ハイスクールD×D-魔法漢女に拉致された偽物が歩む道ー   作:マッシュ

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3話

悪魔退治があっけなく終わった後に年が明け、三年間見慣れた生徒達は卒業して残った生徒たちは誰一人留年することなく、無事に進級を果たした。

春の風物詩である舞い散る桜と、新入生達の緊張した顔を微笑ましく見ながら、俺は今日も校庭のゴミ拾いに勤しむ。

 

今日も実に平和である。

 

「新学期早々お疲れ様。

ここ最近とても機嫌がよさそうだけど何かあったの?」

 

校庭の隅に捨てられたペットボトルを回収しているとオカルト研究部の部長リアス・グレモリーが姫島朱乃を連れて声を掛けて来た。

彼女達は最上級生となり、二年生から囁かれていた《駒王学園の二大お姉様》が定着し、元々あった人気をさらに上昇させていた。

 

「ああ、とてもいい事があったんだ」

 

俺はペットボトルを持っていたゴミ袋に入れ、『答えは得た』と言わんばかりの爽やかな笑顔を今を煌めく彼女達に送った。

 

「そ、そうなの?」

 

「あ…あらあら、それは良かったですわね?」

 

爽やかすぎる俺の反応にフラグ的な物が立ったかのように顔を赤くして戸惑う二人をそのままに、俺は再びゴミ拾いを再開した。

何故、俺がこんなにも機嫌がいいのか?

 

それは、年末前まで振り返る……。

 

 

 

 

あれは…そう。

年末年始の為に色々と自宅で準備をしていた時の事。

夕暮れ時に何時もの様に大徳寺が我が家にやって来たのだ。

何時もの様に玄関先で彼を迎えた俺は、『夕飯でも食べに来たのか?』と尋ねたのだがこの時は珍しく違っていたのだ。

 

ちなみ余談ではあるが、クロは俺が悪魔討伐から帰ったあの日、口元から酸っぱい異臭を漂わせた翌日から、普段以上に大徳寺から距離を取るようになった。

そのせいか、大徳寺が我が家にやって来るとお前はチーターか?と疑うレベルの速度で逃げ出すようになったのだ。

 

あの日も、チーターレベルの速さで逃げるクロの後姿にガックリした大徳寺は玄関先で用件を話し始めたのだ

 

「エミヤ君。最近我々『コスモ・ミルキーズ』は駒王町を含む街の平和を悪魔達や堕天使に悪い魔法使いから守って来た」

 

「ま、まだ続けていたのかね?」

 

「ああ。あれからこの世界の裏の事情に詳しい《ハー姉さん》という素晴らしい協力者を得てね。

ハー姉さん指導の元で世界にラブ&ピースを振りまいているのさ!!

何なら今度、ハー姉さんが撮影してくれた私達の活躍の様子を録画したDVDを渡そう」

 

どうやら、あれから大徳寺達は独自に悪魔や魔法使いなどの超常の存在を相手に戦っていたらしい。

俺はDVD前後の下りは聞かなかった事にして、ハー姉さんとやらについて質問をした。

 

俺の予想ではあの珍妙な集団の輪に入れる人物であることから、ミルたん達と似たように変わった人物であると思っている。

 

俺がゴリゴリの筋肉魔法少女を想像していると大徳寺は俺の質問に対して、あっけらかんとその人物の驚くべき正体を明かした。

 

「天使だ」

 

天使?あのエンジェルの?

大徳寺の言葉で一瞬思考が停止してしまったが、この世界には悪魔が居て大徳寺曰く、魔法使いや堕天使も居る。

天使が居てもおかしくはないだろう。

 

「そ、そうか…しかし、よく天使と出会う事が出来たな。

悪魔同様に中々遭遇出来ないと思うのだが……。」

 

「たまたま仕事帰りに寄ったバーの店長だったんだよ。

あれは、本当に良い出会いだった」

 

バ、バーの店長?

人間の魂を天へと導く、あの天使が?

この世界の天使の役割は良く分からないが、ファンタジーな存在は意外と身近に存在するのだろうか?

