さて今回はいよいよ、あの二人が出会います……。運命はどのように傾くのか、楽しみにしてください!
あらすじ
ユイを救うために世界樹へと侵入した仲間達。しかし侵入を手配したフィリアは、彼女に擬態したワームだった。本物のフィリアは人質となり、ダークライダー達の監視下に置かれている。彼女を救うべく、アスナや神楽らはダークライダー軍団に戦いを挑むのだった。
一方でユイは平成仮面ライダー達と邂逅。彼らから託された力を受け取り、手に入れたアイテムを銀時やキリトらに渡すことを誓っている。
そして場面は、シグルドと共に行動する銀時やキリトらに移っていく。
逆境を打開する力、ヘイセイジェネレーションメモリ。今を生きる少女は、その強大な力の意味を知り、絶望を希望に変える――
「ここが……この星の世界樹の中」
「なんだかツリーハウスみたいね」
アスナや神楽達が偽者のフィリアの正体を知る傍らで、ちょうど同じ頃に銀時やシノンらも世界樹へ忍び込んでいる。彼らが現在いるのは北口であり、アスナらの現在位置とは正反対に離れていた。辺りを警戒しつつも、ここはシグルドの案内を頼ることにしている。表向きには……。
「やはり人はいないな。みんな! 敵にバレないうちに、二階へ駆け寄るぞ」
「おぉ、分かったぞ」
「ワン!」
彼らもまたアスナらと同じく、階段を用いて最上階に向かう様子である。一旦は二階へ駆け寄り、そこから非常階段を使用するとのことだ。(世界樹ことツリーハウスの構造上、南口とは設置されている階段が異なっているらしい)
それはさておき、辺りを警戒しつつひとまずは二階へ駆け寄る一行。上がった先に見えたのは、二手に分かれていた通路だった。
「何? 道が二つだと?」
「一体どっちへ行けば良いのですか?」
早くも訪れた選択肢に困惑する桂やシリカ達。思わずシグルドに聞いてみると、彼はとある推測を大っぴらにしていた。
「どちらに行こうが、階段には辿り着くのだが……」
「どっちも間違いじゃないってこと?」
「いや、どちらが罠の可能性も高いな」
「そうか? 考え過ぎではないのか?」
「奴等を甘く見るな。どんな手段を使っても、おかしくない連中だからな」
「確かにそうかもしれないけど……」
シグルドなりの考えに、つい疑問を浮かべてしまうリズベット、桂、シリカら一行。万が一を考えて罠の可能性を示唆するが、どうも疚しさを勘ぐってしまう。慎重に彼の本心に気を付けていると、
「ここは俺と君達とで、二手に分かれるか。俺の経験だが、左の道が複雑かつ時間のかかる方だ。だとすると、スムーズな右の道があえてワナの可能性も高いな。俺は思い切って、左に向かう! 君達は右に進んでくれないか?」
早くもその疑惑は確信へと移り変わっていた。シグルドは二手に分かれることを提案するが、何故か自分一人だけ片方の道へ進む様子である。明らかに銀時らを誘導する気満々のようだ。こうなれば彼らも黙って従うわけもない。皆が仲間の目を見てアイコンタクトを取りつつ、シグルドに不意打ちを仕掛けていく。
「あぁ、分かっているよ」
「言われなくてもな」
「えっ? うゎぁぁ!?」
そっと彼に近づいたと思いきや、銀時と桂はシグルドを無理やり右の通路に追いやっていた。指示には応じない彼らの反骨的な行動に、シグルド自身も何が起きたのかさっぱり分かっていない。思わず情けない叫び声を上げてしまう。
「な、何をする!?」
つい怒りを覚えて、銀時らを りつけようとした時だった。
〈カチッ!〉
「ん? くわぁ!?」
なんとシグルドの頭上から、重厚感のある檻が勢いよく投下。どうやら右の通路に入った途端に、ひっ捕らえるマッドネバーの罠だったらしい。奇しくもその罠に、事情を知っていたシグルドが入るとは――何たる因果応報だろう。
「お、檻ですか!?」
「ワナが仕掛けられていたのは、こっちだったのね」
一方で檻の存在を知り、シリカやリズベットは思わず驚いている。同時にシグルドの言っていたことが、真っ赤な嘘なのもしみじみと理解していた。彼女らのみならず、場にいた全員が同じ気持ちである。
「えぇい! 貴様ら!! 何故俺のことを裏切ったのだ!?」
しかしシグルドは厚顔無恥が如く、開き直って銀時らの裏切りを糾弾していく。自身のやっていることを棚に上げるとは、どこまで自分勝手なのだろうか。
「この期に及んで白々しいぞ、シグルド」
「大体バレバレなのよ。あからさま過ぎて、笑っちゃったわよ」
「お前絶対ドッキリ下手なタイプだろ。自己中すぎて、友達もいねぇんじゃねぇのか?」」
キリト、シノン、銀時と彼を蔑みながら、その言い分を言い返していく。特に銀時の一言には、シグルドも相当心に来ているようだ。
「うるさい! 友達ならいるぞ、ペットがな!」
「いや、そういうことじゃねぇよ」
苦し紛れの言い訳には、銀時も反射的にツッコミを返している。それはさておき、銀時らはシグルドに種明かしを始めていく。
「つーかよ、俺達は全て知ってんだよ。お前がマッドネバーの一員だってな」
「何!? どこで知ったのだ!?」
「ピナや定春のパートナー達のおかげですよ!」
「ワフ!!」
「ナ!!」
[俺も忘れるな!]
