FINAL FANTASY Ⅵ~偽レニア~   作:ひきがやもとまち

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三話目です。本当は与えられた寝室で寝るまでを書きたかったっス。
どうしても戦争が絡むと文字数が無駄に増えまくる悪癖はどうにかしたいと心の底から思った今回のお話です。


第3章「砂漠のハイテク城に雪男到着。・・・矛盾してね?」

 鉱山都市ナルシェから南に下った砂漠に建つ城、フィガロ城。

 幻獣とともに魔法が消えた後、世界を発展させてきた産業文明において現代における最先端を行っているのが、このフィガロ城である。魔法と科学を融合させた魔導技術を有し、世界征服を目論む侵略国家ガストラ帝国でさえ魔法を度外視して『科学技術』に限定するならばこの国には一歩も二歩も先をこそされているハイテク技術の塊。

 

 ーーーここまでは多くの事情に詳しい者たちが知っている程度の基礎知識であったが、実のところ上記した内容は世間一般ではあまり知られていなかったりする。

 

 この世界に住む一般人的な認識によればフィガロ城は、

 

『辺境の地の、そのまたど真ん中に立っている城。砂漠のほぼ中央に位置するため、徒歩での行き来はかなりの危険を伴う。そのため移動手段として、チョコボ利用が盛ん』

 

 ーーというものだったようである。(NTT出版 『ファイナルファンタジーⅥ 設定資料編』より抜粋)

 

 まぁ、ようするに砂漠を歩いて渡って中央にぶっ建てられてるハイテク城まで歩いて向かうのは余程のバカか命知らずか、もしくは“世界を救える可能性を持った勇者たち”ぐらいな者というわけなので。

 

 

 ーー現代日本から飛ばされてきたばかりの凡人少女セレニアは、かなり危険な状態に陥りながら冒険で最初に訪れることになる城を目指させられていたのであった・・・・・・

 

 

 

「ぜー・・・、はー・・・、ぜー・・・、はー・・・・・・」

「えっと・・・、大丈夫・・・? 背中さすってあげようか・・・?」

 

 思わず自我が戻ったばかりの記憶喪失少女(真)であるティナが心配して気遣ってしまいたくなるほどセレニアの症状はヤバい状態に陥っていた。

 

 顔色は真っ青を通り越して真っ白であり、意識はギリギリで保てているが返事を返す余裕は失われて久しい。

 荒い息を付くことで却って現世との繋がりを維持しようとしているような『生きるための執念』を感じさせており、ある意味では感動的な映像だったが死んで教訓になるよりかは生きたいし生かしたいと願う当事者たちだった。

 

「ぜー・・・、はー・・・。ぜー・・・、はー・・・。ぜー・・・、ぜー・・・、ぜー・・・・・・」

 

 必死こいて生をつないでいる、未だエンカウント戦闘回数0の主人公。

 ナルシェの生態系トップに立つウーマロが仲間にいるせいで雑魚どもは恐れてよってきていない。過酷な環境に生きる砂漠の生き物たちは賢明なものである。

 

 

 ーーー今、一行はナルシェから南方に徒歩で行ったところにある砂漠の城フィガロ城を目指して歩いていたのだが、セレニアの症状が悪化する一方のため冒険とは別の意味で深刻な危機を迎えていた。

 

 今はまだ「初心者の館」とかいう場所でもらってきたポーションのおかげで意識と命を何とかつなぎ止めてる状態にあるが、そう長くは保ちそうにもない。

 《フェニックスの尾》もあるけれど、戦闘中に死亡した味方でない限り効果がないことをロックは経験上よく知っていたから割と本気で焦りまくっている。

 

(ヤバい・・・守るとかほざいておきながら、いきなり死なせてしまいそうだ・・・どうしよう・・・)

 

 ロック、まさかの『死なせない、守ってみせる宣言した直後に宣言しなかったほうが彼女のためになったんじゃねーのかな疑問』が頭の中で論争中。・・・宣言してから一両日も経過してないんだけどね・・・。 

 

(だが! どうすればいいのかがサッパリ分からねぇ! ふつうの子供ってこんなに脆かったのか? 日射病への対処法なんてほとんど知らねぇんだけども!?)

