FINAL FANTASY Ⅵ~偽レニア~ 作:ひきがやもとまち
さすがに長くやり過ぎたのが気になっており、何とか終わらせるため端折り過ぎたと反省してる内容ですが、次回からの【魔列車編】で挽回できればと思ってます。
帝国軍の魔導師ケフカに使われた毒によって、歴史に残る大虐殺の犠牲者とされたドマ王国は完全に滅亡することとなる。
現国王をはじめとする王族たち全てが殺されてしまったのだから、『王国』としてのドマは滅びるしか無かったからだ。
仮に生き残った人々によって再びドマが興される時がきても、異なる制度か異なる王家によって統治される別の国として新たな始まりを迎えるしか他に道はない。
ケフカは水に流した毒によって、ドマの住人たちだけでなく『ドマ国という国』そのものを殺すことに成功していたのだ。
それでも尚、一定以上の数の避難民と護衛の兵たちとが、ドマ城より東に広がる『冥府へ繋がる森』と地元民から呼ばれてる土地の外縁部まで逃げ延びることに成功していたが・・・・・・この状況で、戦う意思と力を維持できているはずもない・・・・・・。
もし仮に、このタイミングで城から逃げた人々を追撃していれば、帝国軍は殺し損ねた者達をも殺戮することができ、バルガスの妨害によって邪魔された分の帳尻を合わせることが可能になっていたのは間違いない。
――だが現実に、ケフカは避難民たちの追撃を命じることはなく、レオ将軍の部下たちはドマ国民たちに同情して城を接収する作業を優先し、結果的に多くの人が命を拾うことになる。
何故か? そうなったのには事情と理由が存在する。
毒による効果を確信したケフカは、すでに滅びたドマの城や民たちの処理という後始末だけレオ将軍の部下たちに押しつけると、自身は直属軍を率いてさっさとドマを進発してしまっていたのが、その理由だった。
実は帝国軍は新型の魔導アーマー《ディック・アーマー》を用いて、道なきはずのサーベル山脈にナルシェまでの進軍ルートを開拓していたのだ。背後を突かれる恐れさえなくなれば、彼らを遮るものはなにもない。
サウスフィガロを占領した部隊も、裏切り者である『セリス将軍』を処刑させて、自分の子飼いになったヤツらを代理で任命してやることで事実上の自分の手下に変えてやった。
二方向から同時に攻め入れば、金で雇われた傭兵集団でしかない《ガード》に守られただけのナルシェなど、一気呵成に攻め滅ぼして『氷付けの幻獣』も簡単に確保することが可能になる。
――それならレオの部隊に目立つ役をやらせてやる理由はない。そういう事情と目的が、だ。
狡猾で自己顕示欲の強いケフカらしい策略。・・・・・・だが彼は、予定外に待たされる羽目になる。
サウスフィガロからナルシェを攻めるため北上しようとした部隊が、フィガロ軍部隊に足止めされて予定通り動かなかったことが原因だった。
そうなったのは、裏切り者として投獄されていた『女将軍セリス』が処刑される寸前に脱走した事件が影響した結果であった。
帝国軍が生み出した人工魔導師にして、軍規に厳しく冷徹非常な指揮官として兵たちから恐れられている彼女だが――その一方で、見目麗しい美貌と『常勝将軍』とまで呼ばれる指揮能力の高さにより、兵たちからは信頼と人望を集める存在だったのである。
そんな今まで勝ち続けていた指揮官が急に逃げ出して、代理となったのは他部隊の将軍とのコネで成り上がった小物共ばかりと来ている。
・・・・・・こんな惨状にまで落ちぶれた部隊が、通常通りの力を発揮できる訳もない。“代理”将軍としては初陣の戦いを偉そうな態度で怒鳴ってばかりで指揮されるサウスフィガロ占領軍は苦戦を続けるばかりで一向にナルシェまで到着せず。
待ち続けることに全く慣れがないケフカが遂にキレて、自分たちだけでナルシェ攻略を断行する道を選ぶのは、ドマ落城から一週間以上後のことになるのだが・・・・・・。
