剣魂    作:トライアル

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 今年はツイッターを使いこなせなかった一年でした。社会人になってからも、一応僕なりに続けていく予定です……。

これが前回の剣魂 妖国動乱篇
妙「いいから黙って食えやぁぁぁ!! 百聞は一見に如かずだろうがぁぁ!!」
ジュン「ブフゥ!?」

たま「そうでした。実は皆さんの力が必要でこちらに駆けつけました」

タルケン「そうですね。私達も行きましょう!」
テッチ「あぁ、もちろんだ!」
ノリ「いくよ!!」

お登勢「お店のことは良いんだよ。今はあの馬鹿共を連れ戻してきな。折角払うようになった家賃、まだ取り立てていないからさ」

シグルド「ならばすぐにやるべきだろう。それと覚えているよな? 俺が情報を提供する代わりに、お前の研究したベルトを譲渡する約束を」

フィリア「だ、誰なの……!?」
ナイトローグ「俺か? 俺の名は――ナイトローグだ」

エリザベス[伝えに行こう]
ピナ「ナナ(そうだね)」
定春「ワフ(こっそり静かに)」


第八十二訓 伝・説・降・臨

 アルンの東西南北に渡って、密かにアルンの世界樹へ忍び込もうとしている二つの勢力。南西にいたフィリアらは、ようやく侵入する計画をまとめていた。正面から隙を見て侵入、その後に作動している装置を破壊する算段である。

「それじゃ、この作戦で良いかな。みんな?」

 彼女は元気よく場にいた仲間達に、改めて内容の確認を促す。だがしかし、その反応はまちまちだった。

「あぁ、良いぜ」

「こっちもでさぁ」

「って、なんで私のことを睨みつけているの……?」

「いや、気のせいだ」

 神妙な表情のまま、土方と沖田は変わらずにフィリアの正体を怪しんでいる。本人は困惑めいた反応をするも、二人は気のせいと適当な言葉で受け流す。

「なぁ、どうする?」

「それは出会ってしまった時にしようよ……」

 一方でクラインやリーファは、アスナとこの世界のユウキが遭遇した時の気まずさを気にしている。そわそわと心を焦らせていた。

「どうしよう……全然覚悟が決まらない!!」

 彼らに続いてユウキも心に迷いが生じてしまう。自身がウサギから妖精に戻った際、どんな顔でアスナと顔を合わせれば良いか分からないのだ。

「なぁ、新八君! この星の平和が戻ったら、お妙さんをデートに誘おうと思うんだが、了承してくれるかな!?」

「無理に決まってんだろ、このゴリラ」

 緊迫感に包まれる彼らとは相反して、近藤は新八にしつこい恋愛相談を繰り返す。近藤には謎の自信があったが、新八は毎度のように冷めたツッコミで受け流していた。

 仲間達の大半が、フィリアの反応を素通りしている。

「なんだかみんな落ち着きがないわね」

「銀ちゃんみたいなまとめ役がいないからじゃないアルか?」

「うーん……ねぇ、みんな! 一旦落ち着きましょう。フィリアちゃんも困っているから」

 まとまりのない仲間達の様子を心配して、アスナや神楽が率先して話に折り合いを付けようとする。彼女らの働きかけで、フィリアのまとめた作戦がようやく一行へ伝わることになった。

 その一方でアルンの北東部にいるシグルド側では、

「では、この突入作戦で問題はないな」

「「「「もちろん!!」」」」

「……全員一致か」

対照的に全員の想いが一つになっている。これもシグルドの正体を知った上のリアクションで、密かにアイコンタクトを取りながら七人と二匹は気持ちを合わせていた。

「流石は騎士の一人だ。君を仲間にして、本当に助かっているぞ」

「そ、そうか?」

「そうです! もっと自信を持ってください!」

「ナナ!」

 桂やシリカは和やかな雰囲気で、シグルドを調子良く持ち上げる。無条件で肯定された彼は、まんざらでもない表情を浮かべていた。愉悦に浸る彼とは対照的に、銀時やキリトらの内心はある一点に集約されている。

(とりあえず、世界樹までは共に行動するぞ)

(怪しい動きを見せたら……一気に歯向かう!)

 銀時やキリトがこっそりと本音を発すると、考えを悟ったリズベットやシノンは心強く頷く。仲間達は皆シグルドに反旗を翻すつもりで、それまではとことん利用する算段だ。定春やエリザベス、ピナのペット組の活躍により、有利な状況へ場を進ませている。奇しくもフィリア側とは正反対の一体感だ。

 こうして二組の世界樹侵攻が実行に移されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 密かな侵入計画が立てられていく中、世界樹内でも大きな動きが生じている。

「どこだ、あの小娘は!」

「急げ! オベイロン様の気付く前に!」

 ライオトルーパーやカッシーンと言った戦闘員達は、辺りを右往左往と駆け抜けていく。その根本にはユイが絡んでおり、なんと謎の侵入者によって檻を抜け出したという。原因は高杉ら混合チームだが……この時の彼らは混乱状態にあり、情報の判別が付いていない。とにかくユイを見つけ出すことに躍起となっている。

 そんな慌てふためく彼らの様子を、混合チームは死角からそっと覗いていく。

「良い様だな。このままくたばりやがれ」

 高杉は相変わらず皮肉を発していたが。それはさておき、そんな彼に対してユイはひとまず感謝を伝えていく。

「あの……ありがとうございます、高杉さん。助けてくれて」

「だから言ってるだろ。借りを返しただけだ、俺は」

 ゆっくりと真剣な表情で伝えるも、高杉はぶっきらぼうな態度で返す。建前としてはただの恩返しで、そこに善意が含まれているかは未知数である。

 そうやり取りを続けていると、シウネーとフレイアも話に割り込んできた。

「ところで高杉さん。この少女とはどんな関係なのですか?」

「ただの見知ったかだ。そんなに深い縁じゃねぇさ」

「なるほど……では、この世界樹にいたのも心当たりがないということですね?」

「だな。俺もまさか、あの野郎が子供すら利用するなんて思ってなかったよ」

 彼女達が気になるのはユイとの関係性だったが、高杉曰く大した仲では無いと言い捨てている。これに関しては何一つ間違っていない。

 挙動や態度からシウネーらも、高杉に嘘偽りがないと確信していた。すると今度は、ユイにマッドネバーとの関係性を詳しく聞いている。

「では何故、アナタがマッドネバーに捕まっていたのですか?」

「はい。話すと長くなるのですが……簡単に言うと、私に秘められた力を利用しているみたいです」

「秘められた力?」

「私にも分からないのですが、どうやらあるみたいです……この星の全てを乗っ取るために」

「なんて男なの……」

 連れ去られるまでの過程を省略して、彼女は三人に自身の捕まった訳を話していく。そこで見えたのは、野心のために何でも利用するオベイロンの卑劣な一面である。

 星ごと自分の手に収めようとする暴挙に、フレイアらは体を震え上がらせていた。意地でも彼にこの街や星は渡さないと強く誓う。

「早くあの男を止めないと……でも、どうすれば?」

 それでも状況を逆転させるには、まだまだ難しいことに変わりはない。幾ら考えを立てようとも、少数のままでは無理が生じてしまう。皆が状況打開に頭を悩まされる中で、高杉はある事に気付く。

「おい、お前。この状況にしちゃ、やけに落ち着いているじゃねぇか? まさか秘策でもあるのかよ?」

「秘策ですか……一応あります」

 ユイの落ち着き様だった。不安と言うよりは希望を見出した雰囲気を悟り、率直にも理由を探っていく。するとユイは神妙な表情となり、ゆっくりと事を呟いている。

「それって本当なのですか?」

「一体どんな秘策なの?」

 秘策の存在を知ると、シウネーやフレイアも内容を問い詰めていく。注目が集まる中でもユイは冷静さを貫き、自身の知る結晶を打ち明かしていた。

「結晶です。次元遺跡で得た結晶を取り返せれば、状況は変わるかもしれません」

 こうして彼女は場にいた高杉らに、次元遺跡で得た結晶を事細かに明かしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 ALO星にある世界樹には、四つの入り口が存在している。東西南北とそれぞれの方向にあり、一部の場所には一般人でも入ることが可能だ。ただし今はクーデターの最中。入り口には門番が用意されており、ライオトルーパーが二体と怪人が一体と見張りの役目を全うしている。おかげで世界樹には、容易に入る事すら出来ない。

