FINAL FANTASY Ⅵ~偽レニア~   作:ひきがやもとまち

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大分久しぶりの更新となります。
止まり続けていたエロ作が、半端な形ながらも更新できたので、今作の方も進めていい気分にようやく成れました。
なので、取りあえず更新です。久々なせいで調整が下手な内容になってしまいましたが、次までには治したいものです。


第19章「ガストラ帝国軍、北大陸東部戦線異常しかなし」

 『ドマ城への毒攻め』は、帝国軍が今次大戦中におこなった非人道的な虐殺作戦として後世まで伝えられていく悲劇的な事件である。

 その後の混乱で数々の悲劇を体験することになる、この世界の人々であってさえ癒えない心の傷として長く語り継がれるほどの許されざる暴挙。

 

 この事件は帝国の狂った魔道師ケフカが独断で断行した作戦という認識で人々の見解は一致しており、帝国首都のガストラ皇帝が陰ながら実行を支援していたと示す証拠は存在していない。

 

 ただ、当時の世界情勢と戦局を状況証拠とした場合には、彼が関わっていた可能性が0でないことを示してもいた。

 この時期に帝国軍は予定通り、レオ将軍の調略によって内通者から得た情報により難攻不落のサウスフィガロを占領。北大陸最初の橋頭堡を築くことに成功している。

 だが、その後からは思うように行かなくなってしまい、コルツ山にあるリターナー本部へのゲリラ掃討作戦に失敗し、フィガロ城攻略も結局は防がれてしまう。

 征服のための橋頭堡を得たものの、橋頭堡を得ただけで停滞を余儀なくされていたのである。

 

 そして世間一般には語られていなかったが、帝国軍には何より侵攻を急がなければならない理由として、帝国の魔導研究所が確保してきた『研究サンプルとしての幻獣たち』が残り少なくなっていたという事情が存在していたことが、最大の状況証拠であり理由だ。

 かつてガストラ皇帝自身が幻獣界へと赴き捕らえさせ、帝国軍の躍進を支える魔導兵器の数々を生み出し続けてきた古の獣たる幻獣たち・・・・・・新たな数の補充が利かぬ彼らの消耗の激しさがガストラに、『氷付けという名のタイムカプセル』として発見された魔大戦時代のままのナルシェの幻獣を一刻も早く確保させたいと焦るあまり、強攻策による侵攻を促せたとしても然程不思議な状況ではなかったのが当時の世界における政治事情だったのである。

 

 レオの正攻法によっても、遠からずドマ城は落とせるだろう。

 フィガロ城も陥落は免れたとは言え、サウスフィガロを失った経済的な痛手は大きく、帝国の経済は活性化している。

 リターナーに至っては損害が大きすぎたし、指導者バナンとの合流も済んでいない。

 

 時間さえかければ手にすることが出来たかもしれない、北大陸の確実な制圧。

 だが、その時間こそが当時の世界を手に入れつつあった帝国軍にとって、最も残り少なっていたのではないか・・・・・・と、もし現在の各勢力が抱える問題を全て把握することが出来たならば、異世界より落ちてきたと言うより、捨てられてきた残りカスの少女は断言できたかもしれない。

 

 だが、現実に彼女は全知全能ではなく、自分が見聞きした情報の中でしか判断する術を持たない不完全な人間の一人でしかない。全てを知るなど到底不可能な身の上だったのだ。

 

 まして・・・・・・自分自身が現在進行形で問題を抱えるというか、『問題に抱えられて移動させられている状況』にある身とあっては、自分以外の他人たちの世界など気にしている余裕は一切合切これっぽちも存在していなかったのだから・・・・・・

 

 

 

 

【ウッゴ♪ ウッゴ♪ ウッゴゴゴ~~~♪♪】

『待てコラ殺させろコラ! 八つ当たりのストレス発散させろや侵入者どもーッ!!!』

「誰かーっ!? 私のせいじゃないことで死にかかってるので助けてくださーっい!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――む? なにやら東側ゲートの方が騒がしいようだが・・・なにか異常事態でもあったのか?」