敵を倒すため、『毒を使って民間人ごと虐殺する』というケフカの非常手段を知ったことで離反を決意したセリス将軍の行動が、結果としてケフカの足を自分で縫い付ける理由となってしまう皮肉な結果を招いてしまったのだ。
――この事件の中。
セリス将軍が牢から脱走して『リターナー』の工作員と合流したらしいと知らされた代理司令官は怒り狂い、『見張りを任せた役立たずの部下』に厳罰を加えてやろうとしたが、見つからなかった。
この人物は姿を消したまま、二度と表舞台に現れることはなかったと言われているが・・・・・・その際に残していったとされる暗号らしき文章が、牢の中に刻まれていたという。
リターナーの工作員が帝国兵に変装していたとも、町中で強盗を繰り返していた商人の共犯者だったという説もある謎の人物が残していった最後の言葉。それは―――
『できることなら、チキンライスも食べたかった・・・・・・』
――という怪文書。
この一文を、歴史を動かした謎の人物が残した言葉として聞かされた、異世界より捨てられてきた少女がスゴク嫌そうな顔をする未来を、今を生きている誰も知る人はいない―――
そんな未来が来ることになる少女、その現在。
「う~ん・・・やっぱり静かになってるようにしか見えませんねー。人気がほとんどありません」
両手をバイザーみたいにして両目の上で揃えながら、遠くを見つめているセレニアは自分に見えている景色について、もう何度目かになる同じ内容を眼下のマッシュたちに報告している最中だった。
「・・・・・・本当なのか? 今だけ見えない距離まで移動してるだけだとか、テントの中で休憩中のヤツが大半なんて状況じゃないのか?」
「その可能性もない訳じゃないですけど、多分あっても低いと思われますね。だって、さっきから同じことやってますけど、全く見える風景が変わらないままですし。
大部隊が別目的で出撃してて、今は戻ってないだけとかなら有りでしょうけど、そこまでは私じゃ分かりようがないですから」
「ふむ・・・・・・」
セレニアからの報告を聞かされながら、マッシュは腕を組んで考え込む素振りを見せる。
同じ作業を繰り返させてしまっていることに悪いとは思っているのだが、どーにも彼女から聞かされる報告の内容が信じ切れない状況が迷いを抱かせていたのが、その理由だった。
――なぜ、帝国軍陣地から大半の兵士たちがいなくなっている・・・・・・?
セレニアから『ドマ落城の可能性』を聞かされたマッシュ達だったが、当然のように鵜呑みにして信じて動ける話では全くない。
「鳥が落ちた」などと言われても、門外漢で現代日本人でもないマッシュたちには何がなんだかサッパリな言い分だ。とても信じて動けるような情報にはなれなかった。
だが一方で、状況が妙な流れになっていることはマッシュたちも感じられていた事実でもある。
ドマ城からも、帝国軍陣地のある方角からも、大勢の人間同士が動き合う物音や気配が全く感じられなくなっていたのが、その理由だった。
ケフカの毒殺作戦の話を盗み聞いて、それを止めたいと思ったマッシュたちにはドマ城の方角が静かになることは決して良い状況を意味するものではない。
もしそうなっていた時には、生存者を助けてやりたいという思いはあるが、それには城の全面にある帝国の陣地と兵隊達をどうにかする必要がある。簡単に選べるような道ではない。
・・・・・・一方で、帝国軍陣地までもが静かになっているのは奇妙なことだった。
毒を流されたドマ城の兵士達が弱体化しただけで生き残っており、その占領のため全軍で出撃したというなら話は分かるが、それだとドマ城の方まで静かなことの説明がつかない。
敵と戦うため出撃していないのなら、陣地内に残っていると考えるのが自然なのだが、その気配が先程から見出せないままだというのである。
