ハイスクールD×D-魔法漢女に拉致された偽物が歩む道ー   作:マッシュ

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9話

 

朝の珍事件から放課後となった現在。

俺はすっかり習慣になりつつある、対価の紅茶をオカ研の部室にてリアス・グレモリーに淹れ、テーブルで向かい合うようにお茶を飲んでいた。

当然、今日の俺は紅茶を淹れに来ただけではない。

 

「やっぱり貴方の紅茶は最高ね」

 

「それは良かった……。

で?今朝は兵藤一誠と共に登校していたが……全て話したのか?」

 

彼が、肉体だけではなく、本当の意味で裏の世界へと足を踏み入れた事実確認をしに来たのだ。

 

「ええ、始めはショックを受けていたけど、最後は上級悪魔となってハーレムを作ると鼻息を荒くしてチラシ配りに出かけたわ」

 

「か、彼らしいな…」

 

彼女の言葉で、その光景が目に浮かんでしまい脱力する。

悪魔になった事を知らされてショックを受けていると思っていたのだが……正直、俺の心配を返して欲しい。

 

「じゃあ、今度は私から質問してもいいかしら?」

 

「ん?別に構わんが…何が聞きたいのかね?」

 

何か言いにくそうな表情のリアス・グレモリー。

彼女は机の上の紅茶を一口飲んで、意を決した表情で口を開いた。

 

「日本の男の子って、若いうちから加齢臭がするの?」

 

「…ん?」

 

カップを持って、中の紅茶を口に含もうとした瞬間。

彼女の言葉で動きが硬直する。

彼女は何を言っているんだ?

加齢臭?まるで理解できない。

俺は、ゆっくりとカップをテーブルに置いて、一拍ほど間を開けた後、彼女に質問内容の確認を行う事にした。

 

「すまん。よく聞こえなかった。

もう一度、言ってもらってもいいだろうか?」

 

「だ、だから、加齢臭よ!加齢臭!!」

 

悪魔とはいえ、年頃の乙女がしていい質問ではないと自覚しているのだろう。

頬を赤く染め、怒鳴るように答えるリアス・グレモリー。

ま、まさか……この俺に加齢臭が!?

 

お、落ち着け!まだ慌てる時間ではない!!

聞いたことはないが、もしかしたら素晴らしい匂いの《華麗臭》の間違いかもしれない!!

ここは、匂いを嗅いで確認を……。

 

「貴方じゃないわ。

イッセーの事よ」

 

作業着の襟元を鼻でクンクンと嗅いだ所で、兵藤の事であると知った俺は心の底から安堵した。

よかった……本当によかった……。

加齢臭の漂う英霊エミヤはいなかったんだ。

 

小さく息を吐き、落ち着きを取り戻した俺は改めて彼女との話を再開する。

 

「高校生で加齢臭は出ない。

何かの間違いではないのか?」

 

「いえ……でも、確かに汗臭さもあったし、私の気のせいなのかしら?」

 

顎に手を当てて、悩むリアス・グレモリー。

なんだ、兵藤は悪魔になった事で魔力だけではなく齢臭が出る様になったのか?

 

「一体何があったのかね?

申し訳ないが、加齢臭だけでは状況がまったく理解できないのだが……」

 

「あー…。そうね、ごめんなさい。

もう少し、詳しく話をするわ」

 

そして、彼女の口から語られる彼女が見た昨晩の出来事。

俺は、話の途中から恐ろしい真実が見え、体が震える。

 

「なるほど…つまり兵藤一誠は……」

 

「ええ、公園で落ちていた羽を確認したところ、彼は堕天使に襲われたのだと分かったわ。

でも……」

 

「何故か、堕天使の姿は見えず、兵藤の体から酸っぱい匂いが漂っていたと?」

 

「そうなのよ。あまりの匂いで触るのに躊躇した私は、気絶した彼を彼の家まで使い魔に運ばせたの。

公園には戦闘の痕跡があったし、あの子が堕天使を撃退した際に流した汗じゃないかと思ったのだけど……」

 

どうしよう。

本当に、訳がわからない。

普通は堕天使について相談するんじゃないだろうか?

