FINAL FANTASY Ⅵ~偽レニア~ 作:ひきがやもとまち
原作崩壊が始まるよ回です。ウーマロが、久しぶりに無双しちゃいます。
コルツ山。反帝国組織『リターナー』の本部がある山で、北大陸の東西を隔てる境界線としての役割も果たしている軍事的要衝だ。
忘れられがちだが、ドマ国は現在帝国と戦争中であり、フィガロ王国は先日まで帝国と同盟関係にあった国である。当然のように帝国軍としては手が出しづらく、ドマ国に手こずっていると言うのもあって軍事的空白地帯が生じている場所が、このコルツ山であったのだ。
まぁ、その軍事的均衡はフィガロ国王様自らがオジャンにしちゃったばかりなので、長い目で見るとリターナーの本部が襲われる原因作ったのはエドガーってことになるけど、今さら言っても詮無いことである。だから流す。説明は後だ。異論反論は一切認めない!
――コルツ山はまた、剣士や格闘家たちにとっても修行場として有名な場所で、修行者たちの聖地としても知られている。
ただし、そこはファンタジーRPG風異世界らしい特徴として、『元は人間だったが格闘技を極めるあまりモンスターに生まれ変わった、かつての修行者のなれの果て』という、如何にも元格闘家って感じの『ザクレム』とかいうモンスターが出るので注意するよう町の人たちに教えられていて、実際に何度か襲われたりもしたのだが。
・・・・・・正直、この展開は予想しておりませんでしたわ・・・・・・。
「マッシュの手の者か?」
「いや、知りませんけども・・・誰ですか? そのマッシュさんって・・・」
「ふ、貴様らが何者とて捕まるわけにはゆかん。このバルガスに出会った事を不運と思って死んでもらうぞ!」
「聞いてくださいよ、人の話をさぁ・・・・・・」
・・・山の中抜けようとしたら、いきなり跳び蹴り食らわせてエドガーたちを吹き飛ばしてきた謎のマッチョ。
人語を話せて人間のままっぽい格闘家の兄ちゃんが、どういう理由でだか熊二匹を手下みたいにして訳わかんないこと言いながら、山賊みたいに襲いかかってきたのである。・・・ホントーに訳分からん展開だなオイ・・・。
てゆーか、なぜに熊? 人間の子分とか出来なかったの? “捕まるわけにはいかない”宣言で犯罪者であることだけは明白な謎の色黒マッチョとの戦いがこうして始まったわけであるのだが。
「・・・・・・」
基本、戦力外通告受けてるセレニアはやることがない。今回の敵は『強さが全て!ザコに用はない!』タイプであるためか、最初に蹴り入れてきた時点でセレニアは対象外。眼中にないと言った態度で目線さえ全然併せてもらっておりません。
熊二匹も以外と立派に手下やってるらしく、兵隊みたいに男の壁になって全面に突出しながらエドガーたちと激しく戦い合っている。あと、意外に強くて地味に驚かされている。
とは言え、そこは敵全員が素手で戦う格闘家タイプ。
遠距離攻撃型の魔法使いティナと、機関銃ならぬ機関弩みたいな【オートボウガン】を乱射して戦うメンバーの前では相性が悪く、やがて熊さんたちが倒されてしまうと追い詰められた男が前に出てこざるを得なくされてしまう。
――その時である。
叫び声と共に『例の男』が現れたのは!!
「やめろっ!! バルガス!」
乱入してきた金髪の、熊のような男!
逞しく盛り上がった筋肉と両肩に、不釣り合いなほど引き締まった肉体美。ミケランジェロとかが喜びそうな、ギリシャ彫刻っぽい見た目の格闘家とおぼしき男が飛び込んできて敵の名を呼んだ!
「・・・そう言えばその人、最初の時に名前名乗ってましたっけね。これから殺す相手だから知られても良かったのかもしれませんけど、だったら教えずに無視してくれたら良かったのに・・・」
――外野から身も蓋もないツッコミが入ってくるのは気にならず、耳にも入れることなく男・・・バルガスが吠える! 憎むべき怨敵の登場を歓喜と共に迎え入れるように!