状況がよく分からず、自分たちが今どこに行って、誰を助けるべきなのか?が判断できなくなってしまったドマ国に漂着したばかりのヨソ者マッシュとしては、『情報を集めるのが先決』という兄から受けた教えを守って、とりあえず先ほど逃げ出してきたばかりの帝国陣地まで戻ってくると、近くに潜んで状況を見守る道を選んで今に至る。
見つかって逃げ出した侵入者が、逃げた直後に元の場所まで密かに戻ってきているとは意外に発見した側は考えないもので、彼としては相手の隙と死角をついて、痛打を与えてやるつもりでいたのだ。
そして、こういう場合には斥候として情報を集める役が重要となる。
本来なら、危なくて危険が降りかかってきそうな面白い役目は率先してやりたがるマッシュだったが、今回ばかりは適任が別にいたのでソッチに担ってもらって、慣れない情報分析に専念することになっている。
その適任者というのが、コレだ。
「・・・・・・どうにも、よく分かんねぇな。帝国軍のやることってのは・・・。騒ぎでも起こしてくれれば、すぐにでも駆けつけてって帝国軍と戦ってる奴らに加勢してやれば済むんだが・・・」
「あの~、マッシュさーん。そろそろ私、偵察役を終わらせちゃっていいですかね~? 流石に見つからないか心配になるぐらいの時間が経っちゃったんですが・・・・・・」
「ん? あ、ああ悪い。考えごとしてたせいで、気がつかなかったわ。もういいぜセレニア、十分だ。ありがとうな助かった」
腕組みしていたマッシュから思い出したように言われた言葉で「ホッ」として、下を見下ろしながら偵察終了の指示を伝える異世界から落ちてきて珍しく役に立ってた役立たず偽物少女のセレニアちゃん。
「いえいえ、どもども。――とゆーわけで、もういいそうですよウーマロさん。降ろしちゃって下さーい」
『ウゴッ』
そう言って、ヒョイっと。
・・・・・・両足首だけを掴んで、限界まで腕を上に向かって伸ばした姿勢で持ち上げてもらっていた、2メートル以上の身長ほこってる雪男の上から降ろしてもらってくる『保身』覚えて臆病になってるはずの女の子が彼女である。
「よっと。いやはや助かりましたよウーマロさん、ありがとうございます。これからも灯台役の足場――っていうのは冗談としても、お手伝いをよろしくお願いしますね? おー、よしよし」
『ウゴッ♪ ウゴゴッ♪♪』
地面に降り立ち、普段通りの態度で平然と雪男とのいつも通りなコミュニケーションを始めてしまって、途中から礼を言われて喜んだらしい雪男に持ち上げられて振り回されるみたいにブンブンされていたが、慣れてしまったのか大して気にせず頭をナデナデし続けている変な光景。
それを見ていて、こんな状況と知りつつマッシュは、つくづく思う。
(・・・・・・つくづく変な奴だよな、コイツって)
と、妥当な判断と評価を銀髪蒼眼のチビッコな仲間への正直な思いとして心から。
出会ってから日の浅いマッシュだが、それでもセレニアが危険を恐れて命を惜しむ、『臆病な性格』の持ち主であることだけは理解できるまでにはなっていた。
別にそれが悪いとは思わない。むしろ普通だと思う。
彼女ぐらいの年齢の子供が大人たちの戦争に巻き込まれて怖がらない方がおかしいのだから、それを悪く言う気持ちはマッシュの中では一度もない。
・・・・・・ただ、こーいう場面で変な度胸を発揮する変なヤツだと思っているだけで。
レテ川を筏で下ったときには騒ぎまくっていたのに、足首だけガッシリ握られてるとは言え2メートル以上の巨漢に頭上高くまで持ち上げられて、実質3メートル近い高さから身を乗り出して帝国軍陣地の様子を今まで探り続けてくれてたのが彼女だったのだ。
・・・・・・普通は、筏を使った川下りと同じくらい子供にとっては怖いものなんじゃ・・・?
