうな女性の声。それを聞きつけて三人が後ろを振り向くと、そこには多彩な色の羽で飛ぶ三人の妖精の姿があった。鬼兵隊一行の目の前で降り立つと、彼らは早速自己紹介を交わしていく。

「知らなかったか。私はサクヤだ」

「俺はユージーンだ」

「でアタシはアリシャ! みんなこの星にいる妖精の領主だね!」

 そう。この窮地に駆けつけたのは、それぞれの種族を束ねる領主達である。原典にも登場した彼らだが、今回はあくまでも別人。立場や個々の性格は似ているが。

 駆けつけた三人は、シルフ族を束ねる緑髪の女性サクヤ。サラマンダー族を従える赤髪かつ大柄な男性ユージーン。ケットシー族を率いる黄髪かつ小柄な女性アリシャ・ルー。

 そんな領主達の登場で、鬼兵隊は皆不可思議なリアクションを浮かべてしまう。

「領主?」

「この格好で漁業関係者とは、たまげたものでござる。いや害獣駆除の方か?」

「いいや、領主っすよ。つーか、今日小ボケ多いっすね……万斉先輩」

 珍しくも万斉がまたも小ボケをかましていく。領主を漁師や猟師と勘違いしていたようだが、恐らく確信犯だ。とそれはされおき、サクヤ達の身分が分かると武市は、彼らの本質について聞いている。

「なるほど。それでアナタ方の目的はなんなのでしょうかね?」

「決まっているだろう。アルンを取り戻すのさ。テロリストの手から」

「こちらも襲撃を受けたが、駆けつけた騎士団と共に返り討ちにしてやった。どうやらアルンがまずいと聞いてな……それで俺達が駆けつけた次第だ」

「なんと。奴等は領地にも敵兵、いや怪人を派遣していたのか」

 三人の目的は一致してアルンの奪還だった。どうやらそれぞれの領地にもマッドネバーが迫っていたようで、アルンより来た数名の騎士と共に打ち返したらしい。そして街の危機を聞きつけて、戦力に余裕のあった三人が合流して駆けつけたのだ。

 武市や万斉はマッドネバーが他の領地に侵攻した事実に、思わず困惑してしまう。するとサクヤやユージーンに続き、アリシャも彼らに話しかけていく。

「着いてみたらバリアが貼られていて、それで近くにいたアナタ達を見かけたの。ねぇ、鬼兵隊の皆さん」

「って、アタシ達のこと知っていたっすか!?」

「あぁ、もちろんだとも。これでも宇宙中の知識には詳しいのよ」

 なんと領主達はすでに鬼兵隊の正体を見透かしており、分かった上で来島らと話していたという。

「こやつら。隙が無いな」

「伊達に領主をなめてはいけませんね」

 狡猾なやり取りを目の当たりにして、万斉らは領主の話術力に感心していく。彼らの底知れぬ実力に警戒しつつも、トントンと話は進む。すると領主側が急に要件を畳みかけていた。

「さて、無駄な話はここで終わりとしよう。お前らに率直に聞こうか。透明な壁を潜り抜けるために、俺達と協力するか?」

「協力っすか……?」

「残念ながら防衛の関係で、私達の兵は連れてきていなくてな」

「良かったら一緒に協力しないかってこと? 戦力は多い方が良いと思うからさ」

 唐突な提案に来島らは驚き、声も出なくなってしまう。領主達は鬼兵隊の実力を見込んで、協力関係を依頼してきた。この提案は現状の鬼兵隊にとっても、都合の良い案件である。

「もしかして、このヘンテコな壁もアンタらがいれば壊せるってことっすか?」

「あぁ、そうだな。こんな仮初の防壁、五分もあれば破壊出来るな」

「アタシ達がいれば、お茶の子さいさいだよ。その代わり、一緒に世界樹まで来てもらうけどね」

 サクヤ、アリシャ共に自信たっぷりに事を返答していく。来島らの手を煩わせた透明な壁も壊せるようで、増々共闘へのメリットを感じる。代わりとして世界樹に向かわなくてはならないが、運が良ければ高杉とも途中で合流が出来るかもしれない。後はもうプライドの問題である。

 あらゆる可能性を考慮しつつ、鬼兵隊一行は悩み続けていた。

「これは時間を有する質問ですね……」

「いいや。そんなの、三秒で決まるっすよ!」

「右に同じでござる!」

「えっ?」

 と深刻そうに悩む武市とは異なり、来島と万斉はすでに答えを見出していた。共に真剣そうな表情を浮かべて、彼らに返答していく。

「早いな。どうするのだ?」

「私達は――」

「主らの要求を飲んだでござる」

「晋助様と合流できるなら、何だってやりますよ!」

 選んだ手段は、領主との共闘である。高杉といち早く合流するべく、より確率の高い方法を選択した。この判断が今後にどう響くのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

「ここだな。奴らの乗っ取った世界樹の入り口は」

 一方でこちらは、シウネー、フレイアと共に世界樹の隠し通路に着いた高杉晋助。彼は共に行動している二人とは異なり、マッドネバーの復讐のために動いている。仲間との合流も不透明な壁によって阻まれ、紆余曲折あり現在は敵の本拠地となった世界樹に狙いを付けていた。ただ彼の考えは、単身で倒すのではなく壁の除去や幽閉された仲間の救出といった、今後の鬼兵隊が有利になる策を探すために世界樹の中を探索するという。

「行くか」

 意気揚々と中に入ろうとした時、共に行動していたフレイヤとシウネーに声をかけられてしまう。

「ちょっと待ってください!」

「ん? どうした?」

「一つお伺いしたいことがあります……アナタは鬼兵隊の総督と聞いています。宇宙を駆けるテロリストが、何故この星のテロリストに片足を突っ込んでいるのですか?」

 凛とした表情でフレイアが聞いてきたのは、高杉の行動目的である。彼女にとっては有名なテロリストの頭首が、自身の仲間と行動を共にして、今なおついてきていることがにわかに信じ難いのである。世界樹へ入る前に白黒と付けたがったが、高杉はあっさりとその質問に答えていた。

「決まってんだろ。復讐のためだ。いわば私怨だな」

「復讐?」

「まぁな。騙されて資金はふんだくれるわ。仲間は鏡の世界に幽閉されるわ。踏んだり蹴ったりだ。これ以上ヤツの好きにされるのは、癪に障るんだよ」

「そうでしたね。お仲間さんも幽閉されていますよね……」

 改めて高杉や鬼兵隊の境遇を知ると、シウネーは顔をしかめて何とも言えない表情となってしまう。元々は目的が一致した上で決まった共闘。その発端となった出来事を。彼女は深く思い起こしていた。