 そんな難攻不落の城と化した世界樹に、二組の勢力が侵入を試みていく。

「着いたよ。ここが世界樹の南門だね」

「やっぱり門番はいるのね……」

 フィリアの案内の元、南門の近くまでやって来たのは、アスナ、神楽、ユウキ(ウサギ)、新八、近藤、土方、沖田、リーファ、クラインの一行。まだ各々に抱えている者はいるが、アスナの仕切りで一応はまとまっている。そんな彼らは世界樹内部へ侵入するために、近くへと這い寄っていた。

「うぅぅ……」

 唸り声を上げながら辺りを見渡すのは、怪人の一体であるオウルロード(ウォルクリス・ウルクス)。白いフクロウを模した超越生命体であり、飛行戦を得意としている。侵入者を見つけた際には、自慢のカギ爪で仕留めるつもりだ。

 睨みを利かせるアンノウンを警戒しつつ、フィリアらは隙を見ている最中である。

「おい、なんか白いヤツがいるぞ」

「アレは……アンノウンだね」

「アンノウン? どこにアルファベットがあるんだよ」

「いや、それはアンノーンアルよ。ドS」

 怪人の姿を見極めつつフィリアが固有名を発するも、沖田はポケモ〇の名前と混同していた。神楽は呆れながらも彼にツッコミを繰り出す。

「なんでお前がその名前を知っているんだよ?」

「これも怪人同士の会話から聞いたんだよ。どうやら超能力者を根絶するために生み出された生命体みたい」

「……やけに限定的な怪人ね」

 怪人に詳しい一面を目にして、土方はまたもフィリアに疑いをかけるも、彼女からはすぐに否定される。これも怪人の会話から盗み聞きした内容らしい。アンノウンの特異な生態を知ると、リーファはボソッと小言を呟く。

 超能力者は妖精をも含まれると悟り、新八らは条件に該当しそうなアスナやリーファ達を不安視している。

「と言うことは、アスナさんやリーファさんが行ったら危ないかもしれませんね」

「えっ? そうかしら……?」

「間違いないネ。飛行能力があるから危険かもしれないアルよ。こういう時はクラを囮に使うネ」

「って、俺かよ!? それはねぇぜ、神楽ちゃん」

「うるせぇよ。恋愛音痴」

「いや、それはただの悪口じゃねぇか!?」

 中でも神楽は傍にいたクラインだけに当たりが強く、冗談半分にも囮に仕立てようとしていた。本人からツッコミを入れられるも、神楽の雑な接し方に変わりはない。門番を突破する方法を一行が模索する中、ユウキは単身で立ち向かう意思を示し始める。

「ここは僕が気を引かせるしかないか……?」

 密かに彼女が刀剣を口にくわえようとした時だった。

「みんな、落ち着け! 怪人の囮ならこの俺だけで十分だ」

「こ、近藤さん!?」

 意外にも声を上げてきたのは近藤勲である。自信満々な表情をしており、この状況を打開する術でもあるのか?

 唐突とも言える彼の行動には、クラインら仲間達も驚きを隠しきれていない。

「えっ? アンタで大丈夫なのかよ?」

「心配は無用だ。ここは俺なりに考えがある」

「考え?」

 探りながら質問を投げかけると、近藤はオウルロードの肉体に指をさしてきた。

「あの怪人の腹部を見ろ。バキバキに鍛えているだろ?」

「確かに立派な腹筋アルよ」

「でもそれがどうしたの?」

「アンタ、まさか……」

 未だに本心を見抜けていない神楽やアスナに対して、新八は途端に嫌な予感を察してしまう。その予感は当たることになるのだが……。

「そうだ! あの筋肉ならば、俺も同族だと欺けるかもしれねぇ! 気を引かせること間違いないだろ!」

「それってつまり……?」

 もはや答えは出たも当然だろう。怖気づきながらフィリアが慎重に問い直すと――近藤は遂にその本性を露わにしていた。

「身も心も裸になるということだ!! 俺の演技で気を引かせてやる!」

「こ、近藤さん!?」

「おい、止めろ! ゴリラ!」

 勢いよく外へ飛び出したと思いきや、なんと彼は恥じらいもなく服を全て脱ぎだしてしまう。そして素っ裸になったところで、

「やぁ、そちらの調子はどうだ? ゴリラ怪人が見廻りの報告に参ったぞ!」

自身をゴリラ怪人と呼称。同族に溶け込むかのように、オウルロードと接していく。

 そう近藤の狙いは、全裸になることでアンノウンと偽る陽動作戦なのだ。一見すると奇行で相手の注意を逸らす作戦に思われるが、近藤自身は本気でアンノウンに化けられると思い込んでいる。もはや勢いでこの窮地を乗り切ろうとしていた。(ちなみに原典のアンノウンでは、ゴリラモチーフのアンノウンは登場していない)

 それはさておき、傍から見ると奇行にしか見えない近藤の作戦に、仲間からは否定的な意見が相次ぐ。

「おぃぃぃぃ!! あのゴリラ、やっぱやりやがったよ! 誤魔化されるわけねぇだろ!」

 行動を分かっていても、新八は激しいツッコミを繰り出す。もうお構いなしである。

「あ、あ、あの人何やってんの!?」

「いつものゴリラアルよ」

「いや、そう言われても私には分からないから! てか、理解しようともしないから!!」

 フィリアは顔を赤くして、思わず手で目を覆ってしまう。動揺しながら神楽に理由を聞くも、適当な言葉が返されていく。なお動揺が収まることは無かった。

「土方さぁん。ここはアンタも参加する流れでさぁ」

「誰がやるか!! あんな奇行、俺には出来ねぇよ!」

「マヨネーズ塗りたくれば、良いじゃないですかい。あのカブト狩りの時みたいに」

「俺は体に塗ってねぇわ!!」

 一方の沖田や土方はいつもの行動と括り、特に動揺はしていない。仕舞いに沖田は、土方もこの雰囲気に巻き込もうとしていた。変わらぬ応酬である。

「おぉえ……あの時のトラウマが脳裏に……」

「ちょっと、リーファさん!?」

「大丈夫なの!?」

 その中でもリーファは近藤と初対面した記憶が蘇り、つい気分を悪くしてしまう。あの時も実は、近藤とは全裸のまま出会っていたのだ。無論リーファにとっては最悪の記憶であり、無意識に吐き気を催してしまう。近くにいた新八とアスナが、彼女の容態を気遣っていく。

「えぇ……」

「何を見させられているんだ、僕は」

 当然クラインやユウキも、フィリアらと同じく気を引かせている。特にユウキは口をポカンと開いたまま、ただ唖然とするしかない。

 仲間達からも大不評の近藤の作戦。やはり独断で行ったのが不味かったか。肝心の本人は本気であり、このまま話を通そうとしている。

「おい、怪しいヤツだぞ」

「どうする、オウルロードよ?」

 傍にいたカッシーンでさえも、目の前にいる全裸男性には困惑をしているようだ。ひとまず場を仕切るオウルロードに、彼の対処を促していく。気になるアンノウンの返答は、

「……うぅ」

「えっ?」

ゆっくりと首を振り否定する素振りを見せる。てっきり敵対意識を向けたと思いきや、実はそうではなかった。

「何? 無視か?」

「能力は持ってないと。はい」

「えっ? 相手にしないのか!? 俺はアンノウンだぞ!」

 カッシーンが耳打ちで聞いたところ、まさかの無視で結論が一致している。アンノウンの特性上、超能力を持たない人間には興味が無く、全裸男性こと近藤の対処も特に重要視していない。いわば放っておく結論に至っている。その姿はさながら、現実に変質者が現れた時の対処とも言えよう。