 

 ロック、心の絶叫。仕方ない部分もあるにはあるのだけれども。

 

 何しろ彼は『古代の秘宝を求めてさすらうトレジャーハンター』だ。ジュン老人から言われたとおり、“ドロボウ”と揶揄される仕事を生業にしている。カタギの人間とは縁が薄く、過去の悲しい出来事以来よけいに遠ざけるようにもなっていた。

 それでいてこの世界の遺跡や墓所に危険は付き物だ。それらを一人で対処できるようにならなくては人を守るどころか、自分一人守りきることはできない。

 だからこそ彼は冒険家仲間の間でも頭一つか二つ分ほど抜きんでた高い能力をもつ実力者にまで成長し、反帝国組織リターナーから単独で重要な任務を与えられるほど信頼されるまでに至っているのである。

 

 

 ーーが。それは裏を返せば一般人からは遠ざかっていることを意味しており、ふつうの子供がふつうの日射病で倒れそうになってるときに、どう対処すればよいのかなどの常識的知識は前よりも少なくなっていることを暗示してもいた。

 

 つまりは危機的状況に対処する能力は上がったのだが、自分でなくても知ってればできる治療法などの一般向知識は『使わなくて済むようになったから忘れてた』と言う訳である。

 

 それぐらいの域に至らなければ、フィガロ城よりさらに先にある城下町サウス・フィガロから世界最高峰の山『コルツ山』内部に作られたリターナーの本部から遙か北方のナルシェまで一人で赴くなど不可能なわけだけど、できれば強くなる前に大事にしてた弱い人向けの知識も忘れたくなかったなぁーと心底から後悔し始めてるロック。

 強くなるためにナニカを失うと、こういう羽目に陥る場合がごく希にあるというアホな例証だった。

 

 

 ーーーえ? ティナは役に立たないのかって? 自分のことさえ思い出せてない記憶喪失少女に魔法以外のなにを持っているよう要求しろと?

 

 

 

「ーーあ! ロック、あれがそのフィガロ城ではないかしら?」

「え? ・・・・・・ああ! そうだ! あれだ! あれがフィガロ城だ! よかったなお前! あそこまで行けば助かるぞ!

 なにしろあの城は砂漠の中に建っているのに、なぜか毎回いくたびに涼しくなって気持ちよくて・・・・・・」

「ぜひゅー・・・、ぜひゃー・・・、げほっ、ごほっ! ・・・はー、はー、ぜー、ぜー・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・とりあえず、お城を目指しましょうか?」

「・・・・・・・・・そう、だな・・・」

 

 なにはなくとも人命救助が最優先。急ぐことにするしかない。

 

「よし、行くぞみんな! 雪男も! ・・・って、おまえまだ拗ねてたのかよ・・・。いい加減、機嫌なおせよ。仕方なかっただろ? こいつのこの状態じゃおまえの肩に乗せて歩くの限界だったんだから」

「ウー・・・・・・」

 

 一行の最後尾を歩いて付いてくる巨人の雪男が不満そうな唸り声をあげてくる。

 彼はどういう訳だかセレニアのことをいたく気に入っており、ずっと肩に乗せて移動するのを楽しんでいるらしく、彼女を取り上げられそうになると不機嫌になる。

 が、彼女の安全第一であるのはロックたちと同じであるらしく、セレニアの状態が毛皮モコモコの自分の肩に乗っけてることで悪化してきている事実に気づいてからは不承不承ロックに渡してオンブさせて、後から付いてくるだけで我慢してきたのだが。やはり不満なものは不満であり、不機嫌なものは不機嫌なのだった。

 本能で生活してきた生まれながらの強者である野生動物の雪男は、戦えば強いけど我慢して耐えることの経験値は乏しかった。あっちを立てればこっちが立たないモノである。難しいね。

 

 

 

 

 そして、所変わってフィガロ城。

 

 砂漠の国であるフィガロ王国、攻めの主力であるチョコボ騎兵隊が城の周囲をゆっくりと巡回している。

 他の警備兵たちも含め比較的穏やかでのんびりとした表情が他の国の軍隊に属する者から見たら異質に映るに違いあるまい。

 

 だが本来、砂漠の民とはそういう気質を持った部族である。気まぐれな環境の中で生きていくことは難しく、人間たちの都合を押しつけようとしても自然が言うことを聞いてくれるわけもない。

 「規律規律」と幾ら口を酸っぱくしてみたところで、砂漠の地の真なる支配者は時代が産業文明に至った今もかわらず自然のままなのである。

 

