ハイスクールD×D-魔法漢女に拉致された偽物が歩む道ー 作:マッシュ
制作会社が著作権の壁の乗り越え、古今東西の有名なゲームやアニメのキャラクター達の
有名なキャラクターの容姿や種族から、アイテムもプレイヤーの思うまま。
その、圧倒的な自由度と理想のキャラクターを作ってロールプレイ出来る事から爆発的な人気を得た。
多くの若者から社会人まで虜にしたこのゲームには俺も例に漏れる事なくドップリと嵌まっており、大学二年の夏休みも寝食を忘れる程のゲーム三昧の日々。
2年以上もプレイをしているが、プレイすればする程にゲームへの熱は深まるばかりで、ゲームを購入する前まで溜めていたバイト代のすべてを注ぎ込む廃人と化していた。
そんな廃人な俺は今日も睡眠を忘れ、仮想現実の世界に居た。
1
悪魔を祀る神殿の奥。
赤い外套を装備した白い頭の男性キャラクターが、エリアボスの居る最後の部屋の前で立っていた。
ソロプレイヤーである彼の周りには当然、誰も居ない。
エリアボスに挑むならPTを組むのが、オンラインゲームの基本だ。
しかし、彼の様なキャラクターを演じる事が好きなロールプレイヤーはソロで活動する事が多く、スキルもキャラクターを再現する為の限られた物しか習得しない。
お陰で、ロールプレイヤー達は周りからはネタキャラとして扱われる。
だが、中にはキャラクターとゲームに対する愛が強すぎて長時間のプレイ時間で稼いだ経験値とカンストしたスキルレベルによって、ネタキャラの枠を超えてしまう変態も居る。
そう、何を隠そうこの赤い外装のキャラクターはネタキャラを超えた変態仕様であり、プレイヤーは何を隠そうこの俺だ。
廃課金によるステータスの改造によって、一時期は世界ランクにも乗った変態の中の変態として日本のプレイヤー達をざわつかせた最強キャラ。
上位を超える超位クエストのエリアボスであろうとも恐怖はない!!
俺はゲーム世界の分身である赤い外装のキャラクター《エミヤ》を操り、骨で構成された扉を開けた。
すると……。
「ミルたんにファンタジーな力をくださいにょ!!」
部屋の奥にある玉座に座る強大な悪魔よりも圧倒的な存在感を放つ、白いゴスロリ装備で筋骨隆々なキャラクターが野太い声で悪魔に語り掛けている光景が目に飛び込んできた。
「……」
俺は得体の知れない恐怖から、そっと静かに扉を閉めた。
静かにしまったドアノブに目線を下ろすと、扉を閉めた己の分身である《エミヤ》の腕が小刻みに震えていた。
アバターが動いているという事は、現実の俺の体も《エミヤ》同様に震えているのだろう。
エリアボスの方は前代未聞でクリーチャーな先約も居るようだし、こんな状態ではまともな戦闘は出来ない。
俺はログアウトをする事を決め、コンソールを表示する為に手を動かした。
まさにその瞬間。
ドアが勢いよく開いて、丸太の様に太い腕が俺の腕を掴んだ。
「え?」
突然現れた腕に驚き、反射的に俺は腕の主に目を向けた瞬間。
…おっさんの顔が視界一杯に広がった。
「ミルたんにファンタジーな力をくださいにょぉおおおおお!!!」
「〇×◇▽!?」
あまりにもおぞましい光景を見たせいか?
それとも、睡眠時間を削り食事も最低限しか取らなかったツケが来たのだろうか?
俺はロールプレイを忘れ、謎の生物兵器の前で声にならない悲鳴を上げた後に意識を手放した。
2
生存本能に従って闇へと沈んだ意識が浮上する。
瞳を開けると、見知らぬ天井。
硬い床から体を起こし、辺りを見渡す。
視界に入るのは壁に貼ってある魔法少女のポスターや、魔法少女関連のDVDボックスやコミックスが入った棚。
ベットの近くにはファンシーなヌイグルミに幼い少女が振り回しているイメージが強い、可愛らしいリボンのついた玩具のステッキ。
勿論、俺の部屋では断じてない。
そして、視線を下ろすと俺から少し離れたところにヤツが短いスカートをおっぴろげ、女性下着を晒しながら大の字で倒れていた。
「うっ!?」
思わず吐き気を催し、両手で無理矢理口を押える俺。
正直目の前の悪趣味なキャラクターを操る変態プレイヤーに対して悪態をつかずにはいられない。
一体どんな変態的な思考をしていたらあんな化け物をキャラメイキング出来るんだ!!