 

 別の世界から捨てられてきた残りカス少女が、異世界の北の東のどっかで叫んでいた悲鳴を遠くから聞かされた帝国の将軍レオは、訝しげに眉をひそめながら部下に確認して答えを得た。

 

「ハッ! 部下に確認させましたところ、モンスターが一匹、陣地内に侵入したらしく警備の兵たちが迎撃に出たそうであります!」

「モンスターだと?」

「ハッ! どうやら、野人モンスターを操る少女型のモンスターとのことであります!」

 

 遠くから聞こえてきた騒ぐ声を耳にして、不審に思ったから部下の一人に問いただして得た答えの内容がコレである。

 本人を自分の目で直接見れば、到底モンスターを操っているとは思えない実情が一発で看破できただろうけれど、この世界には大型のモンスターを操る美しい美女や少女の姿をしたモンスターというのは思いのほか多く生息しており、2メートルを超す野人雪男に乗っかって運ばれてる少女を見ても別物と思えることは多くの無知な普通の人間には容易いことではない。

 

 それが、モンスターという名の現実だとフィクションとしてしか存在できない者たちが実在して脅威になっている異世界の人間たちの認識というものだった。

 あるいは、この時点でレオ将軍が現場を見に行ってくれていれば、荷物のように持ち運ばれて助けを求めて叫びまくっている少女の姿に、保護だか救出だかを命令してくれたかもしれなかったのだけれども。

 

 このときの彼には、騒ぎを聞いても放置しておかざるを得ない事情が存在していたのも、また事実ではあった次第である。

 

「一匹だけのモンスターをか? たかが、それだけのモンスターに侵入されたにしては些か騒ぎすぎているように思えるのだが・・・」

「それが・・・兵たちがケフカに対しての不満とストレスをぶつける口実として利用したいらしく、止めてくれないよう隊長たちから嘆願をもらってきたばかりでありまして・・・」

「・・・む」

 

 渋い顔をして部下からの報告を聞き終わり、痛いところを突かれて腕を組むと考え始めるレオ将軍。

 先日の一件で、ケフカの暴走に油を注ぐ結果となってしまったことを未だに気に病んでいたのが彼だったからだった。

 

 仮に侵入者が、リターナーかドマ国のスパイであったなら情報を得るため決して殺させずに生かしたまま捕らえるよう厳命することも出来たであろうが、「野人モンスター使いの少女型モンスター」が相手というなら、妥協点として上司が見に行くことなく部下の好きにやらせてやることで妥協案としておくべき問題か・・・・・・と、彼の中ではそういう割り切りがついた瞬間だった。

 少女の側では割り切りがつけられてしまった瞬間でもあったのだけれども。

 

「うむ・・・まぁなんだ。敵城に総攻撃をかける前に兵たちの精神的負担を、今以上に重くしないのも重要なことではある。

 ――私はなにも聞かず、お前はなにも答えなかった――そういうことにしておくべき事柄なのだろうな」

「はっ。お気遣いしていただき感謝いたします、レオ将軍・・・」

 

 答える側も多少の申し訳なさを感じさせるような返事で返してきた、その瞬間。

 “その報告”は、彼の元へと手紙という形で届けられてくることになる―――

 

「レオ将軍! ガストラ皇帝陛下からの伝書鳩であります!!」

「何? 陛下から・・・?」

 

 息せきって駆けてきた部下に手渡され、自分の忠誠を誓う対象からの手紙を一読しながらレオ将軍は不審の色が隠せずにいた。

 差もあろう。この時期にわざわざ最前線で侵略軍を率いる司令官に国家統治者自ら届けさせる直々の命令など、ただ事と思う方が難しい。

 

「・・・なに・・・? これは一体・・・・・・」

 

