カチューシャと愛里寿の朝鮮戦争 Ep.1 北鮮軍地吹雪の電撃的奇襲、ソウル占領「栄光の大祖国戦争の勝利、ソウル解放!」 作:Brahma
【推奨BGM;ボラー連邦の奇襲orソビエトマーチ】
1950年6月25日早朝。ソウルのやや北方の山野には濃い霧が立ち込め、静粛そのものであった。
ドガーン、ドガーン、ドガーン、ヒューン、ヒューン、ドガーン、ドガーン、ドガーン
北朝鮮軍の砲600門、迫撃砲1000門が一斉に火を噴く。
「信号弾あげーい。」
「第4師団、信号弾確認。砲撃開始。」
ドガーン、ドガーン、ドガーン、ヒューン、ヒューン、ドガーン、ドガーン、ドガーン
「第3師団、信号弾確認。砲撃開始。」
「なんだ、何が起こった。」
韓国軍の陣地は慌てふためく。
「き、北の攻撃です。」
北朝鮮の第105機甲旅団は、第109機甲連隊、第203機甲連隊、第107機甲連隊に分かれてT34/85の大軍が怒涛のように38度線を越えていった。
【推奨BGM;ボラー連邦の奇襲orソビエトマーチ】おわり
「蔡参謀総長、第17連隊より報告。北の攻撃を受けて現在壊滅の危機です。」
「なんだと??全軍に非常呼集だ。」
午前7時、第一師団長白善燁大佐の自宅にも電話がかかってくる。
「白師団長でいらっしゃいますか。」
「そうだ。」
「緊急事態です。本日未明、北の大軍が大砲を伴って進軍、開城を攻め落とし、高浪浦でなおも戦闘中です。」
「わかった。直ちに司令部へ向かう。各部隊は、予定された壕に入るよう指示せよ。指令部は手順通り坡州の国民学校まで前進する。崔慶禄大佐はどこにいるか?」
「崔大佐は。市内のご自宅です。連絡が取れません。」
「では、自分が崔大佐を拾っていく。」
白大佐は、陸軍本部へ向かおうとする。当時はタクシーなどは簡単にひろえない。白大佐は通りがかりの車に声をかけた。
「すまないが、乗せてくれ。」
「軍人さんか。お急ぎのようだがどこまで?」
「龍山郵便局の陸軍本部までだ。」
「わかった。」
午前8時ごろだった。
「うい~。」
「なんだ、その態度は。」
「昨日、陸軍会館の落成式があったんですよ。遅くまで飲んでいたものだから。」
「こまったものだな。今どういう状況かわかっているのか。」
「なんすか。なんか隕石でも降ってきたんですか。」
「北の攻撃だ、」
「なんだって。いっぺんに酔いがさめた。どうなっているんだ。」
陸軍本部も将校たちが右往左往していた。白大佐が二階へ行くまで7,8人と肩がぶつかったという。
「蔡参謀総長」
「なんだ。」
「第一師団の指揮をとってよろしいでしょうか?」
「こんなときにのんきなことを!早く行け。」
「了解。」
「第二師団、第三師団、第五師団にソウルに集結するように命じる。」
白大佐は、ソウルの北西、水色の第一師団司令部へ向かおうとするが、やはり足がない。
「ロイド中佐。」
「白大佐、なにごとかね。」
「緊急事態です。北が攻め込んできました。」
「なんだと。」
「崔大佐のところへいきます。」
「わかった。」
「どうしたんだ。お二人とも。日曜日の朝ですよ。」
「崔大佐、緊急事態だ、北が攻めてきた。開城はすでに陥落、北は大砲や戦車をともなって進撃中だ。」
水色の司令部には、第六砲兵大隊の盧載鉉中佐と指弾通信中隊長の薫弘旭大尉が玄関口で待っていた。
「水色の部隊は半数が外出中。非常呼集で呼び集めています。」
「土曜日に外泊を許可したのか。どうして...。」
「師団長、金曜日の24時に警戒待機が解除されまして、外泊、休暇の許可をだしたのです。こんなことになるとはおもいませんでしたので...。」
「まさか第12連隊や第13連隊も...。」
「師団長、がっかりしないでください。第13連隊の第一大隊は、紫下里で、野営中ですから敵に立ち向かえます。みんなすぐに集まってきます。」
午前8時半ごろである。
「蔡参謀総長、今度は第七師団から緊急電報です。」
「なになに、北朝鮮が猛砲撃を繰り返し、大軍が進撃している。敵は陣地の主要部に侵入、守り切れない。至急来援を請う、だと?。」
午前9時半ごろ
「張昌国作戦局長。おそいですぞ。」
「おそくなりました。すみません。蔡総長。」
「第一師団は、臨津江南岸の陣地で敵戦車隊と遭遇、なおも交戦中。」
「第七師団第一連隊が突破されましたが、第二連隊が東豆川と抱川北岸で敵戦車隊と交戦中。」
午前10時
「大統領。」
「何事かね。」
「北が攻めてきました。一師団は、臨津江南岸の陣地で敵戦車隊と遭遇し、交戦中。第七師団第一連隊が突破されましたが、第二連隊が東豆川と抱川北岸で敵戦車隊となおも交戦中。」
「そうか。ここは安全なのか?」
「なんともいえません。」
「逃げるのだ。金喀秋莎は真っ先にわしの身柄を狙うだろう。死刑にされるかよくて捕虜だろう、わしは死にとうないし、北の捕虜なんかになりとうない。ソウルを明日には退去するぞ。したくしてくれ。」
このことは李承晩はかくそうとしたが、あっという間に市民レベルにひろがった。
ある新聞社で、ある記者が話はじめた。
「鉄道会社に勤める友人が言っていたな。大統領は明日未明退去する予定だそうだ。」
それを聞きつけた近くの同僚たちはいっせいに
「まさか」と口にだした。
「どうした?」
さらにそれを聞きつけたと同僚たちが寄ってくる。
「大統領が逃げるそうだ。これは鉄道の情報だから絶対だ。鉄道をおさえない限り、遠くへは逃げるられないからな。」
「大統領が逃げるだって?それじゃあソウルの命脈がつきたも同然じゃないか。」
「そうだ、やつらはソウル市内を蹂躙した後、テレビ・新聞・ラジオの接収にかかるだろう。われわれは新聞を出せなくなる。それからどうなるか...想像するだけでも恐ろしいな。」
「いっそ、大統領にならって...。」
「市民に事実を知らせないうちに脱出するのか?それでは、大統領のことをとやかく言えないぞ。」
「そういったことは政府や軍部が考えるべきことだ。」
記者たちは報道すべきかどうか議論をはじめた。しかし、情報に通じている自分たちは、北の連中にとっては不都合だ、粛清されないよう身の安全のために逃げるしかない、との結論に達した。記者たちはどう逃げようかの算段をはじめた。
【推奨BGM;ボラー連邦の奇襲】
一方、開城の東方24km、高浪浦は、北朝鮮第203戦車連隊を率いる崔光少将の攻撃を受けていた。
「よし!撃て!」
「李一味の傀儡軍をたたきのめし、どちらに正義があるか明らかにするのだ。」
「マンセー、マンセー、ウオオオオオ...。」
四十台のT34/85がつきすすんでいく。
此処を守っていたのは第1師団の第13連隊であった。
「37ミリ対戦車砲だ。これで撃て。」
「了解。」
兵士たちはそれぞれ戦車を狙って撃つ。
爆音が響き、砲弾が戦車にあたるが
キーン
カーン
かえってきたのは、砲弾が空しく弾き飛ばされる音ばかりだった。