 一方でフレイアはそんなに話を半信半疑で受け取り、さらに高杉へ探りを入れていく。

「その元を辿ると、アナタとマッドネバーには関係があったということですね」

「随分と鋭いな。そうだよ」

 この事実を確認したところで途端に表情を一変。声をやや上げつつ、彼を糾弾し始めた。

「結局アナタは、このテロリスト達と同じ考えということですか。一歩違えば、アナタもこのテロに加わっていたということですか!」

「そうかもな。だが、どう思うのかは好きにしろ。俺はあくまで利害の一致でお前らと行動しているだけだ。さぁ、行くぞ。怪人共に見つかる前にな」

 責めるフレイアを軽く受け流し、高杉は手短に話を切り上げていく。些細なことで揉めるよりは、前に進んだ方が良いと彼は動いていた。

 そんな彼の跡を渋々とついていくフレイアとシウネー。特に前者は高杉に思うことがあり、まだ共闘することに納得がいかない。

「姫様、落ち着いてください。そこまでお気になさらずに」

「でも……私は許せないのです。何の罪もない人々を巻き込んだマッドネバーが……それと関係があった者も、とても信じきれません」

 シウネーが宥めつつも、彼女は悲し気な表情で率直な気持ちを呟く。多くの民や騎士を傷つけたマッドネバーの悪事を心底憎んでおり、彼らと関係のあった高杉にも少なからず敵意を向けていた。どうすることも出来ない焦燥感から来る想いだが、シウネーも少なからずフレイアの気持ちを汲み取っている。

(油断ならない人かもしれません。でも私は、それなりに情のある人だと信じてます。だって、そうじゃなきゃ私達を追っ払っているはずですから)

 ただ彼女と違うのは、僅かながらも高杉に信頼を寄せていることだ。散々悩んだが、やっぱりただの悪人ではないのがシウネーの結論である。ただ無暗にフレイアを説得はせずに、今後の動向を見守っていく。

 こうして三人は遂に世界樹へと潜入。現在ここを占領しているマッドネバーに真っ向から挑むようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「う、うーん……ここは?」

 しばらくの間気絶していたユイは、ようやく目を覚ましている。彼女がまず思い出したのは、自身がマッドネバーに捕まったことだ。

「そうだ。私捕まって……アレ? 動けない!?」

 徐々に状況を把握するが、ここで信じ難い事実に直面してしまう。なんと両手を手錠で縛られた上、縄で上半身をグルグルと巻かれていたのだ。これでは逃げ出すことさえできない。

「そんな……でも逃げないと。早く!!」

 危機的な状況に絶望しつつも、諦めずに体を動かしていく。仲間との再会を夢見て、めげずに踏ん張っている。けれども見えるのは、周囲を覆う漆黒の暗闇。現在の場所や時刻を知らないユイにとっては、何が何だか分かっていない。

 それでも無我夢中で逃亡を試みた時。彼女の微かな希望すらもへし折る、絶望的な光景を目の当たりにしてしまう。

「ん? 光――って!?」

 突然場に差し込まれた眩い光。ユイは怯んで目をくらませると、ようやく見えずにいた辺りの様子が浮かび上がっていた。

「「「ウワァァ!!」」」

「キャ!? 怪人……? こんなにたくさん!?」

 そう。彼女の周りには、あらゆる怪人の大群がはびこっていたのである。

 ライオトルーパーやバグスターウイルスといった戦闘員。クラブロードやソードロイミュードといった一般級の怪人。火焔大将やレデュエといった幹部級怪人。全てをひっくるめても、四十体は余裕で越しているであろう。

 魑魅魍魎の数々を目にしていき、ユイは恐れを感じてこわばった表情となっていた。

「そ、そんな……」

 バクバクと高まり続ける鼓動を抑えつつ、冷静になるようひたすらに念じていく。するとその時。彼女の拉致を指示した張本人が、突拍子もなく声をかけている。

「ハハハ。素晴らしいだろう。僕の復元させた怪人達は。楽しんでくれたかな?」

「オ、オベイロン……!!」

 不敵な笑みを浮かべて近づいてきたのは、マッドネバーの首領であるオベイロンだ。彼は自身の作り出した怪人軍団を褒め称えつつ、捕獲したユイを凝視していく。彼女が恐怖でおののく姿を、こっそりと嘲笑っていた。

 一方のユイは真剣そうな表情で、オベイロンをぎょっと睨みつけている。全面的に敵意を向けており、彼を見るたびに不快感を覚えていた。

「早く私を解放してください!! 一体何が目的なのですか!」

「まぁまぁ、落ち着きたまえ。いいか? これからの作戦にはお前が必要なんだよ。人間ではないエネルギー体の力が……!」

「えっ!? どうしてそのことを?」

 慎重に話を交わす中で、彼女に衝撃が走る。いつの間にかオベイロンが、自身の秘密を知っていたからだ。

 補足を加えるとユイは銀魂の世界に飛ばされた際、検索や仮想世界への干渉能力を失い、代わりに純粋なエネルギーを体内に宿していた。簡略的に言うと、人間に限りなく似た普通の少女へと変貌したのである。今までは特に気にすることは無かったが、他者が知っているならば話は別だ。ましてやその相手はオベイロン。得体の知らない恐怖が彼女を襲う。

 するとオベイロンはユイの困惑する様子を楽しみつつ、声を高ぶらせながら話を進めていく。

「ちょいと君の体内を調べさせてもらったよ。そこで僕はある仮説に気が付いたんだ」

「体内って!? それに仮説……?」

「君は確か……次元遺跡で唯一トラップに引っ掛からなかったね。それが何を意味しているか分かるか?」

「分からないです……私には」

 彼が話題に上げたのは次元遺跡での一件だった。ここでのユイは不可思議な事が起きており、開かずの扉の開放や謎のオーロラの出現と本人にも分からない力を発揮している。

 一連の現象に目を付けたオベイロンは、彼女の秘められた力に目を付けていた。連れ去って体を確認したところ、人ではないと分かり現在に至る。

「だろうな。ならば単刀直入に言おう。それは君が、あの仮面の戦士に認められたからだと僕は推測しているよ」

「仮面の戦士。あのジオウさん達のことですね……」

「名前まで知っているのか。増々信ぴょう性が上がるねぇ」

 探りを入れる中で、勝手に独自の解釈まで明かしていく。仮面の戦士こと平成仮面ライダーに認められたことは、ユイ自身も薄っすらとだが感じていた。

ここで話の焦点はユイの特異性及び、認められた要因に移っている。

「それで僕は考えたのさ。僕らと君に何の違いがあるのか? 認められた理由は何なのかね? 調べていくうちに一つの結論に至ったのさ」

「何ですか……その結論は?」

 警戒心を上げながらユイが聞き直すと、彼は息を吸って結論を大声で言い放っていた。

「それはお前がエネルギー体だからだよ!」

「えっ!? なんで……!?」

「そんなの利用しやすいからだろう! 所詮はあの戦士共も、自分を有利に動かす力が必要だったんだ。この僕の目に狂いはない。こんな欠点も少ない完璧なエネルギーは、奴らとて欲しがるだろうからな!」