 しかしこれで、僅かながら入り口に一定の隙が生じることになる。

「アレ? どういうこと?」

「もしかして、アンノウンって超能力を持ってない人間には興味が無いんじゃ……?」

「マジアルか?」

 ずっと様子を見ていたフィリア側も、思わぬ結果に驚きを感じていた。その理由を探りつつも、密かに出来た好機も見逃していない。

「とりあえず、今が侵入するチャンスよ」

「このまま行きましょう」

 見張りの目線を警戒しつつ、遂に外へと駆け出した一行。親切にも近藤の服装一式も途中で拾っている。

「おい、ブラコン? 大丈夫か?」

「なんとか……ゲホ」

 未だに調子が戻らないリーファには、珍しくも沖田が心配の一言をかけていた。

 こうして一行にとって鬼門だった世界樹の侵入は、近藤の奇行とアンノウンの特性によって、如何にか成功へと結びついている。

「あっ、待ってくれ――お、俺は巡回に戻るぞ!」

「どこにでも行け、変態」

 設定を崩さずに通す近藤に対して、カッシーンらは冷たくあしらっていく。ここまで来ると厄介者の領域である。近藤本人も後味の悪さを感じつつも、こっそり仲間達の元についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてこちらは、世界樹の北門。こちらにもカッシーンが二体、怪人が一体、見張り役として配置されている。

「もう来なさそうね。侵入者は」

 門番を務めていたのは、プテラノドンヤミーのメス個体。オスと同様に黒い煙を吐き出し、妖精や観光客をミラーワールドに幽閉させた恐ろしい怪人である。

 静かに周りを監視する怪人達に悟られず、銀時、キリト、桂、エリザベス、シリカ、ピナ、リズベット、シノン、定春はシグルドの案内の元、その死角まで近づいていた。

「あそこが世界樹に繋がる北門だな」

「って、案の定門番がいるわね」

「おい、シグルド。お前アイツの正体とか知らねぇのかよ?」

「し、知らないな。ただ見た目から、プテラノドンに似ているな」

 大胆にも銀時は、さり気なくシグルドへ探りを入れている。小さくも本人は動揺したが、すぐに切り替えていた。と彼の反応はさておき、一行は門番の怪人達の突破方法に頭を悩ませていく。

「二体は雑魚だったとしても、問題はあのプテラっぽい怪人よね」

「どう見てもメスですよね、アレ」

 リズベットやシリカは、特にプテラノドンヤミーへ警戒心を高めている。ちなみに後者は、怪人の胸部や体格をこっそりと気にしていたが……流石に仲間内では本音を明かしてはいない。

 メス個体と言う観点から、銀時はキリトに思いついた作戦を言いふらしている。

「おい、キリト。ここはお前の出番だぞ。あのメス怪人を口説いて来いよ」

「お、俺なのか!? いやいや、無理だってば」

「そんなことねぇよ。お前のコミュ力があれば、十分に気を引かせられるって。そう思うよな、シノンも?」

 キリトのポテンシャルでプテラノドンヤミーを口説き落とす作戦だった。本人は謙遜して拒否するも、銀時は折れることなくこの話を通そうとしている。即座に近くにいたシノンにも共感を求めたが、

「はぁ? 何か言ったかしら?」

「えっ?」

何故か一言で片づけられていた。しかも銀時へ容赦なく、弓矢を差し向ける始末である。

 どうやら銀時の立てた作戦に怒りを覚え、後はもう態度で反抗するようだ。怒ってはいるのだが、シノンはにこやかな笑顔のまま銀時をじっと見ている。ある種の恐怖心を彼に与えていた。

「な、なんでもいいです……」

「よろしい」

 とうとう彼は圧力に屈してしまう。妙と同様に余計な怒りを買えば、さらなる仕打ちを受けることは目に見えているからだ。穏便に済ませたことには、共に一安心している。

 そんな銀時の様子を気にすることなく、キリトはエリザベスと会話を交わしていく。

[ここはもう強制突入するか?]

「いや、待ってくれエリザベス。騒ぎを起こせば、こっちが見つかる危険性も高い。ここは慎重に見よう……」

 咄嗟に先走ったエリザベスに、キリトがそっと諭している。敵側の増員も考えられるので、確証のない行動は危険だと彼は考えていた。

 それからも仲間達の話し合いが続く中、途端に桂が声を発していく。

「フッ、ならば俺の出番だな」

「か、桂さんがですか?」

「ちょっとアンタ。まさかふざけた作戦をやるわけじゃないでしょうね?」

「心配するな、シリカ殿にリズ殿。俺は至って真面目だ。ふざけたことなんて一度も無かっただろう?」

「……いや、大有りなんだけど」

 自信満々に呟く桂だったが、シリカ、リズベット、シノンら女子らの反応は総じていまいちである。彼のセンスを信じておらず、むしろ危なっかしい考えでは無いかと不安な心を募らせていく。無論銀時も同じだ。

「良いから、ヅラ。さっさと作戦を言えよ」

「フッ、いいか。念には念を入れて、五つも思いついているぞ。まずは桂ップで相手をラップバトルに持ち込む作戦だ。ノリに乗っているうちに、皆が世界樹へ忍び込むのだ。二つ目の作戦は、ヅラ子に化けて色気でもてなす術だ。準備はかかるが、効果は絶大だな。三つ目は――」

「おい、お前ら。桂の作戦は無視で話を進めるぞ」

「「「「はーい」」」」

「ちょっと、みんな!?」

 試しに桂の立てた作戦を聞いてみるも、どれも危なっかしいものばかりである。早々に銀時が彼を見切ると、仲間達に次なる作戦を促していく。

「いいか! 俺の作戦があれば、君達を世界樹へ連れ込むことが出来るのだぞ!」

「お前のチンケな作戦なんざ、すぐにバレるのがオチに決まってんだろ!」

「だいたいなんですか、桂ップにヅラ子って!」

「ここはネタ見せ番組じゃないのよ!!」

「ここは桂さん、考え直した方が良いと思うぞ」

「同じくね」

 その途中では言い争いが起きたのだが……。早々にまとまらない北東側の陽動作戦。内通者であるシグルドからすれば、いつまでも続く話し合いにじれったさを覚えていた。

(まだ決まらぬのか。後は俺が合図をすれば、通れると言うのに)

 あくまでも銀時やキリトらを世界樹へ招くための行動。隙を見て通そうとするも、中々タイミングを掴めていない。

 そう深々と頭を悩まされているうちに、実は怪人側にも変化が起きていた。

「ワフワフ!」

「ナナ!」

「ん? どうしたのだ?」

 シグルドが気付いたのは、定春とピナが何者かを応援している場面。彼らの目線に目を向けてみると、

「ここまで私を手玉にするなんて……アナタって魔性ね」

[君のような女性がいれば、俺はなんだってするさ]

「……はぁ?」

なんとエリザベスがプテラノドンヤミーを口説く様子が見えていた。しかも上手くいっているようで、あまりの歪な光景にシグルドの体は固まってしまう。

[さぁ、行こうか]

「行きましょう。私達の愛の巣へ!」

 いつの間にか倒されているカッシーンを踏み台にしたまま、エリザベスはプテラノドンヤミーを別の路地裏に誘っていた。そして数分も経たないうちに、エリザベスだけがこちらに戻ってきている。

「ナナナ?(どうだった?)」

[食べちゃった]

「ワフフ!(流石~!)」

「……はぁ?」

 思ってもいない急展開に、シグルドの脳内はハテナマークで埋め尽くされていた。そもそもエリザベス自体に謎が多くあり、この「食べちゃった」も正直理解が出来ない。物理的に捕食したのか、はたまた性的な意味で食べたのか。どちらに転んでも、恐ろしいことに変わりはない。

 ちなみにこの事実を知っているのは、ペット組とシグルドのみである。

[おい、みんな。門番は全て俺が倒したぞ]