「マッシュか! 会いたかったぞ! 貴様をこの手で殺してやるためにもなぁ!」
「バルガス・・・なぜだ? なぜ、なぜ、なぜ、ダンカン師匠を殺した? 実の息子で、兄弟子の貴方がどうして実の父である師匠のことを!!」
悲痛な叫び。この場で知る者は一人しか存在しないが、実の父を失い失意の内に城を去った熊のような男にとって『父親』とは特別な意味合いを持つ存在だ。軽々に殺してよい人では絶対にない。
「ダンカン師匠? ・・・たけし軍団・・・?」
・・・若干一名、空気読めずに事情も分からず古すぎるお約束知識でつぶやいている部外者がいたけど、部外者なので無視します。面倒くさいから。
「それはなあ・・・、マッシュ。奥義継承者は息子の俺ではなく、拾い子のお前にさせると抜かしやがったからだ!」
「違う! 師はあなたの―――っ」
「どう違う? 何が違うと言うのだ? 違わないさ! そうお前の顔に書いてあるぜ!」
「違うんだ! 聞いてくれ! 師は、俺ではなくバルガス! 貴方の素質の方をこそ・・・っ!」
「戯言など聞きたくないわ!
父が授けてくれなかったからこそ、自ら編み出すに至った奥義! そのパワーを身を以て思い知るがいい!」
「【必殺! 連風燕略拳】!!!」
・・・なんだか場違いなほど暑苦しいバトル漫画的展開が突然始まったと思ったら、これまた突然吹き荒れ始める色の付いた暴風。
踏みとどまろうとしたパーティメンバーだったが、エドガー、ロック、ティナの順に吹き飛ばされていく。暴風という名の自然の猛威の前では人間に為す術などない。
「あ~れ~」
そして、当たり前のことだが踏みとどまる気さえ持たない『やるだけ無駄』と最初っから諦めきってる部外者少女は、どうせ吹き飛ばされるしかない自分の無力さを呪う意思さえ放棄して、ただ流されるまま、吹き飛ばされるまま飛ばされていった末に。
「ふぎゃっ!?」
――落ちた。地面に向かってドシャッと!音立てながら盛大に落とされてしまっていた。
そこは一応手加減されてたのかもしれない、怪我とかは特になく痛かっただけで済んだ不幸中の幸いな必殺技だったのだが・・・・・・本人が納得できたからとて『友達が傷つけられるのを見て黙ってみてられる奴ばかりとは限らない』
『ウゴッ!? ウゴ―――っ!?』
なんか身長2メートル以上の雪男さんがメチャクチャ慌てまくりだしたみたいです。もしかしたら大怪我したのかもとか思ってるのかもしれませんね。実際には無傷ですけど、怪我の程度とか技の加減だとか、野生で生きてる野生児には意味不明で無用すぎる代物だから。
「ほう! 耐え抜いたか! さすがはマッシュ! 親父が見込んだだけのことはある男!」
「や、やるのか? ・・・・・・本当に?」
「宿命だ。そしてお前には私を倒すことは出来ぬ!
それもまた宿命なのだからな!」
「【終死拳】!!」
魔法ではないが、気の力を応用して呪的な効果を付与した拳打でツボを突き、相手の死命を己が手で定める技。
「フッ・・・・・・お前の命も後わずかだ! せいぜい残された命で足掻いて見せて、俺を楽しませるがいい!!」
勝ち誇るバルガスを前に、マッシュは苦渋の選択を強いられる。
・・・出来ることなら使いたくない、兄弟子のプライドの高さを承知している彼から見れば、兄弟子が習得してない技をぶつけることで勝つだけなら簡単なことなのだ。
だが、あくまで兄弟子の欠点は驕り高ぶりやすいという一点にあり、素質の点では自分より遙か上を行く、ダンカンの息子として恥じない天才であることを知る彼は、その格闘技の才能が失われることを惜しんでいたし、その才能を自分の拳で終わらせてしまうのだという罪の意識に苛まれてもいた。
出来るなら使いたくない、殺したくない、勝たせてやりたい!
――だが! 師匠を殺した償いはさせなくてはならない!!!
「食らえバルガス! これがアンタが学ぼうとしなかった師匠の必殺技!! 【爆裂け――」
『ウゴ―――――――――――――――――――っっ!!!!!!!!!!!!!!!!』
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどっっ!!!!!!!!
