FINAL FANTASY Ⅵ~偽レニア~   作:ひきがやもとまち

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少しぶりの更新です。偽レニア最新話、今回はオルトロス戦。
何かメチャクチャな流れですが、いつもの事なのでお気になさらずに♪


第14章「山にも勝てず川にも勝てず静かに生きてくことも出来ないけど死にたくないから生きていたいです。」

 今更ではあるが。

 偽レニアは現代日本からのTS転生者の残りカス少女である。

 百万トンの馬力も持っていなければ、300キロの新幹線と併走する速力もない。特別なナニカを宿しているわけでもなければ、特にこれといっと特殊能力も与えてもらえたことはない。

 ・・・動物の言ってることが時たま判るときがあるという能力があるけど、そんなもん何の役に立つのか使える本人が一番わからないでいるから除外しておく。

 

 所々で規格外な一面を覗かせる部分もあるにはあるが、それらは主として精神面での話であって、こと肉体的問題に関していえば至って普通に平和ボケしてぬるま湯の中で生まれ育った日本人の平均値と変わるところはほとんどないのである。

 

 

 そんな現代日本の甘ったれた社会で生きながらえてきた過去を持つセレニアは今、この世界に生まれ変わってより最大の脅威を前にして生き延びるため必死に戦い、耐え忍びながら生にしがみつこうと全力を出し尽くしていたのであった。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? たぁぁぁぁすけてぇぇぇぇぇぇぇぇっっ(>_<)!!!!」

 

 泣き叫びながら必死にウーマロにしがみつき、助けを求める悲鳴を上げ続ける転生者の少女セレニア。

 レテ川を降るイカダの上で波に揺られながら、モンスターに襲われてる最中でもなく、イカダが転覆しかかっているわけでもなく、ただ山の中に流れる川の急流をイカダに乗って落とされないよう降っているだけの途中でしかないのだが。

 それでも彼女はふざけていない。真剣である。真剣に命の危機を感じて、心底から怖がっている。

 

「えっと・・・エドガー? セレニア、大丈夫なのかな・・・?」

「正直・・・わからないな。彼女がここまでの恐怖心を露わにするのは初めてのことだ・・・。彼女の中の失われた記憶と関係しているのかもしれないが、それさえも憶測の域を出ない。

 そもそも何が怖いのかが私たちには全くわからないのだからな・・・」

 

 ――がしかし。環境に依存した現代日本人の苦悩など、モンスターとか出没する世界で生まれた時から過ごしてきた現地人のティナやエドガー達には理解できない、してやれない。

 普段は心配される側のティナでさえ、今回ばかりは純粋にセレニアの身を案じて自分に危機が迫ってるとはこれっぽっちも感じていない様子。

 

「バナン様。バナン様なら何かおわかりになるのではありませんか? 彼女が恐怖する理由か、もしくはその根源にあるのは何物かが・・・」

「うぅむ・・・、残念だがワシにも今回のことだけは力になってやることができぬ。もしかしたら過去に何か恐ろしい経験を川でしたことがあるのやもしれぬが・・・だが、それにしてもこの怖がりようは尋常ではない。一体彼女の過去に何が・・・?」

 

 司祭であり、反帝国組織リターナーの指導者でもある老人バナンでさえ、この言い草。

 非戦闘職でデスクワークと作戦指揮が主だったお爺さんでさえ、流れが急な川を下ってる“だけならば”そこまでは危機感を抱く必要性は感じられない。

 なぜなら“殺される心配が”ほとんどないからだ。危険度の基準が『殺されるか生き残れるか』を絶対値として測られるこの世界の危機管理意識では『死ぬかもしれない可能性がある“だけ”ならば』、怖いとは感じながらも許容範囲で収まってしまう。

 

 そう言う世界観なのだ。レジャーとしての川下りであっても最新式のカヌーを使って、経験豊富なインストラクターに先導してもらわないとやらせてもらえない川下りか、船頭さんに任せっきりの川下りか、どちらかしか無い現代日本で生まれ育った現代日本人に山の中の川下りをイカダでやる恐怖心など理解できる方がそもそもおかしい。

 

「?? なんかよく分かんねぇけど大変そうだなセレニアの奴・・・。昔、川で釣ったサカナ食って腹壊したりしたことでもあるのかな?」

「それはお前だろうが。大方、あのガキの場合イカダに乗るのが初めてだとか、そんな理由だろ。苦労知らずな都会育ちっぽい服装をしてやがるからな。ヘッ、ざまぁみやがれ」

 

