魔法戦記リリカルなのはWarriorS   作:雲色の銀

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第8話 雷達の休日

 ミッドチルダの首都"クラナガン"にある次元港。今日も臨行次元船は平常運転で、港内は多くの渡航客で溢れている。

 

「では、行ってきます」

 

 エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、六課ライトニング分隊のフォワード2人も本日は久々の休暇を取り、次元旅行へ向かおうとしていた。

 この旅行を計画したのは2人の保護責任者であるフェイトだった。原因は数週間前起きた、クラナガン西第3ビルでの爆破テロ。

 奇跡的に残った事件時の映像があまりにも残酷なものだったため、精神的にまだ幼いキャロはかなりのショックを受けてしまっていた。なので、少しでも精神を回復させるためにも旅行に行くよう勧めたのである。

 

「2人共忘れ物はない? 着いたら連絡入れてね?」

「だ、大丈夫ですよ」

「お土産持って帰りますね」

 

 見送りに来ていたフェイトは最後まで心配していた。過保護気味な保護者兼上司に苦笑しつつ、2人は臨行次元船に向かっていった。

 

「大丈夫かな……?」

「フェイトさんは心配しすぎですよ~」

 

 同伴していたシャリオも不安気な上司に思わず苦笑いである。結局、フェイトはエリオとキャロが見えなくなるまで見送っていた。

 2人の行き先は、共通の友人であるルーテシア・アルピーノが住んでいる無人世界"カルナージ"だ。

 ルーテシアは複雑な事情があってJ・S事件ではスカリエッティに協力し、エリオ達と敵対していた。事件解決後は和解し、現在まで交友関係を保っている。

 

「ルーと会うのも久々だよね、キャロ」

「うん! 楽しみ!」

「キュクル~」

 

 文通こそしていたが、直に会うのは1年ぶりくらいだ。鞄の中のフリードリヒも楽しみそうに鳴いた。

 2人と1匹は友人との再会に、期待で胸を膨らませていた。

 

 

◇◆◇

 

 

 一方、機動六課では残りのフォワード達がなのはと模擬戦を行うことになっていた。

 

「でりゃああぁぁぁぁっ!」

 

 まずは新メンバーの2人からである。

 なのはを超えるべき目標と据えるソラトが大剣を振りかざし、突っ込んでいく。なのははソラトの攻撃を防御魔法で防ぎ、カウンターとして得意の射撃魔法、アクセルシューターを数発放つ。

 

「エド兄、お願い!」

「ああ!」

 

 だが、物陰からの射撃でシューターは打ち落とされてしまう。同時にソラトはなのはから距離を取り、構えなおす。

 前回の模擬戦では、ソラトは一対一で倒すことに拘りすぎたため、無茶な特攻を仕掛けて簡単にいなされてしまった。今回ではそれを反省し、エドワードと連携を取って自分に出来る範囲で攻め込んでいる。

 

(戦い方、上手くなったなぁ)

 

 なのははソラトの進歩の仕方に目を見張っていた。以前のような功を焦ったスタンドプレーではなく、後ろのエドワードの存在も気に掛け、冷静にこちらの動きにも対処している。

 鋭い接近戦で追い詰めるソラトと、後方支援をしつつ精密射撃で相手の隙を狙うエドワードは組んでいた時期の長さもあり、抜群のコンビネーションを発揮していた。

 

「ソラト、フォーメーションNDだ」

「分かった!」

 

 エドワードの指示に従い、ソラトは後ろに下がり魔力カートリッジをロード。大技を決めるつもりなのだろう。

 更に、魔力を練っている間隙だらけのソラトをカバーするように藍色の魔力弾が次々と放たれる。この魔力弾の中には当たると網状のバインドを展開するものも含まれており、フォーメーションの意図はバインド弾で動きを止めた後にソラトの砲撃魔法で一網打尽にするというものであった。

 因みにNDとは、2人の魔法"ネットバレット"と"ディバインバスター"の頭文字である。

 

「行きますよ、なのはさん!」

「うん! 全力全開で!」

 

 なのははこれからの2人の成長が楽しみになると共に、魔力弾を対処しつつこちらも砲撃魔法で迎え撃つ準備をした。

 

「ソラトー! 頑張れー!」

「お互いの隙を知り尽くした上での連携プレーね」

 

 なのは達が戦っている地点から離れた場所では、次の模擬戦を控えたスターズの2人が観戦していた。激しく戦う幼馴染にエールを贈るスバルを他所に、ティアナはエドワードが考えたであろう戦法を冷静に分析していた。

 

「善戦してるな」

 

 スバル達とはまた別の場所。練習試合とはいえ、激戦を繰り広げているフォワード達の様子を見に来たのは、両分隊の副隊長。ソラト達の戦いぶりにシグナムは感心していた。

 

「当然だ。アタシとなのはが鍛えてんだからな」

 

 その隣では、フォワード達の教官でもあるヴィータが胸を張っている。

 

「でも、アタシからするとまだまだだな」

「中々厳しいんだな、ヴィータ教官」

 

 教え子を褒められ、照れ隠しなのかツンとした態度をとるヴィータに、シグナムはフッと静かに微笑むのであった。

 

