憤怒を抱きし魔神の皇子 〜ハイスクールD×D〜 作:ハニーハニー
今日も普段通り登校してみれば、朝から変態三人衆が覗きだ覗きだと騒がしかやっている。そんなに女性の裸見たいのか、と以前興味本位で聞いて見たら、三人衆の内の二人にキレられた。
その時に言われたのが————『先輩は顔が良いからいいですよね! すぐ彼女出来て剥かせられるし! でも俺らは違うんですよ!』と。そんな必死に、とその時は言いかけたが、言わないで正解だった。今では目の敵にされる程睨まれているのだから。
「あら? 神崎くん、おはようございます」
「あ、姫島さん。おはよう。早いね? 部活?」
「いえ。私はいつもこの時間ですわ。それよりも最近、リアスと仲が良ろしいようで」
「いや、ただの友達だから」
ただの友達だから。そういう風には見えないけど、と内心ツッコミを入れたいと思っているが、流相手にそんな事言っても無意味だった。
「そう言えば昨日の夜UMAが出たんだと」
「……ヘェ〜」
(ありゃ? この反応……)
姫島朱乃という少女の表情が曇る。恐らくは堕天使と関係あるのだろうとすぐに行き着き、話題としては上げてはいけない部類だったらしい。どうにか話題を変えなければと、無理矢理だが話題を変える。
「そ、そう言えば課題終わった? 俺少ししか終わってないから見せてくれると嬉しんだけど」
「良いですよ」
「本当—————」
「ただし、条件付きですが。それでも良ろしいですか?」
「え、あ、うん。良いよ」
じゃあ、と言い何故か旧校舎のある一室へ連れていかれた。
「ここなら邪魔は入りませんわ」
「……はい?」
「神崎流くん—————貴方、一体何者?」
姫島朱乃の雰囲気が一変し、冷たいものになる。具体的に言えば、敵意に近い何かだ。訝しんでいると言ったものだ。朱乃が何を言っているのか、流には見当がつくが、ここはあえて知らないふりをして誤魔化そうとする。
「な、何がだ? 俺は神崎流。ここの生————」
喋り終える前に、朱乃はポケットから一枚の写真を流へ投げる。キャッチするとそこに写っていたのは正真正銘神崎流———自分自身だった。
何故、とは思わない。この写真を見てすぐにあの現場にいた事がすぐに察せる。
「昨日の堕天使との一戦、か。まぁ、何かカモフラージュした訳ででもないからバレるのは仕方がないのかな。—————何者か、って言う質問? 俺は正真正銘の人間だ。一応ね」
「……嘘はついていないようですね。では、もっと具体的に。貴方は
「答えはノーだ。俺は君達が言う
「その言い方だと、何かしらの物は持っているのね」
まあな、と近くにあった椅子に腰を下ろし観念した様に振る舞う。
「貴方、リアスに近づいて何する気? もし、危害を加えるなら……!」
朱乃の掌に雷が纏う。朱乃もただの人間ではない。そう、初めから知っている。何故流がリアスに近付いたか。それは、リアスが
「リアスは貴方を信頼している。そして、好意を抱いている節がある。だから、出来るなら貴方は敵であってほしくない。だから、目的を言って」
「目的……。結論を言えば監視。俺はお前たちの事を知っていたし、だからリアスに近付いた、っておいおい、そんな怖い顔するな、はなしを聞けって。———それで、ずっと探ってた。だけど、やっていたのははぐれ悪魔の討伐。この街の害を取り除いていた事だ。危害を加える事なく、人間の様に学校生活を送っていた。だから正体とかどうでも良くなった。普通にリアスと話して、俺も学校生活を楽しんでいた。以上が俺の目的だ」
「嘘偽りは?」
「無い」
朱乃は掌に纏う雷を解除し、カバンからプリントを数枚机の上に置く。
「課題ですわ」
「マジか!? ありがてー!」
飛び着き恐ろしいスピードで課題の答えを写していく流を見て、さっきの言葉が嘘偽りでは無い事を改めて理解した。それを決定づける根拠はない。ただ、勘がそう言う。神崎流は決してリアスを泣かせる様な事をしない。それに、今の流はとても可愛らしかった。元々やや幼い容姿をしているので、それも加味して。
(成る程ね。だからリアスは)
リアスが流の事を好きな理由の一端が知れて、朱乃は少し嬉しかった。
「あらあらうふふ。そんなに急がなくとも時間はありますよ。どうせもうホームルームには間に合いませんし、このまま二人で小一時間サボってしまいましょう」
