憤怒を抱きし魔神の皇子 〜ハイスクールD×D〜   作:ハニーハニー

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第1章 魔神の皇子と赤龍帝の覚醒
1話 動き出すもの達


 

 

———これは、全てを忘れてしまった魔神の皇子の昔々の、続きの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王学園三年に、黒い髪の毛に、金色の瞳をした少年がいた。少年の名は神崎流(かんざきながれ)といい、ごく普通の男子高校生、を自称する。

実際は、顔良し、勉強良し、運動良しの三拍子揃った完璧に近い男。運動に関しては、百メートル十秒以内で走り、棒高跳びなのに、棒が邪魔だと言い、十メートル以上は跳躍する超人である。

常に平凡を目指している何処にでもいる男子高校生だ。

 

 

「いや、いないでしょ」

 

 

「えぇ〜! なんでさー。俺みたいな平凡男子学生何処にでもいるって」

 

 

「貴方が平凡だったら私達は何かしら?」

 

 

「………凡人?」

 

 

「それじゃ貴方と同列って考えになるわよ。———全く。どうしてそんなに謙遜するのよ。貴方はまぎれもない天才……いや、天才って枠に収めていいか分からないわ」

 

 

紅い髪を腰あたりまで伸ばしている少女の名はリアス・グレモリー。留学生としてこの駒王学園に在籍していて、流と同じ学年で同じクラスの友達だった。

 

 

「天才って言われても困るんだよ。小学生の頃調子乗って屋根に飛び乗って忍者ごっこしてたら近所の人に通報されて警察の人と追いかけっこさ。それが原因でこの駒王町に引っ越してきたんだぜ? あん時は大変だった。親父に拳骨で殴られまくって、お母様には竹刀で一方的に打ちのめされるし、死んだ爺ちゃんには投げられるし、婆ちゃんにはペットで蛇のスネイ君に本物のコブラツイストされるし」

 

 

「へ、へぇ……貴方も普通じゃなければ家族全員普通じゃないのね」

 

 

「へ? 普通だろ。親父はただの社長だし、お母様は病院の院長だし、婆ちゃんは今海外で蛇の調教師やってるらしいし」

 

 

明らかに一般家庭から逸脱している。特にお婆ちゃんの海外で蛇の調教師やってる、と言う事が。

 

 

「ま、良いじゃん良いじゃん!」

 

 

「はぁ……貴方といるととても退屈しないわ。それにしても、今日はちょっと冷えるわね」

 

 

「そうだなー。十五度って所か。なんかあったりして」

 

 

「なんかって、何よ」

 

 

ニシシ、と笑う流を呆れ混じりの笑顔で見る。

流とはもう三年の付き合いになる。一年の頃から同じクラスで、良くも悪くもよく目立つ人だった。当然といえば当然である。顔だってそこらへんの俳優より断然良い。何より面倒見が良く、頭もいい。駒王学園の入試を過去最高得点を叩き出して入学している。おまけに全国模試は一桁で、その気になれば全ての個人技で優勝を狙える程の運動神経を持っている。目立たないわけがない。

 

 

「ねぇ、流。私の秘密、教えたいって言ったら、聞いてくれる?」

 

 

「秘密〜? なんだ改まって気持ち悪い」

 

 

「きも……あのねぇ、人が真面目に—————」

 

 

「俺とお前の間に、そんな遠慮要らねーだろ」

 

 

「………そうね。なら、明日、話すわ」

 

 

昼休みも終わり、教室へ戻り授業の支度をするとリアスはいたっていつも通りに戻っていた。流に言いたい秘密とは何か、気になる所だが、はっきり言わないあたり、本当に秘密なのだろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、自宅へ帰るため近道である公園を突っ切ろうと思い、入ると人一人見当たらない。三百六十度見渡しても居るのは自分一人。何かあったのかと思い、立ち止まりと、黒い烏の様な羽が舞っていた。その羽を掴んだ瞬間、背後から猛スピードで何かが落ちて来た。反射神経に自信があった流は躱すが、石飛礫が顔にあたり、額に血が滲む。

 

 

「隕石かぁ?」

 

 

「ほぉ。今のを食らって生きて居るとは。おまけにその余裕。やはり神器(セイクリッド・ギア)持ちか」

 

 

「と、と—————飛んでる!? え、嘘でしょ。変なおっさんが空飛んでるよ。何アレ翼? うわーシルクハットとか似合ってねー」

 

 

「貴様、私を侮辱するか。まあ良い。今この瞬間、貴様は私の手で殺される。この通りすがりの堕天使に!」

 

 

通りすがりの堕天使と名乗った男が、流目掛けて急降下して、拳を振るう。当たったと確信した堕天使は、一瞬何が起きたか理解できなかった。振るった右腕がダランと垂れている。

 

 

「こ、これは?」

 

 

「あー悪い。折るつもりは無かったんだ。ただ少し手刀を当てたら俺ちまって……。すまん! 慰謝料は払う! だから警察には言わないでくれ! 今度こそ親父とお母様に殺される!」