 そして、手紙の内容を確認した頃で不審は、不安へと深度を深めることになる。

 手紙を持ってきただけの伝令役の兵士には下がるよう命じた後、将軍は側に控えて訝しげな表情を浮かべながら見守ってくれている側近の大隊長に向かって安心させるように笑いかけながら、手紙の内容について語ってやる。

 

「皇帝陛下がお呼びのようだ。私は先に本国へと帰ることになった」

「レオ将軍を呼び出し!? この戦況の時にでありますか!?」

 

 皇帝から届いた手紙の内容を聞かされた古参の大隊長は、苦虫を何ダースも噛み潰したような表情になって思わず叫び声を上げていた。

 もし尊敬する上官のレオ将軍が、皇帝に絶対の忠誠を誓っていることを知らなければガストラを罵倒していたかもしれない。

 

 それが彼としては、当たり前の反応だった。

 どこの世界に本国から海を隔てた侵略先の野戦陣地で陣頭指揮を執っている有能な現場司令官を最前線から遠ざけて、一番安全な後方の首都まで帰ってくるよう命じられることが戦争の勝利に近づけると信じ込めるアホウすぎる前線の兵士がいると言うのか?

 

(大方、後方の宮廷晩餐会で政治ゲームの駒にでも使うつもりなのだろう。これだから現場を知らない政治家という連中は・・・)

 

 それが大隊長の嘘偽らざる皇帝から届けられた手紙の内容に対しての感想だった。

 こういう時、世界の違いや時空の壁などの諸問題は、人が抱く感想に大した違いを及ぼさないものであるらしい。

 どこの世界、如何なる時空での戦いであろうとも、人は同じ立場で同じことをされたときには、同じようなことを感じてしまう。

 そういう風に生物の心というものは出来ているのだから―――。

 

「お前の気持ちも分からんではないがな。まぁ、そう怒るな」

 

 だが一方で、同じ世界で同じことをされたとしても、同じ立場でない場合には異なる感想を抱く例も少数ながら存在はしていたらしい。

 レオ将軍は苦笑と共に部下の不敬罪に該当しそうな対応は水に流し、穏やかな口調で窘めてやる。

 目の前の戦場と戦局だけを視野に入れれば、彼の意見が全くもって正しい正論であることはレオにも分かることだったが、彼の視点は相手よりは数段ほど高い。

 必ずしもこの命令書が、現場にとって無縁な政治の事情と彼は解釈しなかったようだった。

 

「先日までなら私もお前と同じことを思ったかもしれないがな。・・・だが、今となってはそうとも言い切れん事情を我々は抱えてしまっているのも確かなのだ」

「・・・・・・と、言いますと?」

「言うまでもない。本国から派遣された軍監殿さ。

 アイツが本国に対して正確な報告だけを行い、要らぬ誹謗中傷や誤報を報告していないと言い切れる自信が私にはないのでな。念のため皇帝陛下に直接説明申し上げた方が安全かもしれん」

「――あッ!?」

 

 尊敬する上司からの説明を聞かされ「ハッ」となった側近は両目を大きく開いて瞠目し、その危険性に言われるまで気づけなかった自分の浅慮さを心底から恥じ入らされた。

 

 ・・・・・・そうだ、なぜ気づかなかったのだろう? 

 元々ケフカが本国から、この陣地まで赴いてきたのは『開戦から数年経ってもドマを攻め落とせずにいるレオ将軍の帝国に対する忠誠心に疑問の余地がある』という口実によって、前線視察という名目で『裏切り牽制』と『レオ将軍個人の身辺調査』のために遠路はるばるやってきていた陰険な男だったからなのだ。

 

 『政敵を追い落とす口実』になりそうなものなら重箱を突いてでも見つけ出したがるだろうし、無ければ捏造してしまえばいいだけのこと。

 今の時点で皇帝に対してレオ将軍の悪口をあることないこと書きなぐり、『反逆の可能性大。早めに処刑してしまうことこそ最善の策』とでも銘打った報告書を何枚もお届けしていたとしても何ら不思議のないヘビのような性格の持ち主なのである。

