FINAL FANTASY Ⅵ~偽レニア~   作:ひきがやもとまち

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すっかり忘れていた今作の更新。
あんまりにも間が空きすぎたので、次話更新という形を取らせていただきました。

その分、少し予定してたのより深く描いてみました。
遅れすぎたお詫びになればよいのですが……。


第23章「ドマ城陥落。滅ぼしたのは毒と夢と1000年前と…」

 

 

「――つまり変色した川の水で、水柱が立ったのが見えた・・・と言うのだな?」

「ハハァっ! 帝国軍陣地がある方角から我らがドマ城へと続く位置から・・・・・・尋常な事態とは思えませぬ! 陛下、どうかご下知を!」

「ふむ・・・」

 

 玉座の置かれた王の間では、既に兵の一人が駆け込んで緊急報告をおこなっている最中だった。

 当事者であるバルガスの予測すら上回っていた水柱の巨大さと、犠牲になった膨大なモンスターたちの数が、結果論として起こしてしまっていた事態の影響故である。

 

 あまりにも高すぎる位置まで水が吹き上がったのと、目立ちすぎる変色したドス黒い紫だったのも手伝って、たまたま位置と方向が見える場所を担当していた警備兵の一人が大急ぎで玉座の間へと駆け込み、ドマ国王に緊急事態と思しき急報をもたらしていたのだ。

 

 

 ――ドマ城の歴史は1000年前の『魔大戦』より更に昔に、『籠城戦』を想定して築城された世界最古の城である。

 同じ目的を可能とする造りをした城塞は、現在は既に他には現存していない。

 

 その目的故にドマ城は、国内の人口の多くを城内に抱え込むことが可能な広さを必要とせざるを得ず、広大な内部面積を有する城になっている。その点で城下町サウスフィガロを別途に擁するフィガロ城とは比べものにならない。

 

 一方で、城にこもっての防衛戦を想定しているため城壁の内側から外を見るためのスペースや仕掛けが大量に用意されており、地下へ潜行機能を有するが故に密閉性を重視せざるをえなかったフィガロ城より横幅での面積は比較にならない。

 

 見張り台から城の最奥に鎮座している玉座の間を目指して疾走していたカイエンよりも、目撃する者の位置と運次第では報告者として先に到着することも可能になることがある。

 緊急時の対応に遅れが出ないため、城中に伝声管を張り巡らせたフィガロ城ではあり得ない出来事。

 

 それが近代化の進んだ現代よりも、1000年以上前の時代に戦用として造られていた城で起きうる出来事の特徴だった。

 

 

「・・・よし、兵たちに命じよ。城の者たちを城外へと出す! 軍は民たちの避難を警護するよう指示を出すのだ! 急げッ!!」

「へ、陛下ッ!?」

 

 短い間ながらも沈思黙考していた主君が下した決断を聞かされて、報告に来た兵士は仰天させられてしまった。

 それは当然の反応だったと言えるだろう。

 今のドマは、帝国軍に追い詰められている戦況にあるのだ。城の防御力を駆使するため引きつけて撃退する戦法によって何とか時間稼ぎを可能にしている。

 

 城外に出ての野戦を挑んでしまっては、残念ながら今のドマ王国に勝ち目はなくなっているのである。同盟相手であるリターナーやフィガロからの援軍がきてくれなければ、遠からず降伏せざるを得なくなるのは確実なほどに・・・・・・。

 

 それどころか現時点で既にドマ軍は、敵を引きずり込んで城の中と外で挟撃する戦法を実行するための戦力を損失して籠城戦一本に集中せざるを得なくなっているのだ。

 

「お、お待ちください! これが帝国軍の策謀である可能性もあります! 今少し状況を見定めてからでも遅くはないのでは・・・・・・っ」

「分かっておる。だが今は時間が惜しい、予の命として城兵たちに実行させるのだ。急げッ!」

「ははッ!」

「陛下ッ!!」

 