ここでようやく彼は、自身がマッドネバーと話していた内容が全て筒抜けだったことを知る。どうやら本当にピナや定春らペット組の気配には気付かず、警戒心を皆無で話し込んでいたらしい。爪の甘さや浮き足だった気持ちが、存分に露呈したと言っても過言ではないだろう。
「くっ……まさか貴様らのペットにしてやられるとは!!」
檻の中から彼は悔しさを滲ませていた。
「さて、折角の機会だ。お前の目的を洗いざらい吐いてもらおうではないか」
「さぁ、言いやがれ!」
そして状況が一変した桂や銀時らは、この立場を利用してシグルドに情報を吐かせようとする。マッドネバーの邪魔さえなければ、もはやこちらに風が向くのだが――そう上手くいかなかった。
〈コネクト! ナウ!!〉
「フッ!」
「何!?」
突如聞き慣れた起動音と共に、シグルドは魔法陣を介して檻から抜け出してしまう。彼の窮地を救ったのは……マッドネバーのダークライダー達だった。
「ふぅ、救出完了!」
「まったく手間をかけさせやがって」
「あぁ、すまない」
顔を合わせるや否や、黙々と文句を発するリュウガとソーサラー。変身者はすでに変身済みのようだ。そんな彼らにシグルドも恐縮してしまい、つい平謝りしている。
一方銀時らは、唐突に出現したダークライダー達へ真っ先に敵意を向けていく。
「お前らは……!」
「リュウガにソーサラー!」
「やっと会えましたね……!」
「アタシ達の宿敵……!!」
「今度こそは……!」
皆が強敵の出現に鮮烈なる脅威を感じる中、特にシリカ、ピナ、リズベット、シノンの三人と一匹はただならぬ敵意を燃やしている。彼女らはダークライダーに敗北した経緯があり、リーファ同様その屈辱を果たしたいのだ。表情も真剣そうに研ぎ澄まされている。
そんな中でダークライダー達も、ようやくシリカらの存在に目を付けていた。
「おや? 誰かと思えば、軟弱な妖精共か」
「ってことは、アタシ達の敵じゃないわね。あぁ~あ。楽ちんで助かったわ」
二人はあえて煽るような振る舞いで、余裕綽々な態度を見せつけている。完全に彼女達のことをなめ切っているようだ。
そんな挑発に乗せられることも無く、リズベットやシノンらは強気に言い返していく。
「無駄口を叩けるのも今の内よ!」
「あの時の私達とは大違いなのよ!」
「そうです! 今度こそ、アナタ達のことを負かします!!」
「ナー!!」
そう豪語すると三人は、早くも装備した武器を所持している。戦闘態勢を整えており、今にも飛び掛かりそうな覇気であった。無論ピナも同じ想いである。
一方の銀時ら男性達は、ダークライダーよりもシグルドの裏切りを気にしていた。
「はいはい、とりあえず落ち着け。ところでよ――シグルド。裏切るのは分かっていたが、何でマッドネバーに加担したんだよ」
「アンタの話した通りなら、この星の騎士なんだろ? そんな簡単に仲間を裏切っていいのかよ?」
キリトはやや感情的になって問う。元の世界で会ったシグルドの所業と照らし合わせており、少しでも裏切りに意味があることを模索していたが――そんな僅かな希望は、いとも簡単に崩れ去ってしまう。
「騎士か……あんなのはただの金稼ぎに過ぎない。俺は常に強き者しか興味がないからな。順応に環境を生き抜くのが俺の流儀だ。間違った考えじゃないだろ」
ほくそ笑んだ表情を浮かべながら、自身の本音をありのままに吐露している。もはや彼には騎士としての誇りは無く、自分勝手さを嫌と言うほど態度に示していた。合理的な生き方だが、同時に薄情的とも言える。
「ぶりぶりざえも〇か、お前か」
「こっちの世界のアンタもそうなのか……」
銀時は蔑んだ目でツッコミを入れ、キリトも悔やんだ表情のまま失望してしまう。皆がシグルドの自分勝手さに言葉を失う中で、桂は正々堂々と言いたかったことをぶつけていく。
「確かに間違ってはいない。しかし、醜い生き方だな。信念も無ければ、根性もない。意気地なしと言った方が最適か。貴様の生き方を、俺は絶対に認めないぞ!」
しっかりと目を合わせながら、シグルドの目に余る部分を羅列している。もう完全に彼のことを見捨てており、説得する価値も無いと判断したようだ。無論桂のみならず、仲間達もまたシグルドとの敵対関係を明確化していく。
一方のシグルド本人はと言うと、図星を突かれたことで沸々と怒りが込みあがっている。
「うるさい、うるさい!! 俺はお前らと違うのだ!! 折角だ。捕獲失敗した腹いせを、お前らにぶつけてやろう!!」
存分に取り乱しながら、彼は懐に所持していたドライバーことゲネシスドライバーを腰に装着。同時にチェリーエナジーロックシードを手に取り、それを開錠していく。そう彼は、マッドネバーから譲り受けたアイテムで、ダークライダーに変身しようとしていた。
〈チェリーエナジー!!〉
「おっ。変身するのか」
「やっちゃいなよ! きっと病みつきになっちゃうよ!」
着々と変身の準備を進めるシグルドに対して、横にいたリュウガやソーサラーは調子よく変身を促していく。その言葉に乗っかって、彼は意気揚々と決意を新たにしていた。チェリーエナジーロックシードを、ゲネシスドライバーに装填していく。
〈ロックオン……〉
「ヤツもまさかライダーに変身するのか!?」
[みんな、止めるぞ!]
新たに訪れようとする脅威に、桂やエリザベスは一段と警戒心を高めている。仲間達も同じ想いであり、意地でも変身を食い止めようとしたが――時すでに遅かった。
「もう遅いわ!」
〈ソーダ!! チェリーエナジーアームズ!!〉
シグルドはゲネシスドライバーに手をかけて、レバーを強く引っ張る。すると頭上からサクランボ状の物体が頭部に装着。その内部にて仮面が形成されていき、サクランボ状の物体が左右に解放。上半身を守る装甲に変化している。
「変身した……?」
「何なの、あのサクランボは……?」
これまでとはまた違ったダークライダーの変身方法に、つい困惑するリズベットやシノンら。特に唐突に出現したサクランボ状の物体が、いまいちよく分かっていない。
「サクランボって……!」
「銀さん?」
ただ銀時だけは、サクランボ状の物体に笑いを堪えている。緊迫感漂う状況下での似つかわしくない物体に、可笑しさを感じていたようだ。キリトはその姿を見て、何とも言えない気持ちになっていたが。
それはさておき、とうとうダークライダーに変身してしまったシグルド。新たな姿を見せびらかすように、まずは銀時達へ自己紹介を交わしていく。
「見ろ。これが俺の新たな姿だ……! その名も仮面ライダーシグルドと呼べ!」
彼の変身したライダーは、仮面ライダーシグルド。仮面ライダー鎧武に登場した新世代ライダーの一人で、当作品に登場したライダー達を苦戦させた強敵である。奇しくも名前がまったく同じライダーに彼は変身していた。新たに手にした弓型の武器、ソニックアローを銀時らに向けて、自信良く自分をアピールしていた。