 その結論はあまりにも抽象的である。要するにユイが平成仮面ライダーに認められた要因は、彼女がエネルギー体だと結論付けていた。自身にとって都合の良い存在だからこそ認めたのだと、オベイロンは勝手な解釈を過信していく。

 一見すると暴論に過ぎないが、ユイ自身もイレギュラーな存在だと自覚があり、最初は素直にも信じ込もうとしてしまう。けれどもすぐにその仮説が誤りだと確信して、勢いよく彼に強気で反論していた。

「それは違います……絶対にありえないです!」

「あん? 何だと?」

「だって私の正体を知らなくとも、ライダーさん達は私を助けてくれました! 幻影の中でしたが……あの時に私は感じたんです。仮面ライダーの本当の強さを! 仮に私がライダーから認められたとしても、別の理由があると思います! だからアナタの考えは、浅はかで大間違いですよ!」

 しっかりとした口調で、言いたいことを全て言い放つ。幻想の中で平成仮面ライダーと出会ったことのある彼女だからこそ、彼らの想いや信念は多少なりとも理解していた。それ故に自身の邪な欲のために、認めるはずがないと括っている。

 瞬く間に反論されたオベイロンは、当然考えを否定されたことにご立腹であった。徐々に怒りを表情に滲ませていき、大人げなく彼女に喚き散らかしていく。

「黙れ……黙れ! 僕に逆らおうな! 人間もどきが!! そんなのはただの思い過ごしに過ぎない! 優秀な僕の考えが間違うはずがないだろう!! 分かってんのか!?」

「分かりませんよ!! どこまで傲慢なんですか……!」

 罵倒しながら怒りに狂うも、ユイは動揺することなくそれらを受け流す。傷つく言葉を言われようとも、精神力で如何にか耐えきっていた。

 一方のオベイロンは、一旦は気を収めていき何食わぬ顔で話を再開させている。

「まぁ、いい。どんな理由だろうと、今の僕には関係ないさ。いずれはそのライダーの力も、僕が独り占めするんだからな!」

 そう言うと彼は、ユイにとある物体を見せつけていた。それはなんと――フィリアから託されたはずの結晶である。

「結晶!? なんでアナタが!?」

「お前を連れて行くついでにかっさらったのさ。落としてくれてありがとうよ」

「そんな……」

 どうやらダークライダー達に連れ去られる直前、戦闘員の一体が落ちているのを見つけたらしく、不運にもマッドネバーの元に舞い込んだという。

 この結晶は次元遺跡にてフィリアが見つけた鉱石であり、ユイがマッドネバーを外部に追い払う際にも使用した重要なアイテムだ。未知の物体だが、少なくとも平成仮面ライダーと何かしらの関わりがあることは間違いない。すなわち切り札とも言うべき代物を、不運にも奪取されたのである。

 これでは増々不利な状況をひっくり返すことが出来ず、ユイも事態を深刻視してしまう。

「これで未完成の兵器も完成するな……さて君には、相応しい舞台を用意してあげよう。それまでは牢屋へ入っておけ! おいお前ら、連れてけ!」

「ハハー!」

 そしてオベイロンは近くにいた怪人、スラッグオルフェノクとフライングスマッシュにユイを投獄するように指示。相応しい舞台が整うまで、牢屋に幽閉させるという。ちなみに縄はほどかれたものの、手錠はしっかりと付けられたままである。

「おい、歩け!」

「もたもたするな!」

 無抵抗なことを良いことに、二体の怪人はユイを乱暴に指示していた。

 もはや彼女にとっては絶体絶命の状況。誰一人として頼れる人もいない窮地でも……決して絶望に浸らず、一筋の希望を信じ続けている。

(私は諦めません……! パパやママ、銀時さんに新八さん、神楽さん達が絶対に助けに来てくれるはずです!)

 万事屋一行や真選組、シリカら女子達に桂一派と、思いつく限りの仲間を次々と頭に浮かべていた。頼りになる仲間が助けに来ることを信じ、どんな困難にも立ち向かう所存である。そう易々と折れることは無い。

 こうしてユイの辛く長い戦いが幕を開けたのである……。

 

 

 

 その一方でオベイロンの元には、ユイの拉致に貢献したダークライダーの変身者がゾロゾロと近づいている。

「ったく、仮にも女児なのにお前は容赦ないな」

「女児ではない。ただのエネルギーだ、あやつは」

「はいはい。分かってますよーだ」

 ユイの兵器利用に熱中する彼に対して、野卦らは興味のない反応を示していた。文字通り彼女がどうなろうとも、そこまで興味はないらしい。あくまでもクーデターに付き合っているだけである。

 オベイロンはそんな塩対応を気にせず、彼らにとある質問を投げかけていく。

「ところでどうだ、街の様子は? もうほとんど人がいないだろ」

「それがな」

「何だ? 歯切れが悪いな」

「ちょっとな……」

 制圧したアルンの様子を聞いたものの、思った通りの返答が得られなかった。じれったさに苛立ち問い直すと、とある事実を知ることになる。

「はぁ!? 万事屋が来ているだと!?」

「そう。しかもあの時と同じメンバーで」

「あっ、でも一部だけ増えていたか」

「何故だ! 地球からALO星まで距離が離れているはず! こんな短時間に来るのは、アルヴヘイムメモリを使わないと不可能だ!」

 想定外だった万事屋一行の潜入が、どうやら現実に起きているらしい。この情報は寝耳に水にだったらしく、オベイロンも人が変わったように発狂していた。

考えられる可能性を声に上げると、亜由伽達はそれが原因だとツッコミを入れる。

「そのアルヴヘイムメモリを奴らが持っていたのではないか?」

「欠けているメモリがあったんじゃないの?」

「あぁ? 確か欠けていたメモリはA……まさかあの騎士団の娘の仕業だな!」

 すぐに考え直すと、ようやく彼は納得していた。行方不明のメモリはまだ三本ほどあり、そのうちの一つはアルヴヘイムメモリ。もはや決定打である。さらには万事屋が所持していた理由には、騎士団の一人であるユウキが関わっていると予測した。彼にしてはやけに鋭い考察である。

