街から離れたとある山道の途中。綺麗に磨かれた車が停車しているその裏で、二人組の男達が話をしている。
「…おめでとう、キミは選ばれた者だ」
白で統一した服装の男がボロボロの服を着た青年へ品物を受け渡した。何か重要な品物なのだろうか、青年の顔がほころぶ。
「も、もちろんだ。あんたらに選ばれたからには、この命、神に捧げる覚悟でやるぜ。…だが、いいのか? 俺からアンタに渡すモノなんてねぇぜ?」
「あぁ、構わない。それを見事に使いこなし、よりよい街作りをしてくれれば、な。試しに使ってみるといい」
「よーし、なら!」
そう言うと、青年は受け取ったアイテムの包装を破り始めた。包装の中から奇妙な形のペンダントが出てくる。すぐに首からペンダントをかけ、目を閉じると、奇妙な力が包み込む。すると、青年の体が地面と同化し始めた。
「おおっ! 俺の能力は【通り抜け】が出来るのか!?」
青年は自分の下半身を道路と同化させ、感動している。身体には影響がないようだ。豪快な笑い声を上げ、元の姿に戻っていく。
「なるほどな。この力で…。よし、俄然やる気が出てきたぜ。ありがとよ!」
彼は白服に背を向け、来た道を戻っていった。白服は腕時計を確認すると、すぐに顔をあげ、周囲を見回した。
「………。気のせいか」
そう、つぶやくと白服も車に乗り込み、すぐに立ち去った。
五分後、500m以上離れた木の上から、ガサガサと音を立てながら、カメラマンの出で立ちをした男が一人下りてきた。
カメラマンといっても、小綺麗ではなく、戦場カメラマンのように所々汚れが目立つ。
「ふーぅ…」
男は手に持った単眼鏡を片手につぶやいた。
「おいおい、この距離で気がつくか? さすがの財団Xだな…。しかし、あれが例のアイテムか…」
男の名は、一文字隼人。人知れず悪と戦い、そして勝利してきた男。
カメラマンの間では伝説と称されてきた。
しかし、話の上で名前は出るが本人とわかるものは少ない。仮に本人を目撃したとしても、そら似などと思ってしまうだろう。なにしろ容姿が何十年も変わらないからだ。
「どこまで物騒なもんかはわからんが、おまえから持ち込まれた情報だ。用心に越した事はないんだろう? …なぁ、本郷」
友人の名を紡ぎ、しんみりとしながらも、すぐに先程の真剣な顔つきへ戻った。ポケットの一つから、地図を取り出す。
そこには、赤い丸で目当ての街が囲まれていた。
「さて、行くか」
おもむろに近くの木々の草だまりをわしづかみにすると、カモフラージュしていたバイクが出現する。バイクのエンジンを始動させ、一文字は一人立ち去った。