 そして、普通の基準が違いすぎてる修行者達の聖地コルツ山で山籠もりし続けてきた格闘家のマッシュと、野生のクマを手下にして山の中で親殺しの罪状から逃れ続けてきた外道格闘家のバルガスの二人に現代日本の基準など想像することさえ不可能すぎる。

 バルガスの言う『都会育ち』など、現代日本の首都圏辺りの人たちから見ればド田舎育ちでしかないことを知ったら彼は一体どういう顔をするのだろうか?

 興味はあるが、生憎この世界でその情報を知ってる唯一の少女セレニアが彼らの話聞いてられる状態にないので諦めるよりほか道はなし。

 

「で? 次はどっちなんだバルガス。右か左か、それとも真っ直ぐこのままなのか?」

「左だ。次の分かれ道に右はねぇよ・・・あと、上には絶対行くな。同じところに戻ってくるだけだから、下手したら消耗戦で殺されるぞ? いいか? 選ぶなよ? 絶対に選ぶなよ?

 もし選んで俺が死ぬことになったら、祟ってやるからな。覚悟して選べよバカ弟弟子のマッシュ」

「・・・お前・・・師匠殺した実の息子の癖して、よく平然と言えるよなそう言う言葉・・・。そういう図太すぎて厚かまし過ぎるところだけは本気で尊敬するわ、俺には絶対できそうにないから・・・」

 

 なんか妙な感じで兄弟弟子同士の相互理解が深まり、精神的な溝も同じくらいに深まっていっていた頃。

 川の出口付近でタイミングを見計らっていたかのように、流れの先から変な物が流れてくるのを自然生活で目のいい二人が発見する。

 

「あん? ありゃ一体、何だ何だ?」

「どうしたマッシュ―――ゲッ!? あの野郎はまさか!!」

 

 マッシュが戸惑い、バルガスが不審そうに見た直後に驚愕した物体。

 川の上流から、ドンブラコッコ、ドンブラコッコと流れてきた漂流物。

 

 それがイカダに流れ着いた瞬間――――牙を剝いてティナ達に襲いかかってきた!!!

 

 

「うひょひょひょ――――っ!!!! ここは通せんぼ!

 とおさないよー。イジワル? イジワル?」

 

「いや、お前の方から邪魔するために流れてきたんだろう!?」

 

 いきなり襲いかかってきた謎の物体、紫色の巨大なタコの形をした人の言葉を話すモンスターに、マッシュがいきなりツッコミを入れる!

 

 だが、通じない。

 

「お? かわいい女の子。しかも二人も・・・ワイの好みやわぁ・・・・・・ポッ♡」

『――ひッ!?』

「話振っておいて、返事は無視しやがった!? 勝手だコイツ!!」

 

 いきなり種族を超えた性欲を露わにしてティナとセレニアを怯えさせる、隠す気のない男気というか変態紳士ぶりと言うべきなのか。

 とにかくセレニアとは違うタイプの平等性を持ってるらしいタコ型モンスターには、比較的まっとうなマッシュからのツッコミは『ヘ』程にも効いてくれていなかった。

 

「こ、こっちに来ないで! ふぁ、【ファイア】!!」

 

 本能的に恐怖というか、身の危険を感じたらしいティナが手加減なしで全力攻撃魔法ファイアを放って身を守ろうとする。もしくは貞操を守りぬくため必死に変態と戦う。

 

 炎に包まれる変態――いや、大ダコモンスター。

 だが、このタコ。意外にも変態根性は一本筋の通って徹底した変態ぶりの持ち主だったらしい。

 

「アッチッチ――!?

 ゆでだこ!? ゆでだこ!?」

 

 自分の種族が生まれ持つ形状をネタに使って、戦闘中にボケてくる凄まじすぎる精神力!

 間違いない・・・! こいつぁ、変態だぁっ!!!

 

「ええぃ! このナヨナヨしまくった根性なしの玉無しヤロウっぽい奴め! 俺の必殺技でぶっ倒してやるぜ! 【爆裂拳】!!!」

 

 ガガガガ! マッシュの連続パンチが炸裂するが、しかし変態に男からの攻撃はダメージよりも怒りの方が効果は大きい!

