FINAL FANTASY Ⅵ~偽レニア~   作:ひきがやもとまち

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書き忘れてた分を今朝から書き始めたため、色々と抜けちゃってるかもしれません。その時はお許しを。
…次回でようやく初期メンバー全員の自己紹介ができそうですよ。ふぃ~、長かったぁー。

*ごめんなさい、書くつもりで書き忘れていましたので追記させてもらいます。
今話の中で語られているエドガーの思想は作者の自己解釈に寄るものであり、原作の彼とは関連性はございません。彼の経歴と地位身分、セリフなどから類測したものに過ぎませんので本気になさいませんようお願いいたします。


第4章「砂漠のハイテク王と野生の頂点雪男」

 結論から言うと、フィガロ城にエアコンはないらしかった。

 だが、似たような機能を持つ装置は存在しているらしい。でなくては外側の壁に無数に取り付けられている換気扇や通風口を閉じなければならない地下進航モードのときに暑さで死んでしまいかねないから。

 

 当然、ここまでの話の大半は機密扱いなのでティナにもセレニアにも説明してはもらえなかったが、セレニアにとってはどうでも良いことこの上ない事柄に過ぎなかった。

 

 彼女は今、人生で一番幸せな時間を満喫していたのだから・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「涼しい・・・お水が冷えてます・・・美味しいのです・・・・・・生き延びられて本当に良かったぁー・・・・・・」

 

 王様たちが予想外の報告に驚いて、少しだけ準備の時間がほしいと休憩用の一室に案内された彼女たちは、砂漠の暑さで疲れた体をコップ一杯の冷や水とエアコンみたいなナニカによる安定した室温のなかで癒していた。

 

 ティナもまた、自我が目覚めてから初めて口にする砂漠の地特有の植物から絞られた果汁入りジュースに思わず顔をほころばせており、『ホンニャリ』と緩みきっているというか弛んでいると言うべきなのか、覇気の欠片も見えない表情でソファーに深く沈んでいるセレニアと似たもの同士・・・・・・な訳がない。

 

 ティナは姿勢正しく、出されたジュースを美味しそうに頂いているのに対し、セレニアは完全にダメな大人のポーズでもたれ掛かっている。九死に一生を得たから故の安堵感が成さしめる業とは言え、オリジナルが見たら何を言われるかわかったもんじゃない悪すぎる姿勢。微妙である。

 

 

「・・・まぁ、いいか。とりあえず死なないでくれただけでも良かったとしておこう。・・・あんな思いをするのは1度だけで十分すぎるからな・・・」

 

 駄目なセレニア略して駄目ニアの醜態を見ても亡き恋人のトラウマで良い方に解釈できるロックの性格は、ある意味ものすごーく前向きでポジティブだったのかもしれない・・・。

 

 

 

 ーーあの後、一行はフィガロ城に到着して門番を驚かせながら(言うまでもなくウーマロが原因)入城し、会う人会う人ほぼ全てから奇異の視線を投げられながら待合室へ通されエアコンもどきに当たりながら、日射病の治療ができる医者を呼んでもらおうとしていたところでセレニア復活。今に至っている。

 

 普通に考えるなら、日射病がエアコンに当たって即座に回復するなんて事はありえないし、セレニア自身の肉体にもなんらかの変質があるのは確実なのだが、この時の彼女はそのことについて考えようとしなかった。

 

 

 ーー何はなくともエアコン! エアコンさえあれば十分じゃないですか! それでいいじゃないですか!

 エアコンがある以上に幸せな生活が他にあるでしょうか!? いや、ない!!

 

 

 ・・・こんな調子で異世界生活初のエアコンを満喫しきっていたため、考える苦労が面倒くさくなっていたのである。保身を覚えた彼女の精神は自分に都合の良いものを尊重する動きがあって、真逆をいくオリジナルのそれとは常に相関関係にあり続けている。

 

 いつでもどんな時でも頭の中での葛藤は続けられているのだが、そもそものオリジナルの頃からやってたことでもあるので、勢力の内訳が多少変化したぐらいで気にする必要を存在そのものが感じなかったからである。

 

 結果、普通に幸せを満喫してご機嫌顔のロリ巨乳美少女ができあがる。見た目だけならまぁ・・・目の保養にならなくもない。姿勢の悪さもスカートの裾的には全然OKだ。イケる。

 

「・・・お待たせして申し訳ない。準備が整ったので玉座の間に来てもらいたい。・・・どうしたのだ、ロック。私がきた途端、全力で顔を逸らすなど貴公らしからぬ反応だったが・・・」