 計画が僅かでも狂い始めたことにかんしゃくを起こすオベイロンに対して、横にいた唖海や宇緒達が呆れながらも説得していく。

「落ち着け。誰が来ようと鏡の世界に閉じ込めりゃいいだろ」

「それにもう手なら打っているわよ。私達と同じダークライダーの資格がある者がね」

「おぉ、そうか! それなら頼もしいな。流石は僕の技術力で作ったベルトだ! ハハ」

 その最中で対策案を話に上げると、彼は人が変わったように冷静さを取り戻した。つくづく単純な男だと四人は理解していく。こういう行動を起こす度、彼と組んだことに後悔を感じるようになった。

「あーあ。めんどくさ」

「何故俺達の手を煩わせる……」

 契約切れが近づいているとはいえ、我慢にも限度がある。一行は怪訝な表情で、オベイロンを睨みつけていた。

「あの野郎め……」

「まぁまぁ、落ち着きなって。今は新しいダークライダーの資格者が、対処するはずだから。それまでは休みなって」

 一方で宇緒は気楽にも、皆の気持ちを落ち着かせている。面倒ごとを他の仲間に押し込んだため、オベイロンの言動は特に気にしていなかった。

 こうして万事屋一行の動向が、早くもマッドネバー側に発覚してしまう。その魔の手はすでに迫っているのか?

 

 

 

 

 

 

 

「振り切れたか?」

「どうにかな。しばらくは追ってこないだろう」

 一方こちらは、マッドネバーの怪人軍団から逃げていた銀時、キリト、桂、エリザベス、シリカ、ピナ、シノン、リズベットの一行。彼らはアルンの北東エリアに来ており、そこでとある騎士と遭遇。彼のおかげで危機的な状況を回避することが出来ていた。

 皆がぜぇぜぇと息を整える中で、一行はようやくあの騎士と再会している。

「良かった。無事だったみたいだな」

「た、助けていただきありがとうございました!」

「ところでアナタは誰なの?」

 ひとまずは感謝を伝えたところで、シリカとリズベットは助けてくれた騎士に名前を聞いていた。

「俺か? 俺の名はシグルド。騎士団に所属する騎士の一人だな」

 彼はすぐに返答して名前を明かす。騎士の名はシグルドであり、その風貌はかつてキリトやリーファが出会ったことのある、シルフ族のシグルドと瓜二つだった。

 おおよそ三十代くらいの風格で、体格はやや大柄かつ長身。とんがった耳に防具や剣を装備しており、傍から見ると生真面目な騎士にも見えなくはない。

 やはり名前が同じことに気付くと、キリトは何とも言えない表情となってしまう。ちなみにシグルドのことを知っているのは、このメンバーの中で彼のみである。

「シグルド……やっぱり名前は同じか」

「どうした、キリト?」

「いや、何でもない」

 銀時からは心配されたが、彼は何事もなく言葉を返していた。

 一方で桂は貴重な情報源だと悟り、シグルドに詳しくアルンで起こった出来事を聞くことにしている。

「うむ。ところでシグルド殿、少しばかり聞きたいことがあるのだが」

「この惨状についてだな。良いだろう。でもその前に、一旦は身を隠さなくては。ちょうど横に宿屋がある。そこへ入ろうではないか」

 と本題に入ろうとした時、彼は全員を目の前にあった宿屋に誘導した。外ではいずれ怪人達に見つかる危険性があり、少しでも身を隠せる場所が必要だと促す。

 皆もシグルドの提案に納得すると、急に銀時は突拍子もないことを言い放ってきた。

「おいおい、宿屋って言ってもHな方じゃないよな?」

「って、何いきなり無粋なこと言ってんのよ!」

「ボケだとしても、普通に引くんだけど……」

「引くんじゃねぇよ。どんだけ拒絶を起こしてんだよ」

 宿屋と聞いて性的な場所を呟いたものの、周りの反応はすこぶる悪い。特にシノンら女子達は、細い目つきとなり銀時を思いっきり蔑んでいた。

「と、とりあえず入ろうか、普通の宿屋みたいだし」

[後で俺が銀時にこっぴどく言っておくからな]

「いや、お前がフォローに入るのかよ!?」

 悪くなった空気をキリトとエリザベスが中和していき、一行はゾロゾロと宿屋の中に入っていく。無論ここも荒らされた形跡があり、物品は無造作に床へ転がり、壁にはぶつけられた跡がいたるところに付けられていた。

 こうして銀時やキリト達は、シグルドからクーデターについて聞くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

「こっちだよ、この店なら、しばらく奴等も来ないはずだよ」

「そうアルか?」

 そしてこちらは、アルンの南西エリアに来ていた神楽、アスナ、新八、リーファ、クライン、近藤、土方、沖田、ユウキ(ウサギ)の一行。彼らは偶然にもフィリアと再会しており、彼女の案内の元とある飲食店に案内されていた。無論ここもマッドネバーの襲撃を受けており、当然ながら店内には誰一人としていない。それでも身を隠すには十分な場所だ。

「ここが俺達の隠れ家になるのか」

「分かっていたが、だいぶ荒らされてんな」

 店内に入るや否や、土方と沖田はその荒れ具合から襲撃時の状況を予測する。コップや皿はおびただしいくらい散乱しており、テーブルは真っ二つに割れているモノもあった。無人であることから、店内にいた者は全て鏡の世界に閉じ込められたとみて間違いないだろう。

 一方のアスナは、土方らとは異なり別の気持ちに浸っていた。

「そっか。この店はここだとアルンにあるんだね……」

 そう。実はこの飲食店、元の世界にも実在しているのである。原典のALOにて、アスナがユウキやスリーピングナイツと交流を図った思い出深い場所だ。外装どころか内装もほぼ同じのため、深々と一人感傷に浸っている。

 そんな何気なく呟いた彼女の一言に対して、神楽は誤った捉え方をしていた。

「どうしたネ、アッスー? ギャグアルか?」

「ギャグ? あっ……えっと! そんなつもりで言ったわけじゃないのよ! ただのまぐれであって!」

 てっきりギャグを言ったと思い、それを聞いたアスナはようやく意味を察する。しんみりとした気持ちも吹き飛び、恥ずかしい表情で今はただひたすらに神楽の説得に応じていた。