 玉座の間を守っていた他の兵士の一人に命じて、伝令として走らせながら、報告役として駆けつけて焦りを露わに問い返してくる兵士には穏やかで余裕のある笑みを見せつけて、ドマ王は笑う。

 

「落ち着くのだ。これが帝国軍の仕掛けてきた策である危険性は予も考えた。だが、それで一向にかまわぬ。結局は同じ事なのだ」

「と、申されますと・・・?」

 

 むしろ自信ありげにドマ王が語った戦略は、以下のようなものだった。

 ――コレが仮に帝国軍の策略であったとするなら、その目的はドマ国の軍を城外にまで誘き出し、魔導アーマーを擁する帝国お得意の野外決戦に引きずり出す以外にない。

 だが、その策を実行するには大規模な陸上戦力が必須であり、現時点までで帝国軍の大兵力が城の付近まで移動したという報告は一つも入っていないのだ。

 

 ドマ城は籠城戦を前提に建築された城であるが故に、平地に立てられた平城で、周囲には川と海と森しかない。一番近い山からも距離があり、高所に陣取られる恐れは極めて少ない。

 

 もし異世界から捨てられてきた少女が、辺り一帯の地図を見る機会があったなら、自分が生きていた(と思い込んでいる)現代に痕跡を残す『小笠原城』よりも、知識として知っているだけの場所だが『一乗谷』を連想したかもしれないのがドマ城の建てられた立地だった。

 

 かつて織田信長に攻め滅ぼされ、焼き尽くされたことで知られている名門朝倉家の本拠だった一乗谷。

 その場所も、海を背にした谷間に立てられ、坂を下った正面からしか侵入口を持たない難攻不落の要害だったと研究者たちの間では知られていたからだ。

 戦国の覇王に滅ぼされた城塞都市で使われていた戦法と、今回ドマ王が考案した策は皮肉なことによく似たものだった。

 

 まず少数の精鋭たちが城門から即座に出て、槍衾を並べた簡易的な守りの壁を作り、避難する民たちの前に壁を築く。

 その後から城を出た民たちは、兵たちに守られながら近くの森まで避難させる。

 ――地元の住人でも奥まで入り込もうとする者などまずいない、曰く付きの森に逃げ込むのだ。危険となる範囲を熟知している地元民ならまだしも、土地勘のない帝国軍ではまず追撃など不可能な土地。

 

 そこまで逃げ込んでしまえば、民たちの安全は保たれ、自分たちは帝国との戦いに集中することができるようになるだろう。

 今までは民たちを守りながらの戦いであり、追い詰められた直後の籠城戦法だったことから避難が遅れてしまっていたが、敵が仕掛けてきた策略を逆用してのタイミングなら老人や子供などの非戦闘要員だけは逃がすことが可能になるだろう。

 帝国軍とて、自分たちが仕掛けた策略によって引きずり出すことに成功した敵に背を向けて、逃げようとする民間人を正面きって相手をしたがる無能者の集まりではないのだから。

 

 

 どのみち水に何か仕掛けられてしまっていれば、堀に囲まれた水源豊かなドマ城はもはや籠城戦に使えなくなる。今出るのと、後で出るのとの違いだけ。同じ出るなら早いほうが多くの者を残したまま退避でき、誘き出すための見せかけでしかなかった時はすぐに戻って元の守りを固めればいい。

 

「その見極めのため、兵たちの精鋭を先に出し、その直後に民たちを逃がす。

 さすれば帝国軍は選択を迫られよう。その動きによって敵の真意も自ずと見えてこよう」

「陛下・・・・・・」

「敵の目的が如何なるものであれ、民たちだけは絶対に守り抜かねばならぬ。そうしなければ我が国に未来はない。

 たとえ帝国軍に敗れ、ドマが滅ぼされることがあろうとも、民たちを犠牲にしなければ彼らの心には、憎むべき征服者たる帝国と、愛すべき祖国ドマとして我らの故国は記憶されよう。それはいずれ必ずドマ再興への灯火となる。

 ・・・・・・だが、国を守るため民を犠牲にしてしまえば、彼らは国に何を思うだろうか?