「お、良いなーそれ。じゃあプチお菓子パーティーやろうぜ!」
「その前に流君は課題、終わらせてくださいね?」
「ほーい」
いつの間にか、朱乃は流を名前呼びしている。その事に気が付かない流は朱乃の見せる課題を進めていった。
その頃、一限が始まっても教室に現れない流に、静かに怒りを抱く紅き髪の姫が居たのは言うまでもない。
放課後になり、流は何か忘れた様な気がしたが大して気にせず帰路についていた。帰路に就いていた。そして、昨日堕天使との戦いがあった公園へ訪れてみれば、綺麗になった公園があった。
リアスが修復したのか、はたまた違う誰かが修復したのかは分からないが、少し安堵した。
すると、背後から何かが急接近する。デジャブを感じながらその場から回避すると爆発が起きる。地面の破片が頬を掠めて血が流れる。煙を払うと、そこには昨日のシルクハットをかぶり、片目を閉じた堕天使の男がいた。
「一日で髄分変わったな」
「貴様を殺す為、
「大きく出たな。さて、昨日と同じく見逃す気は?」
「毛頭ない。貴様はここで、死ねっ!」
黒い光————否、もはや光ではなく闇。その闇で形成した槍を振るうと、槍から無数の黒い刃が放たれる。流はスイッチナイフをポケットから出し、自分に当たるコースの黒い刃を弾いていく。だが、数個身体の至る所を掠める。痛みはそれ程ないが、今の倍以上の量を放たれれば防ぐすべは今は無い。
「くっ……」
「どうしたどうしたぁ! 昨日の威勢はぁぁ!」
再び黒い刃を放つ堕天使の男は歪な笑みを浮かべながら高らかに笑う。その間、流はスイッチナイフを巧みに使い黒い刃を弾く。しかし、今度は連続して放たれる為全てを防ぎきれない。だから致命傷以外は無視して弾き続ける。徐々に足元に血が広がる。腕、肩、膝、頬、脇腹を黒い刃が掠め血が流れる。
一旦攻撃の手を止めた男は、今の流の姿を見て首をかしげる。
「おー? 昨日より弱いな。いいや、私が強くなったのかぁっ! ぎゃっはっはっはっ!」
「昨日とは大分様子が変だ。狂ってる」
「狂ってる? 私はいたって正常だよ!」
再び黒い刃を放ち、流を襲う。今度は弾くのではなく、躱す事にした。だだ、先回りして、放ってくる為、やはり足が止まり弾く事に専念する。
すると、バキッ、と音を鳴らしスイッチナイフの刀身が折れる。そして、防ぎきれなかった黒い刃が至る所に突き刺さり倒れる。
「ぐぁっ……っ!」
「はっはっはっ! 祖父の形見の品も役立たずになった。さてどうする、神崎流!」
(あの力、あの闇………成る程。お前がこの街にいるのか)
ゆっくりと立ち上がり、血塗れになった体を見て笑う。
「はぁあ。弱くなったな、俺も。緩い生活に甘んじてた、って訳でも無いんだ。そんな緩い生活が好きだった。高校入って漸く手に入れた普通を、こんな形で手放さなきゃいけないなんてなぁ。————さてさてさ〜て。この代償は、高くつくぜ!」
「あぁぁん? 何を言ってるんだぁ?」
「ハッッ!」
黒い霧が流を覆い姿を隠す。堕天使の男は何かを察知したのか、黒い刃を先程の倍以上放つ。刃は黒い霧に入ったまま出てこない。やがて霧が晴れて、流の姿が見える。
「何!?」
そこに居る流の姿は、先程とは違い、目からハイライトは消え、黒い髪の毛の一房は紅く染まり、額から左目の辺りを通って黒い痣のような紋様が広がる。そして、右手には片刃のショートソードを持っていた。
「ま、まさか……! それで全て防いだと言うのか!?」
「どうだろうな。それに、言っただろ? この代償は高く、つくとっ!」
地面を思いっきり蹴って跳躍して、堕天使の男の近くまで来ると、ショートソードを振り下ろす。闇の槍で防ぐが、ガラス細工の様に砕け散り、右肩から斬り落とす。
「ぐぁあああ!」
「ふんっ!」
続いて右横から振るい、次に下から切り上げる。左肩は斬り落とされ、両足も斬り落とされた。そして最後に空中で前方に宙返りして勢いをつけてカカト落としをする。堕天使の男は一瞬息ができなくなり、その間に地面に叩きつけられ血を吐く。綺麗に着地した流は堕天使の側により、見下ろす。
「その力、誰から貰った」
「かはっ……! く、黒尽くめの……お、女。へ、変な水を飲めば、強くなる、と……」
「……お前も、誑かされた一人か」
『心外ねぇ。誑かしてなんかいないわよ』