 

 そんな男な上に、オマケに今は与えられている役職が『軍監』である。

 軍監の役割とは、前線指揮官に随行して、相手の行状を観察・本国へ報告する任務を帯びた役職であり、ハッキリ言ってしまうなら人事考査のため窓枠に指を擦り付けたがるような粘着質な性格の向きの役職とさえ言っていい陰湿な役割なのだ。

 

 皇帝自身が明言しているため、前線に対して命令を押しつける権限こそないものの、ソレは逆に軍監が皇帝陛下に報告する自分たちへの評価を、評価される側が勝手に見たり口出ししたりする権限も与えられていないことを意味してしまっていた。

 

 もしケフカが要らぬ報告をしていたせいで、本国では自分たちの行動に対して思いもかけぬほど問題視されている可能性も否定できないのが今の彼らが置かれた立場だったのである。

 

「奴個人が俺を悪く言うのは一向に構わん。

 が、皇帝陛下の出頭命令を無視して、奴に口実を与えてやるのは愉快なことではないのでな。面倒をかけるが他の者たちにはお前から伝えてくれ」

「ははっ。・・・申し訳ありません、将軍。余計な口を差し挟んでしまって」

 

 命令を受諾しながらも帝国軍の側近は、申し訳なさも込めてレオ将軍に答礼した。

 前線の軍人にありがちなことだが、彼もまた自分たち現場の足を引っ張ることしかしない本国の政治というものを軽視する心理的傾向を持つようになっており、本国からくる視察役などに至っては観光客気分のお荷物としか今までは思ってこなかった。

 

 自分たちが帝国の戦線を支えているのだという自負もあり、前線の足を引っ張るしか能の無いお目付役など、叩き出して本国に送り返してやったところで、勝ちさえすれば大した問題にはならないだろうと高をくくっていた部分が少なからずある未来予測を行っていたのだ。

 

 だが、ある意味では楽観的予測とも呼べる判断に基づいて行われる、これらの行動が禍根を招く原因となってしまい、敵に勝利した後の軍事的英雄を破滅へと向かわせる十三階段の1段目になる事例が多いのは、異世界チキュウの歴史を知る者ならばモグリでさえ承知している政治の現実だ。

 

 たとえとしては、ちょうど今敵対しているドマ国と同じ、古いサムライの守旧勢力であった『平家一門』を滅ぼすべく遠征した若き英雄『源義経』が分かりやすいかもしれない。

 

 現代でも悲劇の英雄として人気が高い義経だが、彼が平家を滅ぼす大戦の折に兄である頼朝への報告役として随行していた『梶原景時』と激しく反目し、本国にいる兄に対して様々に悪く解釈した報告書を送られていたことが後の彼の運命を少なからず左右した可能性は少なくはなかっただろう。

 

 人気の高さ故に様々な異説がある人物のため、それだけで何かが変わったとは考えづらいが、前線から遠く離れた本国にいながらにして報告役からの話だけが離れた相手の行状を知る唯一の情報源となっていた相手の心理面を考えれば、あまり無条件で好印象を抱き続けられるような状況でなかったことだけは多くの人に異論がない部分であろう。

 

 この名もなき異世界はチキュウと異なり、魔大戦が終結してから1000年もの長きに渡って戦争が行われたことがなく、それら教訓となるべき『戦には強いが政治がヘタだった』悲劇の英雄の話もあまり存在していなかったものの、レオ将軍は権謀術数渦巻く魔宮と化してしまっているガストラ帝国の帝都ベクタで皇帝ガストラに仕える側近として側に居続けた経験によって、それらの危険性を知らぬ者よりかは鋭敏になることが出来ていたようだった。

 

 

「気にするな、それを考えるのが将軍である私の果たすべき役割というもの。

 部下にも同じ事ができるようなら、私はとっくに職を失ってベクタで隠居生活を送る身になっていただろうさ」

 

