ハイスクールD×D-魔法漢女に拉致された偽物が歩む道ー   作:マッシュ

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8話

休みが明けの放課後、俺はグラウンドでの部活の練習に励む生徒達をただ、何も考えずに眺めていた。

 

俺がこうなった原因は学園に登校してきた兵藤が何故か微弱な魔力を宿し、隣を歩いている元浜と松田が兵藤の彼女を知らないと言っていた事が発端だった。

 

学園で流行っていた兵藤の彼女に関する噂の消失。

数日前まで、泣きながら俺に愚痴っていた元浜と松田が、覚えていない異常事態。

 

俺はこういった現象に詳しいであろう、リアス・グレモリーの元へと速足で向かい、そこで聞かされた事に耳を疑った。

 

生徒達は堕天使に記憶を消され、肝心の兵藤は堕天使に殺されてリアス・グレモリーの眷属悪魔に転生したと言うのだ。

もう、何を言っていいのか分からない。

 

ただ、これは悪魔の領分であり、自分ではどうにもできない事態である事は分かった。

俺は、自身の無力さに肩を落としながらリアス・グレモリーに対価を支払った後、自宅へと帰った。

 

チートな肉体があろうとも、俺は誰かのヒーローになる事は出来ないのだと痛感した。

 

 

 

 

家に戻った俺は、いつも通りに料理を作って黒歌と夕食を共にする。

特に変わらぬ日常であるが、兵藤の様な事が何時(いつ)自分の身に降りかかるかと思うと憂鬱になる。

 

「にゃ!?」

 

そんな事を考えて居ると、食事が終わってテレビを見ながら寛いでいた黒歌がいきなり何かに反応して猫の姿へと変身した。

久々の猫の姿に懐かしさを覚えると同時に何があったのだろうかと、疑問が浮かぶ。

 

「どうかしたのかね?」

 

気になった俺が質問をすると黒歌は一目散にリビングから逃げ出した。

あ……もしかして、この反応は……。

なんとなく察した俺は、湯呑のお茶を飲み、自分を落ち着かせて心の準備を整える。

短い平和だったな……。

 

『エミヤ君!お土産を持ってきたので開けてくれないか!?』

 

玄関先から聞こえる野太い声の主に溜息を吐きながら、俺は玄関へと向かった。

 

魔法漢女《ミルたん》……大徳寺の帰還である。

 

 

 

 

玄関扉を開けると、白い歯をキラリと輝かせ両手いっぱいにお土産を持った大徳寺が姿を現す。

修行の成果が出ているのか、腕周りや胸筋がさらに発達しているよう印象だ。

魔法少女の修行をしていたはずなのに、なんで筋肉が発達するのだろうか?

相も変わらぬ超生物である彼をリビングへと招き入れた俺は彼の土産話を聞いていた。

 

「HAHAHA!!修行先で満月でしか活躍できないムーンの代理を見つける事が出来て我々のパワーアップは大成功さ!!」

 

「そ、そうか……」

 

正直、彼の言葉で心が乱れそうだ。

 

「しかも!天使であるハー姉さんの修行のお陰で、我々はそれぞれに合った魔法を身に着ける事に出来たのだ。

癒し系を目指す私が《回復魔法》を覚えられるなんて、とても嬉しかったよ!」

 

「ああ……DVDの最後で使っていたアレ(・・)か」

 

長年の夢が叶い、嬉しそうに話す彼には悪いが魔法を使っているシーンを思い出し、軽く眩暈がする。

あの《回復魔法》を受けていた敵には激しく同情した。

あれ(・・)は、肉体を回復させる代わりに精神を殺しに行く《回復魔崩》だ。

 

「そうさ!あの《回復魔法》のお陰で、今日は堕天使に襲われていた一人の少年悪魔君を救う事が出来たんだよ!!」

 

少年悪魔君?

悪魔や堕天使と戦う彼の言葉から悪魔を救ったと聞いた俺はよく理解が出来なかった。

 

「そ、そうか……。

ん?少年悪魔君?悪魔は敵ではなかったのかね?」

 

「いや…ハー姉さんの話によると今時の悪魔は人間に害を与えるものが少ないらしいのだよ。

敵になる悪魔は人間を食らう、はぐれ悪魔と呼ばれる者と人間を無理矢理にも眷属にしようとする連中ぐらいさ」

 

「なるほど……」

 

無差別に狙っているわけではないと分かった俺は心の底から安堵した。

これで悪魔と契約している俺とオカルト研究部と生徒会に所属する生徒達の心の安全は保障される。

だが、そうなると話に出て来た少年悪魔君の精神が心配になって来る。

 

「で?話を戻すが、少年悪魔君はどうなったのかね?」

 

「堕天使が作り出した光の槍でお腹に穴が空いていたからね。

意識を失って死に掛けていたから、念入(・・)りに《回復魔法》を使って穴を塞いだ後、彼の主と思われる悪魔の魔法陣を見て置いてきた」

 

「それは、よかった」

 

俺は大徳寺の答えに悪魔君の幸運に喜んだ。

どんな行為が行われていた事を知らずに生き残った少年悪魔君は本当に運がいい。

出来れば、その幸運を分けて欲しいくらいだ。

 

「確かに彼が一命をとりとめたのは嬉しかったのだが……」

 

「ん?」

 

「私の胸を揉みながら幸せそうな顔をしていたのだよ。

悪魔とは、あまり親の愛情を受けないものなのだろうかと心配になった」

 

…………。

俺はその少年悪魔君が真実を知る日がない事を心の底から願った。

それから、彼らがエレベストの頂上で行ったとんでも修行やアメリカやパリでの活躍話を酒のつまみに楽しんだ後、お開きとなった。

 

 

この翌日、学園に出勤した俺は校門前の掃き掃除を行っていた。

 

「エミヤさん。おはようございます!」

 

「ああ、おはよう」

 

生徒達の挨拶を返しながら、休まずに箒を動かす。

今日は快晴でとても心地いい。

もしかしたら今日は何かいい事が起るかもしれないな。

 

だが……。

俺のささやかな幸せは一瞬で壊れた。

 

校舎に向けて歩いていた生徒達が後ろを振り向き、視線を厳しくさせている。

中には絶望した表情を浮かべ、涙を泣かしている生徒も少なくない。

一体何が起ったのだろうか?

 

生徒の視線の先が気になった俺は後ろを振り返った。

振り返ると生徒達は二人の生徒達を見て怨霊の様な声が漏れる。

 

「どうしてあんな奴が……」

 

「リアスお姉さまがあんな変態男と……」

 

そんな、朝から飛んでもない注目を集めているのが……。

リアス・グレモリーと兵藤だ。

兵藤がリアス・グレモリーの鞄を持ち、まるで従者の様に付き添って登校している。

アイツ、悪魔とはいえ学園のアイドルと何時の間に……。

いや、彼は彼女の眷属悪魔。

よく、考えたらこれぐらい普通だな。

 

妙な組み合わせに、一瞬だけ驚いた俺だったが、直ぐに何事もなかったかの様に仕事を再開した。

 

ちなみにその後、リアス・グレモリーと別れた兵藤がドヤ顔で『俺は夢の中で極上の乳を揉んだ』と元浜と松田に自慢して松田と元浜が『夢に出る程に先輩の乳を揉んだのか!?』と、戦慄していた。

 

 

 

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