怒り狂った雪男が突っ込んできた! ダンプカー並の突進力による一撃だ!!!
今からだとバルガスに避けてる時間の余裕は一秒もない!!!
「「へ?」」
兄弟子と弟弟子の二人そろってポカーン。
――そして、次の瞬間には兄弟子の方が前方に向かって、まっすぐまっすぐ吹っ飛ばされ続けていくのを目撃した。させられてしまうのだった。
『ウゴゴゴゴゴゴゴ―――っ!!!』
「うががががががががぁぁぁっ!?
す、素手でこのダメージ量をぉぉぉうおおぅおぉぉぉぉぉぉっ!?」
・・・そして止まった。壁に激突して強制的に止められてしまった。
普通の人だとペシャンコになる勢いだったけど、鍛えてるからそうはならず普通に気絶するだけで済んだ。痛いだけで済んだのだった。
「ぺぎゅるぅぶおほぅおぅっ!?」
訂正。――もの凄ーく痛いだけで済んだから不幸中の幸いだと、私はそう信じたいに変更しておく。
「え、えーとぉ・・・・・・」
マッシュ困る。大いに困るし、困るしかない。
散々に鍛え続けた技と肉体、その全てを超越した自然界の天然記念物級レア筋肉ダルマの雪男相手に意見することも出来ぬまま、ただ困って立ち尽くすより他にできることがない。
その後ろ姿に、つい最近の自分も重ね見て二重の意味で懐かしくなったエドガーが叫び声を上げる!
「マッシュ!」
「・・・・・・兄貴?」
「え!? お、弟!? 前に話してくれた双子の弟なのか!?」
「お、弟さん? わ、私・・・てっきり大きな熊かと・・・」
「熊ァ!?」
緊張の糸が切れたのか、急激に日常を取り戻し始める一同。
・・・未だ続いている雪男による『友達いじめた奴イジメ』と、断続的に聞こえてきだした意識戻されたらしい男の悲鳴には敢えて聞こえないフリを実行しながら、どうしようもない現実から目を逸らしながら。
「熊か! そりゃあいいや! ハハハハハっ!!」
笑って無かったことにするマッシュ。ある意味不健全だけど、ある意味では非常に健全。現実って難しい。
「それより兄貴。いったい何だってこんなところに?」
「サーベル山脈に行くところだったのさ」
「サーベル山脈・・・もしや、地下組織リターナーの本部にか?」
「そうだ」
頷いてエドガーは、今に至るまでの簡略化した経緯と、フィガロ王国が正式に帝国に対して宣戦布告したことなどを伝えるとマッシュは喜色も露わに兄の肩を抱く。
「とうとう動き出すか! 影ながらヒヤヒヤして眺めていたぜ!
このままフィガロは帝国の犬として大人しくしてるんじゃないかってな」
「反撃のチャンスが来たからな。もうジイヤたちの顔色をうかがって帝国にベッタリすることもない」
「それなら俺も力を貸そう。俺の技もお役に立てるだろ?」
「来てくれるのか? ありがとう、マッシュよ・・・・・・」
和気藹々、仲良きことは美しきかな。兄弟仲がいいのは良いことだろう。
「俺の技が世界平和の役に立てばダンカン師匠もうかばれるだろうぜ!」
「ああ、そうだな!」
「よし。それじゃあ行こう! サーベル山脈にあるリターナーの本部へ!」
「あのー・・・・・・」
朗らかな笑顔で宣言するロックに「悪いなー」とは思いつつも、そろそろ声かけないと本気でなかったことにされそうな人が一人いるので、イヤイヤじゃないけど仕方なしに声をかける偽レニア。
そして、心底から「どうしたもんかなー、コレ・・・」とか思ってそうな口調と声で“ソレ”を指さしながら聞いてみる。
「皆さん、現実逃避も宜しいのですが、そろそろ目の前にある現実にも目を向けましょうよ。
・・・コレ、どうする気なんですか・・・?」
セレニアが指さす先にある物。
其れの名はバルガス。半死半生の状態だけど、たぶん手当てすりゃ助かるんだろうなーと言う程度には丈夫だった男の、雑巾みたいにズタボロになった死に体の姿であり、他のメンバーたちにしても扱いかねることこの上ない、でも死ななかった場合には殺したいと思える理由のない、そんな男のなれの果てがウーマロに持ってこられて放り出されてきてた。
「「「・・・・・・」」」
――誰一人、明確な答えの出せぬまま、なぁなぁで棚上げにされて連れてかれるバルガス。
彼の生存フラグはこうして強制的におっ立てられてしまったのだった・・・・・・。
つづく
番外編「ティナの心は複雑模様」
「そう言えば、ティナさん。確認してなかったんですけど、結局バナンさんに会って話を聞くことに決められたんですか?」
「う・・・っ!?」
生まれつき魔導の力を持つ少女ティナ、異世界から落ちてきた少女の言葉で動きを止めて、しばし絶句。言葉を探すが見つからずに、仕方がないので笑ってごまかす。
「・・・・・・えへっ」
――そんなモンでごまかされていい問題じゃないでしょー!