「なんでないぜ!? さぁ、速く行こう! 王様が待ってる!」

「??? あ、ああ・・・そうだな・・・?」

 

 

 

 

「待たせてすまなかったな。少々はずす訳にはいかない急な用事があったものでね」

 

 想定外のウーマロ入城で結構慌てふためいてたフィガロ主従二人の精神的均衡が回復するまで待たせてから玉座の間へと三人(と一匹)を招き入れたフィガロ国王エドガーは、セレニアが王様という言葉からイメージしていたよりずっと若く、砂漠の国の王様という単語からは想像できないほど線が細く色白で金髪な美青年だった。

 

 偏見だとは自覚していたし、ついでに言うなら個人的趣味趣向が多分に混じっていることも否定しようがない妄想だったのだが、彼女はなんとなくフィガロ城の主にターバン巻いて日焼けした髭の似合うダンディな小父様を・・・平たく言えば『ロードス島戦記』のカシュー王みたいな見た目を期待していたので少しだけガッカリしてたりするのだが、それはエドガーの責任ではないので(当たり前だ!)責めないし責められない。大人しく一行の後ろに控えて待機しているだけである。

 

 一応、王様の前と言うことで跪いてみたのだが、なぜか王様自身に全力で止められてしまい、立ってるか椅子を用意する旨を言い渡されてしまったので失礼のないよう立ってる方を選んだ。

 

 この娘・・・実はいまだに自分の性別変化に気づけていなかったのだ。日射病とか色々あったとはいえ遅すぎるだろう・・・。オリジナルが草葉の影にいても泣いてくれずに見捨てそうだぞ?

 

 

 

「そうか・・・この娘が・・・・・・」

 

 ロックから直接説明を聞いたエドガーが、ティナの方へと身体ごと向けなおし最初にはなった第一声がこれだった。

 あらかじめリターナーの指導者バナンからの手紙に書いてあった内容とロックから受けた報告の内容がそれほど違っていたわけではない。もともとバナンは帝国の侵略行為に対して、単なる領土拡張政策という見解を持っておらず、かなり早い時点から『魔大戦』を想起していた節が見られる人物だ。彼以外の人々が想像し得ないほど深くまで事情を察していた可能性は非常に高い。

 

 そんな彼に比べると、ロックは現場の人間であり一人の個人として動く能力に優れている。だからこその貴重な潜入工作員ではあるのだが、全体を見下ろす俯瞰視点でバナンより多くのことを見抜く目を持つことは出来ないだろう人格でもある。

 

 つまり、バナンが知らないことはロックも知らない。ロックが知らないことでもバナンなら知っている可能性はある。国王として同じ人物についての報告を受けるなら、個人的好感情は別としてエドガーもバナンの方に理と説得力を感じざるを得ない。

 

 とは言え、現場に立つ人間の感想というのも存外バカに出来ない。

 バナンからの手紙には、説明力に長ける一方で私人としてティナ個人に対する思い遣りが欠けていた。

 悪辣な帝国から世界を守るため、私情を殺して昼も夜もなく戦い続けている彼らしい誠実さと覚悟を感じさせる書き方だが、目の前にいる“人間”を知るには役立たない。むしろ邪魔になる。

 

 対するロックの報告には、説明よりも個人的感想の方が多く混じっていた。彼の過去を知るエドガーとしては気遣わずに入られない箇所も多数混入してはいたものの、おおむね彼の彼女に関する感想は「優しくて誠実で礼儀正しくて良い子な美少女。ただし不思議な力あり」と言う、力よりも人格を単純な表現で並べ立てたものだったから、彼をよく知るエドガーとしてむしろ深く伝わってきてありがたかった。

 ロックは頭はいいが、考えるよりも感じること、行動することを由とする人間だ。単純と呼ばれようとも、そっちの方がよりいいと考えての思考なのだから真心がこもっている。

 

 そんな人間がシンプルな言葉で『良い子』と表現した相手なら、信用できる。

 

(少なくとも、王様の地位に引かれてやってくる、欲の皮の突っ張った媚びへつらう見た目だけ美女たちより余程好ましい)

 

 彼はそう思う。

 女好きで知られる彼だが、別に好みのタイプというのが存在しないわけではなくて、『歳を取っていても心がきれいな女性と、若くて美しいが中身は汚い女性とを比べたら、どちらも美しいことに変わりないだろう?』ーーという、なんだかスゴい思想になってしまったと言うだけだったりする。

