彼が繋ぎ、ともに紡ぎ、生まれ変わる   作:歌詠

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どうして日本は暑いのか


7話 地に咲く花への願い

  球技大会から一日が経った。 

 

 バレーボールのネットよりも高く跳躍するという、綱吉の新しい雄志を心に刻みつけながらも、大会は無事に終了した。

 俺は選手や体育委員でもなかったので、クラスの応援ぐらいしかやることもなかった。しかし、チームで団結して必死にボールにしがみつく選手や、それを力づける声援を送る少年少女達の姿に、気が付けば途中から俺まで夢中になって、声を張り上げていたような気もする。

 見た目は中学生だが自分の年齢を考えると、昨日は少しはしゃぎ過ぎたかもしれない。

 

 

「・・・肉体に精神が引きずられてる気がするなぁ」

 

 

 正確には『魂』が、と言った方が正しいのかもしれないが。

 しかし、この器に慣れすぎるのは些か危険だ。

 元の自分を忘れてしまう可能性がある。

 少し、気をつけた方がよさそうだ。

 学習机の上の資料を纏めながら、自分の在り方について少し真面目に考える。

 

 

「・・・って、少し急いだ方がいいか」

 

『マスター以外の委員は、既に集まってるみたいだよ』

 

「やっば、のんびり作業しすぎたか」

 

 

 今日は美化委員会の活動日だ。

 ホチキスで止められた『緑化委員会 引き継ぎ資料』と記された紙束をプラスチックのファイルに入れて、椅子から立ち上がる。

 

 数日前に俺は、入院している緑化委員の3人の生徒の元へ、委員会の仕事内容の確認の為に、見舞いに行った。彼等は委員会の主要メンバーだったらしく、怪我で入院すると共に、緑化委員会は仕事が出来なくなったとかで、解体されてしまったらしい。

 学校の敷地内で不良に襲われたらしく、「おい、風紀委員仕事しろよ」案件だった。

 

 

『酷い怪我だったよな・・・これが人間のやることかよってレベルで』

 

『・・・・・・あの怪我の特徴からして、使われた得物は恐らくトンファ───』

 

『きっと複数人の不良に囲まれて、リンチにされたんだろうな・・・こういう時の為の風紀委員だろうに、雲雀は何をやってるんだ』

 

『・・・・・・』

 

『ん?どうかしたか、エルキドゥ』

 

『いや・・・うん、何でもないよ』

 

 

 何故だか優しく微笑まれたのだが、解せぬ。

 俺はなにか変なことでも言っただろうかと、疑問符を浮かべるが、結局答えは出なかった。

 

 集合場所の花壇を目指し足を動かし始める。

 緑化委員会が今年から始めようとしていた、校内緑化計画を引き継いだ関係上、学校敷地内の花壇の整備も美化委員会の仕事である。

 仕事量が増えたのも、美化委員の人気を落とす原因になったのかもしれないが、中には花が好きだとかいう理由で立候補した生徒もいる。

 まあ一口で言えば、やりがいのある委員会になったというわけだ。

 

 校舎を出て、中庭を進む。

 一頻り歩くと、花壇の前で屯する委員生達が目に入った。

 

 

「・・・ん?」

 

 

 声をかける為近づこうとしたが、思わず立ち止まる。

  そして、彼らの醸成する雰囲気に違和感を感じ、眉を顰めた。どこか、様子がおかしい、皆一様に俯き、その表情は暗い。

 俺の到着が遅いから、怒らせてしまったのか?

 いいや、それはないか。たった数分遅れた程度で、あのような表情は作らないだろう。

 

 

「・・・ええっと、何かあったのか。みんな表情暗い、ぞ──」

 

「委員長・・・」

 

 

 何があったのかと問いかけようとして、その言葉は宙に消える。

 目に入った光景に、一瞬で、全てを理解させられたからである。

 

 

「・・・・・・なんだよ、これ」

 

 

 花壇が、無くなっていた。

 

 全部で4箇所あったはずの、煉瓦区切りの花壇の全てが、跡形もなく姿を消していた。

 数日前に咲いたばかりのパンジーも、桃色のコスモスも、甘い匂いを発していたゼラニウムも──やっとの思いで形に出来た、彩り鮮やかな花の台座は、泥と煉瓦の破片で滅茶苦茶にされている。

 見るも無惨とはこのことか、元の美しい花壇の原型など微塵も残ってはいない。

 