謎の女性の声と共に、無数の黒い刃が流の上空から降り注ぐ。堕天使の男を担ぐ暇なく躱す。堕天使の男は串刺しにされて、絶命する。
「おまえは……!」
「久し振り。流くん」
「モルガン!」
宙を歩く銀髪の女性。名はモルガンと言い、流にとっては因縁深い人物。そんな女性を睨み付け、剣の切っ先を向ける。
「何故、生きてる」
「何故かしら。私は確かに死んだ。貴方の手で。でもこうして生きている。何故かしら。私にも本当に分からないの。それと、そこに倒れている堕天使はただの挨拶代わり。今の私では貴方に勝てない。まぁ、本来の貴方の力が今あれば、の話だけど」
「きさまっ……」
「じゃあ私は消えるわね。まだ、本調子じゃないから身体が怠いのよ」
そう言うと霧の様に消えていくモルガンに、内心安堵した。今日はこれ以上戦える気がしない。それはモルガンも気が付いていたはず。だから本調子じゃないって言うのは本当の事だと思う。
「はぁはぁ……。久し振りに、力使ったから………めま、い………が……」
視界が歪み、立っていられなくなり、吐き気が込み上げる。鼻からは血が流れ、ショートソードを握る手が緩み手放す。膝と両手を着き深呼吸をするも、楽になる気配はない。意識が薄れて行き、視界が真っ暗になる。薄れ行く意識の中、流は
夢を見た———。自分が、紅い髪の女性を抱きかかえながら紫色の空から落ちて行くのを。
夢から覚めると、見知らぬ天井がそこには見えた。暖かく柔らかい感触に違和感を覚えるも、身体がだるくそれどころではない。それでも上半身を起こそうとすると重い。それもそのはずだ。見慣れた美少女がべったりくっついているのだから。くっ付いているならまだしも、裸と来た。身体のだるさよりも、こちらの方がそれどころではなかった。
「リ、リリリアス!?」
「ん………ん〜。なが、れ?」
「あ、おはようございます。って、俺も裸!? なんで!?」
「……貴方、覚えてないの? 公園で血塗れの貴方が居たから治療して寝かせていたのよ。貴方凄く衰弱していたから驚いたわ。それに、近くに堕天使の死体もあった。それと、朱乃から全部聞いたわ。私を監視する為に近づいた事。今はただの友達として接してくれている事も。なんで、黙ってたのよ。私達の間に遠慮なんか要らないんじゃなかったの?」
リアスの瞳は涙が溜まっていて、その表情は悲しげなものだった。確かに、遠慮なんか要らないと言った。だが、それでも言える事と言えない事もあった。
「貴方は、一体何者なの?」
「……俺も、自分自身の事を全て知っている訳ではない。一つ、わかるのは、俺の本来の力は強力無比だと言う事だ」
「そう。でも、貴方は貴方なのよね? 神崎流なのよね?」
「当たり前だろ。お前の知る流だ。リアス」
リアスはそう言うと、静かに流に寄り添った。驚き飛び退けようとしたが、それが出来なかった。何の恥じらいもなくリアスは流の胸板に頬を充てがう。豊満な胸部が鳩尾の辺りに密着し、リアスの鼓動を感じる。流はゆっくりと仰向けに倒れこみ、リアスの髪の毛を撫でる。
何故か、懐かしく思うのは流だけではなかった。初めてあった日からリアスは流を、流はリアスを過剰な程に意識していた。
「不思議ね。前からこんな関係だったみたい」
「お前は小っ恥ずかしくないのかよ。付き合ってもねー男に、それも裸で抱きつくなんて」
「何の抵抗もない、と言えば嘘になるわ。それでもね、貴方とはずっとこうしたいと思っていたのよ」
「そうか」
それ以上言葉はいらない。それ以上言えば、無粋だと思ったからだ。今だけは黙ってリアスを抱き締める。
どれだけ抱き合ってたかは分からない。永遠のようにも思えた。
『あ、あの! ここは部外者立ち入り禁止で!』
外が騒々しく、二人は起き上がると朱乃の静止の言葉が聞こえた直後、この部屋のドアが木っ端微塵に砕け散る。
「私の息子を、何処へ隠したのかしら? 下賎な種族が」
「仕方がありません! いかず—————」
「遅い」
金髪の女性の持つ剣先から、衝撃波が発せられ、朱乃は壁まで吹き飛ぶ。他にも金髪の少年が女性を抑えようとするが、睨み付けるだけで怯んでしまい、足がすくむ。
「見つけ———殺す。私の息子を汚した矮小な娘!」
リアスに向かって剣振るう。だが、素早く二人の間に立ち塞がり、近くにあったスプーンで女性————神崎アレシアの斬撃を防ぐ。