もしかして、堕天使の存在が霞むほどに臭い匂いだったのか?

 

いやいや、それよりも不幸な少年悪魔の正体がわかっちゃったよ。

どうすんだよこれ。

脳の処理が追い付かないぞ。

とりあえず……。

 

「そ、そんなに気になるのなら消臭効果のある製品を身に付けさせたらどうだろうか?」

 

「そうね。私も下僕が臭いなんて思われたくないから、我慢できなかったらそれとなく伝えてみるわ」

 

無難に消臭をお勧めしておきました。

 

 

1

 

 

兵藤が悪魔になって一週間が経過した休日。

リアス・グレモリーの話によると神父の数がさらに増え、駒王町は緊張状態にあるという。

だが…日用品の買い出しに街を歩いている俺の目にはこの町はとても平和に見える。

 

堕天使に襲われ渦中の中心に居ると思われる兵藤も、今日は松田達と地下アイドル『ゴクドルズ』のライブに行くと張り切っていた。

レジに商品の代金を支払い、レジ袋を片手に店を出る。

 

すると……。

 

「あう~道に迷ってしまいました……」

 

キャリーバックを引きながら地図らしき紙を片手に涙目になって周りをキョロキョロしている金髪シスターが立っていた。

どうやら相当切羽詰まっているらしい。

俺は、迷うことなく彼女に声を掛ける事にした。

 

 

2

 

 

善意半分ともしかしたら今回の事件の真相に近づけるかもしれない半分の下心を胸に、幼げなシスターを道案内する俺だったが……。

 

「すみません…本当に助かります。

荷物まで持ってもらっているだけでなく、こんな美味しい食べ物まで……」

 

「気にする事はない」

 

道案内を始めて数分。

彼女の善性をまざまざと見せつけられ、自分が恥ずかしくなった俺は彼女の荷物を持ち、果てはジュースや露店のパフェまで奢っていた。

……本当に疑ってすまない。

 

あと、俺の耳と口が言葉を自動翻訳してくれていると知って助かったよ。

 

「いや、本当に気にする事はない。

君のような善性あふれる少女と出会えて私は嬉しい。

是非、日本の若者も君を見習ってもらいたいものだ」

 

エロい三バカとエロザルは特に見習ってほしい物だ。

正直、地下アイドルに迷惑を掛けていないか心配だ。

 

「そ、そんなことないですよ!私なんてまだまだで……」

 

「謙遜する事はない。

君の様な素晴らしい女子を私は見た事がない」

 

「も、もう!からかわないでくださいよぅ!」

 

あまりにも俺がべた褒めするから赤くなった両頬を両手で抑えてクネクネする。

……可愛い。

あまりにも可愛い反応に心の底から和む。

 

「さて、そろそろ進むとしようか」

 

「え?あ、そ、そうですね!!早く行きましょう!!」

 

俺が声を掛けると、彼女はクネクネとした動きを辞めて再び歩き出す。

ああ、こんな時間がずっと……本当にずっと続けばいいのに。

 

「あ、そういえば、自己紹介を忘れていました!」

 

「む?確かにそうだな……」

 

彼女はトテトテと俺の正面に回り込む。

 

「私、アーシア・アルジェントです!

アーシアと呼んでください!」

 

「私はエミヤ シロウ。

君の好きなように呼んでくれたまえ」

 

こうして、俺とアーシアは出会った。

この出会いが吉と出るか凶と出るかは分からない。

 

ただ……。

この可愛い少女の前にミルたんが現れない事を切に願った。

 

 

3

 

 

俺の人生で幸せな時間ベスト5に入る時は彼女が赴任する教会にたどり着いた事で終了した。

 

「あの…シロウさん。

是非、お礼がしたいので、よろしければ教会でお茶でもいかがですか?」

 

「もちろん」

 

だが、神は俺を見放していなかったようで、幸せな時間は延長した。

…この延長料金は無料ですよね?

