翔一と真魚は裏路地から離れた広場まで来ていた。
「ハァ…ハァ…」
ホテルの部屋に戻ると逆にまずいと判断しての行動だった。
「とりあえず、ここまで来られれば…」
「翔一、くん…、どういうこと、…なの?」
真魚の呼吸も定まっていないが、仕方ない。変身の出来ないあの場ではどうしようもなかった。
昼間賑わっていた広場もこの時間だと、閑散としている。近くにあった噴水に座り、すぐに息を整える。
「実は…、オレもまだ…、状況は把握出来てないんだけどね」
翔一は、深呼吸をしてから告げた。
「…実は、新しいアンノウンが出たみたいなんだ」
「新しいアンノウン!? もしかして、翔一くんの奥にいた一文字さんって…」
「違う違う! 一文字さんは、アンノウンじゃないから!」
そう、一文字はアンノウンではない。
「…あれは【仮面ライダー】だって」
「【仮面ライダー】?」
真魚も聞き慣れないからか、違和感があるようだった。
「んー、むしろアギトとかに近いかも」
翔一はそう感じていた。自分とは違う、でもどこか似ている存在。一瞬の出来事だったけれど、あの人を信じてしまった。
「そう。どうしてこんな場所でアンノウンが出てくるのか、まだわからないけれどね」
『わからないなら、教えてあげましょうか?』
「!!」
翔一でも、真魚でもない。第三者の声。その声は空から聞こえてきた。
声の主は、空に飛んでいた。天使のような大きく白い羽を携えた、鷹の姿をした怪人がそこにいた。
『これはどうもアギトくん。そして、我々の新たなニエよ。わたくしはアクィラと申します』
アクィラと律儀に名乗った鷹怪人は翔一ではなく、真魚を見ていた。
「マズい! 真魚ちゃん、こっち!!」
視線に気づいた翔一は真魚の手を取り、駆け出そうとする。しかし、一瞬で地面にヒビが入る。
そして、足下からドリルのような音が木霊した。
『おっとぉ! 逃がさないぜぇ!!!』
盛り上がった地面から突き破るように出てきたのは、上空にいるアクィラとは別の怪人だった。二体ともアンノウンとは異なる形状をしている。地面から現れた怪人は、左手に大きなドリルを装備し、馬の顔をしつつも、額に細いドリルのような角を生やしている。さながら、神話などで出てくるユニコーンを模しているのだろうか。
『ととと! こりゃ勢い良すぎるなぁ』
ユニコーンはドリルの回転を止め、頭をブルブルと震わせる。
(今度は一気に二体!? いくらなんでも、変身できない今のオレじゃ…)
『んだぁ? あっさり頂いてくぜ?』
すぐにユニコーンも真魚を捕まえようと、迫ってくる。
「そうは、させない!!」
「きゃっ!」
真魚を抱き寄せ、自分の背後に移動させると掴んでいた手を離し、翔一はそのままユニコーンへ体当たりをした。
「うおりゃっ!」
『へん! そんなヒョロいタックルは屁でも無いっての!』
ユニコーンは右手の人差し指で、翔一の体当たりを受け止め、左手のドリルを回転させると、翔一の胸を抉ろうと、突き出してきた。
「おっと!!」
翔一は上体を反らし、すんでの所でドリルを避ける。
『ほぉ、流石のアギトさんだなぁ!』
『…ですが、数には勝てませんね』
翔一が見上げると、上空のアクィラの腕の中にはぐったりとした真魚が抱えられていた。
「真魚ちゃん!!」
『よそ見は禁物だぜっ!!』
耳元でドリル音が迫る。直感でしゃがみその場をやり過ごす。
「くそっ…」
『こちらのニエは頂いてきます』
アクィラは翼を大きく羽ばたかせ、更に天高く上昇しようとしている。
(このままじゃ、真魚ちゃんが!!)
『翔一ィ! おまえ、それでいいのか!』
真横から飛んできた紅い弾丸が、アクィラに飛びかかっていった。
『なんだと!!?』
弾丸は空中で真魚を奪い返し、着地した。
「一文字さん!」
『おう』
そこには変身した一文字こと、仮面ライダー2号がいた。真魚をその場に横たわらせ、空と大地の怪人達へ顔を向ける。
『さっきのヤツは、逃げられたが今度はなんとか間に合ったな』
『チッ! 仮面ライダーかよ!』
ユニコーンが悪態をついている。
『翔一、この子を連れて逃げろ!』
「でも…」
『そうは…させませんよっ!!』
アクィラの手から赤い光弾が発射された。
光弾は翔一のいた場所にいくつも着弾した。
「うわぁーっ!!!」
『翔一ッ!!』