「仮面ライダーシグルド……」
「ワフ?」
「アイツ専用のダークライダーってことか……?」
名前が明かされると共に、さらなる警戒心を高めていくシリカ、定春、キリトら。未知なる脅威にまた気を引き締める中、銀時や桂は違った角度からシグルドの隙を突いている。
「おいおい、勝手に名付けたらダメだろ」
「えっ?」
予想外の一言に、シグルドは困惑した反応を示す。
「お前よ……自分がライダーになれて嬉しいのは分かるよ。でも流石に、自分の名前を勝手に付けるのはどうかしてると思うぜ。二次創作だとしても、やっちゃいけないことくらい分かっているだろ?」
「いやあの……この名前は公式のはずだが」
「とぼけるなぁ! あんなサクランボを身にまとって、シグルドと名が付くはずが無いだろう! 精々仮面ライダーチェリー、仮面ライダーツイン、仮面ライダーヤマガタの方が合っているだろう!!」
「いや、合っているかぁ!? 途中から連想ゲームになっているではないか!?」
どうやら二人は仮面ライダーシグルドを勝手に自称していると思い込み、メタネタを込みで彼を責め立てようとしていた。所謂いちゃもんでしかないのだが、シグルド自身には割と効いている。大っぴらなツッコミで二人に返していた。
「って、どこを指摘してんのよ! アンタらは!」
「そうですよ! 名前なんて別にどうだっていいじゃないですか!」
「そうかぁ?」
事細かな指摘には、リズベットやシリカも激しくツッコミを入れている。気にしているのはやはり二人だけであった。
名称による捉え方の違いから、緊張感が途切れた現在の状況。仲間内での言い合いが過熱する中、痺れを切らしたダークライダー達が彼らに声をかけてくる。
「おい、お前ら! 自分達の現状を分かってんのかぁ!?」
「そうよ。アタシ達を倒さない限り、最上階なんて行かせないんだから」
「さっきは取り乱したが……覚悟しろ、貴様ら」
三人共に戦闘態勢を整えており、こちらも戦う意思を示していた。シグルドを含め、戦いたくてうずうずしているのである。やはり障壁として彼らが立ちはだかっていた。
一方で戦いを仕掛けられた銀時側は、各々が異なった反応を見せている。
[結局こうなるか]
「ナ!」
「否が応でも戦うしかないか」
いち早く世界樹にある装置を破壊したい桂やエリザベスは、戦闘が長引くことをやたら気にしていた。援軍も加勢した場合、気合で突破することも難しくなるからである。
一方で女子陣は、この戦いをむしろ好機と捉えていた。
「いえ、これで十分ですよ!」
「折角リベンジする機会が巡って来たからね……チャンスは無駄にしないわよ!」
「今度こそは絶対に勝つわよ!」
因縁の相手と決着を付けたいらしく、一念発起が如く闘志を高めている。表情も凛としており、すでに覚悟は決まっていた.いわば感情論で乗り切ろうとしている。
「みんな! 無理はするなよ」
「「もちろん!」」
「分かっているわ!」
一応キリトは注意を加えるも、リベンジに燃える彼女らの想いは止まらない。そっと気持ちを読んで、三人の熱意を信じることにした。
「やれやれ……定春。お前も無茶するなよ」
「ワン!」
「分かってんなら、大丈夫だ。さて……ここからは気合入れていくぞ、てめぇら!!」
無論銀時もキリトと同じ想いである。ここからは自身の好きなように戦っていい。そう彼は捉えていた。定春やピナも唸り声を上げて、早くも自身の標的に狙いを付けている。
それぞれの想いが交差しあう、世界樹でのもう一つの戦い。情熱に溢れる銀時やキリトらと異なり、ダークライダー達はただマッドネバーの目的のために戦うのだ。
「面白い」
〈sword bent!〉
「かかってきなさい」
リュウガ、ソーサラー、シグルドと彼らが武器を差し向けたところで……とうとう戦いが始まってしまう。閉ざされた通路にて始まるマッドネバーとの戦い。果たして銀時側に勝機はあるのだろうか……?
世界樹の状況が刻一刻と変化する中で、南口付近の通路では早くも戦いが起こっている。そう、アスナや神楽、新八側とポセイドン、ソーサラー、ナイトローグ側だ。捕虜にされたフィリアを取り返すべく、八人の精鋭達がしのぎを削っている……。
「フッ、ハァ!」
「あらよっと!!」
槍を振るって襲い掛かるポセイドンに対して、志村新八とクラインは木刀や刀を用いて積極的な接近戦を持ちかけていく。侍を志す二人の男達。意外にも息のあったコンビネーションを披露していた。さらには、
「そこだ!」
「くっ!?」
好機と言わんばかりに近藤もこの戦いに乱入してきた。力強く刀を握り、ポセイドンを斬りかかる。
三人の愚直な攻撃の数々を受けて、ポセイドンも思わず押され気味となってしまう。
「ふざけるな! この程度で倒れる俺ではないわ!!」
自分の思い通りに戦いを展開できず、彼には鬱憤が溜まっている。それを晴らすかのように、槍を構え直してその先端から水をまとった衝撃波を解き放っていく。
「ふわぁぁ!!」
「かわせ、二人共!」
「フッ!」
「おっと!?」
いち早く攻撃の気配を察した近藤は、前方にいたクラインと新八へ回避を指示。二人は即座に、その衝撃波を受け流している。
「チッ! またか……」
渾身の攻撃もかわされてしまい、ポセイドンは余計に苛立ちを募らせていく。しかしこの状況下でも冷静さは失わず、ひとまず心を落ち着かせている。
一方の新八、近藤、クラインは、自分達に追い風が向いていることを自覚していた。
「やりぃ! あんがとよ、近藤さん!」
「アレくらい朝飯前だ! ヤツの攻撃も段々読めてきたな」
「そうですね。技さえ分かれば、もうこっちのものですよ!」
率直に感謝を伝えるクラインに、近藤は意気揚々と二人を鼓舞している。新八は厚かましく感じながらも、元気よく声を出して返していた。上手く戦いのペースを掴みながら、三人の侍達はこの有利な流れへ乗っかっている。
「歯ごたえはありそうな奴等だな。だが、俺に勝つことは出来ねぇがな!」
一方のポセイドンも調子を取り戻しつつ、近藤らへ自信満々に挑発していた。勝てる算段が付いたかららしい。
「軽口叩けるのも今の内だぞ!」
「俺達、純情ブラザーズを甘く見るなよ!」
「そうですよ――って、何を変なチーム名付けてんだ! 名付け親が一番純情に相応しくねぇよ! 欲まみれだろ!!」
対する近藤は仲間内の指揮を高めて、勝手にチーム名を名付けている。あまりの風変わりな名前に、新八は反射的にツッコミを入れていたが。
しぶとくも戦い続ける新八、近藤、クラインと相対して、ポセイドンは勢いを失わずに力づくで彼らをねじ伏せようとする。まだまだ男同士の戦いは続くようだ……
一方のリーファ、沖田、土方は、因縁の相手とも言えるダークキバと交戦していた。
「待て、コノヤロー!」
「逃がすかよ!!」
「フフ……良い気味ね!」
