ハイスクールD×D-魔法漢女に拉致された偽物が歩む道ー   作:マッシュ

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4話

学校で始めて魔術を行使した次の日の朝。

何時ものようにクロに朝と昼のご飯を作って、何時もの様に出勤した。

学校に流れる平和な時間と平和な日々。

 

そんな学園での日常が一時崩壊した。

 

なんと、あの《変態三人組》の代表。

兵藤に彼女が出来たらしい。

朝、校門前で掃除をしていたら松田・元浜が血涙を流しながら俺に迫って報告をして来たのだ。

 

二人の鬼気迫る表情に俺は嘘と思う事が出来ず、学園では兵藤が弱みを握って他校の女子高生を無理矢理彼女にしたのだと噂が流れている。

 

まあ、『蓼食(たでく)う虫も好き好き』という(ことわざ)があるように、兵藤の数少ない良い部分に惹かれた女子が居たのかもしれない。

これで《変態三人組》は解散され、《変態二人組》となる事で俺の負担も減ると言う物だ。

 

「おかしい!!世界の法則が狂っている!!」

 

「ヤツは俺達と同じ底辺の存在だ!!なのにどうしてヤツだけが!!?」

 

……故に、祝福こそすれ、残ってしまった目の前の二人のように嫉妬で狂う必要もないだろう。

不健全雑誌とDVDで固く結ばれた親友の裏切りにより、残された変態二人組は放課後、何故か体育館の備品を整理している俺の元にやって来て兵藤の悪口で盛り上がっていた。

まあ、彼らの気持ちも分からなくもない。

俺も突然、オタク仲間の親友だと思っていた男がリア充に転職して、嫉妬を覚えると言うのは中学や高校で何回か経験した。

あの時は行き場の失った嫉妬を晴らす為に、他の友人達と元親友の悪口で盛り上がっていた事を思い出す。

 

彼等もあの時の俺と同様に嫉妬の行き場に戸惑って居るのだろう。

こういう時は、ある程度話を聞いてやってガス抜きをさせ、小さな希望の種を与えてやればいい。

 

「確かに私も彼に彼女が出来たという事実は信じがたい。

…だが、君達にも希望の光が見えたのではないかね?」

 

「はっ!?」

 

「確かに!!」

 

俺の与えた小さな希望の言葉に喜色満面の笑みを浮かべる二人。

 

「あのドスケベ野郎にあんな可愛い彼女が出来たんだ!!

俺達だってエロくて美人な彼女が出来る可能性はある!!」

 

「そうさ!!あんなド変態のおっぱい星人に出来て、俺達が出来ないはずがない!!」

 

自分の事を棚に上げ、兵藤をこき下ろす松田と元浜。

その双眸は欲望でギラついており、鼻息も猛牛のように荒く、若干怖い。

……まあ、ひたすらに鬱憤を晴らして居るよりか、前向きでマシだろう。

 

「よし!!さっそく、俺の家で彼女を作った時の為に保健体育の予習だ!!」

 

「おうとも!!インターネットで保健体育の実習映像を巡回パトロールしてやるぜ!!」

 

俺の言葉によって覚醒した彼等は猛ダッシュで自宅へと帰って行った。

…まあ、明日には何時ものように色々とスッキリした顔で登校してくるだろう。

さて、後はバレー部のボールの数の確認を……。

 

「あ、あの~、エミヤさん。

少しよろしいでしょうか?」

 

二人の事を頭の中から追い出し、作業に戻ろうとした所で顔を引きつらせた金髪の美少年が現れた。

彼の名前は木場 祐斗。

俺がよくお邪魔しているオカルト研究部の部員だ。

何時ものリアス・グレモリーのお使いで来たのだろうが……何かあったのだろうか?

 

「先ほど、ここから出て来た変な二人組に『お前の時代はもうすぐ終わる!』『これからは俺達の様な紳士の時代だ!!』と、言われたんですが……」

 

「…すまない」

 

どうやら俺の言葉は彼らの心にエクスカリバーもびっくりな極光の希望を与えてしまったようだ。

おそらく、《変態》兵藤がモテる=変態がモテる時代が到来!!

という、とんでもないポジティブ思考となった彼等は学園の《王子》である木場に勝利宣言をしたのだろう。

二人が暴走する原因を作ってしまった俺は迷惑を掛けた彼に素直に謝り、事情を話した。

 

本当にすまない。

 

「ははは、いやぁ…面を食らってしまいましたが、大丈夫ですよ。

気にしないでください」

 

事情を俺から聞いた彼は苦笑いしながらも、《王子》の名にふさわしい爽やかさで許してくれた。

外見だけではなく、内面も本当によくできた青年である。

高校生の俺と比べたら月とスッポンだ。

 

「それよりもエミヤさん。

部長が呼んでいますので、仕事が終わったら後でいいので、部室に来てもらえますか?」

 

「私は別に構わないが……帰りが遅くなってしまうぞ?

オカルト研究部は女子が多いから、心配なのだが…」

 

「大丈夫です。オカルト研究部は色々と心得がありますから」

 

俺の心配に笑顔で答える木場。

確かに、オカルト研究部は頭脳明晰スポーツ万能のイメージがある。

目の前の彼は、剣道部の猛者達を相手に完勝。

他の部員たちも体育の授業では、好成績を叩き出している。

なるほど…武道か護身術を習っていたからこそ、あの成績か……。

 

しかし、いくら武道に心得があろうとも彼女達や彼は十代の子供だ。

 

「なるほど……では、君たちが早く帰れるように手早く仕事を終えるとしよう。

後、遅くなりそうであれば、帰りは私が送っていくから、オカルト研究部の全員に伝えておきたまえ」

 

「…分かりました。女子全員に伝えておきます。

エミヤさんが送ってくるなら安心ですね」

 

俺の伝言を預かった木場はいつも通りの爽やかな笑顔で去って行った。

やれやれ、さっさと終わらせますか!!