 

「酷いです・・・こんなのあんまりですよ!そりゃあ私達だって最初は嫌々でしたけど、蕾が開く前から花を植えて、水やりとか雑草抜きとか、毎日頑張って育ててきたのに・・・」

 

「今日の朝、僕が水やりをしたときは、まだ荒らされてませんでした・・・誰がこんな酷いことを・・・」

 

「なんだよ、悪戯とか嫌がらせにしたって、これは流石にないだろ、有り得ねぇだろ・・・こんなことしたって、何にもなんねえじゃねーのかよ」

 

 

 悲痛な彼らの声を聞き、その度に心臓にフォークが刺さるような感覚がした。

 胸が痛い、やるせない・・・そして何よりも悔しかった。

 雨の日も風の日も、綺麗な花へと成長してほしいと願いながら、精一杯育ててきた、地に根を張る、小さな花々。それが全て、花弁の一片も残さず消えしまった。

 あまりのショックで何も言えなくなり、空間に木霊する、委員生達の激しい嘆きを聞くだけしかできない。

 

 

「踏んだり、手で引っこ抜いたりとか、そういう次元じゃねぇよ・・・まるで爆弾で吹き飛ばしたかのような有様だぜ、これだと・・・」

 

「・・・・・・・・・爆弾」

 

 

 一つ上の生徒が口にした言葉に、思い当たる点を見つけてしまう。

 普通なら有り得ない話だが、法に反するその爆発物を持ち歩いている人物に、心当たりがあったのだ。

 

 

「・・・皆、今日の委員会活動は中止にする。今後の活動は明日連絡するから、このまま帰ってゆっくり休んでほしい」

 

「でも・・・この煉瓦の破片とか片づけないと、危ないんじゃ・・・先生にも報告しないとだし」

 

「犯人は探さないんですか!このまま野放しにするなんて私、絶対嫌ですよ・・・!」

 

「先生にはこの後報告しに行く、ここの掃除は俺がやっとくから・・・犯人捜索は・・・風紀委員に頼もう。もし、本当にこの惨状を作った奴が爆発物を持っていたとしたら、俺達だと危険すぎる」

 

「・・・それは・・・そう、ですね。わかりました・・・ごめんなさい委員長、私、今日はもう帰りますね」

 

「僕も帰ります・・・今すぐにここを片付けられる元気がもうないので」

 

「あぁ、お疲れ様」

 

 

 生徒達は近くに置かれた、各々の学校鞄を手に取って、この場から立ち去った。

 上級生の中には、何人か一緒に残って片付けをすると言ってくれた方がいたが、明日手伝って欲しいと返せば、すぐに了承して帰り支度を始めた。

 

 

「・・・さて」

 

 

 生徒達が居なくなったのを皮切りに、俺は花壇だったものに向き直る。

 犯人が、彼だと決めつけるのは早計だ。

 じっくりと周囲を観察する。

 僅かに焦げた煉瓦、特徴的な・・・甘い香り、へこんだ地面、様々な情報を頭に叩き込む。

 

 

『マスター、目標人物を捕捉したよ。大空の彼と、アルコバレーノの赤ん坊が一緒にいるようだ』

 

『・・・あぁ、ありがとうエルキドゥ』

 

 

 静かに感謝の言葉を述べて、俺は一度、大きく深呼吸をした。

 地に着く足から感じる、万物を載せる大地の神気。喉が痛くなるほど乾燥した、重苦しい大気の纏まり。

 自らを周囲と一体化させる心象を浮かべ、その肉体に神秘を司る。

 

 

「“形態変化(カンピオ・フォルマ)”」

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 住宅街に伸びる公道を、2人の中学生と、1人の赤ん坊が歩いている。

 制服を着崩した銀髪の中学生、獄寺隼人(ごくでらはやと)は興奮した様子で口を開く。

 

 

「お見逸れしました十代目!まさか素手で導火線の火を消すなんて!今まであの様にダイナマイトの爆破を止められたことはありませんでした!」

 

「あはは、俺が一番驚いてるよ・・・いてて・・・」

 

 

 綱吉は死ぬ気になった自分の行動を思い出し、苦笑いを浮かべる。

 大量のダイナマイトの投擲に失敗し、自爆しかけた獄寺を、綱吉は死ぬ気になることで間一髪救ったのだった。

 しかし、死ぬ気弾をリボーンに撃たれたせいで、綱吉の身体は酷い筋肉痛に見舞われていた。

 