自身を自在に浮遊させながら、ダークキバは彼らからの攻撃を軽々と回避していく。中々思い通りに進まない戦いに、土方らは四苦八苦してしまう。ダークキバも調子に乗り、このまま自分のペースに相手を誘おうとしたが、
「そこだ!」
「こんにゃろ!」
「何!?」
油断が生まれているうちに沖田と土方が手痛い一撃を与えている。背後から刀で斬りかかり、無理矢理にでも地上へ引きずりおろしていく。相手がちょうど体をよろけたところで、二人は近くにいたリーファを扇動する。
「今だ! 行け、ブラコン!!」
「この隙に攻めやがれ!」
「言われなくても、分かっているわよ!」
好機と括っており彼女は、剣を握りしめてダークキバに襲い掛かっていく。その表情は屈辱を果たすべく、より真剣そうに変化していた。しっかりと標的を定めていき、そのまま剣を勢いよく振るう。
「はぁぁ!!」
「何……またか!」
間一髪のところでリーファの気配にダークキバは気付き、早くも防御姿勢を構えていく。両腕を目の前に上げて、手の甲からリーファの猛攻を防いでいる。
「フッ!」
「セッ……!」
「ヤァ!!」
何度も繰り返しては防がれてしまう攻撃。ダークキバは反射神経をいかんなく発揮しており、軽々しくその猛攻を避けていた。
「へぇー。この前よりはやるじゃないの。少しは成長しているのかしら?」
「当然よ! 全ては……アンタを倒すためなんだから!」
肝心の復讐相手から褒められるほど、リーファの実力はメキメキと上達している。やはり月詠や九兵衛との特訓が功を奏したのだろう。本人も教えを武器にしつつ、毅然とした態度で立ち向かっている。
しかし幾ら攻撃を浴びようとも、ダークキバには状況を有利に変える秘策があった。そう、相手の行動を封じてしまう紋章である。
「あらあら、残念ね。そんな見え透いた希望は、永遠に来ないことを教えてあげるわ!!」
余裕綽々に彼女は任意で紋章を召喚。リーファに差し向け、以前と同じく捕えようとしたが……もちろんリーファにも対策があった。
「どうかしらね!!」
「はぁ? 髪飾り!?」
そう豪語すると共に、彼女は自身の髪型を留めていた葉っぱを模した髪飾りを、紋章に向かって投げ捨てていく。するとどうだろうか。紋章は髪飾りのみに作用して、いとも簡単に捕縛対象を誤認している。いわばバクのようなやり方で、ダークキバの紋章をリーファは意地でも防ごうとしていた。
一方のダークキバは、リーファの思いもよらぬ行動に愕然としてしまう。
「あの小娘……何やってんのよ! 折角のチャンスを!!」
怒号を上げながら、そのまま突撃してくるリーファを相手取る。ここからは互いの威信を懸けた、接近戦が展開されていく。
「セイ、ハァ!」
「くっ! そう易々とやられないわよ!!」
相手の動きを見切りながら、回避や攻撃を上手く使い分けるリーファ。その猛攻ぶりに増々鬱陶しさを感じるダークキバ。場の雰囲気は二人の独壇場と化している。
そんな彼女の勇姿を見て、様子を見ていた沖田や土方もようやく戦いへ加わろうとした。
「土方さん。俺達も行くでさぁ」
「分かっているさ。ただアイツの様子を見ていただけだ」
「あのままブラコン女に見せ場を譲るのも、なんだか納得がいかないんでねぇ」
共にダークキバの放つ紋章を警戒しつつ、お構いなしに女子同士の戦いへと割り込んでいく。
そしてナイトローグに対しては、アスナと神楽の二人が対峙していた。
「ハァァァ!!」
「ホワチャー!!」
「フッ、ハァ!」
「おっと!?」
細剣で的確に攻めるアスナと、徒手空拳でがむしゃらに攻撃を続ける神楽。二人の特性を活かして、戦いを有利に進めようとしたが――やはりそう上手くはいかない。
「チッ……こいつ! 見た目に反して強いアルよ!」
「変身しているからかしらね……油断は禁物よ!」
「もちろんネ!」
彼女達はナイトローグの未知なる力に警戒しており、より確実的な攻撃を用いてこの難敵を打破しようとしていた。何よりも相手は、以前に不快感を与えたナメクジの一体。意外にもアスナにとっては因縁深い相手である。
一方でナイトローグは一定の余裕を見せつつも、隠し持っていた技の数々で二人を迎え撃つ。
「甘いな……! 俺を見くびるなよ」
〈アイススチーム!〉
ナイトローグは武器として使用していた、スチームブレードのバブルを回転させて、秘められた属性の力を発動させる。
「くらえ!」
「ホワチャー!」
この攻撃に神楽が、力づくで受け止めようとした時だった。
「えっ!? 何こ……うわぁ!?」
「神楽ちゃん!?」
アイススチームの効果で彼女の拳がバキバキに凍り付き、氷の塊となったところで瞬く間に爆発。凍り付いた腕は元に戻ったものの、神楽は手痛いダメージを受けてしまう。
アスナも神楽の様子に心配して、駆け寄ろうとした時だった。
「お前にはこれをお見舞いしよう」
〈エレキスチーム!〉
またもバルブを回転していき、今度は電撃をまとったエレキスチームを発動。
「ふわぁ!」
「な……くっ! キャッ!?」
「アッスー!!」
ためらいなく彼女へ電撃技をぶつけると、アスナは直線状に吹き飛ばされてしまう。こちらもダメージを受けたものの、めげずに立ち上がろうとした時である。
「こんなところで……えっ? 体が痺れてる……?」
なんと体に力が上手く入らなかった。先ほど受けたエレキスチームの効果によって、一種の麻痺状態に陥ってしまったのである。苦悶の表情を浮かべながら、如何にか立ち上がろうとするも……やはり今の彼女には難しかった。
幾度も立ち上がろうとするアスナに対して、ナイトローグはスチームブレードを構えながら、彼女へ質の悪い脅しを仕掛けていく。
「これで貴様はしばらく動けない。あの女のようにな」
「フィリアちゃんにも、同じことをしたの!?」
「そうだ。これで捕虜は二人となるな。もし俺達に捕まりたくなければ、残ったガイアメモリを全て渡せ。さすればあの女も解放してやろう」
「くっ……誰が渡すものですか!」
そう。ナイトローグの狙いは、やはりガイアメモリにあった。欠けていたガイアメモリを全て集め、マッドネバーの最終的な目的に使用するのである。この目論見には、絶対に加担してはならない。
「アッスーから離れろ! この外道!!」
卑怯なやり方に激高した神楽は、勢いよくナイトローグへ襲い掛かろうとするも……
「やれ!」
「アイアイサー!!」
「うぅ!? うわぁぁ!?」
「神楽ちゃん!?」
間一髪でその動きを封じられてしまう。ナイトローグは仲間のナメクジに合図をして、触手を巧みに振るい神楽を捕えてしまった。数か月前の復讐と言わんばかりに、神楽を力一杯に締め付けていく。
「ヒヒヒ! あの時はよくも塩を振りやがったな! 十倍にして、この悔しさを返してくれようぞ!!」
「や、止めるネ! とっとと離せアル!!」