筏での川下りはダメで、雪男に足首だけ掴まれて持ち上げられるのはOKという、判断基準がよく分からない。
どーやらセレニアの偽物である偽レニアに付与されている『保身』は、『安全が確保されているか否か?』という条件によって発動したりしなかったりが決められる奇妙な性質を持っていたらしい。
筏を使って川を下るのは、何が起きるか分からず死ぬ危険性が未知数なので怖がるが、筋肉だるまのウーマロに足首をしっかり握られて持ち上げられるのは落ちる危険がほとんどないので『怖くない』・・・・・・そういう事らしい。
なんとも理屈っぽい感情に基づく行動の判定基準だったけど・・・・・・元がそー言うのを割り切りまくった奴のコピーみたいなもんだから仕方がないのかも知れない。
その出来損ないコピーのなり損ないが、「ああそう言えば」と思い出したようにマッシュを見上げ、
「これは私が見た内容とは関係のない話だったので端折っちゃったんですが・・・・・・空を飛んでる鳥さんたちが妙なことを言い合ってるのが聞こえましてね・・・」
「鳥たちが妙な話? もうその時点で妙って気もするが・・・・・・どんな話だったんだ?」
「“黄色い鳥、走ってくる”だそうです」
「・・・・・・・・・は?」
短すぎるし突拍子もなさ過ぎる内容に、マッシュは思わず目をパチクリ。
「走ってた黄色い鳥って・・・・・・チョコボのことか? 確かにアイツら黄色いし」
「いや、私に聞かれましても。
単に鳥さんたちが言ってたってだけの話ですし、“走ってくる”って言ってた方角がドッチの事なのかも私にゃ分かりませんし。
関係あるのかどうかさえ分かりようがなかったからこそ、一応って付け足した上で伝えてるだけの補足事項ですからねぇ。
正直、黄色い鳥っていう『色彩』さえ人間基準の黄色かどうか。鳥目だと違う色に見えてる可能性もなきにしもあらずんば否や?な感じレベルの情報です」
「・・・・・・・・・・・・」
凄まじく信憑性が低すぎること山の如しな情報だった。海底火山レベルの低さで。
その程度の信憑性しかない話を根拠に行動決めるなんて、普通に考えたら完全にダメなんだけれども―――ただ、もし事実だったと仮定した場合で考えると、少しだけ気になる部分があるにはあり。
「この辺りで帝国の陣地にまで行きそうなチョコボっていうと・・・・・・あの頭のおかしい爺さん家で見かけた、“チョコボの道具屋”が一番可能性高いよな?
確かにアイツだったら、確かに帝国軍にまで商売しに行きそうな雰囲気あるヤツじゃあるんだが・・・」
腕を組んで空を見上げながら思い出すのは、レテ川を流れ着いて意識を取り戻した場所の、すぐ近くに建ってた痴呆症っぽい老人が一人で住んでた変な家で出会った変な道具屋の記憶。
自分たちが「よそ者だから」という理由でいろいろ教えてくれた人の良さそうな兄ちゃんだったし、戦場にいる兵士たち相手に商売しにいく奴も最近ではいるらしいと師匠から聞かされたこともある。
もしそうだったとしたら――行くだけ無駄な徒労に終わるだけだから止めた方がいい、と言うことになる訳で。
余計に自分たちの行動が選びにくくなるだけで、全く意味ない話だった事になる。
本気で微妙な上に曖昧すぎて、使いづらい事この上ない変な能力に目覚めちまってた偽レニアちゃん情報でありました。
「そうなんですよねぇー。本人自身も『この辺りでは有名人』って言ってましたし、この国と帝国軍との戦争始まってから数年ぐらいは経過してるのでしょう?