モンスターがポップする悪魔の神殿から自分の陣地に運んでくれた事には感謝するが、気分は最悪である。
俺はコンソール画面を呼び出す為に腕を動かした。
「ん?」
だが、決まった動作を行えば現れるコンソール画面は出現しなかった。
不可解な現象に疑問を抱きながらも、もう一度コンソール画面を呼び出す動作を行う。
「んん!?」
ブンブンと腕を動かしまくるが、コンソール画面が俺の前に出現する事はなかった。
「にょ?」
焦る俺をよそに奴が目覚めて起き上がる。
「やったにょ!異世界の人を呼ぶことに成功したにょ!!
これでミルたんも立派な魔法少女にょ!!」
部屋に響き渡る野太い声。
…おいおい、異世界って何言ってんだこのおっさん。
確かにゲームの仮想現実は異世界とも言えなくもないけどさ……。
後、俺は呼ばれたんじゃなくて拉致されたんだよ!!
恐怖は怒りで吹き飛び、勢いそのままに目の前の最終兵器に怒鳴ってやりたいが相手は超位クエストを受ける事の出来る実力者で、ここは相手の陣地。
PKされる可能性非常に高く、デスペナルティを恐れた俺は手を握りしめて必死に声を抑えた。
「白髪のお兄さんはなんてお名前にょ?
ミルたんはミルたんにょ!」
俺の怒りをよそに嬉しそうに話しかけてくるミルたん。
お、落ち着け~普段通りに対応しろ~《エミヤ》プレイヤーは動じない!!
大体、名前なら頭上に表示されているだろうが!!
……ん?
目の前の《ミルたん》に違和感を覚えた俺は彼の頭上を見て、目を見開いた。
「どうしたにょ?具合でも悪いのかにょ?」
何と、驚くべきことに彼の頭上にはキャラクター名が表示されていなかった。
その事実に体の力が緩むと、手のひらに痛みを感じて、自分の目の前に持ってきて唖然とした。
なんと、俺の手のひらは強く握った事によって爪が食い込んで赤くなっていた。
まるで生身の様な痛みと現象に背筋が冷たくなった。
「…失礼、《英雄大戦》と言う言葉に聞き覚えは?」
確認する為の
ゲームでは流れない汗が自身のから流れ、ポタリと床に落ちる。
「…知らないにょ」
マジっすか?
3
悲報、俺氏異世界に誘拐されたようです。
「元の世界に戻すことは……」
「やってみるにょ。
白髪のお兄さんを異世界から呼べたミルたんに死角はないにょ。
はぁぁあああああああああ!!!」
野太い声が部屋を震わせ、ミルたんから闘気のようなものが立ち上る。
その姿はまさに、必殺技を放とうと気の力を溜める世紀末覇者。
こ、殺される!!
理不尽な死を覚悟した俺だったが、ミルたんはぶっ倒れた。
あれ?
「ごめんにょ、もう一度やってみるにょ」
むくりと起き上がって、再び構えを取るミルたん。
「はぁあぁあぁああああ!!!!」
気合の咆哮が先ほどよりも大きく部屋を揺らす。
あまりの凄さにベットに飾られていたヌイグルミは床に落ち、玩具のステッキは横に倒れる。
こ、これならきっと……。
「うっ!?」
苦しそうなミルたんの声によって、俺の淡い期待は粉々に砕け散った。
先ほど以上に気合を入れてくれたミルたん。
彼は糸の切られたマリオネットの如く、床に崩れ落ちた。
しかも、先ほどと違って意識はなく、彼は白眼を剥いている。
その後も、目覚めた彼は頑張って俺を元の世界に戻そうとしてくれたが成功する事はなかった。
最後はとても辛そうな彼を見ている事が出来ず、被害者である俺が止めてくれと言った所でミルたんの挑戦は終了した。
挑戦が終わると、ミルたんは自分のしでかした事について泣いて彼なりに真摯に謝ってくれた。
「ごめんなさいにょ!初めは魔法が成功して浮かれていて気づかなかったけど、今ならわかるにょ!!