「アルンにあるん。あぁ、なるほど」

 密かに聞いていたユウキも、つられて意味を理解する。

 それから数分の時間が経ち、一行は無傷だった丸いテーブルに集結した。近くにあった椅子に座り、周りを囲んだところでようやく会話が始まっていく。

「改めて久しぶり、みんな。元気だった?」

「うん、そうだね。フィリアさんも元気そうで安心したよ」

「そう? こんな状況だけど、昨日までは何事もなかったからさ」

 ひとまずフィリアは、リーファら友人との再会を改めて喜んでいた。危機的な状況だが、それでも頼れる仲間と出会えたことは嬉しい。

 互いに元気そうで安心したが――クラインはある事が引っ掛かり、横に座っていた神楽に質問した。どうやらフィリアの名前を思い出せないらしい。一応面識はあるのだが。

「なぁ、神楽ちゃん。あの子って誰だっけ?」

「フィリアアルよ。クラは会ってなかったアルか?」

「いや見たことはあるんだが……名前はちょっと」

「あぁ。あん時にヅラと――」

「神楽ちゃん!?」

「あっ、しまったネ」

 神楽が全てを話そうとした時、新八に大声で止められてしまう。ちょうどすれ違いで桂やエリザベスも出来事に入っており、彼女はうっかり真選組に明かすところだった。ただでさえ彼らが疑いを強めている分、これは明らかに致命的である。クライン自身も血の気が引いたような表情に変わっていた。

 そんな肝心の真選組サイドでは、

「あいつらは何を騒いでいるんだ?」

「クラインがフィリアと会ってないから紹介してんだろ」

「そうでしたかい?」

あまり気にしていない。てっきりフィリアのことを、彼に教えているものだと把握している。危機一髪とはまさにこのことだろう。

(分かれ目となった話題は、第七十三訓の終盤をご覧ください)

 とそれはさておき今度はフィリアが、アスナらがこの星にいる理由について聞き返す。

「ところで、なんでみんながアルンにいるの?」

「それがね……」

 興味深そうに聞くと、アスナを初め一行の表情が複雑そうに変わる。そして一行は、ユイがマッドネバーに連れ去られたことを打ち明かした。

「えっ!? ユイちゃんがマッドネバーにさらわれたの!?」

「そうなんですよ。だからこのメモリの力を使って、ALO星までやって来たんです」

「そうだったんだ……」

 やはりというか、フィリアは聞いた途端に驚嘆とした表情を浮かべている。同時にユイを連れ去られた新八達のやるせない気持ちも、密かに汲み取っていた。

 すると彼女は、メモリという言葉に感心を寄せている。

「それでメモリって一体何なの? もしかして、オーパーツ的な何か?」

「いいや。このウサギが持っていた代物アルよ! もしやフィリアのペットアルか?」

「いやいや、違うよ! でもどこか既視感が……」

 ガイアメモリの出所を聞くと、神楽はウサギ(ユウキ)を持ち上げて、彼女の所持品だと伝えていた。もちろんフィリアとは無関係だが、彼女はウサギの雰囲気から妙な違和感を悟っていく。

(あっ、この子! よくアルンで見かける子だ。アッスーさん達の友達だったのか……)

 一方のユウキも、実はフィリアの顔だけは把握していた。知り合いではないが、アルンでよく見かける顔なじみの印象である。

 断片的だがアスナ側の事情をフィリアが理解したところで、今度は彼女にこの星で起きたクーデターについて聞いていく。

「それじゃ話してもらえますか? この街に一体何があったのか」

「もちろん。それは突然の出来事だったの……」

 新八から改めて聞かれると、フィリアは神妙な表情で事を振り返っていた。

「異変が起きたのは正午に差し掛かった頃だった。突然謎の男の声が街中に響き渡ったと思いきや、無数の怪人達が現れて次々に襲ってきたんだよ」

「謎の男……次元遺跡にいたオベイロンのことね」

「多分そうだと思う。マッドネバーの仕業にしか考えられないよ、こんな事態」

 クーデターが発生したのはほんの数時間前であり、それまでは誰もが普段通りの日常を過ごしていたという。故にあっという間に街は制圧されたようだが。アスナの指摘の通り、フィリアはこのクーデターの原因をマッドネバーだと括っていた。引き続き話は続く。

「怪人はさっきの奴等と同じだな」

「どれくらい怪人っていたの?」

 沖田が呟くと同時に、リーファが質問する。

「ざっとだけど、百人は越えていると思う」

「そ、そんなにか!?」

「雑魚も含めりゃそれくらいいるだろ」

 その問いを聞き近藤は驚いたが、対照的に土方は納得していた。一つの街を制圧した組織ならば、これだけいて可笑しくはないと思っている。

 さらにフィリアは、有益な情報を仲間達に話していく。

「私は上手く逃げることが出来たけど、恐らくほとんどの人達はもう幽閉されていると思うんだ……」

「あの鏡の世界にですかい?」

「正確にはミラーワールドっていう名前らしいの。怪人達の会話を盗聴して、知ったけど」

「ミラーワールド……随分と安直な名前アル」

 逃げ惑う中で怪人同士の会話を盗聴したらしく、そこで多数の情報を得たという。神楽は分かりやすい名称にツッコミを入れていたが。さらに話は続く。

「そのミラーワールドには秘密があって、とある二つの装置で妖精達の魔力を吸い尽くしているみたいなの」

「魔力だ? 何の目的で?」

「恐らくだけど力を事前に奪っておけば、逆らうことも出来ないから、あえて閉じ込めているんじゃないかな」

 土方が聞き直して、フィリアは再度答えていた。彼女の推測によると、マッドネバーは装置を介して住人達を無力化しようと企てているという。これが本当ならば、本気でALO星を乗っ取るつもりなのだろうか。

「なんて野郎だよ……」

「聞けば聞くほど邪悪さが際立っているわね……!」

「じゃあの二人も、魔力が奪われたから苦しんでいたのね……」

 あまりにも非人道的な行為に、新八、リーファ、アスナと仲間達は皆怒りを覚えていく。こんな血も涙もない奴等にユイをさらわれたと思うと、悔しくて仕方がないのである。つい先ほど見かけた妖精の男女も、今頃は魔力が吸われていき恐怖心と絶望感でもがき苦しんでいるに違いないだろう。

 全員の気持ちにやるせなさが生まれたところで、フィリアはさらに有益な情報を彼らに伝えている。

「でも奴らの作戦はこれで終わりじゃないと思う」

「えっ? まだアルあるか?」

 どうやらマッドネバーのクーデターは、これだけに留まらないというのだ。

「うん。これも盗み聞きした情報だけど、特殊な装置が三つあって、一つ目は鏡の世界に幽閉させるための装置。二つ目が幽閉された人の生気や魔力を奪い去る装置。そしてもう一つが、この二つの効果を星中に張り巡らさせる装置みたい。最後のだけは未完成らしいけど」