 国の滅びに民を巻き添えとした祖国を、彼らが蘇らせようと思ってもらえるだろうか?

 それだけは避けねばならんのだ。この国の滅びが避けられぬかもしれぬ窮状なればこそ、避けて通らねばならぬ道がある・・・・・・」

「陛下・・・・・・そこまで・・・そこまでお考えでしたとは・・・・・・っ」

 

 衝撃的なほどの感銘を受けた兵士は我知らず、気づいたときには王の前に跪き、深々と頭を垂れて忠誠の対象の言葉に涙を湛えずにはいられなかった。

 ――この方に一生お仕えしよう。と、この兵士は思った。

 

 たとえ自分に死が訪れる日が来ようとも、帝国軍の刃が自らの肉体を滅多刺しにして、原型も残らぬほどの過酷な死に方を与えてこようとも、自分は最後まで帝国の刃の前に立ち続け、王を後ろに守り続けよう――そう心に誓いを立てる。

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 ―――ダメだよ。

 

 

 

 という声が響いてくる。

 どこから聞こえたものかは分からない。誰が言った声かは分からない。

 だが、どこかから、誰かの声が確かにドマ城の玉座の間には響いていたのだ。

 

 王たちの耳には聞こえない声でハッキリと。

 

 

「これが策であるなら、城の周囲に伏兵を潜ませている可能性が高い。城門を出た時には十分に警戒するよう兵たちには厳命するのだっ」

「ははぁっ、早速に! おい、伝令を呼べ! いやいい、俺が走る! 後は任せた!」

 

 

 

 ――せっかく1000年ぶりに、ご馳走が食べられそうだったのに。

 ―――せっかく1000年ぶりに、人間の心と夢が食べられそうだったのに。

 ――――せっかく1000年ぶりに、封印が解けて出てこれる寸前まで来たはずなのに。

 

 

 

「避難する民たちに混乱を起こさせるな! 城門は一つだ! 一斉に出れば敵につけいられる隙となる! 順番に落ち着いて避難せねば滅びる! なんとしても徹底させるんだ!」

「分かっております! 必ずや!!」

 

 

 

 ――しょうがない。絶望と後悔は足りなくなるが、少しだけ力を貸してあげる。

 ―――しょうがない。復活まで、ご馳走まで、少しだけ遠くなるのは、しょうがない。

 ――――しょうがない。生贄がなくちゃ困るから、力を使って減るのは、しょうがない。

 

 

 

「決して民を死なせるな! 民を死なせれば国は滅びる! 死ぬのは我らだけで十分!」

「我らが死ぬだけでは国は滅びぬ! ドマ王国の未来のために!」

「応ッ! この1000年続いた城と国を、今後も未来に残し続けるために、だな!?」

 

 

 

 ――しょうがない。

 ―――しょうがないから、しょうがない。

 ――――しょうがない。しょうがないったら、しょうがない。しょうがない。

 

 

 

「済まんが、いざという時には其の方らの命。予と国のために死んでくれッ!」

「ははッ! 喜んで! この命、国の未来を守るために使えるのなら、それ以上の使い道などありませぬッ!!」

 

 仕えるに足る主君を得て、守るに値する祖国に生まれた。

 その国と王を守るための戦いで死んで逝くことができる・・・・・・武人として、これ以上に何を望むものがあるだろう?