 そんな人物だからこそ、レオ将軍は謝罪する部下に向かって敢えて軽く笑い飛ばし、慰めの言葉をかけて機を遣わせる事よりも、話の締めくくりとして使うことで流す道を選んだようだった。

 

「・・・・・・承知しました。お気遣い、ありがたく」

「よし。後のことは全てお前たちに任せたぞ、万事よろしくやってくれ。――特に、うるさ型が勝手なマネをしでかすことがないようにだけを気をつけて欲しい。

 くれぐれも、早まったマネだけはさせんようにな? 頼んだぞ」

「ははっ! 承知しました、後はお任せ下さいレオ将軍!!」

 

 再度敬礼した後、キビキビとした足取りで去って行く部下を見送ってから将軍自身も出発の準備をするためテントの中へと戻っていく。

 

 

 そして誰もいなくなって、電車ではない場所に沈黙が降りかかっていた丁度その時。

 ・・・・・・彼らの会話を気づかれることなく、影から盗み偽いていた二つの影が、帝国軍陣地内に侵入していたのだった。

 

 

 

「レオ将軍か・・・・・・敵とは言え、なかなか分別のある男のようだな」

 

 

 物陰の後ろにコッソリ隠れ潜みながら、そんな感想を呟いていたのは身長190センチで体重は106キロもある、筋骨隆々と盛り上がった筋肉マッチョな山のクマさん。

 

 ――もとい、格闘家のマッシュだった。

 その後ろには影のように付き従う、暗殺者にして案内役のシャドウも立っていた。

 

 彼らは、ウーマロに抱きかかえられたセレニアが上げる悲鳴に釣られるようにして、次々と追跡隊に加わって持ち場を放棄していく帝国兵達の警備網の穴から穴へと移動していった末に、先程の帝国兵とレオ将軍とが会話をしている場面に出くわしそうになり、慌てて近くにあった物陰の裏へと避難して、その場所に隠れ潜みながら今の今まで出歯亀し続けて出番がきた身だったのである。

 

「お、移動するみたいだな。後を付けていけば、この陣地の司令部の辺りまで潜り込めるかもしれない。当てもなく彷徨いても意味ないだろうし、折角だし後を付けさせてもらおうぜ」

「・・・・・・了解した」

 

 側近を下がらせた後、帝都へ一時帰還するために準備を整え終えたレオ将軍がテントから出てきて、移動のための船を用意させるため海側へ向けて移動し始めたのに合わせ、自分たちの方針も支持するマッシュに頷いて了承するシャドウ。

 

 

 ・・・どうでもいい余談だが、身長2メートル近い筋肉マッチョな熊と見間違われる大男が、荷物の背後に収まりきるサイズとなるため、背を曲げて身体を縮こませて物陰に自分の巨体を押し込んでいる現状は、傍目から見るとヒドく滑稽なもののように思われそうだなと、同行していたシャドウは思ったかもしれないが口には出さず。

 

 それを指摘しない理由も、自分自身が真っ昼間の陣地内に気取られることなく侵入してきた割には、全身黒一色で素顔を隠した目立ちすぎる格好をして、しかも犬も一緒に連れてきているという、言う資格なさそうな自分自身を自覚していたためだったかは定かではない。

 

 普段から人とのコミュニケーションを避け、必要以外のことは自分から語ることがほとんどない彼にとってみれば、無料で案内役を引き受けてやっただけの相手が世間からどう言われそうな行動をしているかまで指摘してやる義理や必要性は一切ありはしない。無いのだけれども・・・・・・なんとなく別の理由を無言の中に見いだしたくなってしまうには状況がなせる技だったのだろう。多分だが・・・。

 