 

俺はこの幸福に見合った不幸が訪れない事を祈りながら、彼女の後ろをホイホイとついて行く。

彼女に続いて教会に入ると、一人の神父が俺達を見て、ニンマリと不気味な笑顔を見せる。

神父の見た目は高校生くらいの銀髪の少年だ。

この教会は学生に管理を任せているのだろうか?

 

「おんやぁ、もしかして君がアーシアちゃんですかぁ?

金髪美少女ちゃんに僕のドキがムネムネですよぉ。

後!後ろのお兄さんは誰ですか!?まさか恋人ですか!?

アーシアちゃんって清楚な見た目のわりに大胆過ぎて、俺様大ショック!!」

 

ヤバい。

言動もヤバいがこの少年からは危ない感じがプンプンする。

呆気に取られているアーシアを隠すように前に出た俺は彼を睨み付ける。

 

「おおぅ!アーシアちゃんの恋人に睨まれて、オラ自慢のゴールデンボールが悲鳴を上げる!!

やめて!俺はノーマルよ!!」

 

股間と尻を抑え、こちらをバカにしたように舌を出す少年神父。

どう見ても危険なハーブか、危ない薬をやっている様にしか思えない。

これは…頼りたくはないが、彼を拘束して大徳寺経由であの警視総監に連絡するしかないな。

もしかしたら、今回の事件について吐しゃ物と共にゲロってくれるかもしれない。

 

「アーシア、どうやら彼は危険な薬を服用したせいでおかしくなっているようだ。

彼が社会復帰する為に警察に通報するから、拘束出来る紐のようなものを持ってきてくれたまえ」

 

「は、はい!わかりました!!」

 

目の前の少年神父の異常性を理解し、俺の指示が正しいと判断したアーシアは教会で紐を探し始めた。

さて、俺は危険な薬に手を出した不良少年を拘束せねば……。

 

「ちょっとちょっと!この善良な少年神父を拘束しようだなんて、何を考えてるの!?

オイラは何もやってねぇよ、このホモ野郎!!」

 

「言い訳は警察にするんだな!」

 

「話を聞けよ!!俺は正常なんだよ、シスターマニアのクソロリコンが!!」

 

俺が奴を拘束しようと前に出ると、少年神父は懐から銃を取り出して銃口をこちらに向けた。

おいおい!危険な薬物だけでなく、銃刀法違反までやっているのか、この不良神父は!!

 

「オラオラァ~!!死ね死ね死ね死ね!!!」

 

奴は躊躇する事なく、引き金を何度も引く。

銃口から放たれる弾丸。

そこで、俺の《心眼》スキルが発動する。

 

ゆっくりと動く弾丸を避けて進み、奴の懐に潜り込む。

 

「おいおい、この距離を避けるとか変態過ぎんだろ!!

てめぇはガンダムか、つーのっ!?」

 

「これで終わりだ」

 

奴が懐からさらに武器を取り出そうとした瞬間、俺はスキル《手加減》を起動させ、掌底を腹部に叩き込んだ。

 

「ぐぼぉ!!?」

 

少年神父は汚い悲鳴を上げて、後方へと吹き飛んで壁に激突した後、ゆっくりと床に倒れた。

床でピクピクと動く彼を見て、生存を確認した俺は携帯電話で大徳寺に連絡した。

 

こうして、犯罪に手を染めた若者を撃退した後、アーシアの持ってきてくれたビニール紐で拘束した俺はやって来た大徳寺達に彼を引き渡した。

俺が彼の更生と神父だった彼をあのような存在にした薬を販売する危険な組織が日本から撲滅される事を教会の神にアーシアと共にお祈りした。

 

 

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