 

「きんにくモリモリ・・・・・・きらいだーっ!!!」

「ぐほぇっ!? こ、コイツ意外に強ぇぇ・・・・・・」

 

 大ダコに相応しく、ブッ太い足で殴りつけられたマッシュがよろめきながら立ち上がろうとしていると、その前にバルガスが立ちはだかって弟弟子を叱咤した。コイツを甘く見るのは危険だと。

 

「やめておけマッシュ! こいつに倫理だとか常識だとか求めるのは逆効果にしかならねぇ! 性格的に絶対敵わねぇからな!」

「バルガス!? お前はコイツのことを知っているのか!?」

 

 オートボウガンで距離を取りながら戦い、前衛を支援していたエドガーに訊かれたバルガスは首肯しながらも苦々しそうに表情を歪めて語り出す。

 

「ああ、知ってるさ。よく知っている。・・・コイツの名前はオルトロス。レテ川に古くから生息しているモンスターで、近くを人間が通りかかると、からかい半分でちょっかいを出すため近寄ってきて多くの場合戦闘になる。

 その理由は、女だったら川に引きずり込んでイタズラしようとするから抵抗されるのと、筋肉隆々の男だったら大嫌いだからと大足ふるって問答無用で攻撃してくるのが原因だ」

『う、うわぁ・・・・・・』

「そのくせ、レテ川に古くから住んでる古株で、川のモンスターの中じゃ名門の部類に入る大金持ちの家の子供だとかで金持ってるから、強い奴を見つけると用心棒にならないかとか勧誘してくるときまであるんだ・・・」

「・・・・・・は? え、バルガス。何でお前そんなことまで知って――」

「おまけに金払いはいいんだが、人使い荒くて用心棒に全部任せっきりのまま、敵全部を一人で相手にしろとか言いやがる。

 しかも、一人雇うときには太っ腹な部分を見せたかと思えば、もう一人雇ったらどうかと提案したら急にケチ臭くなりやがる。二人雇えば簡単な仕事を一人だけでやらせたがるんだ・・・クソッ!

 俺も博打で負けが込んでなければこんなヤツとの縁は直ぐにでも切っていた物を・・・はっ!?」

『・・・・・・・・・』

「ち、違うぞお前ら! 俺はこんなヤツに雇われたことはねぇ! 今のは聞いた話だ聞いた話! 友達から聞いた話なんだよ! 嘘じゃねぇって! 信じろって! 信じる者はバカを見て救われるって昔の偉い生臭坊主が言ってたじゃねぇか!?」

 

 必死に取り繕おうとするバルガス。全員が白い目つきで彼と、前方に立ち塞がってる巨大タコモンスターとを等分に眺めやりながら『同類』を見る視線で見つめて距離を取り始める中で。

 

 変態巨大タコモンスター、またの名をオルトロスが致命的すぎて絶妙すぎる“その一言”を遂に口に出してしまうのである!!

 

 

 

 

「あ! バルガス先生だー♪ お久しぶりでーす! 元気してた? 元気してた?」

 

 

 

「ウォォォォルトロスゥゥゥゥゥゥゥっっ!!!!!

 俺はぁぁぁぁぁ! お前をぉぉぉぉぉぉっ!! 絶対許さないぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 

 

 ――ちっぽけなプライドに致命傷負わされた小悪党が怒り狂い、マッシュを殺すために編み出したとか言う必殺技までぶっ放す!!

 

 

「必殺!!! 【烈風燕略拳】!!!!!」

 

 

 ヒュゴゴゴォォォォォォォ!!!!

 猛スピードの突風が吹き荒れ、川の上で水に揺れるイカダを揺さぶりまくって仲間達を大あらわに慌てさせてしまうが、そうするだけの価値はあった。

 

「キャアッ!?」

「ぎゃっ!?」

「おひょ―――っ!? ぱ、ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱパンチラ!? あれはパンチラ!? 今のってパンチラなんですかバルガス先生!?」

 

 ティナのミニスカートと、元男でガードが浅いセレニアのスカートが強風によって捲れ上がり、確実に一瞬はガン見する時間を得ていたオルトロスは、スカートの中身に夢中になり戦闘どころの話ではなくなってしまわされていた。

 

「で、で、で・・・デレ~~~~~~♡♡」

 

 変態っぽいニヤけた目つきを、だらしなく緩めた完全無欠のダメ男な瞳で川の中にプカプカと浮かんでるだけになる巨大タコモンスター。

 

「今だ! マッシュ! 止めを刺してやれ! お前の攻撃力がこの中じゃ一番高けぇ!!