「この装置がもし完成してしまうと……」

「多分この星はマッドネバーのものになるね。魔力は全てオベイロンに集中して、奴が好き放題に支配する世界。いわばディストピアの完成よ」

 この情報が一行にとっては一番衝撃的で、皆驚嘆とした表情になっている。装置は総じて三つもあり、最後の一種が未完成らしい。これがもし起動するならば、この地獄のような光景が他の領地や街にも広がり、最終的には星中に波及するという。そうなればオベイロン及びマッドネバーに逆らう妖精はいなくなり、全てが彼の手中に収まってしまうのだ。

 もはや事態は一刻を争う状況。皆もこれには思い思いに反発していく。

「そ、そんな……」

「あんにゃろ、なんてことを考えてんだ!!」

「まさに吐き気を催す邪悪じゃないか!!」

 リーファは衝撃から声が滞り、一方でクラインや近藤はマッドネバーの身勝手さに激高している。例え別の星の出来事でも、強い正義感から悪行三昧は許せないのだ。

 その一方、土方と沖田の二人は冷静に現状を分析していく。

「だいぶ悪い状況だな……」

「打ち倒そうにも数が足りないですねぇ。せめてミラーワールドに閉じ込められている騎士がいれば良いが」

 深刻な状況を打開するには数の差が必要だと悟るが、残念ながらアルンにいた騎士もミラーワールドに皆幽閉されている。(ちなみに彼らは知らないが、他の領地から呼び込もうとも、謎のバリアが事前に貼られているので、救援を呼ぼうとも不可能だ)

 そんな中で、新八はある仮説が頭の中で過ぎっていた。

「でも待ってください。まさかユイちゃんを連れ去ったのって……その装置に組み込ませるためじゃないですか?」

「おい、何を言い出すアルか! そんなこと……」

「あくまで可能性の話ですよ。でも奴等があそこまでユイちゃんに執着するのって、よっぽどの理由があると思いますけど」

「もしそうだったら……私が百倍返しにして叩きのめしてあげるわ!」

 自分なりの考えを発すると、アスナは強い怒りを滲ませている。

 彼らにとってはユイを連れ去った理由が分からず、今回の話を聞くならば装置と何かしらの関わりがある事も否定できない。

 いずれにしろ、最後の装置を起動させないこと。起動している二つの装置を破壊すること。ユイを連れ戻すこと。以上の三つがアスナ側及びフィリアにとって、今取り組むべき目標だと一行は認識していく。

「なんて奴等なんだ……ここは僕が絶対に食い止めないと! 早く街中の人達を開放させなきゃ……!」

 話を聞いていき、ユウキも決意を強く固めていた。当然ながら後悔も感じていたが、それよりも前を向くことが大事だと彼女は捉えている。

 こうして皆の方向性が定まりつつある中で、フィリアは再度一行に問いかけていた。

「これで私から話せることは以上だね。みんな……一応聞くけど、これからどうする?」

「そんなの、決まっているでしょ……」

 フィリアからの問いに、アスナが声を震わせながら答えていく。すると皆が一斉に立ち上がり、各々の今の気持ちを示していた。

「私達は戦うわ、マッドネバーと!」

「こんな卑怯極まりない連中に、負ける気はしないネ!」

「何としてでもこの街の人々を……ユイちゃんを助けますよ!」

「流石……それでこそ、みんなだよ!」

 アスナ、神楽、新八の強気な一言に続いて、近藤やリーファ、ウサギになったユウキも賛同するように頷く。期待通りの返答が聞けて、フィリアもつい一安心していた。全員の答えに迷いはなく、皆が反マッドネバーとして気持ちを一致させている。ユイや街の平和を取り戻すためにも、望んでこの戦いに赴くようだ。

「このまま放っておくわけにもいかないでしょ!」

「そうだぜ! ここで諦めたら、侍が廃るってな!」

 リーファやクラインも元気よく声を上げると、続けて真選組一行も続いている。

「クライン君と同じだ! 今こそ俺達の武士道を見せてやろうじゃねぇか!」

「暑苦しいのはさておき、ここまで来たらやってやるよ」

「断ると馬鹿力女とデカ乳女にどやされそうなんで、俺もついてきやすよ」

 さり気なく沖田も発したが、完全に仲間を小馬鹿にした一言だった。無論それを聞いた女子達は、我先に彼へ反発している。

「おい、ちょっと待つアル! 確実に私の悪口言ったアルナ!!」

「ていうか、デカ乳女って私のこと!? どこまでセクハラしてくるのよ!!」

 神楽やリーファは自分が該当していると思い込み、不機嫌そうな表情で沖田に詰め寄っていく。二人は特に沖田を毛嫌いしており、何気ない一言でさえ許せないのである。

 そんな女子達の怒りに臆することなく、沖田本人は飄々とした態度でさらに煽っていく。

「ふーん。お前らもそういう自覚あるんですねぇ。フフ……」

「「黙れ!!」」

 小馬鹿にしたような笑みを浮かべると、二人の抱えていた怒りは大爆発。決戦前にも関わらず、怒りを発散させるための乱闘が勃発してしまう。もはや彼らにとっての日常だが……

「ちょっと、ちょっと! 三人共、落ち着いてくださいよ!!」

 あまりの緊張感の無さが見るに絶えず、新八は咄嗟に沖田らを落ち着かせようとした。バチバチとした雰囲気を中和しつつ、説得を続けていく。

「あちゃー。これは長く続きそうだな」

「総悟の軽口も災いの元だな」

 一連の様子を見ていたクラインや土方も、事態の長期化を予見している。無暗に止めるよりは、発散させた方が良いと彼らは考えていた。

「うーん……真選組はやっぱり曲者ぞろいみたいだね。この先大丈夫かな……?」

 一方のユウキは、真選組一行の掴みどころのない性格を不安視している。今後もし作戦として敵の本拠地に行くならば、統率力の高さがカギとなるはずだ。だからこそ、些細な喧嘩は避けたいところだが……今の状況では何とも言えない。