 それが科学と魔法を融合させて生み出された魔導により帝都中を埋め尽くした中で生活している帝国軍兵士たちのような『都会の民』には理解できない。彼らの目に映るフィガロ軍兵士たちは「惰弱で脆弱な辺境にある小国のザコ兵士」としか見えようがないのである。

 

 そのことを砂漠の民らしからぬ文化人のフィガロ国王エドガーは心得ていたから、帝国軍の傲慢な態度にも苦笑するだけで片づけることが出来ていたのだが、それもそろそろ限界に達し始めていた。

 

 今は亡き父が、死の間際に交わしてくれた帝国との同盟は跡を継いだばかりの若すぎる王であった自分と、奔放すぎて城の生活には向いていないのに義務を無理強いせざるを得なかった弟へ示してくれた、子を思う親として最後の愛情だったと解釈しているエドガーは、出来ることなら亡父の意志と守り育ててくれた恩返しとして帝国との友好関係を維持していきたいと願っている。

 

 

 しかし、帝国側から示される友情はこのところ冷めていく一方だった。

 つい先日も帝国軍は同盟国フィガロになんら事前通達もすることなく貿易国アルブルグ、マランダ国、ツェン国の三カ国へと侵攻し自国に組み込んでしまった。南方大陸の覇権は完全に帝国側に移り、事実上ガストラ皇帝の独裁体制が確立されたばかりである。

 

 彼個人の心情はこのさい置いておくとしても、同盟国を治める王として看過できかねる事態であった。

 フィガロが帝国の下につくのはよい。過程に問題はあっても南方大陸にある四カ国すべての支配権を帝国軍が手に入れたのは事実なのだから、四カ国を治める王と、フィガロ一国の王とが対等ではないことぐらい帝王学を学んだ彼には理解できている。その点に関して不平不満を口にするぐらいなら自らもまた他国を征服して対等を目指せば良いだけであり、そうしないのは彼が覇王として対等に並び立つよりも一小国の王として民たちの平和と命を選んだと言う意思表示である。自分の選んだことについて後からどうこう言い出すのは為政者としての資質に欠けている者のする愚行だ。意味がない。

 

 だが、しかし。しかしである。形ばかりの対等な同盟関係なればこそ『形式という形』は遵守しなければならないものである。

 形しかない同盟関係で形式すら守ってもらえなくなった国の王には『窮鼠猫を噛む』以外のとるべき道は滅びしかない。

 

 決断するしかないと判ってはいるのに、エドガーが決断できずに迷い続けている理由は反帝国側には『攻めの決め手に欠けている』ーーこの一点に尽きた。

 

「地下に潜行できるフィガロ城は難攻不落の城塞だ。如何なる軍事大国であろうとも、力付くでこの城を落とすことはできない。食糧の問題も山脈を挟んだ向こう側にあるコーリンゲンを有するジドール国と強調すればどうとでもある。

 彼の階級国家は簒奪者であるガストラ皇帝がことのほかお嫌いなようだしな。守りに関して言うなら帝国と開戦することに何らの不安もない。

 だが、しかしーーーーー」

 

 攻めの手がない。それがエドガーを悩ませている頭痛の種だった。

 もともとが砂漠の国であるフィガロには機動力に優れた地上戦力としてチョコボ騎兵隊があるが、大海を挟んだ南方大陸に攻め込むには海軍が必要不可欠であり、チョコボの性質的に長期間の出兵には不向きであることも大きく影響するだろう。

 

 反帝国同盟に加盟しているドマ国は伝統的な戦様式を守り続けている歴史ある大国で個人の武勇に優れた『サムライ』を主力としているが、彼らは『国を守る護国の強者たち』である。

 敵対国へと乗り込んでいって戦った経験は少ない。果たしてどこまで信用してもよいのだろうか・・・?

 

 信じたいとするエドガー個人の感情論と、「実績を示してほしい」とする君主としての現実論に板挟みになっているのが近頃のエドガーの心境だったのである。

 

 

「やれやれ・・・。私は元来、この手の思考は苦手なのだがね。綺麗なものは綺麗だと、美しいと素直に口にできる気楽な身分の方が姓には合っている。状況を鑑みてマッシュにはああ言ったものの・・・やはり私はおまえのことが羨ましいし眩しく思えるよ。我が愛しの弟殿よ・・・」

 

 思い出を懐かしみながらつぶやかれた発言であり、事情を知っている古参の大臣しか同席していなかったから良かったものの、部外者がこの場にいたら完全に『同性愛者で近親相姦の変態発言』である。