 

 自らの一生に、これ以上ないほどの価値と誇りを与えてくださった絶対の忠誠の対象に向かい、彼は出陣する前に今一度だけ深々と頭を下げる。

 

 そして

 

 

 

 

 ―――眠れ。無念を残したまま。おまえたちの、心を我らがいただくために―――

 

 

 

 そして・・・・・・そのまま頭とともに、意識は闇の中へと落ちていく・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陛下ッ! ――ッ!! こ、これは一体、どうしたことで御座る!?」

 

 その時になってようやく玉座の間へと駆け込んできたカイエンは、即座に状況の異常さに気づいて絶句させられる。

 王の世話をするため普段から傍らに控えている侍女や小姓たちが倒れ伏し、玉座に続いてる絨毯の上には、一人の兵士が王を前に倒れた姿勢のまま動いていない。

 

 一瞬、謀反か!?とも思ったが状況がおかしい。何かが異常だ。

 まるで目に見えない何者かの呪いでも受けたかのように、彼らの体は眠ったように動かない。

 

 だが、

 

「うっ!? な、なんで御座るコレは・・・? 妙な刺激を感じたような気配が・・・」

 

 一瞬だけカイエンは、その空気に肌を触れられ怖気が走ったように「ゾクッ」となる。

 それは彼だからこそ感じ取ることができた、サムライとなるための厳しい修練の賜物だったが、他の者にはまだ感知できるほどの変化は生じていない。

 しかし、それも時間の問題。

 

 この広大な城に未だ残ったまま眠りについた人々すべてを、移動させる術など存在しているわけがないのだから。

 そうなれば自然、いずれ彼らの元にも必ず・・・・・・

 

「うぅ・・・・・・なにが・・・一体、なにが起きたのだ・・・? だれ・・・か・・・」

「陛下! ご無事でしたか!? しっかりなさってくだされませ!」

 

 

 ――あれ? まだ眠ってないヒトがいた。

 ―――精神力が強い。未練がある。生への執着が感じられる。

 ――――じゃあご馳走だ。絶対に逃がさない。絶対に、ぜったいに、ゼッタイに―――

 

 

「お、おぬしは・・・・・・誰、だ・・・?」

「陛下! それがしが見えますぬか!? 陛下の護衛カイエンでござりまする!」

「お、おお・・・その声、は・・・・・・そうか・・・カイエンが来てくれたのか・・・。だが、瞼が重い・・・目が開けられぬ・・・頭が、痛い・・・・・・おぬしの顔を見ることができぬ・・・・・・」

「陛下! お気を確かに! 陛下!」

「案ずる・・・な・・・ただ、頭が痛く、目が開かぬだけ・・・だ・・・・・・。体に痛みは、ない・・・・・・。それより、おぬしらの家族が心配、じゃ・・・・・・子が幼い・・・早く行って、やりなさい・・・・・・」

「陛下! それより早く医者を! えぇい! 薬師どもは何をしておるか!? こうなれば拙者自らが――!!」

「カイエン殿ッ!」

 

 そこへ飛び込んできたのは副官だった。青い顔色をしている。

 どうやら自分と同じく城内で起きた異常事態に気づき、己が向かっていた玉座の間の近くにある部屋を見て回った上で報告に来てくれたようだったが・・・・・・その結果は、あまりにも残酷なものだった。

 

「おお、良いところへ参った! 拙者は医者を呼んでくるので陛下を――」

「・・・カイエン殿・・・ご家族の方が・・・・・・ミナ殿と、シュン坊、が・・・・・・・・・」

「――ッ!?」

 

 今度はカイエンが顔面蒼白になる番だった。

 王のことも心配だったが、一旦は副官に委ねて家族の待っているはずの、護衛役に宛がわれている玉座の間の隣室に駆け込む彼。

 

 

 そこには、昨日から微熱を出して寝込んでいる幼い息子と、献身的に看病している愛妻の姿が待っているはずだった。

 井戸水で冷やした果物を好む息子のために、昨夜から何度も水場と部屋とを往復していた息子思いで世話女房な、この世で誰よりも愛しき守るべき家族が、その場所で自分の帰りを待っていてくれるはずで――――

 

 

 

 

 ――この人たちの、魂はいただいた。

 ―――アレクソウルを、復活するために。

 ――――お前の、心をいただく日のために。

 