ミルたんは魔法少女なのに悪い事をしてしまったにょ!!!」
…彼なりにね。
「白髪のお兄さんは絶対に元の世界にミルたんが帰すにょ!それまではミルたんが面倒を見るにょ!!」
……………………。
「え?」
大学二年の夏。
ゲームで遊んでいたら漢女に異世界に拉致されました。
ちなみに、自分の姿がゲームキャラになったままになっていると完璧に把握したのはミルたんの家の脱衣所で服を脱いでいる時だった。
4
異世界に拉致されて一か月が経過した朝。
俺は、筋骨隆々なサラリーマンと朝食をとっていた。
「うむ、今日もエミヤ君の作る朝ごはんは大変美味しい。
異世界から連れてきてしまった私が言うのもあれだが、本当にありがたい」
「まあ、君にはこの世界で世話になっているからね。
これぐらいの事は構わんさ」
「そうか、では!今日も会社が終わった後に、君を異世界に帰す方法を探してみるよ」
「まあ、それなりに期待して待っているよ」
歯をキランと輝かせスマイルを見せる男。
彼の名は
信じられない事にミルたんに
職業は不明だが、あの体格から想像するに警察や警備員などをしているのではないだろうか?
正直、今の彼の姿は違和感が強すぎて未だに慣れない。
本人曰く、『ミルたんは夢を与える魔法少女であるから、正体を知られないようにしなくてならない』らしい。
アレが与えるのは恐怖と絶望と吐き気であると訴えてやりたかったが、この世界での生命線を握られているので同意しておいた。
「それと…エミヤ君に頼まれていた物が出来たよ。
ほら、身分証とパスポート」
「ほう、意外と早く完成したな。
この世界の日本では一般人でも簡単に身分証とパスポートを偽造できるのかね?」
一か月前に世話になる事になった俺は筋肉隆々の魔法漢女から自立する為に身分証明書とパスポートを所望していた。
勿論、偽造という犯罪行為をする事になる為、あくまで希望と言う形で伝えていたのだが……。
本当に出来てしまうとは……正直、驚きが隠せない。
受け取ったパスポートと身分証には俺の顔写真が張り付けられており、名前も
ご丁寧に偽造の経歴書まで添えてあった。
実に手が込んでいて、まるで映画やアニメの世界だ。
「HAHAHA!まさか!!知り合いにちょっとした伝手があってね。
彼も私と同じ志を持つ者として、困っている君の為に協力してくれたのだよ」
アメリカンな感じで笑う彼だったが、同じ志を持つ者と言う単語に食事中の手が止まった。
「…まあ、代償はデカかったがね」
そう言って、元気なさげに昨日までお気に入りのステッキが飾ってあったはずの壁に視線を向ける大徳寺。
…謎は全て解けた。
「さて、私は会社に行ってくるよ。
この後、ハローワー〇に行くのなら経歴書を丸暗記してから向かう事をお勧めするよ。
まあ……貴族の家で執事をしたり、沢山の人々を救う為に傭兵生活をしていた異色の経歴を持つ君ならば、どんな職業でも問題はないと思うがね?」
大徳寺の言葉に表情は動かさないが心にグサリと来る。
彼には大学生の俺としてではなく、ゲームの世界で活躍する自分の分身である《エミヤ》として話している。
見栄もあるが、筋肉質でいかにも歴戦の戦士風の今の姿を見て彼が信じてくれるとは到底思う事が出来なかったのだ。
…本当だよ?
「はぁ、余計な心配をしている暇が君にあるのかね?
そろそろ時間だと思うのだが……」
妙な居心地の悪さを感じた俺は、机の上に置いてある電波時計に視線を移して話題を変えた。
実際、かなり話し込んでしまった為、普段彼が出社している時間から大分遅れが生じている。
「OH!SHIT!!このままでは遅刻してしまう!!
では、行ってきます!!」
ドアをバタン!!と閉めて、飛び出す大徳寺。
さて、俺も自立する為に経歴書の丸暗記から始めよう。