双拳   作:文月りんと

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ポルトガル 郊外


14.笑顔

あれから数日が経った。真魚を医者に診せたが、骨折や後遺症もない丈夫な結果だった。

「ねぇねぇ、翔一くん! もう少しだけあの山観に行かない? 旅行の最後、変な形になっちゃったしさ…」

「わかったよ、真魚ちゃん。オレ、何度も助けられなかったからね、おわびさせてよ」

真魚と翔一は、郊外の道路を歩いていた。

「おわびなら、いっぱいしてもらったから、気にしないで。私にとっては、翔一くんとこうやって二人っきりで旅が出来たことが嬉しいんだし」

「そう、なの?」

キョトンとした顔で真魚を見つめる翔一。

「そうなの! …だって、私の王子様なんだしね」

「ん?」

最後の小声はあまり聞き取れなかった。

「なんでもない!」

そう言うと、真魚は翔一に勢いよく抱きついた。

「…しょうがないなぁ」

 

「あー、ゴホン! 若いからって昼間からあんまし見せつけないでくれよ~」

「い、一文字さん?!」

真魚の顔が真っ赤になる。

一文字が近くにいるのに気がつかず、すっかりいい感じな二人だった。

「まぁ、いいや、事件も落ち着いたみたいだし、俺もここらへんで、おいとまするわ」

「そうですか…」

「せっかくだからな、別れる前に一枚撮ってもいいか?」

「あ、はい、どう…」

「どうぞ!」

翔一の言葉を遮るように真魚が返事をする。

「うし、じゃあ、笑顔をくれるか?」

「はい!」

カメラのシャッター音が聞こえると、笑みをこぼす一文字。 

「よし、いい写真が撮れた。データは後でお前達の店宛に送っておくから」

「ありがとうございます!」

 

「…さて、翔一」

それまでの笑顔とは異なり、一文字は真剣な顔で翔一を見つめた。

「なんです?」

「財団Xには『気をつけろ』」

「!」

「あーっ、あの時の電話って、一文字さんだったんですね」

ホテルの部屋にかかってきた謎の電話を思い出した翔一を見て、一文字は頭をかかえた。

「…なんだ、気がつかなかったのか。ま、それもお前らしいか」

「すいません。でも、大丈夫です」

翔一は、真魚の肩に優しく手を置いた。

「北条さんにも言いましたけど、真魚ちゃんは絶対に守りますから」

「翔一くん…」

真魚は翔一の横顔を見つめ続けている。そんな様子を見て、一文字は笑顔で頷いた。

「…うし。じゃあな」

「はい! ありがとうございました!」

「一文字さんも、お気をつけて」

「おう!」

 二人から声援を受け、手を上げて答える。ヘルメットを身につけた一文字は、

バイクのエンジンをかけ、足早に走り去っていった。

「行っちゃったね」

「…うん。さぁて、旅の続きだよ、真魚ちゃん!」

 

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