 

 

 

 

仕事を早く終わらせた俺は、早々に旧校舎にあるオカルト研究部の部室へとやって来た。

中に入るとオカルト研究部の新入部員の一年生をはじめとする部員全員が俺を出迎えてくれた。

 

「で?今日は何の用かね?

消火設備も修繕したし、もう当分は修理する物はないと思っていたのだが?」

 

いつも通りに、彼女達に声を掛ける俺だったが、バサァっという音が部室に響いた。

その瞬間……俺は彼女達全員の背中から生えたソレ(・・)を穴が空くほどに凝視した。

 

 

「エミヤシロウ…貴方とは改めて挨拶をさせてもらうわ。

悪魔として……」

 

 

三年間見守って来た生徒達の一人である紅髪の女子生徒が、今までに見た事のない妖艶な微笑みと共に見せた蝙蝠を彷彿とさせる翼。

衝撃はあったが、俺は何処か納得をしていた。

近所で人食いの悪魔が出たり、天使が夜の店を経営している世界だ。

悪魔が学生をしていても不思議ではない。

 

平和だと思っていた世界はやはり、思ったよりも超常で溢れているらしい。

 

「その、落ち着きよう……。

エミヤシロウ。貴方は本当にこちら側の人間……魔術師のようね

報告が間違っていたらこのまま眷属に勧誘しようと思ったのだけど…予定変更ね」

 

大徳寺の事例を思い出し、落ち着きを取り戻した俺を見ていたリアス・グレモリーは妖艶な微笑みから、悪魔らしい冷たい表情へと変わった。

俺は背筋に冷たい物を感じ、何時でも逃げられるように足に力を籠め、握っていた手を広げて投影の準備に入る。

そして……。

 

「どうして、魔術師として正式に挨拶に来なかったの!!」

 

何故か熱い説教が始まった。

 

「ん?」

 

「『ん?』じゃ、ないわよ!この土地は私の活動領域なのよ!

だったら、はぐれだろうと何だろうと魔術師として挨拶に来るのが普通なの!!」

 

珍しく年相応に怒った、リアス・グレモリー。

どうやら、俺の様な魔術師はいかなる理由があろうとも挨拶に来るのが普通らしい。

正直、異世界…しかも、ゲームで活動していた魔術師にそんな事を言われても……と、思う。

しかし、俺の事情を知らない彼女に何かを言った所で、言い訳にしか聞こえないし、高い確率で火に油を注ぐだけになりそうだ。

だったら、ここは大人しく説教を受け、自分は裏の常識に疎い事を素直に話した(のち)に、色々と彼女達から学ばせてもらおう。

 

その後、沸点の低い女性プレイヤーで学んだ処世術を駆使して平謝りし、何とか許してもらえたのはこの30分後ことであった。

 

ちなみに、バレた理由は昨日の壁の修理の際に彼女の使い魔が上空で見ていたかららしい。

なんとも間抜けな話である。

 

 

 

 

「ふう…この件についてはもういいわ。

今後は気を付けなさい」

 

ようやく許しが出た所でホッとしたのも束の間。

彼女は説教から本題へと移行した。

 

「今日、貴方を呼んだのは私の眷属に勧誘する為よ」

 

眷属……。

そういえばそんな事を説教の前に言っていたような……。

説教の長さから、遠い昔に言われた様な感覚に襲われたが、何とか思い出す。

 

しかし、眷属とは何ぞや?

 

「…すまん。私は魔術師としては半人前で、悪魔事情を全く知らない。

少し、手間になるかも知れないが色々と教えてもらえないだろうか?」

 

「あら、そうなの?

だったら初めに言ってくれればよかったのに……」

 

言わせてくれなかったのは君なんだけどな、とは決して口にはしない。

 

「純粋な悪魔は昔の戦争で多くが亡くなってしまったのよ。

そのため、悪魔は必然的に眷属を集めるようになったの。

しかし、以前の様な威厳も力も消失してしまった。

けれど、新しい悪魔を増やさなくては堕天使や天使に対応できない。

そこで、素質のある人間を悪魔に転生させ、眷属に引き込む事にしたの」

 

なるほど、悪魔の世界も人手不足なんだな……。

しみじみと人間を悪魔に変えてまで種を残そうと言う悪魔達の世知辛い事情に同情した俺は、彼女に新たな疑問をぶつけてみた。

 

「世間知らずで申し訳ないのだが……悪魔は一体何と戦争をしたのかね?」

 

「基本中の基を知らないなんて…本当に世間知らずのようね。

魔術師は研究一辺倒の変人が多いけど、貴方はとびっきりね」

 

「いや、私の場合は魔術を習った後、半人前のまま世界に飛び出したからな。

裏事情に関しては完全な素人なのだよ」

 

「……まあ、いいわ」

 

俺の嘘に呆れた表情を浮かべたリアス・グレモリーは表情を切り替え、説明を再開した。

 

「古き時代に悪魔・天使・堕天使の勢力が三すくみとなって大きな戦争を起こしたの。

結果は勝利もなければ敗北もない。

三勢力は大きく力を激減させ、戦争を続ける力も無くなって終戦したわ。」

 

「なるほど……理解した」

 

「じゃあ、眷属の話に戻すけど…どうかしら?」

 

この世界の裏側と人手不足で世知辛い悪魔事情を理解した俺は、改めて眷属に関して考え……。

 

今は(・・)無理だな」

 

眷属の話を断る事にした。

 

 

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