 そんな中で彼女は、アスナの動向に注目を寄せていく。

「ん? アスナさん、どうしたんだろ?」

 ふと目に入ったのは、アスナとフィリアが会話する様子だ。それをじっと聞いてみると、

「ねぇ、フィリアちゃん。ちょっと外の空気を吸いたいんだけど、大丈夫?」

「うん、いいよ。この近くには怪人も来ないと思うし」

「ありがとうね」

なんとただの外出許可である。アスナ曰く気持ちの整理がしたいらしく、フィリア以外の誰にも言わず、単身一人で外に出て行ってしまった。

「アッスーさん? 急にどうしたの?」

 アスナの動向が気になり、ユウキもつられて彼女の跡を追いかけていく。さらに神楽も彼女の無断外出に気付いていた。

「あぁ、どこに行くネ! アッスー!」

「えっ、神楽ちゃんも行くの!?」

 反射的に神楽も追いかけていき、結果二人と一匹が店から出て行っている。これには仲間達も唖然としてしまう。

「行っちゃった……」

「どうしたんだろう、二人共?」

「多分だけど、気持ちの整理がしたいんじゃないのかな?」

 リーファ、新八と何故急に出ていったのか、分からずじまいである。フィリアが補足も加えるも、やはり納得していない様子だ。クラインも続けて思ったことを発していく。

「アレはユイちゃんのことについて整理したいのか? なぁ、土方さんはどう見てる……」

 と横にいた土方にも意見を聞こうとした時である。

「って、えっ!?」

 彼は深刻そうな表情で、ある事について考えを煮詰めていた。声をかけても反応がないことから、よっぽど重要な件について考えていると思われる。

(ど、どういうことだ? とうとう俺の正体がバレたのか……?)

 てっきり自分の正体が攘夷志士だとバレたのかと思われたが、土方は別の件で気がかりなことがあるという。つまりはクラインの思い過ごしなのだが。

(何だこの妙な違和感は? なんであの女があそこまで情報を把握してんだ? それに近くに怪人がいないことも分かるのか? おかしい気がする……)

 土方はどうやらフィリアに対して、ただならぬ怪しさを覚え始めている。無論彼女がトレジャーハンター故に情報収集が上手いことは把握しているが、それでも今回の件は詳しすぎると感じていた。ただの考え過ぎかもしれないが、今なお違和感があるのは事実である。

「ありゃりゃ。土方さんも気付いたみたいですねぇ」

 土方の思い悩む様子を目にして、沖田も密かに頷いていた。どうやら彼も土方と同じく、とある違和感に苛まれているという。

 こうしてマッドネバーの野望を食い止めるために、一行は徐々に気持ちを合わせていくが――早々に不穏な空気が漂い始めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 一方でこちらは、宿屋に逃げ込んでいた銀時、キリトら一行。彼らは南西エリアにいるアスナ達と同様に、シグルドからアルンの現状について聞かされていた。

「というわけなんだ」

「そんなことがあったのか……」

 会話が終了して一行は、その悲惨な現状に深く驚かされている。会話の内容はフィリア側と大して変わらず、アルンの襲撃やミラーワールドの存在。二つの装置の有無に、オベイロンがALO星そのものを手中に収めようとしていること。世界樹もクーデターにより乗っ取られたことなど、まんべんなく自身が得た情報を一行に伝えていた。

 当然この話を聞いて、場にいた全員がマッドネバー及びオベイロンの自分勝手さに怒りを燃やしていく。

「改めて聞くと、本当にひっどい男ね!」

「そうですよ! 一発ぶん殴りたいところです!」

「ナナ!!」

 リズベットやシリカ、ピナは揃って怪訝な表情となり、怒りを声に出している。乱暴な言葉を使うほど、マッドネバーにはただならぬ怒りがあるようだ。

 二人ほどではないが、他の仲間達も現状に憤っているのは事実である。

「話を聞く限りは、その装置が奴らのテロに貢献したということだな」

「そうだな。だけど裏を返せば、装置さえ壊せば囚われた人達も元に戻れると思う」

 冷静にも桂が声を上げると、それにキリトが返していた。クーデターで大いに役に立った装置だからこそ、一つでも欠ければマッドネバーの作戦は没落すると考えている。

「じゃ、今マッドネバーに占拠されてる世界樹に行けば良いんじゃない? ユイも取り返せるかもしれないし」

 シノンが思い付きで呟くと、続けてシグルドも静かに声を上げていた。

「その通りだ。ここで俺からもお願いがある。どうか一緒に手を組んでほしい。アルンをあのような奴等の手に渡したくないのだ……」

 彼は律儀にも礼儀正しく、銀時やキリト達に協力を申し出ている。別世界のシグルドを知っているキリトにとっては、違和感のある行動であろう。

 密かに伝わっていた彼の熱意を感じつつ、ここで銀時がとある問いを投げかけていた。

「シグルドって言ったか? お前よぉ、そんなにこの街や人が好きなのか?」

「あぁ、好きだとも! かつての俺は荒れていたが、この街によって色々と救われたんだ。だからこそ、守りたかったものもある。それを取り戻すためにも……どうか力を貸してくれぬか?」

 シグルドは自身の体験を踏まえつつ、アルンを救いたい想いを訴え続けていく。彼曰くこの街には思い入れがあり、何としてでもその平和を取り戻したいという。一貫しているのは彼がクーデターを許せない正義感と、街を大切に思う情の深さであろうか。

 これを聞いた一行は、半信半疑であったシグルドに少なからずの好意を向け始めていた。

「もちろんだとも。我々とて、取り戻したい仲間がいるのだからな」

[快く引き受けようぞ]

 桂とエリザベスは迷いなく、彼の協力を快く引き受けている。桂を含めて一行もユイを救いたい気持ちで一致しており、多少なりともシグルドの想いは理解していた。

「アタシ達がいれば、百人引きなんだから!」

「そうですよ! それにアスナさんや神楽さん達も加われば、きっとその装置だって破壊することが出来ますよ!」

「だから、協力するわよ。ねぇ、キリトも同じよね?」

 リズベット、シリカ、シノンと女子達も次々に賛同していく。はぐれている仲間と再会すれば、どんな困難にも乗り越えられると強気に括っていた。

 彼らなりに希望が見え始めていたが――キリトだけはどこか乗り気ではない。シノンに聞かれても、曖昧に返答する始末である。

「あぁ、そうだな……」

「えっ? どうしたの?」

「何か歯切れが悪いわね」

「納得いかないことでもあるんですか?」

 言葉を濁す様子から、ついキリトの本音を気にしてしまう女子達。隠し事をしているようで、気持ちの面でも納得していなかった。

「いや、特には……」

「何か怪しいわね……」

「そうですよ。思っていることは言った方が良いですよ!」

「はっきり言わないなんて、キリトにしては珍しいわね……何を隠しているのかしら?」

 シノンらは友達だからこそ、キリトの本音に寄り添いたかったが、若干強気に接してしまい増々言いづらい空気を作り出している。しかも事はシグルドに関することであり、流石に本人の前で言うのも気が引けてしまう。

