ハイスクールD×D-魔法漢女に拉致された偽物が歩む道ー 作:マッシュ
赤い外套をアイテムボックスから取り出し身に纏った俺とこれから起こる実戦に気合を入れる生徒達。
駒王学園で戦闘の準備が整った。
「部長、俺が戦力外なのは分かっています。
でも、堕天使が…夕麻ちゃんが来たら、教えてください。
戦いに参加できなくても、最後まで見届けたいんです」
俺を含め全員がグラウンドに出ると兵藤が、男の顔でリアス・グレモリーに願い出た。
己を偽った挙句に死に追いやった、人生初めての彼女だった堕天使。
人生も浅く、彼女がいない俺には彼の心境を理解する事は出来ないが、自身の気持ちに決着を付けたいという事だけは分かった。
その勇気は賞賛に値する。
「…分かったわ。
でも、無茶はしない事。
警察からの増援もあるみたいだし、優斗の傍に居なさい」
「はい!!」
彼女も彼の思いを感じ取ったのだろう。
リアス・グレモリーは兵藤を心配しつつも、その勇気に答えた。
そんな時だ。
律儀に校門からやって来る神父の集団とその上空から黒い翼でこちらに向かってくる4人の堕天使を視界に捉えた。
いよいよ戦闘が始まろうとしているが、特殊部隊の影はない。
準備に手間取っているのだろうか?
ならば、生徒達は俺が全力で守るまでだ。
夫婦剣を投影し、前方の敵を睨む。
そこに見覚えのある神父が集団から飛び出し、剣と銃器を持ってこちらに走って来た。
俺は銃器をこちらに向ける、彼を処理する為に脚に力を籠め……。
「へいへい!そこの白髪頭のクソ野郎!!
俺様ちゃんが上司の助けでシャバに出てきて残念だったな!!
今度はきちんと殺してやるから覚悟しろぶべぇ!!?」
土煙を上げる程の爆裂スタートダッシュを決め、一瞬でイキがる彼に接近して顔面に蹴りを入れる。
勿論、スキル《手加減》の効果で彼が死ぬことはない。
彼がグラウンドをワンバウンドして、ボロ雑巾の様に転がった所を確認した後、後続の神父たちへ視線を移す。
これで、しばらくは起き上がって来ることはないだろう。
「す、すげぇ…まるで見えなかった。
一体何をしたんだ?」
「たぶん、魔力による身体強化をしたんだと思うけど…」
「あれは悪魔でも異常」
「そうね……エミヤさんは本当に人間かしら?」
兵藤と木場、そして東城と姫島の会話が色々と辛い。
まあ、ゲームアバターの英雄なので勘弁してください。
「ちっ!減った戦力を補充する為に脱走させたのに、何をやっているのよ!!」
「まあ、所詮は人間ですから仕方がないですよレイナーレ様」
一瞬で戦線離脱した少年に悪態をつく、ボンテージを身に纏った痴女な堕天使とそれを宥めるゴスロリ堕天使。
その後続には襟がとがったレディースを思わせる服装の堕天使やコートを着た男性堕天使が居た。
そして、少年にあらかたの悪態をついたボンテージ堕天使は一息ついて、俺の後ろにいる一人の生徒を睨み付け、光の槍を右手に生成し切っ先を突き付ける。
「よくもやってくれたわね魔王の妹!!
人間を使って至高の堕天使であるこの私の儀式を邪魔するなんて!!」
「儀式?そんなのはどうでもいいわ。
さっさと消し飛ばしてあげる!!」
槍の切っ先を向けられたリアス・グレモリーも負けじと蝙蝠を思わせる悪魔の翼を背中に展開すると同時に彼女の右手に発生するドス黒い魔力の塊。
まさに一触即発の空気。
だが……。
「やる気満々の所を済まないが、私一人で十分だ」
「なによ、アンタ人間でしょ。
私たちの戦いの邪魔をしないで!!」
ボンテージ堕天使が俺の顔面に向けて光の槍が投擲される。
初めての人外との戦闘だが、脅威をまるで感じない。
これだったらまだ、少年の持っていた火器から放たれる弾丸の方が速い。
俺は右手に持っている白い陰剣・莫耶を一閃。
槍は切った抵抗を感じさせる事無く、両断されて消滅した。
思わず、豆腐よりも柔らかいのではないだろうか?と考えてしまう程だ。
「うそ、私の槍を切るなんて……。
あんた、本当にただの人間じゃないわね。
一度だけの切り札と思っていたのに…本当になんなのよ!!
こうなったら全員でアイツを殺すわよ!!数で圧殺しなさい!!」
堕天使は両手に光の槍、神父は銃口を俺に向ける。
それでもなお、俺には脅威たりえない。
彼等の攻撃を全て防ぎ切り、全員を倒す自信がある。
俺は両手の干将莫邪を破棄し、エミヤの持つ究極の守りを展開しようと準備を整える。
後ろの全員を守り切り、倒して見せる!!