 これは先代の父王が亡くなるときに見た一族内での王位継承争いで、美しいと思っていた周りの大人たちの内心が透けて見えてしまったトラウマに起因するものだが、それが彼の心理に与えた影響は暗いものではなく、素直に「人間とは光あれば陰もあるもの」として王様らしい人間観へと昇華できてしまった所に若くして名君と呼ばれる資質があるのだろう。

 

 この時に彼が示した反応にも、それが現れている。

 

(・・・仮にも一国の王から見た目を観察するような視線を向けられていながら、不振がる気配も媚びる様子もなく、ただ不思議そうに私の顔を見つめてくる。これだけ容姿が整った若い女性がこの対応をするのは珍しいな・・・。

 どうやら、人を欺くことで得られる経験値がまるで身に付いていないようだ)

 

 ジロジロと不躾な観察する目でティナを眺め回しながらエドガーは、心の中で独り言をつぶやいていた。

 それは彼なりに人格鑑定方法であり、『王様から見られた時の反応で相手の今までを視ようとする』なかなかに高度なテクニックでもある。

 もっとも、彼が若くてハンサムな王様だから許される行為と言ってしまえばそれまでのものでもあるのだが。無男な王様がこれやったら普通に「女好きなスケベ王」の徒名で確定されます。確実に。

 

「誰? あなたは」

 

 そして、止めの一言。これで確定。

 ティナは権力に媚びを売ったり、金で人殺しに荷担できるような人間では絶対ない。断言できる。だって正直な話、ここまで率直に疑問系で返されたことない人格鑑定方法だもん。

 

「おっと、失礼」

 

 だからこそ彼は、自分のティナに対す感情をこう表現する。

 

「初対面のレディに対してする態度ではなかったな」

 

 自分の知る『帝国の魔導アーマーに乗っていた娘』ではなく、初対面のレディであるティナとしての態度で臨むと誓う彼なりの女性に対する決意と覚悟の示し方。

 

「私はフィガロ国王エドガーだ。君を連れてきたロックとはちょっとした経緯があってね、それなりに付き合いの長い腐れ縁なんだよ」

「へへ。俺が王様と知り合いだなんてビックリしたかい?」

「帝国の兵士だったそうだが、心配はいらない。フィガロはガストラ帝国と同盟国だ。介入があったとしても、いきなり力押しで攻め入るような無法な行為は出来ないさ。だから、しばらくはゆっくりしていくといい」

 

 それに、と付け加えるように振り向きながら。

 

「私はレディを傷つけるつもりはない?」

「なぜ私によくしてくれるの? 私のこの力が・・・」

 

 言いそうになったティナを遮るように言葉をかぶせ、エドガーは道化を演じるように嘘偽りない本心を声に出して彼女に伝える。

 

「まず、君の美しさが心を捉えたからさ。

 第2に、君の好きなタイプが気にかかる・・・」

 

 少し前へと進んでから、自分にとっては『オマケでしかない』という意味合いを込めた言葉で口説き文句を締めにかかった。

 

「魔導の力のことは、その次かな」

 

 要約するなら、心が一番、『見た目が二番、力については三番以降』という彼の価値基準がよくわかる表現だったと言える。

 「女性と見れば幼女から老女まで声をかける」とまで評されたフィガロ王国の女性コンプリート王は、伊達でやってる訳ではないのだから。

 

 

 が、しかし。

 

 

「なるほど、立派なお考えですね。さすがに一国一城の主様です。出来ましたら、そのお志を持ってして私のことも助けていただきたいのですが?」

「ーーうっ!」

 

 一瞬にしてエドガーの顔、冷や汗まみれに。王座の間には彼以外にもフィガロ王国の人間が護衛として二人詰めているのだが、その彼らでさえ全力で視線を逸らして合わせようとしてくれない。

 ずいぶんと見捨てられたものだなーと、他人事のように心の中で批評しながらセレニアは、お腹の上に乗っかっているウーマロを押し上げようと、さっきから懸命に頑張り続けていた。

 

 平たく言うと、飽きたのだ。ウーマロが。大人しくジッとしながら人間の男の話を聞いていることに。

 そして一番後ろに下がっていたから近くにきていたセレニアを使って遊び始めていたと言うわけである。(一部に悪意的表現が混じっていましたが、本人的にはジャレてただけだと思います。たぶん。セレニア談)

 

 単に上から乗っかって、押し潰さないように加減しながら抱きついてただけの動物的スキンシップではあるのだけれど、サイズがデカい。デカすぎる。209cmで198Kgある。