 気持ちが高揚している女子達を、ひたすらに宥めるキリトだったが……ここで銀時は彼の本音を悟って、さり気なく手助けに加わっていく。

「おいおい、キリトさんよ。もしかしてホームシックになったんじゃねぇんか?」

「ちょ、銀さん!?」

「「ホームシック?」」

 なんとキリトの悩んでいた様子を、勝手にホームシックと決めつけていた。これには本人はおろか、仲間達でさえ困惑めいた反応を見せている。場の雰囲気が一瞬で変わった途端、銀時は強引にもホームシックで押し切ろうとしていた。

「要は恋人と子供が恋しくなったってことだ。そういう時な、外の風を浴びるのが一番だ。おい、キリト。とっとと行くぞ」

「ぎ、銀さん!? 勝手に決めるなって!?」

 そう言うと彼はキリトの手を無理矢理手に取り、

「シグルド。屋上ってあるか? あるなら使っとくぞ」

「あぁ。別に構わないが……」

「じゃ、ちょっくら行ってくるわ」

勢いのままに屋上へと連れ去ってしまう。要は二人で話せる時間ならば、キリトも気兼ねなく話せると思い、この行動に移ったようだ。

「キリト殿は何か考え込んでいるのか? お前達は何か知って……えっ?」

 突拍子もない銀時の行動や、キリトのウジウジした様子が気になる桂は、一度女子達の方に目線を向けている。すると見えたのは――嫉妬の炎を燃やす、負けず嫌いなヒロイン達の末路であった。

「キリトさんの悩みならアタシが聞いてあげるのに……!」

「なんでよりにもよって銀さんなの……!!」

「私達の方が付き合い長いのよ! それをあんなぽっと出のボンクラ男に……!!」

「「「ぬぬー!!」」」

 シリカ、リズベット、シノンと三人は鬼のような形相を浮かべて、キリトを強引に連れて行った銀時に、ただならぬ妬みを感じていく。彼女ら曰く折角の話せる好機が失われて、憤りを感じているのだ。

「ワフ……」

「ナ……」

 あまりにも覇気の強い彼女らを目にしていき、定春やピナも気が引けてしまう。特に後者は自身の主が嫉妬に狂う姿は見ていられず、つい目線を逸らしている。

「こ、こわ」

[女豹のような女達だ……]

 桂やエリザベスも一連の様子から、彼女達を末恐ろしく感じてしまう。どちらとも微妙な表情となっていた。(後者はまったく変わっていないが……)

 そんな女子達の様子を見て、シグルドも空気を察していく。

「やれやれ。少し時間がかかりそうだな。俺は席を外しておくよ。街の様子を確認してくる」

「あぁ、分かった」

 自分は街の見張りに行くようで、皆が落ち着いてから今後の方針を決めるようだ。そろりと彼が外に出たところで、女子達の暴走はさらに加速していく。

「みんな、盗み聞きするわよ!」

「OKです!」

「突入じゃぁぁ!!」

 誰一人として思いとどまることは無く、全員が盗聴へと賛同していた。必死こいた表情のまま、彼女達は階段を勢いよく駆けあがっていく。

「まるでボケキャラだな……」

[アンタが言うな]

 その勢いやノリに桂はボケキャラと評していたが、エリザベスからは当然ツッコミを入れられている。これが俗にいう、人の振り見て我が振り直せだろう。

 こうして銀時側も大いに状況が動いていた。果たしてキリトの抱えていた違和感とは?

 

 絶え間なく変わり続ける現状。多くの人間や妖精がこのクーデターに巻き込まれ、その果てに何を見るのだろうか?




オベイロンに従えていた怪人達
ゴ・ベミウ・ビ
クラブロード〈クルスタータ・パレオ〉
ソロスパイダー
レイドラグーン
タイガーオルフェノク
スラッグオルフェノク
ライオトルーパー
カプリコーンアンデッド
火焔大将
魔化魍忍群
コキリアワーム
ワーム〈サナギ体〉
ホエールイマジン
レオソルジャー
ウォートホッグファンガイア
イエスタデイ・ドーパント
エイサイヤミー
屑ヤミー
アルター・ゾディアーツ
ダスタード
シルフィ
ノーム
グール
レデュエ
シンムグルン
ソードロイミュード
ガンマイザー・リキッド
斧眼魔
アランブラバグスター
バグスターウイルス
フライングスマッシュ
カッシーン




 さぁさぁ、事態はまだまだ続きます! 今回も色々とこだわりを詰め込んだ回でした。
 領主組も今回から参戦! 鬼兵隊の服装の色と合わせると、どこか戦隊っぽい……?
 ユイを取り囲む有象無象の怪人達は、ディケイドやオールライダー系の映画を彷彿とさせますね。それはそうと、ユイのエネルギー体設定を覚えている方はいましたか? 一訓の後半にて源外の口から明かされましたが、それ以来あんまり表には出てきていなかったです。(出すタイミングが無かったので) 純粋無垢なユイを利用しようとするオベイロンは……許せませんな!
 さらに今回明らかになったのは、マッドネバーの作り出したとある装置。これらによって、クーデターを成功させたみたいですね……。
 事態はシリアス一色となりましたが、ネタやボケを忘れないのが銀魂流。銀時とキリトの話にやきもきする女子達は、ある意味で健気だと思います(笑)

 それとこれも余談なのですが、勘の良い方はお気づきでしょうが、次元遺跡篇及び妖国動乱篇は平成仮面ライダーのサブタイトルをモデルにしています。つまり本当は両長編合わせて二十訓になる予定だったんですが、書いていくうちに内容が増えていき、一部の話はサブタイトル繋がりを二訓分使ったこともあります。要するに何が言いたいかと言うと、今回の話も予定していた内容が収まりそうにないので、もう一訓サブタイトルに使います! オーズの新作が出たので、大目に見てください……(無理矢理ですが)

 それではまた次回!







次回! 剣魂 妖国動乱篇!

アスナ「神楽ちゃんにまで話してなかったことがあるの」

神楽「きっとどこかで生まれ変わっているアルよ!」

キリト「オベイロンは絶対に倒す……何としてもな」

銀時「そう抱え込むな。俺も同じだ」

新八「ちょっと気になったことがあるんですよ」

ユイ「アナタは……高杉さん?」

妖国動乱篇六 疑惑と転生と平成の結晶


ディアベル?「映画プログレッシブも見てくれよな! 劇場にスイッチオン!!」
キバオウ?「テン・ゴ~~~~カイジャーも忘れずに! 派手に行こうぜ!!」

銀時「おい、てめぇら。ナレーション同じだからって、ここぞとばかりに宣伝するんじゃねぇよ――もっとキラメこうぜ!!」
ミト?「はい! お父様のように眩しくいきましょう!!」
新八「お前もやってんだろうが!! ていうか、アンタも出てこなくていいから!! マブシーナになってるから!!」

※出したかっただけです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。