 

「ハー姉さんと知り合い、意気投合した私達はハー姉さんを仲間に誘い、裏の世界に対する知識のない我々の先生となって頂いたのだ。

ついでに、私たちがケガをしないように色々と指導してもらっていて、年始には海外へ修行の旅に出る予定なのさ!」

 

「そ、そうか。

つまり、今日ここにやって来たのは……」

 

「そう!年末年始の挨拶としばらく留守にするという連絡さ!!」

 

こうして、大徳寺は宣言通りに年末年始の挨拶を終えた後、新年早々に海外へと旅立って行った。

 

彼等の旅立ちの日、俺とクロは豪華な魚料理で祝杯を挙げて、一緒の布団で仲良く眠った。

 

その時の夢は顔面がサクランボが乗った暖かいマシュマロに包まれる謎の夢を見た。

不思議な夢であったが、体が芯から温まり、次の日には年末の疲れは吹き飛んでいて、元気よく年始を過ごす事が出来たのだ。

 

 

 

 

……しかし、幸せとは長く続かないもの。

幸福と言う金貨はいずれ無くなるのだ。

時節、大徳寺から掛かって来る衛星電話では修行も終了し、彼等は海外を満喫してから帰還するようだ。

故に、俺は今の幸福を最大に楽しんでやる!!

 

そんな決意を新たにした時だった。

 

「村山の胸…マジでけぇ」

 

「上から、82-70-81」

 

聞き覚えのある男子生徒の声を校庭から何メートルも離れた林の向こうからわずかに聞き取った。

やれやれ、また彼等か……。

声の方向に視線を向けると高身長と狙撃スキル《鷹の目》のお陰で、彼らの後姿がよく見える

 

剣道部女子の部室の壁に張り付いている三人組の姿を捉えた俺はため息をこぼした。

……これで一体何度目だろうか?

 

俺はゲームの必須スキルである《隠密・気配遮断》を駆使して、彼らの後ろに移動する。

 

「たまんねぇ…たまんねぇよ……」

 

「今日のオカズは決まりだな。

若いパトスが俺達の胸を熱くするぜ」

 

「おい、もうちょっとズレてくれよ。

見えそうで見えないんだ」

 

覗き穴にピッタリと張り付き、腰をイヤらしくも無駄に鮮麗された動きで、同時に左右に振っている三人組。

オリンピックのシンクロでも、ここまでの一体感はないだろう。

彼等は右から《エロ坊主》の松田(まつだ)、《女体スカウター》元浜(もとはま)、《変態》の兵藤(ひょうどう)

この三人は《変態三人組》と呼ばれ、この三人組だけで学園の風紀を著しく落とす問題児達である。

その並々ならぬエロへの探求心は歴戦の生徒指導の先生も匙を投げるレベルであり。

何故か不幸にも毎回現場を発見する俺が、彼らの指導を先生方からお願いをされてしまっている。

 

噂では、生徒指導の先生は胃薬と恋人になったらしい。

 

俺は、生徒指導の先生に黙祷を捧げて彼らが逃げないように首根っこを引っ張った。

 

「うげっ!?」

 

「ぐぼっ!?」

 

「おい!大きな声を出すなよ!!バレちゃうだ……ろ?」

 

勢いよく引っ張られて、車に引かれたカエルの様な声を上げる元浜と松田。

兵藤は俺を見上げて顔を青ざた。

 

「三人とも、備品整理や修理をしている私の目の前で覗き穴を作るとはいい度胸じゃないか?

お陰で…指導が捗るよ」

 

「ひぃ!?」

 

「兵藤君。大人しく付いてきたまえ。

逃げられるとは思っていないだろう?

それとも、去年のように追いつめられたいのかね?」

 

「わ、分かりました」

 

「よろしい。では生徒指導室まで付いて来たまえ」

 

『ひぃー!!ガチムチに(さら)われる―――――!!!』

 

「松田!元浜!!人聞きの悪い悲鳴を上げるな!!」

 

『ごめんなさい!!マジで許してください!!!』

 

人聞きの悪い悲鳴を上げた二人の変態を一喝し、生徒指導室へと連行した。

ああ……特別手当が欲しい。

俺は頭の痛い問題児達に溜息を洩らした。

 

 

 

 

彼等の両親からも許可を得ているので、生徒指導室に着いた瞬間に彼らの頭に拳骨を見舞い、くどくどと道徳の混じった説教を行った。

 