だとしたら既に常連化しちゃってる可能性もありますし、その場合は行ったところで却って邪魔に・・・・・・どうしましたマッシュさん? なんか私の顔についてます?」
「・・・・・・いや、気にするな。雑念だ。俺もまだまだ未熟だってことさ、バルガスのことは笑えない程に」
「・・・・・・?? はぁ、なるほ・・・ど・・・・・・?」
要領を得ない返答に、小首をかしげるだけで適当に合わせる社交辞令を告げるしかないセレニアだったが――このとき彼女は全く気づいていなかった。
自分自身もマッシュと同じ、腕組み考えてるポーズで語ってたことに。
その際に―――むにゅん♪と。
両脇と組み合わせた両腕で、下乳から寄せて上げたポーズで盛り上がり、強調されてしまった自分の身体の一部の無自覚アピールになってしまっている部位について。
本人は全く気づいていない。
それを上から見下ろすアングルになってしまったマッシュが――無かったことになってる、眠ってた合法ロリ少女の胸を揉んでしまったのを思い出してしまって、その時の感触とか、意外に大きかったとか柔らかったとか、着痩せするタイプだったとか、見た目と違って色々とイロイロと――――って、
(うおおおぉぉぉぉぉッ!? イカンイカンイカン! 落ちつけ俺! 今はそういう場合じゃない! どう考えたって、そういう状況じゃねぇだろ今は!?
それに俺は格闘家! 世界最強ダンカン師匠の弟子として心頭滅却すれば火もまた涼しく自然現象ごときで俺の心は乱されることは決してな、って今は下の方を見下ろそうとするんじゃねぇセレニアーッ!?)
「た、確かに曖昧で信憑性の低い情報じゃあるが、もし違ってた場合は大変そうだからな!
それに帝国軍の奴らがチョコボの道具屋から力ずくで奪おうとするなら許せねぇし、ケフカの奴なら何やらかすか分かったもんじゃない!
という訳で今すぐ助けに行くぞ! セレニア! シャドウ! あと犬もッ!!」
「え? そんな急にどうしたんです? インターセプターさんも変だなって見上げてるみたいですし、ほら――」
「いや、今行くべきだ! 手遅れになる前に! 俺たちは帝国軍から世界を守るために、前だけ見て突き進むべきなんだ! 前だけ見るんだ前だけを! さぁ行くぞぉー! エイエイオーッ!!」
「・・・・・・え~・・・まぁ、いいですけどぉ・・・・・・んむぅ?」
「・・・・・・・・・」
『・・・・・・』
『・・・・・・ウッゴ?』
男としても格闘家としても、女の子を前にした男の子としても恥をさらしたくない想いに駆られ、真っ直ぐ前を向いた姿勢のままで帝国軍陣地を目指して全力疾走して急速接近していく選択肢を急に選んで急に爆走しはじめるマッシュ。
今の時点で十分に恥さらしな気もするが、こういう問題では常に『自分の中では大丈夫だから』を信じて進んでいくのが男の子という生き物。
そして、その後を訳分かんないながらも付いていく道選ぶのは、よく分からなくても置いてかれたくないセレニアと、依頼人の決定に黙々と従う暗殺者&飼い主の決定に黙々と従う飼い犬コンビと、人語がそもそも理解できない雪男。
バルガスは……もともと敵だった奴だし、師匠の仇だし、裏切ってない保証ないし、員数外でもいいとして。
まったく意思統一できてないし、目的や理由が別々すぎるし、本人たちの意思とか関係まったくなさ過ぎる流れの結果だったが・・・・・・それでも決定権もってるリーダーの決めた道に、他の仲間たちも自動で付いてきてくれるのが、こういう場合のお約束。
その結果、完全に結果論に過ぎないことだったけど、この時のマッシュの男突撃と、その前のマゴマゴしていた時間潰しとが一人の男の人生を大きく揺り動かすこととなる。
異なる理由で、異なる場所から、同じ一つの場所へと向かって直進していった、一人の男と複数人の成り行きパーティー、その二つの運命が一つの可能性に混じり合うことになるのだから・・・・・・。
その可能性が実現したとき。
このような未来が、彼らの前に新たな場所へと繋がる道を示すことへと繋がっていた。
「拙者はドマ王国の戦士カイエンでござる! うおおおーッ!! 毒を流したのはどいつじゃーッ!?」
「おっと、先客がいたか! 俺たちにも少し手伝わせてくれよ! せっかくだ、こうなったら全員まとめて面倒みてやろうじゃないか!」
「どこの誰かは存ぜぬが、合点承知でござる! 帝国の者共、 もう許さんでござるぅぅぅーッ!!」
「・・・いや、“ござる”て・・・。この国の侍ってソッチの人だったんですか・・・・・・なんと言うか侍と言うより忍者で『ハットリ』とかの方が似合うような気が・・・・・・でも、流浪人の方だったら有りになる可能性も微れぞ―――って、ん?