 

「スマートじゃなかったが、まずまずの動きだったぞ、ツナ」

 

「褒められてるのに、嬉しくないよ・・・」

 

 

 肩を落として綱吉は薄く息を吐く。

 家庭教師の、当たり前のように行われるスパルタ教育が、主な疲れの原因である。

 今日はもう、早く帰って休みたい。

 重い足取りでトボトボと歩く綱吉と、嬉しそうについて行く獄寺、そして読めない表情をするリボーン。彼等は賑やかに会話を弾ませながら帰路を進む。

 

 突如、そんな彼等の間に、一陣の風が通り抜けた。

 

 

「うわっ!」

 

「・・・十代目、俺の後ろに!」

 

 

 粉塵が目に入らぬように手を構える綱吉を、獄寺は庇うように前に立つ。

 激しく吹き荒ぶ気流が徐々に収まると、彼等の手前数メートル先に、1人の人間が佇んでいた。

 人生で始めて感じる、圧倒的な存在感を肌に受け、綱吉と獄寺は萎縮する。

 

 

「お前は・・・」

 

 

 リボーンの口から、警戒心の混じった声が漏れる。

 肩まで伸びる艶やかな緑青色の髪、質素だが決して粗末ではない純白の貫頭衣。

 趣味の悪い雑な仮面を被っている為、表情は見えない。

 そこには人間の形をした、人成らざるナニカが顕現していた。

 

 

「・・・俺の名前は"ジ・アース仮面"。大地に根を張り、民の営みを守る、この星の精霊だ」

 

「・・・せ、精霊?」

 

「いや、どうみても不審し──」

 

「コホン!俺の事はどうでもいい、そこの銀髪、お前に用がある」

 

「何だと・・・てめぇ、まさか新手の殺し屋か」

 

 

 仮面の人物は勢いよく、獄寺を指で指す。

 身を竦ませていた獄寺は、冷や汗をかきながらも臨戦態勢に入った。

 

 ──こいつは、ヤバイ。

 僅かでも油断を見せれば、勝負は一瞬でつくだろう。

 殺られる前に殺る必要がある。獄寺はそう結論づけた。

 ピリピリと空気が揺れ、刹那の静寂が訪れる。

 

 

 

「──とりあえず、逝っとけッ!」

 

「獄寺君!?」

 

 

 初めに動いたのは獄寺だった。

 綱吉が静止するまもなく、彼は隠し持っていたダイナマイトを、仮面の人物に向って投げ放つ。

 ドガンッ!!と爆音を轟かせて、爆薬が破裂する。

 

 

「殺ったか・・?」

 

 

 眉間に皺を刻みながら、彼は確認するように呟く。

 手応えは有った。確実に己の爆撃は目標を捉えた。

 

 

「・・・え?」

 

 

 呆然と綱吉が声を漏らす。

 自分が動く暇もなく、目の前で行われた殺人に驚愕した訳ではない。

 

 ダイナマイトの爆風に晒されたハズの人物が()()()()()()()

 

 

「なッ・・・何処に──」

 

「──嗚呼、やっぱりお前が犯人か」

 

「ッ!!」

 

 

 己の背後から聞こえた中性的な、無機質な声に、獄寺は目を見開く。

 心臓が激しく鼓動し初め、尋常ではない量の汗が、滝の様に流れ始める。

 

 

「爆破の及ぶ範囲、甘いニトログリセリンの香り・・・他にも合致する特徴から、獄寺隼人、お前が花壇を荒らした犯人だと結論づける」

 

「いつの間に、後ろに・・・!」

 

「・・・やべーな」

 

「クソッ!今度こそ・・・!」

 

 

 再び獄寺はダイナマイトを取り出そうとする。

 

 

「させるかよ・・・"民の叡智(エイジ・オブ・バビロン)"!」

 

 

 仮面の放った言葉と同時に、地面から数十本を超える植物の蔓が、蛇の如く射出される。

 異様なのは、コンクリートの地面を突き破ることなく蔓が生み出される事だろうか。

 次々に現れた蔓は、獄寺に巻き付き、ギリギリと締め上げ自由を奪う。

 

 

「ぐぅッ・・・!何だこの蔓、生きて・・・!?」

 

「・・・お前は踏みにじった、多くの生徒の努力と、願いを────"仮想宝具限定展開"」

 