自慢の怪力を奮って強引に脱しようとするも、ヌメヌメした体が彼女の調子を狂わせる。こちらも苦しみの表情を浮かべたまま、ただじっと締め付けられる痛みを我慢するしかなかった。
「神楽ちゃん! 待ってて、今助けに……!」
「無駄だ。痺れた体では立ち上がることも出来ない。お前らは俺達に負けるのだよ」
アスナも自身の力を振り絞りしながら、神楽を助け出そうと試みる。しかし体を動かす度に痺れが襲い掛かり、もう動かすことも難しくなっている。動きを封じた二人の姿を見て、ナイトローグは実質的な勝利を確信していた。
「神楽ちゃん! アスナさん!」
「行かせねぇぞ! まだまだ俺達を楽しませろよ!」
「私らがたくさん遊んであげるからさぁ!」
「うっ! 助けに行けないなんて……」
「チッ! どうすれば……」
新八やリーファ、土方ら仲間達も二人を助けたかったが、ポセイドンやダークキバの相手をするのに手一杯となってしまう。人数差ではアスナ達に軍配が上がるが、やはりダークライダー達の実力から複数人で相手にしないと張り合えない。
言うならば、今彼らは危機的な状況に直面しているのだ。フィリアも依然として気絶しており、起きる気配もない。このままマッドネバーの思い通りになってしまうのか……。
だがしかし、まだ希望は残されている。誰もその気配を察していないが、物陰に隠れていたユウキは密かにある計算を行っていた。
「見つけた。あそこに敵を放り投げれば、しばらく時間は稼げるはずだ!」
彼女が目を付けていたのは、通路に設置された隠し穴である。普段は物資を運ぶのに使用しており、これを活用すればダークライダーをこの場から退却出来るのかもしれない。だがその作戦を遂行するには、ウサギから元の姿に戻らなくてはいけないのだ。アスナの目の前で――しかし、ユウキはもうすでに覚悟を決めている。
「もう時間は無い……例えどんな反応をされようとも、僕は僕なんだ! アッスーさんは……僕が助ける!」
誰であろうと全力で助けて、絶対に守り抜く。騎士の誇りを心に灯していた。そう誓った彼女の表情は、凛々しく変わっている。迷うことなんてもうない。騎士として……そして一人の仲間として……本当の姿で助けると決めていた。
「今、行くよ……!」
背中にはガイアメモリを入れた手ぬぐい。口には自身の刀剣を咥えて、全速力でアスナの元まで駆け寄っていた。
「さて、今度は特殊なガスで苦しませてやろうか」
〈デビルスチーム!!〉
一方のナイトローグは、アスナの体が痺れている隙にとどめを刺そうとする。バブルを最大限に回し、暗闇に染まった煙をまとうデビルスチームで、この戦いに決着を付けようとしていた。
「うぅ……動いて! 私の体!」
アスナ自身も最後まで諦めずに立ち上がろうとするも、未だに痺れが効いている。もはや絶体絶命の状況。必死に抵抗も虚しくここで折れてしまうのか。その表情は数多の苦しみに苛まれていた。
彼らの要求通りに、ガイアメモリを引き渡す苦渋の決断を下そうとした――そんな時である。
「ハァ!」
「えっ……嘘? あのウサギ!?」
なんと彼女の目の前には、階段近くに避難させていたウサギが、自らを省みずに刀剣でその攻撃に真っ向から挑む。刀剣マクアフィテルとスチームブレード。闇の力に秀でた武器が、互いに火花を散らしながらこう着状態を作り出している。
「ほぉ。俺に立ち向かうとはいい度胸だ。このシステムの餌食となるがいい!!」
思わぬ邪魔が入ってもなお、ナイトローグの態度は変わらない。何よりも相手はただの小動物。力でねじ伏せればよいと、この時の彼は頭の片隅に置いていた。
「危ないわよ! 早く逃げなさい!」
「……逃げないよ。僕は決めたんだ。君も守るって!!」
その一方でアスナは、無茶をしているウサギことユウキに早くも退避命令を出している。彼女の身を案じての指示だったが、当然ユウキはそれに応じていない。意地でもアスナのことを守ろうと躍起になっている。
「ハァァァ!!」
体格差なんてもはや関係ない。どんなに不利な状況に立たされても、諦めずに突き進むしかない。そんなユウキの正しい心としぶとさが、遂に事態を大きく進展させていた。
〈ヒューン!〉
何の前触れもなく、彼女の体からはラビットメモリが抜け出している。数時間前にあったように、新八らを助けた時と同じ状況であった。
「まだだ! まだいける!!」
まるでリミッターが解除されたかのように、ユウキには今まで抑え込まれていた力が解放されていく。そしてとうとう……ウサギの姿から妖精の姿に戻り始めていく。
「えっ? うわぁ!? 何これ……?」
唐突に訪れたウサギの変化に、目の前にいたアスナはただただ困惑するしかない。無論彼女のみならず、場にいた敵味方全員がこの展開に戸惑っていたが。
「な、なんだ!?」
「アレはウサギか?」
「ま、まさか……」
ここで勘の冴えている土方や沖田らは、ウサギが本当の姿に戻ることを確信していた。皆が未知なる展開に息を殺す中、ユウキは遂に元の姿に戻っていた。
「えっ……」
そして何よりも、この展開に驚嘆しているのはアスナであろう。目の前にはかつての親友……いや、生き別れた大切な人がいるからだ。思い起こされるのは懐かしい記憶。元の世界で出会った彼女との思い出が、まるで走馬灯のように蘇っている。この時のアスナは本当に、かつてのユウキが助けに来てくれたと僅かな希望に揺られていたのだ。
開いた口が中々塞がらないアスナに対して、ユウキは構わずにこのままナイトローグを相手にしていく。
「はぁぁぁ!!」
「何!? 貴様は確か……あの騎士団の!?」
「そうだ! 僕はスリーピングナイツのリーダー、ユウキだぁぁぁ!!」
予想外の援軍にナイトローグは調子が狂い、行動もつい鈍くなっている。一方のユウキは、気合を込めて自己紹介を交わしつつ、ナイトローグに連続して斬りかかっていた。
思わぬ助っ人の登場により、仲間内でも様々な反応が声に出ている。
「ユ、ユウキ……?」
「スリーピングナイツって確か、この星の有名な騎士集団だったよな」
「まさかウサギの正体が、そのリーダーとは驚きだぜ」
「あの剣の動き、並大抵の人間じゃ出来ねぇですよ」
新八や真選組らは、ユウキ及びスリーピングナイツがウサギの正体と知って、大変驚いていた。特に沖田はユウキの一瞬の立ち回りから、彼女がかなりの強者だと見抜いている。
「まごうことなき、ユウキじゃねぇか……」
「やっぱりね……」
一方のクラインとリーファは、不安視していたことが見事に命中していた。気になるのはアスナの反応であり、やや複雑な想いを感じている。
「ユウキって……スリーピングナイツって」
さらに神楽も唐突に登場したユウキに、アスナから聞いたユウキの件を照らし合わせていく。名称も一致しているが、ユウキの顛末も知っているためか、彼女がまったくの別人である事を早くも推測している。
(本当にあのユウキなの……?)