 若き王であるエドガーには多くの美点が見られるし、無類の女好きだって『英雄色を好む』の観点から見れば悪いことでは決してない。・・・女性たちには申し訳ない気持ちでいっぱいにはなるけれども。

 

 だが、しかし。しかしである。

 

 ・・・・・・ジドール国の南方にあると聞くオペラ劇場の舞台役者みたいな言い回しを常用するのは、少しでいいから控えて頂けないだろうか・・・? 時々フォローに困ることが増えてきていて、年をとった自分の毛髪が心配になってきている今日この頃なのだけど・・・。

 

 ーーそんな風に、真面目さと深刻さが釣り合っていないけど異なる問題で深刻に悩み合ってる主従たちの座す玉座の間に「し、し、失礼いたします!」と、あわてた様子で一人の兵士が飛び込んできた。

 

 いぶかしげに大臣が問いただす。

 

「王の御前である、無礼だぞ。何事だ? ・・・・・・まさかケフカが何か仕掛けてきたのか!?」

 

 先日にも一度訪れてきた帝国の特使である道化師姿の魔導師を思いだした大臣は声を荒げる。

 “あれは何かやらかす瞳だ。そういう目をした男だった・・・”そのように彼を批評している彼は普段よりも警戒心を高めており、どのような事態になろうと即応できるよう万全の準備を心身ともに整え終えていた。少なくとも彼はそのつもりだった。・・・飛び込んできた兵士の報告を聞くまではーーー。

 

 

「い、いえ、ケフカ・・・様ではありません。もっと別のナニカです!」

「「ナニカ?」」

 

 主従が異口同音に疑問の声を口にする。

 ずいぶんと曖昧な表現だったし、「なんかよく判らないのに、慌てふためく緊急事態って何だよ」という気持ちが機械文明の旗手フィガロ国の統治責任者二人にはある。

 良くも悪くも数字にはめっぽう強いのだが、なんだかよく判らない謎現象にはめっぽう弱いのだ。

 理屈を求めるというか、合理性を追求すると言うべきなのか、とにかく納得できる理由が得られないと決断するのを躊躇ってしまう悪癖がこの国の上位者たちには伝統として受け継がれてしまっていたのだ。

 

 だからこそ、兵士からのこの報告には驚きの声を上げざるを得ない羽目にもなる。

 

 

「じ、実は・・・ご報告いたします! 先日リターナーの本部から連絡がありました帝国軍の魔導アーマーをあやつる娘がドロボウのロックに連れられ今し方この城に到着いたしました!」

 

 ここまでは二人は冷静だった。むしろ歓喜していた。

 欲していた攻めの決め手が手に入ったのだ。これで帝国に対して正々堂々、宣戦布告をぶちかましてやることができるぞ!と。

 

 

 だが、二人が喜ぶにはまだ早かった。早すぎていた。

 兵士からの報告には続きがあったからだ。

 

 

「そ、それでですね・・・・・・実はそのあの・・・・・・」

「?? なんだ、早く申せ。我々はその娘を歓待し、どう味方についてもらうかで討議せねば成らぬことが山積しているのdーーーー」

 

 

「ーー実はロックは、この砂漠の城フィガロに『毛むくじゃらでモコモコした毛皮を持つ元気いっぱいの巨大生物』を同行させており、入り口の天井を屈まなければ入ることのできないソイツまで入城させるよう要求してきているのですが、いかが致しましょう!?」

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 

 

『砂漠で毛皮の元気いっぱいな巨大生物!?

 なんっだ、その珍妙すぎる謎生物はーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!?』

 

 フィガロ主従、絶叫。

 他人が関わりだした途端、ネタキャラになってしまった珍獣ウーマロの運命や如何に?

 

つづく

 

今後の展開予定

 

ケフカ「帝国から一人の娘が逃げ込んだって話を聞いてな」

エドガー「さあ・・・」

エドガー「全長2メートル以上ある毛むくじゃらな雪男だったら来ているけど、あっていくかい?」

ケフカ「バカにしてんのか!?」

 

 

マッシュ「師は、俺ではなく・・・バルガス! あなたの素質を・・・」

バルガス「たわごとなど聞きたくないわ! 自ら編み出した奥義! そのパワーをみるがいい! 必殺! 《烈風燕略拳》!!! ――って、あれぇぇ!? ビクともしない奴がいるぅっ!?」

*結果的にだけどバルガス生存ルート確定。ボロ負けするけども。

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