 

 

「あ・・・あ・・・・・・あ・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 動かなくなった姿で、何も答えなくなった姿で、ただカイエンを待っていた“だけ”の姿に変わり果てていた愛しい家族を前にして、カイエンはただ呆然とすることしかできず。

 

 それでも尚、役割を果たすという体に染みついていた使命のまま、動かぬ手足でヨロヨロと玉座の間でまつ王の下へと戻ろうとして、

 

「カイエン・・・殿ッ!!」

 

 副官が再び青い顔をして自分の名前を呼ぶ姿が見え。

 沈痛そうに唇をかみしめる彼の口から―――聞きたくない絶望の言葉を報告として聞かされることになる。

 

「・・・今し方、陛下が身罷られました・・・・・・」

「・・・・・・」

「おそらく死因は、毒によるもののようです・・・。城内に何人か、同じような状態で倒れているものを見かけました・・・。それなりの数が脱出できたようですが、残っている者は数が多すぎ・・・もう・・・」

「・・・・・・・・・」

「陛下からの御遺言です。最期にこう言っておられました・・・・・・『カイエンに詫びておいてくれ』と。

 『シュウサイと共に父の代から守り続けてくれた国を、王として守りきってやることが出来なかった』・・・・・・と。そう言って感謝と詫びを、カイエン殿に伝えてほしいと・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「もはや、この状態では戦うことは出来ませぬ・・・異常の前に城を出て生き残った者たちを集めて我らは――」

「・・・・・・・・・・・・・・・許せぬ」

「―――え?」

 

 その時、はじめて副官はカイエンを見た。

 ――否、そのカイエンの目を初めて彼は見たのだ。

 

 

 憎しみと復讐心、闇より深く夜より暗い憎悪の焰。

 そして――そのような他者に抱く負の情熱より尚深く、暗く、燃えたぎるように煮えたぎる。

 

 ・・・・・・自分自身を焼き続ける、後悔と自責と贖罪と―――罪悪感に満ちあふれた淀んだ瞳を。

 

 

 

「許さぬ・・・許さんぞ、帝国軍め!!!

 貴様らを許すことだけは絶対に―――ッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、ガストラ帝国による侵略戦争と、その脅威から各々の国を守る防衛戦争の中で起きた悲劇の中で、最大級の悲劇とされる虐殺は実行に移されることとなる。

 

 その悲劇が起きた現場から凄まじい速度で走り出て、

 

 

「んん? お客さん、こんな所でスゴい顔してどうしたんだい? よそ者でもないって言うのに、そっちへ行くのは危ないってことを知らないわけじゃないだr――」

「退けぇぇぇぇッ! そのチョコボを拙者に貸してもらうゥゥゥッ!!」

「え!? え!? ちょ、待っ、う、うわぁぁぁぁッ!? ち、チョコボ泥棒ーッ!?」

「クゥゥエェェェェェェェェッ!?」

 

 

 たまたま通りすがったチョコボの道具屋からチョコボを強奪して足を確保し、急ぎ帝国軍陣地へ向けて猛スピードで急速接近していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、川の水に異常が起きた先にある、影響が及ぶ場所のドマ城を目指して進んでいる途中だったイレギュラーたちのパーティーでは。

 

 一人の少女が空を見上げて足を止め、仲間たちからの声かけにも応えぬまま、しばし時を過ごした後。

 

 

 

「・・・よく分かりませんが、今からドマ城へ行くのは無意味になっちゃった可能性が高いみたいですね。

 鳥さんたちが言っています。『死んだ』『落ちた』『近づいた仲間が落ちていった』・・・って。

 たぶん毒です。カナリアたちも仲間の死を、泣いているみたいでしたから―――」

 

 

 

 抑揚のない、平坦な声でそう言い切る。

 その瞳と表情が、普段よりも感情の乏しい茫洋としたものに変わっていたことに気づいた者だけは誰もいない。

 

 

 

つづく

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