それはアスナも同じであった。内心では冷静さを装っているが、それでも今は感情的になっている。タイミングが良いのか痺れもようやく消えており、ゆっくりと立ち上がってユウキの様子を都度確認していた。
「こりゃ面白い展開ね!」
「まさか取り逃した魚にここで出会えるとはな。今度こそ、仕留めてやろう!」
一方でダークキバやポセイドンらダークライダー達は、ユウキの出現をむしろ好機として捉えている。先ほどまで戦っていた相手を放棄してまで、共にユウキへ襲い掛かろうとしていた。その根底にあるのは、逃がした魚を意地でも仕留めること。そしてリーファやクライン程度ならば、いつでも倒せると高を括っているに違いないだろう。
「邪魔だよ! アンタ達は、とっととこの場から去って!!
だがしかし、今のユウキにとっては彼らをお邪魔虫にしか見ていない。密かに立てた作戦通りに、ダークライダー達を隠し穴へ吹っ飛ばそうとしていた。
「ハァ!!」
「うゎぁ!?」
〈カチッ!〉
「えっ!? なこ!?」
全身全霊で込めた刀剣の一刀で、カウンターをするが如く二人を斬撃で後方まで吹き飛ばしていた。するとちょうど隠し通路のスイッチが起動。木々で出来た壁が一回転して、彼らをより上のフロアへ誘導させることが出来た。同じ場所へ戻ることも出来ないため、ダークライダー達の脅威は去ったとも言えよう。
「ダークライダーが!」
「どっかに送りやがったのか?」
彼女の機転を効かした行動には、仲間達も率直に驚くしかない。だが一方でナイトローグは、人手が減ってもなお自身の力を用いて、逆転の一手を狙っていく。
「くっ……だが、俺にはまだこれがある!」
〈エレキスチーム!〉
再びバルブを回して、電流をまとったエレキスチームを発動。ユウキも先ほどのアスナと同様に、麻痺状態にしようとしたが――
「効かないよ、僕にはね!!」
「何!?」
当然この手段を目の当たりにしていたユウキには効かない。彼女はすっとナイトローグの前方に現れると、
「ハァァァ!!」
「うわぁぁ!?」
今度は連続した斬撃で相手に次々とダメージを与えていく。相手の隙を作らせない彼女なりの素早さを活かした攻撃に、ナイトローグはただただ受け止めるしかない。さらにはその際に、彼の持っていたスチームブレードが手元を離れて、ちょうどユウキの手に渡っている。
「これでどうだぁ!」
「うぉぉ!?」
まるでお返しと言わんばかりに、ユウキは電流をまとったスチームブレードでナイトローグを一刀。アスナの仕返しが如く、今度は彼を麻痺状態にさせていた。
「動けぬ……!」
「動けないならこっちのもの! アンタはこっち!」
「ウグ!?」
その間にユウキは、床に仕掛けられていたスイッチを起動。ナイトローグの周りのみ床がぱっくりと割れており、彼は遥か地下の階に誘導させた。
ユウキにしてやられたマッドネバー達。残るは変身していないナメクジのみである。
「えぇ、俺だけ!? こうなったら、奥の手だ! こいつらがどうなっても――」
苦し紛れに彼は、神楽とフィリアを人質にして難局を乗り切ろうとするが、
「ハァ!」
「アレ? ギャァァァ!? 裂かれてる!?」
ユウキがその僅かな希望すらも粉砕していた。いつの間にか触手は刀剣によって斬られており、フィリアも神楽もユウキが無事に保護している。つまりはもう彼らに、立ち向かう術などほぼ無いのだ。
「人質はみんな救出したよ。さぁ、アンタも戦う?」
「ヒィ、ご勘弁を! 助けて~!!」
ユウキは余裕に満ちた表情でナメクジへ聞くも、当然彼は弱音を吐きながらその場を跡にしていた。これにて一時的ではあるが、マッドネバーの脅威は去ったに等しいだろう。
「ふぅ……如何にか窮地を脱することが出来たね。大丈夫だった、みんな?」
全員を守れたことに一安心したユウキは、仲間達に改めて無事を確認している。だがしかし、場の雰囲気は妙な静けさを漂わせていた。
「……やっぱり、こんな反応になるよね。致し方ないけど」
ユウキ(SAO)の件もそうだが、何よりもウサギが突然見ず知らずの妖精に変われば、驚かない方が無理だろう。
そして何よりも、この状況下で一番に話しかけられたのは……もちろんアスナである。
「ユウキ……」
「あっ、アッスーさん……」
彼女はしんみりとした表情のまま、ユウキに近づきながら話しかけていく。一方のユウキもアスナの気持ちを理解しており、何を言われても受け止める所存である。
「アッスー!」
「ちょっと待て、神楽ちゃん」
「何するネ、クラ!」
「話したい気持ちも分かるが、後は二人に任せておこうぜ。そんな気がするんだよ」
「でも……」
その気を察した神楽がアスナへ近づこうとするも、クラインに呼び止められてしまう。彼もアスナの気持ちは理解しており、だからこそここは当人で解決すべきと考えている。
皆がアスナとユウキの動向を見守る中、先に前者が感極まって動き出していた。
「ユウキ!!」
「ごめん! アッスーさん!!」
「えっ……?」
すると我慢が出来ずに、ユウキも大きく声を上げていく。どんな反応をされても、彼女は洗いざらい正直なことを話すことにしていた。
「やっぱり僕と姿が似ているんだね。君の知っているユウキと」
「そ、それって……」
「全部聞いちゃったんだよ、あの時。アッスーさんの知っているユウキがとっても大切な人で、かけがえのない親友だってことも」
やや答えづらそうに顔をしかめるも、しっかりとアスナの目を見て、柔軟に会話を進めていく。一方のアスナは密かに抱いていた予感が当たり、より一層言葉を詰まらせてしまう。
「はっきりと言うよ……僕はこの世界のユウキなんだ! 本当は僕自身も驚いているけれどね。まさか別の世界にも、僕とほぼそっくりの人がいたなんてね」
ユウキは次々にアスナへ言いたかったことをぶつけていく。別の世界にも自分とよく似たユウキがいること。
「だから、正直に言うと元に戻るのが怖かったんだよ。アッスーさんの前に姿を見せたら、思わぬ形で君の心を傷つけちゃうんじゃないかって」
そして話を断片的に理解した上で、アスナの前に姿を見せるのをためらうことも。彼女のユウキ(SAO)に対する気持ちを知った時から、この世界のユウキは複雑な感情に囚われていた。それでもしっかりと前を向き、真正面から気持ちを受け止める。正々堂々とアスナに接すると決めていたのだ。
「それでもねぇ、君とは――!」
と続けて言おうとしたその時である。
「えっ!? アッスーさん……?」
アスナは気持ちの赴くままに、ユウキを突如抱きしめてきたのだ。唐突な行動にユウキが困惑していると、アスナは泣きじゃくりながら自分が感じたままの想いを吐露していく。