 

 

「き、きさ—————殺すっ!」

 

 

左腕に光が集まり、やがて一本の槍を形作る。それを振り回した後、流へと投擲する。しかし流は避けようともせずに、ポケットから何かを出して、それを振るう。すると、槍は一瞬で砕けて粒子になって消える。

 

 

「ばかな! 人間如きが堕天使の光を消せるはずがない!」

 

 

「切れた。さっすが死んだ爺ちゃんのスイッチナイフだ。良い切れ味だな」

 

 

「な、ナイフ如きで切ったと言うのか……ありえん」

 

 

「さて。俺は家に返してくれれば何もしない。さてどうする?」

 

 

「ぐっ! う、うおおおおおぉ!!」

 

 

愚かな選択だな、と呟き、スイッチナイフを右手から左手に持ち替えて、跳躍する。堕天使が槍を形成し、高速の突きを連続で放ってくるが、それら全てを躱して、空中で回し蹴りをする。地面へ落下する堕天使の上に、追い討ちの如く着地する。口から血を吐く堕天使に手加減せず、今度は蹴り上げる。そして再び跳躍し今度は明後日方へ蹴り飛ばす。

 

 

「ぐはぁっ……こ、この私……が。人間、如きにぃ……」

 

 

「人間如き、ねぇ。お前、うちの親父と戦ったら十秒も立ってられねーぞ。後お母様の高速の剣には絶対ついてこれねーな。婆ちゃんの品種改良した超巨大な蛇にも勝てないな。アレ? うちの家族、ハイスペックを通り過ぎて、化け物揃いじゃね?」

 

 

ここにリアスが居たら間違いなく「今更!?」と突っ込みを入れるかもしれない。しかし、リアスにこう言う状況に驚かない事など伝えていない。リアスはあくまでも流は人間の中では化け物だと思って居る。こう言った人間ならざるものに対抗できるとは思っていないのだから。そして、リアスもまた人間ならざるものだ。だからこそ流はリアス・グレモリーに()()()()。そして、信頼を得るにまで至った。

 

 

「諦めろ。お前じゃ俺に勝てない」

 

 

「クッッッソオオオッ!」

 

 

先程とは比べ物にならないくらいの巨大な光の槍を形成する。しかし、動じたりしない流に、苛立ちを爆発させた堕天使は渾身の力を込め投擲する。

だが、流が縦横左右にスイッチナイフを振るうと、巨大な光の槍は一瞬にして砕けた。

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

「どうする、まだやるか?」

 

 

「こんな事……あってはならないっ……あってはならないのだ……!」

 

 

そう言うと堕天使は天高く飛翔し、姿を消した。スイッチナイフをポケットにしまい、辺りを見渡してため息が出る。

 

 

「これ、明日の町内記事の一面になりそう……」

 

 

ベンチは壊れ、地面は抉れ、木は根元付近から折れている。言い訳のしようがない程の有様だ。

誰かに見られる前に退散しようと走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家へと逃げ帰った流は、玄関で仁王立ちしている金髪の女性を目にした。手には竹刀を携え、何かを待っている様だった。恐る恐る姿を現し、ただいまの一言を言い家に入ろうとすると、竹刀で思いっきり振り下ろす。すると、風圧で草が横になり、女性の素顔があらわになる。ソレは怒り一色だった。

 

 

「流。貴方、わかっているわね?」

 

 

「あ、はい……。お母様、今日はお日柄がよろしいようで」

 

 

「ええ、良ろしいわね。何と言っても馬鹿息子が派手に暴れてくれたからね」

 

 

「あ、あはは……。————逃げるが勝ち!!」

 

 

だが、流の母親の竹刀で放たれる衝撃波により流は壁にぶつかる。

 

 

「流、逃げようだなんて思わない事よ。貴方はどうしてそう、問題ばかり起こすの。お母さんはあなたの為を思って言っているのよ? 貴方が、普通でいられる様に」

 

 

「で、でもよ。持って生まれて来ちまったんだ、逃げる訳にいかないだろ」

 

 

「……はぁ。貴方って、本当に御し難い馬鹿息子なんだから。そんな所が可愛らしいのだけどね♪」

 

 

竹刀を放り投げて、壁に寄りかかって座る流の頭に手を置き撫でる。慈愛に満ちた表情で見つめる。

流の母、神崎 アレシア(かんざき アレシア)と言う。元々は教会の悪魔祓い(エクソシスト)であった。

 

 

「せめて学生の間だけは普通の子でいて欲しいのだけど……。貴方は昔から良く面倒ごとに首突っ込んじゃうから心配なのよ」

 

 

「お母様の気持ちは嬉しい。でもさ、やっぱり俺はこう言う道しかないんだよ。こんな力、持って生まれて来ちゃったんだから」

 

 

「……ふふ。そうね。そう言うと思ったわ。じゃあお風呂に入りましょう。たまには一緒に入るのも悪くないでしょう? って、なんで逃げようとするの? まさか母に欲情したりしないよね?」

 

 

(そんなわがままボディ見せられて平常でいられるか! いくら母でも意識するわ!)