「――って、あれ? バルガスの奴はどこ行ったんだ? 姿が見ねぇけど」

「あの目付きの悪い総髪の男なら、先ほど列の後ろからソッと離れていった。“何か金目のものを物色してくる”と言っていたな」

「・・・・・・何やってんだよ、あのバカ兄弟子は・・・」

 

 頭をガシガシかきまながら、自分勝手すぎて集団がまるで取れない一応は亡き師匠の息子で年長者でもある兄弟子のKYぶりに苛立ちと共に恥ずかしさを込めて、小さく吐き捨てるマッシュ。

 

 一体どこの世界に、偶然にも流れ着いた先で敵国と同盟国が交戦状態になっていた戦場に出くわし、現状把握のため気づかれることなく密かに侵入した敵軍の陣地内で、予定になかった別々の行動を勝手にとりだすスパイ活動中のレジスタンスがいるだろう?

 

 自分たちは確かにスパイではないし、偶然この場に来ただけだったが、だからこそ予測しきれない敵の現状を知る前の段階で勝手な独自行動をとるべきではないのが常識的対応というものだ。

 

 少なくともマッシュはそうだと確信していたし、一般的な常識論として必ずしも間違っていたわけでもない。

 

 ・・・・・・ただ、世の中には自分の信じる正しさ以外の正しい見方も存在しているものであり、自分が低く見ている人格的に卑劣な人間の意見よりも、高尚な人格者の考えの方が優れていると決まっている訳でもない。

 

 まぁ、長くなったが要するに。

 

「それと、言伝がある。お前に伝えるよう依頼されたものだ。

 “薄らデカい格闘家二人で肩寄せ合って隠密行動とかアホか。見つけてくれって言ってるようなもんだろうが、少しは常識ってもんを学べ。我が考えなしのバカ弟弟子よ”

 ・・・・・・との事だそうだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 シャドウから無感情に淡々とした口調で伝えられた、次の瞬間。

 師匠殺しの恩知らずで、父親殺しの親不孝者で、弟弟子まで嫉妬で殺そうとしてきやがった兄弟子から、人としての常識を諭された格闘家としては格上のマッシュは、額に青筋を5つぐらい一気に浮かべて、内3つぐらいは血管ぶち切らせて破裂する寸前までいかされはしたものの・・・・・・大声で怒鳴ることだけは何とか自制して我慢して、場の空気を読んだ常識的対応を遵守することに何とか成功して、肩で大きく息を吐きながら「・・・フ~・・・、フ~・・・、」と抑えきれなかった感情を身体の外側へと吐き出すことで恨みから道を踏み外すことを避けきったのであった。

 

 そこは流石に最強格闘家ダンカンの一番弟子であり、精神鍛錬を積んできた度合いが修行サボっていた兄弟子とは違うのだという証明になっていた事だっただろう。

 

「・・・バルガス・・・お前とは決着をつけるしかないようだな・・・。

 宿命だ。そしてお前が俺に勝てないのも、宿命だ。・・・宿命なんだ・・・ッ、俺は恨んでなんかいねぇッ」

「・・・・・・・・・」

 

 ――と思ってたけど、違ったかもしれない。

 歯を食いしばりながら、必死に大声で叫び出すのを我慢している、怒れるクマみたいな2メートル近い大男の姿を見れば異世界少女セレニアはそう感じたかもしれないけど、今は近くにいないから代わりにいる黒尽くめで無口な暗殺者のシャドウさんと、無口な飼い犬のインターセプター君がどう思いながら聞いてたかはよく分からない。無口だし、顔隠してるからねぇ。

 

 

 ――これも余談だが、彼らがここまで陣地の奥深くまで入り込めた理由の一つは言うまでもなく、ウーマロの気まぐれ行動に付き合わされた保身覚えた偽レニアちゃんが、ギャーギャー騒ぎまくって的の注意引きつけてくれたからと言うのが大きく貢献していたのだけども、それ以外にも大きな原因として『ケフカ』の存在があったことを今の時点で彼はまだ知らない。

 