「何? 本当か、エリザベス!?」

「いつの間に……?」

 嬉しそうな雰囲気で、エリザベスは仲間達に敵の討伐を告げていた。思ってもない気前の良さに、仲間達も大なり小なり驚いている。

「お前より有能じゃねぇか」

「うるさい! 俺のタイミングが悪かっただけだ!」

「と、とにかく! このまま先に進もう!」

 ムキになって反抗する桂を宥めつつ、一行は世界樹へと侵攻しようとした。千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないのである。

 一方でシグルドはと言うと、

「……まぁ、いいか」

細かいことを気にしないことにした。ただ一つ分かるのは、エリザベスとの戦闘は極力避けることにしている。

 こうして手段は違えど、無事に世界樹へ侵入した一行。マッドネバーとの決戦が徐々に迫っていく――

 

 

 

 

 

 

 

 一方の高杉やユイら混合チームは、結晶の正体を知ると新たな目的地を定めていた。

「フッ。つくづくこいつらはいい加減だな。自分勝手にもほどがあるだろ」

 その先頭を歩くは、小言を発している高杉晋助。辺りを警戒しつつ、ゆっくりと世界樹内を探っていく。彼らが目指すは、結晶の保管されている部屋だ。高杉の後ろには、ユイ、シウネー、フレイアと女子陣で集まりながら、ゆっくりと場を進んでいる。

「なるほどです。その英雄達の力を、マッドネバーは利用しているというわけですね」

「そうです。あくまでも私の仮説ではありますが……」

「大丈夫です! 私達が絶対に取り返しますから」

「……ありがとうございます!!」

 結晶の件を踏まえた上で、シウネーはユイの願いを聞き入れていく。マッドネバーを倒すためにも、結晶の奪還は重要だと考えている。頼もしい彼女の返答に、ユイは安心感を覚えていた。

 その一方でフレイアは、結晶の件から高杉により警戒心を高めていく。

「ううん……」

「どうしたのですか、姫様?」

「いえ、なんでもないです。ただあの人ならば、結晶を横取りするとも考えているのです」

「そ、それは……流石にないと思いますけど」

 高杉の裏切りを脳裏に浮かべるが、シウネーからは苦笑いで否定されている。雰囲気や行動から、彼に姑息な手段は似合わないと思い込んでいた。シウネーと同じくユイも同じ気持ちである。

(私もです。高杉さんはそんな姑息な手は使わないですよ、多分……)

 確証は無いのだが、それでも素直に彼を信じていた。

 そう四人の間で気持ちの違いが生じるうちに、一行は怪しげな光の漏れる部屋に行きついている。

「おや? ここは……?」

「覗いてみますか?」

 高杉に続いて、ユイらもこっそりと部屋を覗き込む。すると見えてきたのは、透明な球体に閉じ込められている結晶だった。部屋の内部にはライオトルーパーが二体おり、逐一結晶を分析している。どうやらここは突貫で作った研究室のようだ。

「どうだ? 結晶の様子は?」

「確かに凄まじい力を感じるぞ。オベイロン様の言っていた通りだ」

「ならばこの結晶に、英雄の力が秘められているのか?」

 二体のライオトルーパーは、結晶の変化からある仮説を見出していく。多種多様な力が組み込まれているようで、次元遺跡にあった英雄との関係性を示唆している。

「この結晶を上手く活用すれば、この道具も完成するな」

「さぁ、急げ。今日中には完成させるぞ」

 そして彼らは、近くにあった未完成の道具に手をかざしていく。ベルト型とブレスレット型の二種があり、その両方を付けて結晶の力を開放するらしい。いずれにしても、研究の進み具合は大幅に進んでいると見て間違いないだろう。

「あの結晶で間違いないです」

「二つの道具を組み合わせるようだけど……」

「結晶で悪用していることに違いはないわね」

 ユイの証言を受けて、改めて事態の深刻さを悟るシウネーとフレイア。このまま道具が完成すれば、こちらの敗北は確定的であろう。だとすれば、やはり結晶を取り返さなくてはいけないが……彼女達はある変化に気が付く。

「そういえば、高杉さんは?」

「えっ? いない?」

 ふと辺りを見渡すと、先ほどまでいた高杉がいなくなっている。まさかと思って再度部屋に目線を向けてみると、

「うゎぁぁ!!」

「どうした、ウッ!?」

「てめぇらは弱そうだな、失せろ!」

「ギャァァ!!」

雰囲気をお構いなしに高杉がライオトルーパーに斬りかかっていた。すっと相手の背後に這いよって、有無を言わさずに倒している。だがこれで、遠慮なく結晶を奪い返すことが出来るようになった。

「た、高杉さん!?」

「邪魔者は始末したぞ。さっさと結晶を奪取しようじゃねぇか」

「つくづく大胆な人ね……」

 突拍子もない行動に、フレイアはまたも驚かされている。それはそうと、ユイらも部屋に入り込んでいた。こじんまりとした内部には、結晶に関する資料や道具の設計図が乱雑に置かれている。どうやら結晶関連の研究しか、この部屋では扱っていないようだ。

 そしてユイは、ようやく結晶を取り返す寸前まで来ている。だがしかし、肝心の結晶は透明な球体に閉じ込められたままだ。

「何一つ変わっていないです……」

「良かったです。でも、どうやって取り出しましょうか?」

「私の杖で破壊しますか?」

 シウネーは力づくで取り返そうと提案するも、ユイはすぐに結晶の扱い方を理解していく。

「いえ、大丈夫です! このままで……」

「ふっ。どうやら何かを察したようだな」

「分からないですけど、このまま祈れば通じるはずです。私の想いが!」

 彼女なりの決意には、高杉も察しが良く汲み取っている。彼の後押しと共に、ユイは球体越しに結晶へそっと手を触れていく。

 それからだった。彼女の意識に異変が起きたのは。

 

 

 

 

 

 

 

「えっ? ここは……?」

 気が付いた時には、辺りに異変が生じていた。物々しい個室から真っ白い空間へとユイは移動している。いや、精神世界に送り込まれたとも言うべきか。

「さっきまで世界樹にいたはずなのに……もしかして空間が歪んだのでしょうか?」

 ボソッと思ったことを呟くも、その捉え方は誤りではない。故に近くには高杉やシウネーらもいないからである。

 何が起きるか分からない状況に、そっと身を委ねていると――目の前にあの戦士達が集結していた。

〈ヒューン!!〉

「うわぁ!? 仮面ライダーさん……?」

 風を吹かせた音と共に姿を見せたのは、クウガからジオウの平成仮面ライダーの主役二十人である。四方八方にまとまっており、皆ユイの方をじっと見ていく。するとライダー達は、次々にユイへと話しかけてきた。

「よくぞ。ここまで辿り着いたね」

「俺達の見込んだ通りだ。君ならば出来ると信じていたよ」

「えっと……一体どういうことですか?」

 まずはクウガとアギトが話しかけており、彼らはユイが要件を把握した上でこの空間に来たと思い込んでいる。肝心の本人は突拍子もないことに困惑していたが。戸惑いを続ける彼女を見て、ライダー達も接し方を変えようとした。

「ったく。こりゃ、一から説明が必要だな」

 ファイズがボソッと呟くと、いけしゃあしゃあと電王が前に出てくる。

「しょうがねぇ。だったら俺が――」

「ここは俺で十分だろ」

「いや、被るんじゃねぇよ!」

 自信良く説明しようとしたところ、言葉を被せるが如くカブトが割り込む。場の雰囲気はお構いなしに、二人のみが険悪な雰囲気となってしまう。するとブレイドが二人を落ち着かせてきた。

