「!!!」
ホテルでのほほんとしていた翔一は、ただならぬ気配を感じ、立ち上がる。
「翔一くん、どうしたの?」
突然立った翔一の様子を見て、真魚も驚いているが、そんなことはお構いなしに跳びだそうとしている。
(この感覚は!? もう何年もなかったのに!)
キョロキョロと周囲を見回し、混乱する翔一だったが、いてもたってもいられず、近くのジャンパーを掴み、部屋から出ようとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ、翔一くんってば!!」
すぐに真魚に片手を掴まれる。
「…まさかこんな場所で、アンノウン出たの?」
(そうだ…、あの戦いからもうずっとアンノウンとは戦っていない)
それ以来、似たような感覚に陥ったことはあったが、結局、駆けつけても何も無かった。
ふと部屋にあった鏡に自分の顔が映っているのを見つけた。昼間の笑顔とは大違いだ。
(今回も、気のせいだ…。今、真魚ちゃんに心配させてどうする?)
「………。よし」
翔一は深呼吸して、手に持っていたジャンパーを元の場所へ放り投げた。
「ごめん、真魚ちゃん。これから出かけるのをやめるからさ。手、離してくれないかな? …ちょっと痛いし」
「え?」
そう言われた真魚は握った翔一の手を見ると、肌の色が少し変わっている事に気がついた。
「あぁ! ご、ごめんなさい」
すぐに手を離し、タオルの入っているバッグを探す。バッグをベッド脇に見つけ、タオルを取り出した瞬間、今度は真魚の手を優しく翔一が握った。
「しょ、翔一くん?」
少しの間、見つめ合う二人。
「心配しなくても、大丈夫だよ。俺はどこにも出かけないから」
「うん」
自然と二人の顔が近づいていく。
吐息が顔に触れるぐらいになった、その時。
「!!!」
室内の電話が鳴り響いた。電話の方向へ翔一の顔が振り向く。
「あぁ…。もう少しだったのに…」
真魚が寂しそうにしているのを尻目に翔一は電話に出た。
「はい! ………もしもし? ??? もしもーし!」
電話の相手が何も言わないのだろうか。翔一の顔がクエスチョンマークを浮かべているようだった。
「いたずら電話ですか? 切りますよー!」
相変わらず日本語で応答しているので、向こうもわからないのではないか。そんなことを真魚は考えていた。
「…あっ、ちょっと!」
電話は切られてしまったらしい。
「翔一くん、電話、誰からだったの?」
「うーん、わかんないけど、一言だけ『気をつけろ』だってさ」
「…『気をつけろ』?」
「なんだろう…」
先程の翔一の行動、そして今の電話。真魚はよからぬ不安を拭いきれなかった。