 

 その言葉には、僅かに怒りが滲んでいた。

 仮面は、ゆっくりと右手を獄寺に向けて開き、復讐の名の下に、叫びを上げる。

 

 

 

「これは憎悪によって磨かれた、我が魂の咆吼・・・"吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)"!!」

 

 

 蔓の根元から、まるで導火線のように、赤黒い炎が巻き上がった。

 蔓に囚われた者は、その紅蓮から逃れることは叶わない。

 

 

「がッ、ああぁぁァあぁアああぁぁぁ!!??」

 

「獄寺君ッ!!────リボーンッ!!!」

 

「ッチ、一日に二度目の死ぬ気弾──耐えろよ、ツナ」

 

 

 リボーンの手に握られたレオンが、黒く光る拳銃へと姿を変え、綱吉の頭を撃ち抜く弾丸が射出された。綱吉の額に橙色の炎が灯り、衣服が千切れ、霧散する。

 

 

復活(リ・ボーン)ッ!!死ぬ気で獄寺君を助け出す!!」

 

 

 死ぬ気になった綱吉は、燃え盛る獄寺の元へ、地面を強く蹴る。

 

 

「うおおぉぉぉぉッ!!」

 

 

 そして幾重にも絡まり、獄寺を拘束する植物の蔓を掴んで、一気に引き裂いた。

 両の手で足りないのなら、自らの牙も使い、噛みちぎっていく。

 何度も、何度もそれを繰り返し、そして全ての蔓から獄寺を救出した。

 

 

「ハァ、ハァ・・・あれ、この炎熱くない・・・?」

 

 

 本日二度目の死ぬ気ということもあり、綱吉の額の炎は、直ぐに消滅した。

 未だ燃え続ける獄寺の炎を消そうとして、その火に熱が無いことに気が付く。

 

 

「その灯火は、炎にあって炎にあらず・・・燃やすのは人の不正や汚濁、独善──というのがオリジナルの効果だが、似たような効果は発揮できているだろう」

 

「どういう、こと?」

 

「・・・じゅうだい、め・・・」

 

「!獄寺君、炎が・・・!」

 

 

 燃やす源を失ったのか、彼に纏わり付いていた炎は弱々しく縮まり、やがて空気に溶けて消えた。

 地面に座り込む獄寺は懊悩し、朧気な瞳を見せながら、口を開いた。

 

 

「・・・炎の中にいるとき、頭に映像が流れてきて・・・並中の生徒が花を植えたり、水をやったり・・・壊れた花壇の前で叫んだりしている光景が・・・ぐッ・・・」

 

「壊れた、花壇?────それって・・・!!」

 

「・・・ツナ、何か知ってんのか」

 

「確か色葉が・・・美化委員会が今年から、花壇で花を育ててるって話をしてて・・・あの場所だ!さっき、獄寺君が出会い頭にダイナマイトを投げてきた所の、直ぐ近くにあったハズだよ!美化委員の作った花壇が!」

 

 

 取り乱しながら、幼馴染みが話していた委員会の仕事内容について、思い当たる限りに説明する。

 それを聞いて、獄寺は顔を青くした。

 

 

「俺は・・・クソ、そういうことかよ・・・」

 

「彼等の無念は伝わったか?」

 

「・・・あぁ、今回は・・・俺の不注意だった」

 

「今回は、か。これまでも同じ様に、誰かの大切なモノを壊してきたんじゃないのか」

 

「・・・・・・」

 

「まぁ、反省したのならもういいさ・・・俺も少し、やり過ぎた。悪かったよ、ストーキング・ボム」

 

「スモーキング・ボムだっ!!・・・謝るんじゃねぇ、手間を掛けさせたな、変態仮面」

 

「・・・お前も間違えてるぞ、俺は変態じゃない」

 

 

 抗議の声を上げながら、仮面の人物は彼等に背を向ける。

 そして姿を現したときのように、暴風が綱吉達を包み、風の勢いが弱まった頃には仮面は何処かへと消えていた。

 

 

「・・・本当に、精霊だったのかな」

 

「そうかもしれませんね・・・あの、十代目。申し訳ないんですけど俺、並中に戻ります」

 

「そう言うと思ってた。俺も行くよ、人手が足りないかもだし」

 

「・・・十代目っ!有り難うござます!」

 

 

