退避した三人は、燃えさかる工場を見下ろせる場所にいた。一文字と翔一は変身を解除している。真魚は翔一の背中ですやすやと寝ていた。
「一時はどーなることかと思ったが、なんとか倒せたな…」
「ええ、多分、オレ一人じゃ倒せませんでした」
悔しそうな顔をして、翔一はつぶやく。
「それでも、真魚ちゃんを助けたのはおまえの力さ」
一文字は和やかに笑顔を見せる。
「おやおや、もう事態は終わっていましたか」
「お?」
一文字は声のした方向へ振り向くと、スーツ姿の男性を見つけた。
「北条さん、こんなところまで来てくれたんですか!?」
翔一の顔が驚きを隠せないでいる。
「先程は電話越しでしたからね。お久しぶりです。津上さん。その節はどうも」
「そして、はじめまして、一文字さん。改めての自己紹介をしましょう。私の名は、北条透。数年前から警視庁から出向し、今はICPOでお世話になっています」
翔一は途端にはにかんだ笑顔を見せた。
「北条さん! 本当にご無沙汰してます!」
「えぇ、こちらこそ。しかし、一文字さん」
北条は一文字へ顔を向けると睨みつけた。
「結果としてはあの基地を壊滅させちゃいましたね…。また、私が怒られるのですよ? 事後報告などするのは私の役目とは言え…」
「あー、すまねぇな、悪りぃけど頼む」
一文字は頭をかきながら、謝り気味で言った。北条は、溜息をつき、腕を組んで目をつむる。
「…結果としては、真魚さんも無事だったことですので、不問としましょう」
「…あれ? 北条さん、丸くなりました?」
驚く翔一をよそに、北条は指を振る。
「違いますよ、津上さん。これは一文字さんに対する貸しです。あとで、何倍にも利子をつけて返してもらいますから」
北条はキザな笑い顔を浮かべる。その顔は昔見た、したり顔そのままだった。
(あはは…。北条さん、変わってないな…)
「でも、おかげさまで、北条さんの情報に助けられました」
「真魚さんが助かったのは事実ですし、私としても人々の命がこんな軽々しく弄ばれるのにはうんざりしていた所なのですよ」
「そうですか…」
「さて、このアイテムも含め、話を続けて宜しいですか?」
北条は、ポケットから問題のペンダントを取り出した。
「あぁ、かまわねぇ」
「では…。逮捕した財団Xのメンバーから話を聞いた限りですと、このペンダントには、限定的ですが、人工的に超能力を発動させることができたようです」
「なるほどな、俺の集めた情報と照らし合わせると、それを財団Xが開発して、この街の人間へ提供し、力が使える人間をあのエルが選別していたって感じになるな」
「津上さん、真魚さんは超能力を今も使えるのですか?」
「わかりません…」
翔一にもそればかりはわからなかった。
「そうですか。事実、誘拐されるレベルで必要とされていたのなら、今後、警護する必要がありますね」
「…もしも、またヤツらに襲われそうになっても、今度はオレが絶対に守ります」
真剣な表情で北条を見る翔一。
「わかりました。あなたの顔を見れば私の出る幕はありませんね。いつだって、お姫様を守るのは騎士なのですから」
そこへ北条の胸ポケットから電話の着信音が鳴り響く。
「失礼…」
携帯電話を取りだし、発信者を確認する。すると、北条の顔がニヤニヤとしだした。
「なんですか?」
時折、嫌そうな顔になりながらも、報告を聞いている。
「…なるほど。あなたの見立て通りの結果になりそうですね。わかりました、調べておきましょう。でもね、…そうやっていられるのも今のうちですよ、小沢さ…。………電話が切られてしまいました」
一方的に電話を切られたのか、北条はやれやれといった顔でこちらを見る。
「まだ残務処理がありますし、これにて失礼します」
「おう」
「また、会えるんですか?」
寂しそうな翔一に北条は顔を向ける。
「本来ならば、こういった形では無く、次にお会いする時は、貴方の開いたレストランで静かに食事でもしながらが望ましいですね」
そう言って北条は、去って行った。