「ごめんなさい……アナタは何も関係ないのに、気を遣わせちゃって。私もどう反応したらいいのか分からないのよ! 折角また別の世界で出会えたのに……別人なのは薄々気付いていた。でもなのに! 心が追い付かないの……!」
その言葉にまとまりは無く、嬉しさと寂しさが相まった、様々な気持ちが集約されている。アスナ自身もユウキを見た時から、以前の彼女とは別人だと自覚していた。それなのに性格や戦い方も似ており、本人もどんな顔で接すれば良いのか分からなくなったのである。それに追い打ちをかけるが如く、ユウキに気を遣わせてしまったことを申し訳なく感じていた。本人も涙が止まることは無く、本当の自分をさらけ出したまま、ユウキに泣きついている。
そんな感傷に浸るアスナの姿を目にして、ユウキは彼女をそっと優しく慰めていく。
「分かるよ、アッスーさんの気持ち。大切な人とまた出会えたらとっても嬉しいよね。今はただ、思う存分泣いてすっきりしよう。大丈夫。アッスーさんはきっと強いはずだから……」
自分に出来ることは限られている。それでも今はアスナの気持ちを十分に理解して、優しく受け止めることが最適だとユウキは考えていた。その表情は優しく、そしてアスナに安心感を与えている。複雑に絡み合った運命は、たった今一つの道に繋がった。
そんな二人のやり取りを見ていた神楽ら仲間達も、彼女達の想いをじっくりと受け止めている。
「アッスーの気持ち、十分に伝わったアルよ」
「ウサギ……いやユウキさんも悩んでいたんですね」
「アスナさんだけじゃなく、この世界のユウキさんも優しいから、あんなにも人の気持ちに寄り添えるのね……」
神楽、新八、リーファと二人の優しさを汲み取っていた。共に真面目で友達想いだからこそ、素直に互いの言葉を受け止められると感じている。
そしてアスナだけではなく、クラインも感動して涙を流していた。
「あっ、ごめん。俺泣いちまったわ……」
「もらい泣きアルか」
「クラインさんにしては珍しいですね」
「いや、俺よりもずっと泣いているぞ……近藤さんが」
「えっ? 近藤さんが!?」
さらには彼に続いて、近藤まで泣いているのだが……
「トシィィィ! 総悟おぉぉ!! 俺は今猛烈に感動しているぞ!!」
その様は周りが引くほど号泣している。
「いや、涙流しすぎだろ」
「一応敵のアジトにいるので、少々声のボリューム下げてもらっていいですかい?」
ちょうど近くにいた土方や沖田が落ち着かせようとするも、話はあらぬ方向に向いてしまう。
「そんなこと言うなよ! 見ろよ、この鼻水の束! 俺が号泣している証だろ!」
「いや、見せてくんなよ!! 汚ねぇだろ!」
「そんなこと言うなよ! 台無しになる前に見ろって!」
「アンタの発言が全てを台無しにしてやすよ」
「って、お前は何をやってんだ!! 良いからその物体を捨てろ!」
「うわぁ!? 近寄らないでよ!! ばっちぃわね!!」
近藤は突然自分の鼻から出てきた鼻水の塊を、土方や沖田に見せびらかしてきた。言語道断で不衛生な物体であり、二人は厚真かしく事を受け流している。新八やリーファも近藤の突拍子もない行動には、ただただ気を引かせていた。
そんな騒動が起きてもなお、ユウキとアスナは気にせずに感傷の気持ちに浸る。一方でずっと気絶していたフィリアはと言うと、
「う、うーん……えっ? みんな? って、何この状況?」
ようやく目を覚ましたが状況をあまり理解していない。見えるのはアスナがユウキを抱きしめている光景。その光景を見て、クラインがクスっと涙を流す光景。そして近藤の出した鼻水を巡って、波乱が起きている真選組や新八、神楽、リーファの光景である。一つだけ言えることは、話を聞かない限りは真実へ辿り着けないことだ。
「一体何が起きているの……?」
気絶していた間は何も覚えていないので、彼女はただ困惑するしかない。やんわりと苦笑いを浮かべたその時である。
「あっ、危ねぇ!」
「えっ? ……ギァァァァ!!」
近藤は気を緩めてしまい、鼻水の束を手放してしまう。その物体は左方に曲がり、ちょうどフィリアの元へぶつかろうとしていた。果たして彼女は無事なのだろうか……
頼もしい仲間も加わり、彼らはマッドネバーの野望を食い止めるべく再び動き出す。
とうとう始まった世界樹内の戦い。銀時やアスナらが、ダークライダーや疑似ライダーと戦いを繰り広げる中、世界樹入り口の東口と西口でもある変化が生じていた。
「隙あり!」
「うっ!」
「しばらく大人しくしてもらうぞ」
見張りをする怪人達の隙を密かに伺い、みねうちや腹パンで彼らの気を失わせたのは、サクヤ、アリシャ、ユージーンの領主達。場所は世界樹の東の入り口。彼らはそこへ侵入するために、やや手荒な手段を実行していた。
事が上手く進んだことに一安心する中、場には鬼兵隊の面々も駆け寄ってくる。
「騒ぎを起こさないためとはいえ、本当に倒さなくて良いんっすか?」
早々に来島が疑問を投げると、ユージーンとサクヤが返答していく。
「心配は無用だ。こんな雑魚に付き合っているほど、俺達は暇では無いのだ」
「本丸は世界樹内にいるはず。とっとと倒して、囚われた人々も解放しなくてはな」
下手な騒ぎは起こさずに、なるべく早く敵の本丸を叩く。一切の無駄を省くことが、領主達の総意でもあった。
彼らなりの考え方に、鬼兵隊はバラバラな反応を示していく。
「これが領主の余裕か。まったく面白い奴等でござる」
「そうっすか? 何か釈然としないっすよ、こっちは」
「まぁ、また子さんは派手にやるのが好きですからね。戦いも晋助殿のことも」
「おい、てめぇ。今何って言ったすか……?」
「いえ、何でも」
万斉は感心していたが、来島はじれったいやり方にやや不満を持っている。そこに武市が余計な言葉を発して、彼女の怒りを買うことになったが。そんな変わらぬ応酬を目にして、万斉並びに領主たちすらも呆れかえっている。
「ほら、行くよ。来島さんも」
「すぐカッとなって自滅だけはするなよ」
「わかっているっすよ!!」
仕舞いにはアリシャやサクヤからも注意を加えられるほどだった。
気を引き締めつつ領主達と鬼兵隊一行は、マッドネバー側に気付かれることなく、上手く世界樹へ忍び込んでいた。
一方で西口はと言うと、
「パトロール終わりました! 即時帰還します!」
「ご苦労。入っていいいぞ」
こちらは妙やジュンらが世界樹へ侵入しようとしている。彼らは道端に転がっていた怪人の残骸をかき集めて、ライオトルーパーやカッシーンといった戦闘員に変装。門番を務めていた怪人達の目を欺く作戦だった。