「流!? どう言うことか説明しなさい」
「その前に剣をしまってくれ」
「説明が先です。言い分によってはこの部屋には血の海が出来ることでしょう」
「リアスは俺の友人で、命の恩人だ! 今日変な男にあって、衰弱してた所を助けてくれたんだよ!」
そう言うと、母アレシアの力が緩み、リアスの方に視線を向ける。リアスは何度も頷く。アレシアは再び視線を息子である流の方へ向ける。
「本当の様ね。はぁ」
アレシアが剣を鞘へ納めると、流はホッとする。
「この度は、矮小な身であるあなた方に息子がお世話になりました」
「おい! 悪魔が嫌いなのは分かるけどそれはお礼とは言わない! 挑発してんのか!?」
「分かったわよ。この度は息子がお世話になりました。それじゃあ行くわよ。あの子が心配しているわ」
「あ、ちょ、引っ張るな! リアス! 話はまた今度だ!」
母アレシアに家へと連れ戻された。否、正確には引きずられながら戻された流は、居間にて正座させられていた。アレシアは竹刀を突き立てながら黙って正座する流を見下ろす。無言の威圧が、流の精神を突き刺してくる。
「それで? 説明を」
「じ、実は————」
事の一切を打ち明け流の言葉に嘘偽りがないのを知っているのか、途中で口を挟まずに黙って聞いている。
「……モルガンさん、ですか」
「俺が殺した筈なんだ。なのに、あいつは生きてる。あの闇は紛れもなくモルガンのものだった」
「闇………古の種族、
この場に居合わせている黒歌は、初めて聞く魔神と言う種族に疑問を浮かべる。字の通りだと、魔の神。
だが、実際は、何故魔神族と呼ばれているかは不明である。唯一、分かるのは、現代において、魔神族は九十九パーセント絶滅している。その一割がモルガンなのだ。
と言っても、純血ではない。モルガンは、魔法使いの人間と魔神族のハーフとの間の子供。魔神族の血は薄い。それでも、血統に恵まれているため、おそらくそこいらの悪魔天使堕天使、
「そんな相手と……」
「黒歌が気にする事じゃない。でも、先に謝っておく。俺の側にいる以上、あいつはお前をも襲ってくる。彼奴は本人の大切な物を人質にとってから、相手を倒す。それが、モルガンだ」
「……下種にゃん」
「唯一の救いが、彼奴が本格的に行動するまで時間があるって事だ」
今のモルガンは本調子ではない。もし本調子ならば、流はあの時の戦いの後にやられていたからだ。
時間があれば、それまでに対策を練ることが出来る。
「さて、こんな話はもう辞めだ。遅いし、寝ようぜ」
「そうしましょ。さて、黒歌さん、流、おやすみなさい。あ、不純異性交遊は駄目だからね?」
「っるさい!」
オホホ、と言いながら出て行く母アレシアを見てため息が出る。普段は厳しいのに、一度その厳しさが外れればとことん甘く、余計な事ばかり言う。そんな母親だから黒歌もこうしてこの家にいられるのかもしれない。
ある廃墟にて、銀髪の女性が胸に手を当て頬を紅潮させていた。
「あぁ、あぁぁぁっ……! 流、くん……! 貴方と言う人は!—————しかし、解せないわね。あの感じ、
「それは、流様の母君が、彼の力を封じているからにございます」
「母? あーあの若作りが取り柄の。流くんの本質を理解できないバカ親が、殺そうかしら? あぁいやでも。今の私じゃ返り討ちに合うわね。あの女、条件が揃えば神すら屠る力を持っているのだからね。厄介だわ。あの女の特性、満月の夜、不死の身となり、魔法力が数百倍、さらにブラッドムーンの場合には数千倍にも膨れ上がる。ただでさえ龍王を素手で締め上げられるってのに。————でも、あの女は、自分の息子の危機にのみしか本来の力を発揮できない制約があるから、きちんと対策を練れば問題はない、筈」
「しかし、姫様。流様自身、力を取り戻してしまったら、姫様はまた……」
謎の老人の後の言葉は言わなくても分かっている。本来の力であれば、モルガンは流に勝てない。だから、自分の有利な状況を作り出す。大暴れされる前に、大暴れできない場所へと誘う。
「ま、何にせよ、まだ動くには早いわね」
モルガンはひっそりと、その日が来るまで力を蓄える為に当分は表立った行動をしないことにする。
黒歌「次回のお話は、『流死す』で」
流「勝手に殺すな」
黒歌「えー違うにゃん。ながれじゃなく、りゅうだし。言ったじゃん、流がモデルだよって」
流「小説の話かよ!」