「落ち着け。この子も困っているだろ」

「まぁ、適当に俺らが話すことでいいだろ。そんでお前。俺達に聞きたいことがあるなら、遠慮なく聞けよ」

 彼に続きディケイドも発する。尊大な態度のまま、ひとまずは彼女へ質問を促す様子だ。その雰囲気を悟り、ユイは遠慮なくぶつけていく。

「分かりました。では何故……私をこの空間に連れてきたのですか? 次元遺跡での不可解な現象は、アナタ達の仕業ですか?」

 感じた疑問は主に二点。自身をこの空間に連れてきた経緯と、次元遺跡で起きた現象の数々である。神妙な表情で発すると、最初にW(翔太郎とフィリップ)が反応していく。

「うむ。理詰めした内容だね」

「それじゃまずは、次元遺跡が出来た経緯から話すか。えっと……」

「翔太郎。ここはディケイドに話を渡した方が良いんじゃないか?」

「あぁ、分かった! 後は頼んだぞ」

 どうやら上手く答えがまとまらず、フィリップは翔太郎に他のライダーへ回答件を譲ろうと提案。すかさず翔太郎も察して、ディケイドに返答を託していた。そしてすぐに彼が答える。

「任せろ。そもそもこの次元遺跡ってのは、俺達平成仮面ライダーの記憶や想いを集めた、いわば博物館のような場所だ」

「博物館ですか?」

「要するに、俺達のことを覚えている人々の記憶が寄せ集まった場所なんだ。この力を次世代へと繋ぐために、本来は誰にも立ち寄れないはずだったんだが……」

「あの男のせいで、予定が狂っちまったんだよ」

 彼の説明に龍騎や電王が補足を加えた。ライダー達が語ったのは、次元遺跡が作られた経緯。人々の記憶や思い出が具現化された場所であり、本来は次世代の戦士に力を託す場所であった。(この件で言う次世代は、令和仮面ライダーを指しているとされる)

 次元の狭間に出来た場所で、誰にも踏み入られないはずが……その法則を壊したのがオベイロンである。

「そうだったのですか?」

「まぁな。マッドネバーによって、半強制的にこの場所が見つかってな」

「力を奪われることを危惧した俺達は、一時的に力を託せる適任者を急遽探すことにしたんだ」

 会話は続き、響鬼、オーズと順に話していく。彼らは平成仮面ライダーの力を悪意ある者に奪われないよう、一時的に力を託せる適任者を探すことに決めていた。

「そこで偶然にもやって来た君達に目を付けたんだ。その結果、君を一番相応しい適任者だと俺達は見抜いたんだ」

「えっ!? 待ってください! 私が適任者!?」

「そう驚かないでくれ。君のような善悪の区別が付き、純粋な優しさを持つからこそ、相応しいと私達は思っているのだよ」

「べ、ベルトが喋った!?」

「って、やっぱり驚くか……」

 ユイを適任者へ選んだ事実を知ると、本人は当然の如く驚嘆としてしまう。そんな彼女にドライブと、彼が付けているドライブドライバ―(ベルトさん)も説明していく。だがベルトと話せることにも、さらに驚いていたが。

(じゃ、今までの現象もライダーさん達の仕業だったんですね)

 ユイも次第に状況を理解していく。次元遺跡で起きた現象(ユイにのみ開く扉。マッドネバーを外部に退去させたオーロラ)や、この空間に連れてこられたことも、間接的にライダーが関与している。全てはマッドネバーの思い通りにさせないため。ライダーなりの苦労を彼女は感じ取っていた。

「でも、なんとなくですが分かりました。ライダーさん達の守りたかったものが」

「分かってくれたなら、何よりだよ。けれど……君を危険な目に遭わせたことには、申し訳なく思っているよ」

「えっ? それって……」

「まさかアイツらが、ここまで力に強欲だとは思わなかった。行く道さえ防げば、大人しくなると思ったが……どうやら俺達の考えが甘かったようだな」

「ライダーさん……」

 終始明るい雰囲気で話は続いていたが、途端にビルドやウィザードが彼女に謝りを入れている。自身の勝手な都合で、ユイを過酷な運命に巻き込んだことを申し訳なく思っていた。これは二人のみならず、全てのライダー達も同じ想いである。

 気まずい雰囲気から皆が口をすぼめる中、ユイは思い切って自身の気持ちを伝えていく。

「そ、そんな責める気持ちなんて全くないですよ! 悪いのは全部、あの人なんですから! ライダーさん達が決めた決断は、間違っていないと思います!!」

 真剣な表情で、一切の後悔が無いことを明かしていた。事情を理解した彼女にとっては、この事態は致し方ないと括る。むしろこんな危機的状況で、僅かな時間でもライダー達の本音を聞けたことが何よりも嬉しいのだ。

 慈愛の一面を見せる彼女の姿を見て、アギトやキバが話しかけていく。

「ありがとう。本当に強いな、君は!」

「やっぱり君には資格があると思うよ。ヒーローとしての」

「そ、そんなことは無いですよ」

 率直に二人はユイを褒めており、真に受けた彼女は思わず顔を赤くして照れている。本物のヒーローから褒められることに、つい気持ちを舞い上がらせていた。すると、キバの相棒であるキバットも話しかけてくる。

「流石は適任者だな~。寛大な心の持ち主だぜ~!」

「って、銀時さん!? ……の声?」

「えっ? 俺はキバットだ! 間違えるんじゃねぇぞ!」

「ギンバットさん?」

「キバットだ!」

 当然の如く、銀時とキバットの声を混在してしまった。いわゆる中の人ネタである。つい可笑しさを感じてしまい、ユイはクスっと笑いをこぼしていた。

 場の雰囲気が明るさを取り戻したところで、ユイは結晶の件もライダー達に聞いていく。

「あの……結晶についても質問して良いですか?」

「結晶? あぁ、あのことか。アレは俺達の力の一端だよ」

「あの結晶にそんな力が秘められているのですか……?」

「いずれは君や仲間達に託そうと思っていたものだからな。ライダーの力を全て奪われないように、あらかじめ力の半分をこの結晶に分けておいたんだ」

「……重要な代物だったのですね」

 返答をくれたのは、ゴーストとエグゼイドだった。どうやら結晶の正体は、ライダーの記憶が刻まれた一種の囮だったという。もう半分を次元遺跡に隠すことで、マッドネバーの注意を逸らす作戦だ。ユイや仲間達を巻き込んだものの……この作戦は功を奏した結果を残している。

 ユイ自身もこの事実には素直に驚いていた。同時に危険を冒してまで結晶を取り返せたことに、ただならぬ達成感を覚えている。

「どっちにしても良かったです……取り戻せることが出来て」

 依然として不利な状況に変わりはないが、それでも一筋の希望を取り返せたことには間違いない。安堵の表情を浮かべていた。

 この彼女の健気な様子を見て、ライダー達は締めとして最後にある質問を交わしていく。

「それじゃ、お前に最後の確認をするぜ!」

「えっ、確認?」

「そんな大したもんじゃないよ。君はもし俺達の力を手に入れた、どんなことに使いたい?」

 聞いてきたのはフォーゼと鎧武である。彼らはライダーの力を入手した際の使い道を聞いており、ユイの意思を改めて試そうとしていた。

 無論彼女にとっては、すでに答えが決まっているようなものだが。

「もちろん決まっています。この星を守るために使います! あの人の暴走を止めるためにも……!」

 声を震わせながら、しっかりと平和を取り戻すために使うと誇示する。ユイの確かな一言を聞き入れると、平成仮面ライダー達はゆっくりと首を頷いていた。すると今度はジオウが話しかけてくる。

「よしっ! その気持ちがあれば十分だよ。君と君を信じている仲間なら……俺達ライダーの力を立派に使いこなせるはずだ!」

「はい……ありがとうございます!」

 彼はユイに駆け寄っていき、丁寧にも目線を合わせるためにしゃがんでいた。そっと気持ちに同調していると、彼女はふと微笑みを浮かべている。

 こうして意思を確認したところで、ライダー達の計画はいよいよ仕上げに進んでいく。

「みんな、行くぞ!」

「「「おう!!」」」

 突如ジオウがライダー達に声をかけると、仲間達はそれぞれ自身を象徴するアイテムを取り出していた。カードやフェッスル、アイコンにウォッチと手にすると、

「うわぁ!? アレって……」

ユイの目の前には二つの物体が出現する。そう、研究室で見た結晶と未完成の道具(ベルト型とブレスレット型)であった。そして、

「いけぇぇ!!」

ライダー達は手にしたアイテムを一斉に、二つの物体に投げつけていく。

「これは……?」

 途端に眩い光が解き放たれて、ユイはつい目をくらませる。光は次第に落ち着き、彼女がゆっくりと目を向けると――そこには見たことも無い物体が宙に浮かんでいた。未知なる物体、いやアイテムを受け取ると、ライダー達が作り出したアイテムの解説を加えていく。