 彼等は幾つか言葉を交わしながら、来た道を戻ろうと、立ち上がる。

 綱吉はカバンに入っていた体操着に着替え、獄寺はダイナマイトを見つめながら、何やら考えを巡らせる。

 

 

「・・・緑色の髪に、白い衣、中性的な声音に、男の口調・・・」

 

 

 ボルサリーノを深く被りながら、リボーンは自らの記憶の中にある情報を想起する。

 合致する特徴を複数上げ、そして1人の人物に行き当たる。

 

 

「・・・フェイカー、家光の言っていた謎の人物・・・まさか日本で会うことになるとはな」

 

 

 先程まで、その人物がいた場所を見つめながら、小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「おっと・・・うーん、随分と錆び付いてるな、このスコップ」

 

 

 普段花壇を整備する為に使用している、小さなスコップでは効率が悪いと思い、大きな物を倉庫から出してきたのだが、結構な年代物だったようだ。

 デコボコの地面の土に混じる煉瓦の破片を取り除きつつ、土を掘って平面にしていく。

 今日中には終らないだろうと思い、どのように作業を進めるか考えようとして、近づいてくる足音に気が付いた。

 

 

「色葉ー!俺達も手伝うよ」

 

「綱吉・・・と、そっちの銀髪は?」

 

「・・・・・・」

 

 

 話しかけると、ビクリと肩を振るわせて、銀髪の男は逡巡した。

 しかし、躊躇いを断ち切るように目を見開いて、彼は大きく口を開いた。

 

 

 

「済まなかったッ・・・!!」

 

 

 それは、誠意の籠もった、心からの謝罪と後悔の声だった。

 暫く沈黙し、俺は問いかける。

 

 

「・・・・・・何がだ?」

 

「俺が、お前達の作った花壇を駄目にした犯人だ・・・本当に悪かった・・・許してくれとは言わねぇ、だが、花壇を元に戻すために、手伝わせてほしい」

 

「・・・・・・」

 

 

 腰を折って必死に言葉を紡ぐ、覚悟に満ちた彼の言の葉。

 その一つ一つが、自責の念に満ちたものだというのは、誰の目で見ても明らかだった。

 心配そうに此方に視線を向ける綱吉と目が合い、俺は息をついた。

 未だ顔を上げない銀髪の方に向き直り、声を掛ける。

 

 

「お前、名前は」

 

「獄寺隼人だ。昨日、じゅうだ・・・沢田さんのクラスに転校してきた」

 

「獄寺か・・・うん、分かったよ。反省してるみたいだし、誠意のある謝罪の言葉も貰った。

 俺はもう責めないことにする・・・他の美化委員にも、明日、一緒に謝りに行こう」

 

「・・・済まねぇ・・・迷惑を掛ける」

 

 

 意気消沈、といった具合に悔やんだ表情をして、獄寺は顔を上げた。

 俺達二人の辿々しいやり取りを見て、綱吉は苦笑する。

 

 

「・・・とりあえず、解決かな?」

 

「本当の解決は花壇が完全に戻ってからだな。そう言う訳で、三人とも手伝って?」

 

「勿論!」

 

「あぁ」

 

「・・・おい、俺も頭数にいれてないか」

 

「どうせ、今回も元凶はリボーンなんだろ?少しは手を貸してくれてもいいんじゃないか」

 

「・・・チッ、仕方ねぇな。特別大サービスだぞ」

 

 

 夕日の光を反射して、校舎の窓が黄昏色に輝いた。

 遠くから聞こえる部活動生の声を聞きながら、俺達は花壇を元の姿に戻すために、手を動かし始めた。

 

 

 

 

 




"仮想宝具限定展開"は、"民の叡智"の応用技です。
完全に英霊の宝具を再現する事は出来ませんが、似たような現象は起こせます。
ギルガメッシュのゲートオブバビロンと対に成る、エルキドゥの宝具ですので、これくらいは余裕で出来ると思い、採用することになりました。

それと、"民の叡智"等の口上は述べなくても使用することはできますが、雰囲気とやる気が出るという理由で、今のところ技名を口にするようにしています。

今回はリボーンの漫画で主役を張らない、主要キャラクター達の周り、何処かの誰か達はどのような思いをしているのかという疑問から、執筆するに至りました。


評価やお気に入り登録、温かい感想など、自分の小説を読んでくださる方がいるのだと思うと、とても嬉しい気持になりました。本当に有り難うござます。

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