STAGE1 夢幻夜行絵巻 Mystic Flier
「……気持ちいいわね」
空を飛ぶ霊夢の周囲を取り囲む、大量の妖精たち。
普段でこそ何の脅威にもならない人畜無害な妖精だが、今夜の妖精は少々違った。異変で興奮している妖精は好戦的だ。一人一人の力は大したこと無いが、自然から生み出される妖精は倒しても倒しても『一回休み』ですぐ戻ってきてしまう。
囲まれればただの人ではひとたまりもない。人里の妖怪退治を生業としている者でも一筋縄ではいかないだろう。
しかしながら霊夢は──夜空を眺めて星を楽しみながら戦うくらいには余裕だった。
自らに飛んで来る弾幕は危なげなく避け、逆に自分が放つお札は全て妖精に命中させている。その様はまさに異変解決のエキスパート、博麗の巫女といえるだろう。……最も妖精風情で苦戦しているようでは大妖怪と謳われる存在を倒すなんて夢のまた夢。霊夢にとっては妖精など雑魚でしかなかった。
神社を出てから五分後、周囲の妖精たちを一通り戦闘不能にさせた霊夢は辺りを見渡して小さな溜息をついていた。
「はぁ、こんな事ならもっと早く出発しとけば良かったわね。暗くてどこに行けばいいかも分からないわ」
霊夢が神社を出発したのは夕暮れ時だったが、異変の主を探し彷徨っている間にすっかり日は沈んでしまっていた。いつも通り博麗の勘で異変解決まで持っていこうと思っていた霊夢だが、自分がいる場所すら分からないのでは流石の博麗の勘もあてにならない。
「……まぁ夜の空中散歩ってのもロマンチックでいいか」
「そうね〜 お化けも出るし、たまんないわ」
霊夢の呑気な独り言に応える声が一つ。
特に驚いた様子もなくいつも通りの仏頂面で振り返った霊夢の瞳には、いつのまにか現れた金髪の少女がうつっていた。
『宵闇の妖怪 ルーミア』
それが闇を操るというラスボスちっくな程度の能力を持つ彼女の名前だ。そんな能力に反して彼女自身の実力は大したことない。が、人食い妖怪として知られている危険な妖怪の一人だ。
最も霊夢はそんな弱小妖怪を知らない。よって──
「ってあんた誰?」
「さっきあったじゃない。あんた鳥目?」
こうなるわけだ。
イラっときた霊夢は少し強めの口調で反撃する。
「人は暗いとこじゃものがよく見えないのよ。あんた達妖怪と違ってね」
「へぇ...妖怪だってわかったんだ」
「あんたあたしのこと馬鹿にしてる?」
「別にー 話を戻すけど夜しか活動できない人間も見たことある気がするわ」
まさに一触即発といった雰囲気。霊夢が少々短気というのもあるがルーミアの煽りスキルは中々のものだった。──更にいうならば危機察知能力と退き際を見極める力もだ。
霊夢は頰を引きつらせた。そして一瞬の後、構えかけていたお札を戻し会話に応じる。
「それは食べてもいい人類よ」
「そーなのか……」
霊夢の皮肉にお得意の決め台詞、「そーなのかー」で返すルーミア。しかしその決め台詞は微妙に元気がなかった。
(元気ないわね…… 大丈夫かしら?)
実は面倒見が良い霊夢がルーミアを心配していたという事実は誰も知らない。
「じゃあ早「目の前の紅白が食べてもいい人類?」
空気が変わる。
幼い、無邪気な雰囲気を纏っていたルーミアは、冷たさと狂気が入り乱れる雰囲気を纏う『宵闇の妖怪 ルーミア』へと変貌した。
そして対する霊夢は一度しまったお札を再び構え、ルーミアを鋭く睨む。本能が告げていた。この妖怪は──危険だと。
「良薬は口に苦しって言葉知ってる?」
霊夢が言い終えると同時に──戦いは始まった。
ルーミア登場です。折角ですからここは本家様のネタを使わせてもらいました。元ネタが気になる方は「こんな東方は嫌だ」でググって下さい。1ヶ月分笑わせてもらえるでしょう。
霊夢にするか魔理沙にするかは迷いましたが、ルーミア戦は我らが博麗の巫女に任せておくことにしました。次回、「こんな一面ボスは嫌だ!!」お楽しみに