「結晶とドライバーを、使いやすいように改良しておいたよ。名付けてヘイセイジェネレーションメモリと、アルヴドライバー! 天才的でしょ!?」

「この二つを組み合わせれば、俺達の力を一時的に使えるようになるぞ」

「これで君も、運命を変えられるはずだ!」

 ビルド、ゴースト、エグゼイドが従順に解説した通り、新たなアイテムには平成仮面ライダーの力が刻まれているようだ。結晶の変化したヘイセイジェネレーションメモリと、ベルトやブレスレットを改造したアルヴドライバー。この二つのアイテムを組み合わせて、一時的にライダーの力を行使できるという。一発逆転が出来る絶好のチャンスを、彼女は手にしたと言っても過言ではないだろう。

「あの……ありがとうございます! こんな大いなる力まで貸してくれて……」

「そう謙遜するな! 適任者なんだから、もっと堂々としろよ!」

 感極まってお礼を交わすと、またも電王が自信良く声をかける。全ては彼女の覚悟によって託されたもの。真摯な想いを信じて、ライダー達は力を貸すと決めていた。

 さらに次々とライダー達が補足を加えていく。

「このアイテムは状況に応じて、複数に分けられることも出来るんだ!」

「いざという時は、お前の仲間にも使えるかもな」

「君の認めた仲間なら、使いこなせるはずだ」

「なら……パパやママ。銀時さんに新八さん、神楽さんにだって……!」

「お前が信じる限り、不可能は無いだろう」

 龍騎、ファイズ、響鬼、カブトの順に話しかけていた。どうやらこの二つのアイテムは、任意で増やせることが出来るらしい。つまりは万事屋やキリト達にも使えるかもしれないのだ。もちろん使用するには、ユイと同じく優しさと正しさを兼ね備えた気持ちが必須だが。

(あっ。銀時さんは大丈夫でしょうか……?)

 特に彼女は銀時が使えるか不安視している。日頃の行いから、使用不可になっても可笑しくないからだ。

「フッ……無事に渡せて良かったな」

「俺達は訳あって、こっちの世界には来れないからな。彼女がこの星の、最後の希望となるだろうな」

「大丈夫だよ。彼女ならばな」

 一方で鎧武、ウィザード、ドライブの三人は、練られた計画がようやく実を結び、安心している。とある事情から直接他世界へ行けない分、その希望や力を正しき者に渡せたことが嬉しいのだ。大役だがきっと彼女なら乗り越えられる。これがライダー達の総意だ。

 こうしてようやく要件を終えたユイと平成仮面ライダー達は、最後にメッセージを交わして事を終えていく。

「俺達からの伝言はこれで以上だ。本当の強さを分かっている君なら、きっと大丈夫だと思うよ」

「もっと自信を持って! 君ならどんな手も掴めるよ」

「俺達の力をありったけ! 平和を脅かす連中にぶつけるんだ!」

「はい、分かりました!!」

 ブレイド、オーズ、フォーゼと熱いメッセージを受け取り、ユイも力強い一言で返答していく。それくらいユイには強い期待が寄せられているのだ。

「頑張ってください!」

「街を泣かせる野郎は、お前の手でとっちめてやれ!」

「大丈夫。絶対に……!」

「遠慮なく使えよ。俺達の力」

「奪われた未来を取り戻すんだ!」

 キバ、W、クウガ、ディケイド、ジオウも彼らなりの言葉をかけていく。こちらも存分な期待と励ましが込められていた。ユイも真剣な表情で頷き、しっかりと反応している。

(当然です。私と仲間達なら……絶対に出来ます!)

 その心には一切の迷いは無かった。

「それじゃな~。後もキバっていけよ!」

「スタートユアエンジン! 君の走りに期待しているよ」

 こうしてキバットとベルトさんの一言を機に、ユイの意識は次第に現実へと戻っていく――

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!? 今のは……」

 しっかりと意識が現実へ戻ったユイは、ふと辺りを確認している。そこは紛れもない研究室であり、近くには高杉、シウネー、フレイアと先ほどまで行動を共にしていた面々が心配そうにこちらを見ていた。

「ようやくか」

「ユイさん? やっと気が付いたのですね」

「何があったのですか?」

「あ、はい。確か仮面ライダーさん達と出会って、彼らから力を借りることで出来たんです。ちょうどこのアイテムに……えっ!?」

 自身の身に起きたことを説明する中で、彼女は自身の手元にアルヴドライバーとヘイセイジェネレーションメモリがあることに気付いていく。幻影の中の出来事は、しっかりと現実にも作用していた。

「あの、ユイさん……? 結晶と道具が急に手元に来たのですよ。信じられないですけど」

「本当だ……あの出来事は夢じゃなかったんですね」

「つまりはお前を、持ち主として認めたってことじゃねぇのか? いわば継承者だ」

「継承者……良い響きですね」

 未だに驚きを隠しきれないシウネーや、すんなりと察しの良い高杉と仲間内の反応にはばらつきがある。だが総じて言えることは、皆がこの出来事を好意的に受け止めていることだった。

(ちなみにユイがライダー達と邂逅したことはほんの一瞬であり、シウネーや高杉らは目撃していない)

 一方のフレイアはその驚きを隠しつつも、高杉へ無粋な質問をぶつけている。

「アナタは奪わないのですか、この結晶を?」

「随分とストレートだな。誰が奪うかよ。そういう気分でもねぇからな」

「そうですか……」

 てっきり高杉の裏切りを予見していたが、本人からはすぐに否定されてしまう。ここまで来ると、彼には彼なりの信念があると思い始めていた。

 マッドネバーに立ち向かえるほどの力を得たユイら一行。希望を見出した期待と、未知なる力への不安が混在する中で、彼らはひとまずこの場を去ろうと決めている。

「と、とりあえず! 早くここを抜け出しましょう」

「そうだな」

 全員が辺りを警戒しつつ、そっと研究室から脱出していた。部屋の中に残ったのは、倒されたライオトルーパーの残骸と、壊された結晶の保管場所である。この惨劇にマッドネバーが気付くのは、まだまだ先のようだ……。

 こうして迷いや疑念が取り除かれたユイは、新たな力を手に反撃の一口を探っていく。共に行動する仲間と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 ユイが平成ライダーと邂逅したその一方で、世界樹には多くの仲間達が侵入しようとしていた。

「ここが世界樹内部だね」

「分かっていたけど……やっぱり私達の知る世界樹とは違うわね」

「ツリーハウスみたいだな」

 南門の受付場にやって来たのは、フィリア、神楽、アスナの南西組。彼女らは辺りを警戒しつつも、慎重に自分達が行くべき道を探っていく。(この受付場は北門とは通路で繋がっておるが、現在は破損しており通り抜けすることは出来ない。故に銀時やキリトらは再会することは難しいのだ。この事実はどちらのチームも気付いていないが)

 アスナや近藤らが次々に呟くと、フィリアは仲間達に道しるべをしてきた。

「あっ、あそこだよ! 上に繋がる階段は!」

「アレは……非常階段っぽいな」

「とにかく! 敵に見つからないうちに進んじゃおうよ!」

「そうね」

 指をさした方向には非常用の階段があり、一行はそこから最上階まで向かう予定である。敵に悟られないよう周りを警戒しながら、ぞろぞろと足を進めていく。とりあえず皆はひたすらに階段で上がっていると――一旦五階で階段が途切れている。