なんかアッチの方から大勢の人の声が近づいてくるような・・・・・・援軍ですかね?」
「むむッ!? 新手でござるか! どれほど多勢で来ようと今の拙者を阻めるものは誰もおらぬのでござ――」
『『『うぉぉぉぉぉぉぉッ!!!
ケ・フ・カをコ・ロ・セ!! ケ・フ・カをコ・ロ・セ!!!!!
KILL! KILL!! KILL!! KILLKILLKILLKIぃぃぃぃLLぅぅぅぅッ!!!』』』
「って、なんか思ってたより大勢過ぎる数で来たでござるーッ!?」
「まだ探してたんですかあの人たち!? 幾らなんでも体力ありすぎにも程があるでしょう!? あれからどれだけ時間経ってると思ってんですか! 怒りで人間の限界超えるのは止めてくださいませんかね本当に!? マジで心の底からお願いですからーッ!!」
「やべぇ!? ここは一先ず逃げるしかねぇ! 一旦退くぞオッサン!」
「し、しかし・・・・・・拙者には、家族や国の者達の仇を討つべき責任が・・・ッ! ドマ国最後の侍として果たすべき義務が・・・・・・ッ!!」
「んなこと言ってる場合か!? ほら来い! 早く来い! セレニア! そのオッサンも一緒に運んでもらって連れてこいっ! 早くーッ!!」
「合点ですマッシュさん! ウーマロさん! その人も連れてダッシュです! ここは一旦この場所から全力でダーッシュ!!」
『ウッゴッゴ―――ッ!!!』
「うおおぉぉぉッ!? こ、この毛むくじゃらの化け物のようなヤツは一体何でござるかーっ!?!?」
「俺も知らんっ! 兄貴に聞け兄貴に! あとはセレニアに! そいつがコイツのご主人様らしいから多分なんか知ってるはずだきっと!」
「いや私も知りませんって!? なんか知らないですけど懐かれてるだけですって本当に! だから私に聞かないでください! マジで責任持てないですからね本当に!?」
ドマ城の毒による虐殺騒ぎのとき陣地にいなかったから全く知らないまま、ケフカへの怒りの八つ当たりを維持して走り続けたことで、怒りゲージが凄まじいことになってしまった帝国軍の大軍勢に追いかけられて避難するため、マッシュたちと合流したマッシュはドマ城の南東に広がる森を目指して駆け続けることになる。
多くの人の人生を狂わせ、不幸を多くバラ撒いた帝国軍の魔導師ケフカによる毒殺作戦。
・・・・・・ただ果たして、この作戦で誰が最も不幸になって、誰が一番恨みと憎しみと怒りを抱いて行動してたのかは・・・・・・歴史は目して語らず、当事者だけが知る真実と歴史書は語り継ぐのみ。
『『『うぉぉぉぉぉぉぉッ!!!
ケ・フ・カ!! ケ・フ・カ!!! KE! HYU!! KAッ!!!!
ケフカ死ね死ね死ね死ね殺す殺す殺すブッ殺すゥゥゥゥゥッ!!!』』』
「「「だ・か・ら!!!
人違いだって言ってんだろう(でしょう)が―――ッ!?」」」
つづく