世界がスローとなり、彼等の槍が構えられ、引き金に力が込められて銃口から弾丸が、堕天使から槍が放たれようとした。
まさにその瞬間。
「……もう始まっていたみたいだな村瀬」
「ええ、国木ちゃん。でも遅れた分は彼等を捕まえる事で挽回しようか」
横からスーツ姿の男が姿を現した。
突然の乱入者のミルたん達を彷彿とさせる圧力に堕天使と神父の手が止まる。
「…人間?」
圧力をもろに受けているのだろうか。
堕天使と神父達から驚愕と恐れが伝わって来る。
「警視総監直轄の特殊部隊《
「同じく、警視総監直轄の特殊部隊《
スーツ越しでもわかる膨張した筋肉。
そして、鋭い眼光。
国木と名乗った男は極限までに絞り込んだ印象を受け、逆に村瀬と名乗った男は腕や足が丸太の様に太く壁のような印象を受ける。
これが…警視庁の特殊部隊。
「警察ですって?
まさか、悪魔は警視庁までも傘下に加えたというの!?」
いや、全然違う。
むしろ傘下に加えたら魔法漢女が魔王を食い破るのではないだろうか?
「そんな事はどうでもいい。
俺は神父達の相手をするが村瀬はどうする?」
「俺も神父たちの方がいいが……。
まあ、たまには紳士の相手もいいだろう」
指の骨をゴキゴキと鳴らし、鍛え抜かれた筋肉をピクらせながら二人は神父の集団と堕天使4人に向き合った。
「堕天使の四人。
俺が相手をしてやるからこっちに来な」
「神父達の相手は俺だ。
一人一人、平等に相手をしてやる」
二人から膨れ上がる闘気。
敵側も守られる立場にある生徒達にも緊張が走る。
「人間の癖に調子に乗るんじゃない!!」
「そんなもんが当たるかよ!!」
キレたボンテージ堕天使を筆頭に村瀬に突貫する堕天使達。
彼はそんな堕天使達の攻撃を紙一重で避けながら、俺達から距離を離していく。
流石、特殊部隊。
護衛対象から上手く敵を引き付けている。
「さて……向こうも始めたようだし。
俺達も始めよう」
国木も懐から二丁の拳銃を取り出し、神父達に向け、視線と敵意を自分に集中させている。
俺に出来る事は生徒達を後方に下がらせ、守りに徹しつつ、安全を確保した時に彼らのサポートを行う事だ。
最強の盾の投影を準備しつつ、ゆっくりと下がる。
そんな、後退を始めた俺に気づいたのだろうか?国木が神父達に語り掛ける。
「俺は知っている……。
お前たちの様な人の道を踏み外した者の心を正すには努力や友情ではない」
無償の愛だ――――。
彼が銃を地面に捨てた、その瞬間。
彼のスーツがはじけ飛び……彼は全裸となった。
そして、相対する神父と後ろに控えていた俺達の時間が止まった。
だが、止まった時の中で、ただ一人。
国木が笑う。
「イヤッホォォぉぉぉぉぉおおおおお!!!
抱きしめてやるぞぉぉぉぉぉおおおお!!!」
『く、来るなぁぁぁぁああああああ!!!!!!』
両手を頭に当てて腰を振りながら、尋常ならざるスピードで神父の集団へと突っ込む
神父たちは全速力で逃げ出した。
「こんなチャンスは滅多にないんだ!!
イィィヤッホォォォぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!」
固まったままの俺達をそのまま置き去りにして、国木と神父達は、ほんの僅かな時間で学園から姿を消した。
「エンジェルモ―――ド!!!」
『ぎゃゃあぁぁぁぁあああああ!!!』
放心する俺達の居るグラウンドに響き渡る野太い声と尋常ではない堕天使達の悲鳴。
《エンジェルモード》
この世界で培ってきた俺の経験が声の方に顔を向けてはならないと警報を鳴らす。
しかし、この世界の残酷さを未だに知らない若い生徒達が声に釣られて、首を動かす気配が伝わる。
あぁ。
この世界は本当に残酷だ。
『うぷっ!?』
俺はグラウンドから見える美しい星空をいつまでも眺めた後。
とんでもない行為が神聖な学び舎の敷地内で行われそうになった為、俺は堕天使達を救出する事となった。
こうして、堕天使達の野望は特殊な変態達によって粉砕され、神父達には消えないトラウマを植え付けた。
1
学生達が忘れられない戦いを経験した翌日。
兵藤は学校を休んだ。
どうやら、特殊部隊の二人は彼の心に消えない爪痕を残したらしい。
国木はミルたん達と打ち合わせしていた指定ポイントに神父達を追いつめた後、全員を逮捕することに成功した。
しかし、白髪の少年だけは再逮捕する事が出来なかったそうだ。
彼の捜索は今も続いているらしい。
逮捕された神父達は特別な収監施設で更生を促すプログラムを受けるようだ。
俺に救出された堕天使達も心に酷いトラウマを植え付けられ、冥界へと帰って行った。
もう、二度と人間界に戻って来る事はないだろう。
そして、俺の生活も一変した。
とんでもない変態を呼んでしまったが、一応は堕天使達の野望を打ち砕く原因となった俺は悪魔側から一つだけ願いを叶えて貰えたのだ。
それは……。
「ほら、早く行かないと遅刻するぞ?」
「はい、シロウさん!」
アーシアを留学生として駒王学園に通わせてもらう事だ。
真新しい学生服を身に纏い、笑顔を見せるアーシア。
彼女の希望もあって、我が家で正式にホームステイする事になった。
黒猫は不貞腐れつつも、アーシアを受け入れている。
色々と大変な事があったが、これから俺達の新しい生活が始まる。
これにて第一部は完結。