「こっち! 別の階段を使うよ」

 どうやらフィリア曰く、ここからは違う階段で最上階に向かうようだ。連絡通路を利用して、皆が五階のエリアに入り込もうとした時である。

「サメ! クジラ! オオカミウオ!」

「ガブッ!」

「えっ!?」

 何の前触れもなく、一行の目の前にあのダークライダーが姿を見せていた。唖海の変身するポセイドンと、亜由伽の変身するダークキバである。さながらこの道を通ることを見越して、先回りされたようだ。

「ダークライダー!?」

「なんでここに……!?」

 思わぬ再会に、つい戸惑ってしまうアスナ達。そんな彼らとは対照的に、二体のダークライダーは余裕そうな態度を続ける。

「なぁに。これも作戦の一環ということさ」

「にしても、久しぶりね。あの時無様にやられたお嬢ちゃん」

「アンタ……!!」

 中でもダークキバはリーファを見つけるや否や、嫌みったらしく煽りを入れていく。彼女と一戦を交えたことがあり、その時の様子を鮮明に覚えているのだ。

 一方のリーファは宿敵の登場により、沸々と怒りが込み上げている。あの戦いの時に受けた屈辱を果たそうと気持ちを整えていた。

「とりあえず、貴様らは俺達で始末してやろう」

「さぁ、どこからでもかかってきなさい」

 そしてダークライダー達は、相手を挑発するように戦いを吹っ掛けていく。どうやら彼らを撃退しなければ、この先を進めないようだ。強制的な戦闘開始に憂いを感じつつも、一行はこの戦いを受け入れようとする。

「みんな! ここはやむを得ん! 戦闘態勢を構えるぞ!」

「やっぱり強硬突破しかないのか……!」

 近藤の強気な掛け声に反して、クラインはつい弱音を口走ってしまう。素直に交戦しても勝てる見込みのない相手。苦戦を強いられることが予測されてもなお、目的を達しなくてはならない。乗り気ではなかった仲間達も、その使命や責任を思い出していき、真剣な気持ちに移り変わっていく。

「今度こそは私の手で倒すんだから!」

 特にリーファは一番、戦いに闘志を燃やしている。今度こそダークキバにリベンジを果たそうと躍起になっていた。

「ここは僕も……!」

 もちろんユウキも同じ想いである。こっそりと刀剣を口にくわえて、ダークライダー達に狙いを定めていく。

 新八、神楽、アスナ、クラインと次々に武器を構えて、このまま戦闘に入ろうとした――その時である。

〈カキーン!!〉

「えっ?」

 皆にとって予想外の事態が発生してしまう。なんとフィリアが自身の剣を手にしたまま、ユウキに襲い掛かろうとしていたのだ。その表情は狂気に満ちており、とても本人とは思えない様子である。

 そんな彼女を間一髪で止めたのは、土方と沖田だった。

「フィ、フィリアちゃん!?」

「えっ、なんで!?」

 突然の裏切り行為に、いまいち事態を理解できないアスナや新八達。目を丸くして、ただただ驚くしかない。

 一方の土方と沖田は冷静さを保ったまま、フィリアらしき人物を対処していた。

「チッ! やっぱりお前らにはバレていたか!!」

「ようやく姿を現したな、このニセモノめ」

「……どうして気が付いたんだい?」

「簡単なことでさぁ。やけに怪人側に詳しいことと、こないだのような無鉄砲さが感じ取れなかったんでねぇ。本物なら自分から進んで動くんでさぁ!」

 二人はすでにフィリアが別人だと確信しており、思いつく限りのことを彼女にぶつけている。危機的な事態にしてはやけに豊富な怪人への知識量と、似つかわしくない慎重な行動が疑惑の確信に繋がったとのことだ。

「「ハァァ!!」」

「くっ……うわぁぁぁ!!」

 偽者だと分かったのならば、もはや容赦はない。土方と沖田は刀を用いて、フィリアの偽者を次々に斬りかかっていく。怯む隙すらない連続攻撃を受けて、フィリアの偽者はとうとう自身の正体を明かして――断末魔と共に爆発してしまう。

 それは……擬態能力を持つ怪人、ワームのサナギ体であった。

「うわぁ!? 何だアレ!?」

「気持ち悪!! 虫アルか!?」

 一瞬だけ見えた怪人の容姿に、神楽やアスナら女子陣は体を震え上がらせてしまう。虫のサナギをモチーフにしており、事情を知らない者からすれば不気味さを感じるからだろう。

「どうやら擬態する怪人みたいでしたねぇ」

「小賢しい真似を。要するにお前らの仕業だろ? マッドネバー!」

 そして土方と沖田は、目の前にいたダークライダー達に真実を問う。言われなくとも、彼らの仕業である事は間違いないのだ。

「あらあら。気付かれてしまったみたいね」

「残りのガイアメモリを奪う予定だったが、これも仕方ないだろう」

「これが狙いだったの……!?」

 その通り。彼らが密かに狙っていたのは、現在ユウキが手ぬぐいに入れているガイアメモリ三本。とある装置を完成させるために必要な道具で、否が応でも奪おうとしていた。彼らは手の内をさらっと明かし、こうなれば意地でも奪取しようと画策していく。

 次々と発覚するマッドネバーの企み。自分達に好機が訪れているはずが、全ては裏で仕向けられていた最悪の展開である。敵の本拠地と化した世界樹にて、彼らは袋の鼠と言っても過言ではないだろう。

 さらに追い打ちをかけるように、ダークライダー達へ援護が二匹駆けつけてくる。

「案ずるな。こやつらをこの場所に仕向けただけで、十分に仕事をしてくれたよ」

「ここからは僕達も加わろう」

 ねっとりとした口調のまま、ダークライダーの背後に来たのは……

「フィリアちゃん!」

「フィリア!」

「あんなところに!?」

触手に囚われたフィリアだった。目を閉じたまま気絶しており、さながら弱っているようにも見える。そして彼女を捕えているのは、

「とアレは……」

「ナ、ナメクジ!?」

なんとピンク色の巨大なナメクジだった。全身をくねくねさせながら移動しており、見る者によっては強烈な嫌悪感を与えている。

「えっ!? まさかこの世界のナメクジなの……? って、どこかで見覚えが……」

 特にアスナはナメクジを見るや否や、過去のトラウマを思い起こしてしまう。彼女が元の世界のオベイロンの監視下に幽閉されていた際、密かに逃げ出した先で出会ったのがこのナメクジである。ご丁寧にも当時と色合いや大きさもほぼ同じだ。アスナにとっては会いたくもない相手だろう。

 だが彼女はトラウマと共に、どこか既視感を覚えている。元の世界ではなく、この世界としての。その予感はアスナよりも、神楽の方が確かに覚えていた。

「ん? あぁー! お前は!!」

「えっ? 私アルか?」

 なんとナメクジは神楽を目にした途端に、体を震え上がらせている。焦ったような態度となり、彼女に向かって盛大に文句をぶつけてきたのだ。

「お前は……数か月前に出会ったポテチ娘!!」

「よくもあの時は塩を振りまいてくれたな!!」

「ポテチ? あぁー! アッスーと初めて会った時にいたヤツアルか!」

「嘘!? じゃあの時と同じナメクジなの……?」

 そう、彼らの正体は一訓に登場したモブのナメクジである。神楽と定春、アスナ、ユイが初めて出会ったきっかけであり、この時の彼女はたまたま持っていたポテトチップスでナメクジ達を撃退していた。いわば因縁の相手と言っても差し支えないだろう。肝心の神楽やアスナは、微塵もそんなこと思っていないのだが……。