 

 

無理矢理浴室は連れていかれる流はこの家に住まう使用人達に「助けて」のサインを送るが、この家の中で母アレシアに逆らえる者は一人としていない。無論、夫であろうと。全てはアレシアの一存で決まる。

 

 

浴室から騒音と叫び声が家中に響いた。使用人達は一瞬驚くが、すぐに何もなかったかの様に振る舞い仕事を続ける。

小一時間入って、漸く解放された流は生気を失っていたが、逆にアレシアの方はツヤツヤしていた。何があったかなんて詮索する程使用人達は命知らずじゃない。見て見ぬ振りを貫き通した。

 

 

(あの年増。アレで四十五だって? 巫山戯んなよ)

 

 

溜息をつきながら自室へ赴くと先客がいた。和服に身を包み、花魁の如く着崩しベッドに横になる黒髪の少女。一見して人ではないとすぐに分かる。その理由に、その少女の頭には黒い耳に、腰のあたりからは尻尾が二本生えている。彼女は猫魈と呼ばれる猫又の上位種であり、今では希少種になっている程だ。

 

 

「おい、何勝手に俺の部屋で寝てんだよ」

 

 

「ん〜………。良いじゃない。キングサイズベッドなんだからぁ……。少しくらい貸してよ」

 

 

「いや良いけどさ。お前、自分の部屋いけよ」

 

 

「いやにゃん。だって、ここが落ち着くんだもん」

 

 

「何の為に自分の部屋あると思ってんだよ」

 

 

今日はやたら疲れるな、と思いながら椅子に腰掛ける。ベッドで寝る猫魈の肌蹴た着物から露わになる白い肌を思わず覗いてしまう。

そして、一瞬だけ疑問の思ったことがあった。それは、

 

 

「お前、パンツは?」

 

 

「忘れた〜」

 

 

「おい!」

 

 

「流のえっちぃ〜」

 

 

思春期男子にはこの猫魈こと、黒歌のスタイルは毒だった。母と言い黒歌と言い、この家には平均値を優に超えるスタイルの持ち主が多い。おまけに黒歌の場合は露出度が高く、今は寝ているから丁度胸部が潰れて、それはそれで絶景である位置にいる。

いや、そう言う部分が見たいわけではない。見たくないのか言われれば見たいが、それでも精神的によろしくない。溜まるものも溜まる。

 

 

「そんなに溜まってるならシテあげるにゃん。居候させて貰ってる身としては、若旦那の下の方をお手伝いするのも吝かではないにゃん」

 

 

「いつからお前は売春婦になったんだぁっ。ったく、男食い漁るのは勝手だが、度が過ぎると恨み買うぞ」

 

 

「食い漁ってないにゃん。それに私、今は引きこもり中の自宅警備員だし。ただのプロゲーマー兼小説作家ですから〜」

 

 

いきなりのカミングアウト。だが、たかだかネット小説止まりだと思っていた。

 

 

「ちなみに黒薔薇姫歌(くろばらひめか)で通ってるにゃん」

 

 

「めっちゃ有名な作家じゃねーか! ここ数年で急激に発行部数を伸ばしてる。確か、内容はアクションもので、タイトルは———『闇の王子、ハーレム計画』だったかな?」

 

 

「ちなみに主人公のモデルは流です」

 

 

「はぁ!?」

 

 

「今度アニメ三期やります。リアルタイムで観てね」

 

 

すごく大物だった事に今更気づき、もはやニートと呼べなくなってしまった。黒歌は黒歌で今の生活に満足しており充実している。最高スペックのPCに、超が付くほどの快適な空間、甘やかしてくれるアレシア、そして黒歌自身を救ってくれた本人の流がいる。ただ、少し気掛かりなのが一つだけあった。ただ、今はそれほど気にもなっていない。楽しく過ごせているのを知ってから。それが自分であったらな、偶に思う事もあった。

そんな黒歌を流は可愛がっている。なんだかんだで、結構長い付き合いだったりするのだから。

ちなみに、黒歌の年収はゼロが九個くらいあるらしい。

 

 

 

 

 

その日の、木々でさえ眠りにつく夜に、怪しげな影があった。その影は翼を生やし、大空を飛ぶ。翌日のあるサイトでは、駒王町の上空をUMAが飛び去ったと書いてある。

写真も、ピンボケだが載っており、流、黒歌、アレシア、そして、リアス・グレモリーはその写真を見て、顔をしかめた。

 

 

「なんかよく分からんが、何かが起きるな」

 

 

「あ、ヤバイ。締め切り明後日だ。あと半分もある」

 

 

「俺は手伝えねーぞ」

 

 

こうして今日も一日が始まる。

 

 

 

 

 

 

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