・・・どこからか少女の心の声でツッコむのが聞こえた気がしたけど、偽レニアは気にしない。だって偽物だから。オリジナルに同調する義理0以下だから。
カワイイは正義! それが世界の真理です!を貫く、男だった時期からそんな経ってない微妙にスケベなところもあったりする偽物セレニアはティナの笑顔ですっかり騙されて誤魔化されて気づかなかったフリして先を急ぐ。
その素直さで、却ってティナの方が居心地悪くなってしまった程だった。
――そう、ぶっちゃけティナは未だにバナンにあって話をすべきか否か決められていないのだ。目的地まで後少しなのに、答え保留したままなのである。どんだけ意志が弱いんだこの子は・・・・・・。
でも、これは仕方の無い部分でもあった。
ティナは元来、我の強いタイプではなく、どちらかと言わずとも受容的な性格の持ち主の子だ。ついでに言えば周囲の意見に流されやすく、自分の意見を持つことは多くない。
そして、それを嫌だとは感じない『他人に尽くす方が好きなタイプ』の女の子なのである。
――ここに至る大分前に、ナルシェの老人ジュンは「あやつりの輪」で支配されていたティナが自分の名前をすぐ思い出したことで『心が強い子だ』という感想を持ったものだが、これは間違いでなくとも正解とは言えない。
なぜならティナの持つ強さとは、『誰かを守るため、別の誰かを傷つけてしまう罪を背負える強さ』であって、『他人を傷つけてでも自分たちのために戦う強さ』ではなかったから。
ジュンが言うところの『心の強さ』は、ハッキリ言ってしまえば「リターナーのために戦える強い戦士の心」でしかなく、「帝国人であろうと同じ人間。出来れば傷つけたくない」と願うティナの優しい強さとは本質的には違う物だ。側の問題でしかない「心の強さ」なのである。
残念なことに、この優しさが戦争という現実に慣れた人間には理解できない。
『敵は一方的に悪い奴らで、自分たちは正義の味方だから仕方なく殺している』と思わずして敵兵を殺せる者は数少なく、敵軍兵士を『自分と違う国に生まれた普通の人間』と分かった上で「敵だから殺せ」と命令に従い殺し合える人間は更に少ない。
だから別けるのだ。旗の色で、善と悪とを。そうしなければ戦えない弱い心の持ち主ばかりなのが人間だから。「戦争だから」と自分自身のおこないを正当化しなければ戦えない人たちばかりだから。
・・・そんな彼らにとってティナの理想は受け入れられない。そんな勇気は彼らには無い。現実に妥協して「仕方ない」と、戦争に慣れることを選んでしまった彼らから見てティナは「未熟で青い」と定義しなければ戦い続けることなど出来なくなってしまうから。
そしてティナは悩み続ける。優しくて優しくて本当の意味で強い心を持ち、他人のために命がけで『分け隔て無く戦える』彼女は戦争という擬似的な勧善懲悪の中では悩むことしか出来ない。
自分は、どちらかに付かなければならないのか、と。
自分の判断で、人のことを傷つける道を選ばなければいけないのか、と。
・・・・・・目的地に少しずつ近づきながら、それでも今なお答えは出せていない・・・・・・。