 思わぬ遭遇に神楽らが驚嘆とする一方、近くで見ていた仲間達もナメクジに多様な反応を示していく。

「ていうか、めちゃくちゃ気持ち悪いな」

「一体どういう経緯で生まれたのよ……」

「いや、触手を出したかっただけだろ」

 嫌悪感を存分に口に出す土方、リーファ、新八。

「うわぁ、戦いづらそう……」

「面倒な相手だ……」

「こんなのやられちゃ、真選組の名が廃りやすよ」

「おのれ、ヌメヌメ野郎! そんなのはズルズルボールだけで十分なんだよ!」

「近藤さん。それ土方さんの管轄でさぁ」

 戦いづらさを声に発してしまうクライン、ユウキ、近藤、沖田。小ボケには沖田が対応している。どちらにしろ感じ取れるのは、気持ち悪さと戦いづらさであろう。何よりもフィリアが囚われているため、彼女の救出も優先的にしなければいけない。

「とにかく、たかがナメクジにビビるなよ!」

「そうアル! また前みたいに、コテンパンにやっつけるネ!」

「フィリアちゃんも絶対に取り返すわ!」

 土方、神楽、アスナが仲間を扇動するように、意気揚々と戦う意思を示していく。見掛け倒しの敵に恐れる必要はないと、皆を安心させようとしたが――ナメクジ達には当然秘策があった。

「フハハハ!! お前らは何も分かってないな!」

「なんだと?」

「こないだの俺達とは何もかもが違うんだよ! ここは俺が変身する。お前はこの女を持っていろ」

「アイアイサー!」

 高笑いをしたかと思いきや、片方のナメクジは戦闘から離脱。気絶するフィリアを見張るようだ。一方もう片方のナメクジは、とある片手銃を手にしている。

「オベイロン様と共に開発した、この道具の餌食となるがよい!」

 そう自信良く言うと彼は、一本の筒状のアイテム――いやロストフルボトルを、片手銃改めトランスチームガンに装填していた。

〈バット! This is but! This is but! ミスト……マッチ! バット、バット……ファイヤー!!〉

 ノイズの走った変身音と共に、ナメクジは突如トランスチームガンから発せられた煙に包まれていく。次第に姿が変化していき、人間と同じサイズに変わっている。特殊なスーツを身にまとい、コウモリの力を宿したダークライダー……いや、疑似ライダーへと変貌していた。そう彼が変身したのは、ナイトローグである。

「へ、変身した!?」

「バット? コウモリの戦士?」

 あからさまな変化に、アスナ達は皆困惑してしまう。そもそもナメクジ状の生物が、人間が変身するであろう戦士になっていることから、いまいち理解が追い付いていない。

「いや、ナメクジのくせしてコウモリですかい」

「そうはならんやろ」

「設定ガバガバアル」

「ツッコミどころ多くてさばききれねぇよ」

 仕舞いには沖田、土方、神楽、新八と冷めた言葉を連続でかけられてしまう。特に新八はツッコミの多さに耐え切れず、匙を投げだす始末であった。

 好き放題言われているナメクジことナイトローグは、まんまとその言葉を真に受けてしまう。

「うるさい! ナメクジの戦士がいないから、その代用だ!」

「そうだ! そうだ! 俺達の科学力を結集すれば、どんな生物でさえもダークライダーや疑似ライダーに変身できるのだよ」

「いや、お前は変身してねぇだろ」

 変身していないナメクジもヤジを飛ばすも、沖田からは正論を言われてしまった。彼にも変身する力があるのかは、正直不明である。

 それはさておき、ダークライダー側は気負いせずにこのまま勝負を仕掛けていく。

「そう軽い口を叩けるのも、せいぜい今の内よ」

「ここを通りたければ、俺達を倒すことだな」

 ナイトローグを加えた上で、完膚なきまでに倒すとのことだ。また堂々と勝負はせず、状況によっては卑怯な手も使うようである。

「亜由伽よ。分かっているな」

「当然。あの女が目覚めたら、プランを変えるわよ」

 こそこそと言葉を交わしていき、その意思を疎通させている。

 一方で勝負を仕掛けられたアスナ側は、皆思い思いの気持ちを呟いていた。

「ダークライダーが二体。疑似ライダーってヤツが一体か」

「一人増えようが、こっちは問題ねぇですよ」

「同じくだ。どっちにしろ、叩き斬ってやらぁ」

 真選組の三人は油断することなく、刀を構えていく。各々がダークライダーに苦戦した経緯があり、リーファ同様その屈辱を果たすとのことだ。

「絶対にお前らをねじ伏せてやるぞ!」

「今度こそ、負けないんだから!」

「このまま戦いましょう!」

「言われなくても、分かっているアル!」

 クライン、リーファ、神楽、新八も怖気づくことなく、強気に立ち向かおうとしている。あわよくばフィリアも取り返すつもりだ。そしてアスナはと言うと、

「アナタは隠れてて。大丈夫よ、すぐ終わるから」

ウサギを一旦階段付近に移動させている。マッドネバーの狙いはガイアメモリであり、少しでも彼らから遠ざけようとしていた。不安を与えないようにと、そっと優し気な表情を浮かべている。

 だがユウキには――もうすでに決めていたことがあった。

「アッスーさん……いや、平気だよ。僕はもう……覚悟を決めたから!!」

 いつまでもこの姿のままではいられない。例え彼女に驚かれようとも、共に戦う決意をしている。要するに本当の姿に戻ると決めたのだ。肝心の方法は本人もあまり分かっていないが……ここはもう気合で乗り切るしかない。

 こうしてユウキを勝負の場に遠ざけたことで、いよいよ戦いが始まっていく。マッドネバーの姑息な手段に警戒しつつも、皆真剣に戦いへと駆り出していった。

 

 一方のシグルド側はと言うと、

「この先はワナが仕掛けられているかもしれん。ここは君達を先頭にして、進んでもらえないか?」

「あぁ、分かっているよ」

「言われなくてもな」

「えっ? うゎぁぁ!?」

早々に裏切りが発生していた。果たしてシグルドの身に起きた出来事とは? 増々事態が進展するアルンの情勢。そして遂に……あの二人が邂逅する!




 今回はユイの出番が多めでしたね。何よりも彼女が精神世界で出会ったのは、二十人の平成仮面ライダー達! 各々の想いが託されて、新たなアイテムを生み出しました! アルヴドライバーは今後の戦いで大いに活躍する重要なアイテムですね。(本当はユイと出会うのはオーマジオウの予定でしたが……平成ライダーがわちゃわちゃ喋った方がしっくり来たので、こちらにしました。ちなみにオーマジオウ版はNG集で出す予定です)
 そして次に衝撃的だったのは、フィリアの正体だと思います。彼女はナイトローグに連れ去れた後、密かに世界樹で閉じ込められていました。アスナや神楽が出会ったフィリアは、擬態したワームだったのです。しかも作戦を指示したナイトローグの正体は、まさかのナメクジ研究員!? こちらは剣魂の一訓に出やナメクジと同じ個体です。
 では何故ナイトローグに変身したのか? ナメクジ研究員の原点での本名は柳井。ヤナイ。ヤナイトローグ。ナイトローグ。はい、アルトじゃないと!!
 と言うのは冗談で、本当に意識せずこの変身者にしました。ナメクジがコウモリの戦士になったらツッコミどころが多くて、面白いと思いまして……
 さらに激化する世界樹での戦い。そして次回! 遂にあの二人が出会います……ご期待ください。
 多分ですが、次回の投稿が今年最後です。やっぱり今年中に長篇は終わらなかったか……。









次回 剣魂 妖国動乱篇

来島「とにかく忍び込むっすよ!」

ユイ「お願いです、助けてください!」

シグルド「ならば、この力でねじ伏せてやろう!」

リーファ「アンタの事、絶対に許さないんだから!!」

新八「神楽ちゃん!!」

妖国動乱篇九 アルヴヘイムの奇跡

遂に邂逅する――

ユウキ「大丈夫!? アッスーさん!」

アスナ「ユ、ユウキ……?」
















例の件について

 つい最近のことですが、SAOでユナ/重村悠那役を演じていた神田沙也加さんが急死したと報道がありました。突然の出来事に正直信じられませんでした。特に歌手として活動していたイメージが大きかったので、もう二度と本人からの歌が聞けなくなると胸が痛いです……
 ご冥福をお祈りいたします。
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