 ヤツにお前の大好きな正義とやらの拳をお見舞いしてやれやぁぁぁぁぁっ!!!」

「お、おう。そ、そうだな。うん、わかったわ。一応は・・・」

 

 なにか色々と釈然としないものを感じさせられながらも、格闘家の本能として絶好のタイミングで必殺技を叩き込む機会を見逃すことができずに【オーラキャノン】でオルトロスに止めを刺すマッシュ。

 

「がふぅっ!?」

 

 ばっしゃーん! 悲鳴と共に盛大な音を響かせながら水中へと潜って姿を消すオルトロス。

 

「やったのか? 手応えはなかったような気がするんだが・・・まさか!?」

「きゃあ!? あ、足に何かが!!」

「くそっ! やっぱり水中にもぐっただけだったか!」

 

“グェッ、グェッ、グェッ♪ がぼがぼがぼ・・・・・・水の下からおパンツ丸見え~♡”

 

「キャァァァァァ!?」

「テメェ! この野郎! まるで兄貴みたいな癖を身につけやがって!

 こうなったら水の中に潜って必殺技でバラバラにしてやる!」

「いや、ちょっと待てマッシュ!? 今のは兄として訂正を求めたい発言だったぞ!? お前は自分の兄貴のことを何だと思ってるんだ!?」

「止めるな兄貴! おうりゃ――――っ!!!」

「待て―――っ! マッシュ! 頼むから待ってくれ! 私に名誉毀損したまま声の届かない水の中に飛び込まないでくれぇぇぇぇぇっ!?」

「ま、まぁ、大丈夫じゃろう。心配はいらん。そのうち元気よく飛び出してくるじゃろうから、お主の名誉回復はその後からでも遅くはあるまいて」

「・・・ほんとですか、バナン・・・・・・様・・・?」

「何を言っておる。そのことは兄弟のお主が一番知っておるはずじゃ・・・・・・」

 

 

 

 ばしゃ―――――――っん!!!!!!

 

 

「あ~~~~~~れ~~~~~~~~っ!?」

 

 

「・・・・・・・・・」

「・・・元気良すぎたって感じかなぁ・・・アハハハァ・・・・・・」

「マッシュ――――――っ!?」

「ウゴ―――――――ッ!!!」

「え!? ちょっ!? なにっ!? なんでいきなり私持ったまま水に飛び込もうとしてんですかウーマロさん!? ・・・え? 『なんかスゴい勢いで飛んでってたのが楽しそうだったから一緒に楽しもう』って、イヤですぅぅぅぅっ!? たぁぁすけてぇぇぇぇっ!?」

「うぉぉぉぉぉっい!? 俺が前にいるところへ突撃しに来るんじゃねぇぇぇっ!? 巻き込むな! 俺を巻き込もうとするな! 俺がいない位置でそのガキだけ巻き込んでください! お願いします雪男さん! あ――――れ――――――っ!?」

 

 

 

 どぼ―――――っん!!!!!

 ざっぱ――――――――ん!!!!!!!

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

「マッシュ―――っ!! セレニア―――っ!!! ウーマロ――――っ!!!

 あと、ついでで悪いけど自業自得だから悪く思わないでバルガス―――っ!!!」

 

「・・・はぁ・・・。マッシュ! セレニア! ウーマロ! そしてバルガス!

 あとは自分たちでなんとかしろ―――っ!! ここまでメチャクチャな状況になっちゃうと、俺にはどうすることもしてやれないからな――――っ!?」

 

 

 ・・・斯くして、予想だにしなかった出来事の連続により三つの道に別れたパーティーの仲間たち。

 

 バナンを護衛しながらナルシェに向かうエドガーとティナ。

 帝国を攪乱するためサウスフィガロに潜入したロック。

 

 そして・・・、

 

 一人急流に飲まれたマッシュと、彼を楽しそうだからと追いかけてったウーマロに巻き込まれされたセレニアとバルガス。

 

 はたして三者の運命や如何に・・・?

 

 ――って、一者だけ運命を自分から過酷にしちまってるルートが混ざってる気がするのは気のせいかね・・・?

 

つづく

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