一か八かの賭けではあったが、その結果は無事に成功。戦闘員を装ったまま、十一人はいよいよ世界樹へ入り込んでいく。
「なぁ、本当に気付かれてないのか?」
「反応を見るにそうでしょうね」
テッチからの問いにたまが返答する。彼女は門番の怪人達の挙動から、大方騙し通せていることを察していた。即席で思いついた作戦は、意外にも上手く作用している。
「とりあえず、最初の山場は越えたわね」
「そうじゃな。だが本当に、この世界樹とやらに侵入してよいのか?」
そっと落ち着きを見せるあやめに対して、月詠はふと思った疑問をスリーピングナイツらに聞いていた。その問いにノリやタルケンが答えていく。
「平気よ。そもそもここは元々、姫様達の居場所なんだから」
「敵が乗っ取っていることは確かですし、現状を見る上でも侵入は大切ですよ」
「そうか。確かにこの場所なら、銀時やキリト君が来ていても可笑しくはないな……」
彼らは世界樹に敵の本丸や重要な情報が紛れていると考え、この侵入作戦をより重要視している。彼らの考え方は、同時期に侵入した領主達と近しいものだった。九兵衛らも徐々にその考えに納得していく。
「とにかく、さっと進もうぜ。もしかしたら、シウネーやユウキもここにいるかもしれないからな」
「お互いに仲間と合流出来たらいいわね」
様々な考えをひっくるめつつ、ジュンや妙は後ろにいた仲間達に鼓舞している。ユウキや銀時と言った、彼らが再会を待ちわびている仲間達も、世界樹へ密かに潜り込んでいると願っていた。一筋の希望に想いを馳せつつ、一行は自分達の出来ることに全力を注いでいく。
その一方で、エギルはある事を不安に思っていた。
「ところでさっきから思っていたんだが……長谷川さんはどうやって戦うんだ?」
「どうって……この槍だな」
「いや、それは戦闘員が持っていたものでは」
そう。長谷川の実力である。今後ともに戦いは避けては通れぬ道だが、正直長谷川に何が出来るのかはさっぱり分かっていない。固有の武器も所持しておらず、増々彼の行く末を不安視してしまった。妙らがそれを指摘しないのもどこか気がかりである。
こうして多くの期待と不安を背負いながら、こちらも世界樹へ侵入した妙ら一行。その先に待つものとは果たして――
(ちなみに東口と西口も構造が異なっているため、領主側と妙側はまったく異なる通路や階段を通ることになる)
そして高杉、ユイら一行は、
「おい、いたぞ!」
「さっさと来い!」
とうとうマッドネバーの戦闘員達に発見されていた。またも撒くためにも、今はただ闇雲に通路を駆け抜けるのみである。
「遂に見つかってしまいましたか……」
「分かっていたことだ。とっとと撒くぞ」
「二手に分かれたら、良いのではないでしょうか?」
「そうだな。おっ、ちょうど分かれ道だ」
四人は敵を撒くために、二手に分かれることで考えを一致。するとちょうどよく、目の前には二つの通路が用意されていた。
「私はこっちです!」
「私もです!」
「なら俺は……」
事前に打ち合わせをしていなかったので、皆が直感で左右の道に進んでいる。シウネーとユイは左側、高杉とフレイアは右側だった。
「アナタはあの子を守りなさい。私は大丈夫だから」
「姫様……分かりました!」
分かれる最中にフレイアは、シウネーにユイの護衛を命じている。彼女の行方を心配するシウネーだったが……すんなりと言付けを飲み込んでいた。こうしてまたも、彼女達は離れ離れになってしまう。
「結局お前がついてくるのか」
「当たり前です。危なっかしくて、見てられないですからね」
「それは信用してんのかよ」
「信用していないから、ついていくのですよ」
高杉は憎まれ口を発するも、フレイアは意地でも彼についていこうとする。彼を監視するために、その道を突き進む様子だ。
一方でユイとフレイアが左側の通路を進んでいくと、一つの隠し穴を見つけている。
「こちらですよ、ユイさん!」
「ここは?」
「隠し穴です。ここを通れば、下の階にすんなりと行けるはずです!」
どうやらシウネー曰く、一部の人しか知らない隠れた通路だという。敵の追手から身を守るべく、使用を提案していく。
「さぁ、こっちです!」
「は、はい!」
ユイは平成仮面ライダーから託されたアイテムを抱きかかえながら、その穴へと入り込む。シウネーと共に。その穴は滑り台状となっており、空気の噴射で二階まで下りられるとのことだ。一瞬にして二人は二階へ移動している。
「ふぅ……大丈夫でしたか?」
「大丈夫ですよ。って、アレは……!」
「アレ?」
到着するや否やユイは、目の前にいた人物に驚きを感じていた。そう、この階では銀時やキリトらがダークライダー達と対峙していた階なのである。
「パパ!! 銀時さん!!」
またも運命が交差していく――
遂に出会いました……銀魂世界のユウキとアスナが! 凄い感慨深いです。実は一訓の前半でユウキの話を設けていたので、いつか出したいと思っていて、ようやくその願いが叶いました。あくまでも平行世界で生きるユウキなんですけど、それでもあっさりと再会させるのではなく、じっくり時間をかけることが良いと思い、ここまで時間がかかってしまいました。一応断言はしないのですが、SAO世界のユウキの生まれ変わりという可能性も仮説としては良いかもしれませんね。こういう展開が出来るののも、二次創作の強みだと思っています! 近藤の鼻水のせいで途中から空気が一変しましたが(笑)
さらに注目すべき点は、シグルドが変身した仮面ライダーシグルド……まんまやないかい! これも既定路線でした。
とうとう色んなキャラ達が、世界樹へと集結。オベイロンの野望を食い止めるために、今後さらに奮闘していきます!
と言うわけで、皆様、よいお年をお迎えください! では!
次回予告
とうとう物語はクライマックスへ――
アスナ「行くわよ、ユッキー!」
ユウキ「もちろん! アッスー!」
新たな仲間と共に最悪の敵を倒せ
来島「ここは自分達が時間稼ぎするっす!」
サクヤ「さぁ、行くんだ!」
現れるマッドネバーの怪人達
新八「パ、パズル!?」
神楽「ここはお前らが任せろネ!」
沖田「いや、投げやりかよ」
そして姿を現す――かつての友
高杉「久しぶりだな。いつの間にかこんなガキをつれるようになったとは……」
銀時「高杉!?」
逆境をはねのけるのは、ライダーの力!
キリト「これが自由を取り戻すための力だ!!」
妖国動乱篇 佳境へ――!
次回 妖国動乱篇十 決戦の幕開け