「でも、エミヤさん!!俺達は人の道から外れたとしてもスケベがしたいんです!!」

 

「モテない俺達はセクハラとエロが人生の希望なんです!!」

 

「そう!これは俺達にとって人生の希望であり、保健体育の実習が出来ない俺達の癒しなんです!!」

 

『だから、俺達に保健体育の予習をさせてください!!』

 

座らせたパイプ椅子から立ち上がり、腰を九十度に曲げて懇願してくる三人組。

一瞬だけ、スポコン漫画や映画のワンシーンを彷彿とさせ、爽やかな空気を醸し出した三人だったが、俺はそんな小細工に騙される事なく彼らの頭部へ少しキツメの拳を見舞った。

 

『ぐおぉぉおおお……』

 

ゴン!と鳴った頭頂部を両手で抑え、仲良く悶絶する三人。

俺は溜息を吐いて、彼等に問いかける。

 

「いいか?このままだと警察沙汰になるぞ。

そうなったら、君たちを入学させてくれた学校側や両親に申し訳ないと思わないのかね?」

 

『うぐっ』

 

俺の問に胸を抑える三人、ようやく良心が痛んだのだろうか?

 

「ならば自重したまえ、幸いもこの駒王学園は元女子高だ。

男女比率は女子も多いし、真面目にしていれば彼女くらい出来るのではないのかね?」

 

良心が痛んだ所で、ようやく理解してくれたと思った俺は優しく彼らに語り掛けた。

しかし、彼等三人は俺の言葉にプルプルと体を震わせ、顔を涙で濡らして俺に訴えた。

 

「それは入れ食い状態の木場やエミヤさんだから言えることですよ!!」

 

「そうです!駒王学園の《頼れる男》ランキングのNO1に輝く男の余裕なんです!!」

 

「真面目にしてモテるなら、俺達はこうなっていない!!

貴方や木場の様な黄金性闘士(ゴールドセイント)におっぱいが大きくて可愛い女子は全部、持っていかれてんですよ!!

俺達の様な下級性闘士(段ボールセイント)にはエロしかないんです!!」

 

兵藤・元浜・松田の勢いと魂の叫びに思わず腰が引ける。

だが、彼らの話には決定的な穴があった。

 

「だったら…入学して二日目の昼休みに、不健全雑誌やDVDの交換会をしたのは何故かね?

それも…わざわざ女子の居る自分たちの教室でだ」

 

俺が彼等の決定的なモテない理由を突き付けると、三人はシオシオとパイプ椅子に着席した。

 

「あ、あれは俺達が友情を確かめる為に必要な交換会だったんですよ……

な、元浜」

 

「そ…そうそう、イッセー君の言う通りです。

エミヤさんも男ならわかるでしょ?

男はエロで友情が芽生えるんです」

 

「エ、エロ本は俺達のコミュニケーションツールなんですよ…」

 

図星を突かれ、しどろもどろになる兵藤・元浜・松田。

この、三人との問答に色々と疲れてしまった俺は、彼等に反省文を書かせた。

 

「頼むから…自重してくれ」

 

三人はすっかり、書き慣れた反省文を物の数分で終わらせ、それを受け取った俺は三人に切実なお願いをした後、彼らを自宅へと帰した。

 

やれやれ、今からでも真面目に振舞えば女子の友人の一人くらいは出来るだろうに……。

さて、俺は剣道部女子部屋の壁の修理を行いますか……。

 

 

 

 

彼等に説教をしていたからだろうか?

日は完全に沈み、学校は既に暗闇に包まれていた。

 

やばいな……家ではクロが待っているのに。

 

自宅で待っている愛猫を想い、急いで穴をパテで埋めた俺は周りを《鷹の目》で人が居ない事を確認してから壁に手を当てる。

 

同調開始(トレース・オン)

 

呪文を口にして、魔力を通して壁を数秒で解析。

まだ固まっていないパテの補強を開始する。

 

「全く、魔術を超常の存在に振るう事もなく、壁の修理に使うとは……我ながら平和な日々を送っているものだ」

 

レベルMAXの魔術で補強され、戦争にも耐える事が出来るくらいに固くなった壁をノックで確認し、その出来に満足した俺は自重気味にポツリと独り言をこぼして、帰路へと着いた。

 

 

 

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