 レオ将軍が直接指揮を執っている間は、任務中に私語することはあってもサボることはなかった帝国兵たちだったが、ケフカがいちいち『キチンと見張ってるか!?』と上から目線で確認しに来るものだから余計にやりたくなくなってしまって最近ダレ気味になっていたのである。

 

 端的に言えば、気にくわないケフカから「真面目にやれ」と命令されてムカついたので、「意地でも真面目にやりたくなくなった」という、子供じみた理屈のおかげでここまで入り込めてしまってた訳なんだけれども・・・・・・。

 

 それが異世界から溢れ落ちてきた残りカスに過ぎないTS少女が、保身覚えてたせいで少しバカっぽくなってしまっていたのと関係してるのかどうかまでは定かじゃないけれども、どうにもソッチ系の展開が起きやすくなり過ぎてるように感じられるのはデジャブではないと世界か誰かは思ってると思っておりまする。

 

 

「――ところで、いいのか? あのレオという将軍に近づいてくる男がいるようだ。

 俺はともかく“お前たちとは”因縁がある相手だと思うのだがな」

「・・・フゥー・・・、フゥー・・・、ふぅ――。で、そりゃ一体誰のことって、ん?

 なんだ? あの“派手でピエロみたいな格好をした偉そうな男”は・・・・・・」

 

 

 

 ―――こうして、マッシュもまた兄と同じく、自分たちが生まれ育った城を炎で焼き滅ぼそうとした男と初めて直接対面する日を迎えることとなる。

 

 それは異世界から捨てられてきた少女にも変えようのない必然的な宿命。

 父子そろって帝国との因縁を持たされてしまった兄弟として、付けなければいけない決着のための出会いが訪れる時がマッシュにも来た。只それだけのことである。

 

 そしてそれは、マッシュにとって止められなかった悲劇への悔恨と、とある城に住む人々に襲いかかる悲劇の始まりを意味するものでもあった・・・・・・。

 

 

 

 遠く、遠く、この地へ帝国軍がもたらすグランギニョルの開幕を告げる死神の声が響き渡り、人間たちの耳には決して届くことなき冷たき声で、死を司る戦車に跨がるジョーカーは怪しく囁く――――

 

 

 

 

「ハヤシライスが食べたい!!」

 

 

 

 ―――と。

 

 

 

 ・・・・・・失礼、間違えました。

 正解はコッチです。

 

 

 

『うおらぁぁぁぁッ!! 待てやコラ侵入者野郎! ぶち殺させろやこの野郎! リンチしてストレス発散させろやこの野郎! 俺たちはケフカにムカついてんじゃ糞ボケェェェェッ!!!』

 

『ウオラァァァァッ!! 俺たちにも殺させろやコラ!! 俺たちも鬱憤たまってんだ! ケフカに対する恨み、今こそ八つ当たりで晴らすッ!!!』

 

「なんか増えてますーッ!? 子供相手に八つ当たりで殺すのは犯罪! 犯罪ですから止めましょう! いやマジで本当に!? いい年こいてとか年齢とか関係なしにガチで!?

 ウーマロさん! あっち! あっちです! どっち行ったらいいか分かりませんけど、とりあえずアッチ! あっち行って下さい! あっちィィィィッ!?」

 

【ウッゴ♪ ウッゴ♪♪ ウッゴッゴ♪♪♪】

 

 

 

 なんとなく、偽レニアの言い方がリズミカルで気に入ったらしい、芸術センスは豊かっぽい雪男さんは未だに陣地内のどこかを走り回っておりました。

 今どこをどう走っているのか、走っている本人たち自身が知らず、操縦者自らの判断と指示によって、余計に現在地が分からなくなる決断下しちまったわけですけれども・・・・・・。

 

 

 確かにコイツも、ジョーカーにはなりそうではありましたので、間違いではないです。

 ジョーカーはルール次第で、なんかよく分からない存在になりやすいカードである故に・・・・・・

 

 

 

つづく

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