 そんな超重量物体が140cm未満の少女に上からのし掛かっているのだから、慣れてる(慣れてしまった)ティナやロックはともかく初見のフィガロ城メンバーの目には、幼女がドデカい雪男に襲われて殺されそうになってる風にしか見えない。

 しかもこの雪男、見るからに強そうなのだ。城下町の近くにある世界最高峰のコレン山が格闘家や剣士の修行場として名高いために戦士を見る目が自然と肥えていくフィガロ国の住人から見ても桁違いというか、洒落にならんと言うべきなのか。

 

 コレン山生態系のトップに君臨しているのは、太古の時代から生きてきたとも言われている毛むくじゃらで像のようなモンスター『ゴルギアス』だ。

 ナルシェでは防衛力強化のため金にものを言わせてコレを品種改良し、人でも飼い慣らせるレベルにまで弱体化させた『メガロドルク』をガードたちに与えて戦力化することに成功しているものの、未だに量産化の目処が立っていない高級品種であり、弱体化しても高性能モンスターであり続けられている生態系の上位種なのである。

 

 ・・・そんな『ゴルギアス』が身体ごとぶつかってきただけで吹っ飛ばされてくシーンしか連想できない絶対王者相手にツッコミ入れられる勇者などフィガロ城にもフィガロ王国全体にも存在しない。エドガーの弟マッシュでも嫌がるかもしれないし、最強格闘家ダンカンで何とか立ち向かえるかな!? ・・・と国民たちが希望を抱ける高レベルの存在になど関わり合いを持ちたくなかったのだ。城内の誰一人として。女性なら誰でも口説くエドガーさえも。

 

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・??」

 

 ーー気マズい空気が玉座の間に流れる・・・・・・。

 銀髪の少女が静かに大人しく、雪男と戯れててくれたから「もしかしたらこのまま流せるか!?」と淡い期待を込めて颯爽と立ち去っていこうとしていたエドガーに、まさかの不意打ち。さすがの彼も、この一言には即答できずに黙り込んでしまう。

 セレニアは女性相手に百戦百勝を誇る常勝の王から一本取ったわけなのだけれど、このまま見捨てられてしまうと物理的に絞められてKOさせられそうだから、敗けでいいから助けてほしいと切に願っての一言である。潰されなくても重いのと苦しいことには変わりなかったから・・・。

 

(・・・あと、なんでか妙に圧迫されて胸のあたりが苦しいですし。息苦しいですし。妙に力が抜けていきますし、変な声だしちゃいそうな時がたまにありますし。ーーなんでなんですかね?

 後で落ち着ける部屋でも与えてもらえたら服脱いで調べてみましょうか・・・)

 

 ぴろりろりん♪

 セレニアに性別変更発覚イベント発生のフラグが立ちました♪ ーーって、遅いよ!

 

 

「・・・・・・? どうしたの?」

『ーーーっ!!』

 

 ティナのファインプレー(フィガロ城メンバーにとってのだが)。

 期を見るに敏でなければならない若き名君エドガーは、与えられた脱出の機会を逃さない!

 

「私の口説きのテクニックも錆びついたかな?」

 

 

『ソレっぽいこと言って早足で去っていくエドガー様の後ろ姿を、私たち二人はサウスフィガロへ向かってチョコボをひた走らせていく彼の後ろ姿と重ね合わせて、すべての戦いが終わってから思い出す度に酒の肴にしたものです』

             フィガロ城・玉座の間の護衛兵二人の日記より一部を抜粋

 

 

 

「そうなのね・・・・・・普通の女の人なら、その言葉に何かの感情を持つものね。

 でも、私は・・・・・・」

「何も感じないなら、むしろ良いことですし誇るべきことだと私は思いますが? 少なくとも今の私には、見捨てられた事への恨み節しか感じられませんからね。

 ーーそれより、ちょっと・・・そろそろ助け・・・・・・苦しいんです、胸の当たりが何故だか異常にどうしようもないほど、押し潰されてるみたいに圧迫されて・・・う、ぐぅ・・・」

「・・・・・・大きいからじゃないかしら? (理由は解らないけど、ちょっとだけ羨ましく感じている、この気持ちは何なのかしら・・・? 私には私の気持ちが解らない・・・)」

「ちょ、苦し・・・自分の胸に手を当てて考え事してないで、こっちの私の胸の苦しさを助けてくださー・・・い・・・・・・ぱたり。キュ~~~・・・(>_<)」

 

つづく

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