 

◇◆◇

 

 

 クラナガンを発って4時間後、エリオとキャロはカルナージに到着した。

 次元港を出ると、黒い体に紫のマフラーを着けた怪人が2人を出迎えた。

 

「ガリュー! 久しぶり!」

 

 エリオが親しげに声を掛けると、"ガリュー"と呼ばれた怪人は軽くお辞儀をした。

 ガリューはルーテシアの召喚虫であり、自律行動を許される程信頼を受けている。自身も言葉は喋れないが、礼儀正しい性格でルーテシアやその母、メガーヌの手伝いをよくしている。

 

「キュクル~」

 

 フリードリヒも懐いているようで、鞄から出るとガリューの肩に止まった。

 

 ガリューの案内でアルピーノ家に向かう。山道を暫く歩くと、無人世界の大自然の中に一軒の家が見えてきた。その前では、紫髪の綺麗な女性が花壇に水をやっていた。

 

「あら、エリオ君にキャロちゃん。いらっしゃい」

「こんにちは、メガーヌさん」

「お世話になります」

 

 2人が来たことに気付くと、優しい笑顔で迎え入れる。彼女がルーテシアの母、メガーヌである。

 彼女はある事情からJS事件でスカリエッティにその身を捕えられており、管理局によって救出された直後は車椅子での生活を余儀なくされたが、現在では普通に歩けるまで回復した。

 

「エリオ、キャロ」

 

 そして、家の中からメガーヌを幼くした感じの大人しそうな少女が出て来た。彼女こそ2人の友人、ルーテシア・アルピーノだ。

 

「ルー!」

「久しぶり、ルーちゃん!」

 

 再会を喜ぶ3人。しかし、キャロは若干笑顔が引きつっていた。

 理由は彼女達の身長差にあった。成長期の男子であるエリオはともかく、ルーテシアにも軽く負けている。

 

「エリオは大きくなった。キャロは……あまり変わらない」

「はうっ!? ま、まだ伸びるもん!」

 

 コンプレックスをルーテシアに静かに笑われ、ショックを受けるキャロであった。

 部屋に案内してもらい荷物を降ろすと、テラスにてメガーヌが淹れた紅茶を飲みながらエリオとキャロ今まで起こった事件について話す。

 

「獣人にマラネロ……」

「何か思い出せる?」

「ううん……」

 

 エリオの問いかけに首を横に振るルーテシア。スカリエッティの元に長くいたルーテシアも、マラネロについては全く知らなかった。

 

「ごめん、力になれなくて……」

「気にしないで、ルーちゃん」

 

 落ち込むルーテシアをキャロが励ます。JS事件時はルーテシアもマラネロもスカリエッティの協力者という立場だったので、面識がないのは仕方ないことである。

 

「奴等はロストロギアなら無差別に狙ってきます。ここにはロストロギアはないから安全ですが……」

「大丈夫よ。ガリューやルーテシアのお友達もいるし」

 

 メガーヌの言葉にガリューが頷く。ルーテシアのお友達というのは、小型の召喚虫のインゼクトやこの世界の虫達だろう。

 魔力制限により地雷王や白天王等の大型の虫は召喚できないが、彼女の虫と心を通わせる能力は健在だ。

 

「はい。僕達も早くマラネロ達を捕まえます」

「頑張って、エリオ」

 

 エリオに優しく微笑むルーテシア。JS事件時のルーテシアは感情が希薄でほぼ無表情だったが、最近は段々と喜怒哀楽を表情に出せるようになってきた。

 エリオと2人、笑いあう姿は同年代ということもあり、仲のいい恋人同士にも見える。

 だが、このいい雰囲気がキャロの中の何かを揺さ振った。

 

 

◇◆◇

 

 

 模擬戦を終え、ティアナは木陰で休憩をしていた。因みに勝負の結果はどの分隊も全滅による敗北であった。

 しかしながら、旧六課時代ではスターズとライトニングのフォワード4人でなのは1人と戦うのがやっとだったことを考えれば、スバルと2人で相手取れたので十分進歩したといえる。

 

「お疲れさん」

 

 そこへ六課のヘリパイロット、ヴァイス・グランセニックがドリンクを持ってやってきた。

 ヴァイスは現在武装隊にも狙撃手として所属しており、エースとしての腕前を持っている。そのため、同じ射撃タイプの後輩のティアナのことを何かと気にしていた。

 

「ありがとうございます」

「で、執務官勉強の方の調子はどうだ?」

 

 差し出されたドリンクを受け取るティアナに、ヴァイスが気に掛けたもう1つのこと。彼女の目標は執務官であり、そのための勉強も仕事の合間にこなしているのだ。

 

「ええ、フェイトさんがよく教えてくれるので」

「そりゃ結構だ……が、トレーニングも疎かにすんじゃねぇぞ?」

 

 現役執務官のフェイトの教えはティアナにとって非常にありがたいものだった。

 しかし、フェイトですら執務官試験に2度も落ちていることから、やはり一筋縄ではいかないのだろう。

 また、執務官はデスクワークが多くなってしまいがちで、どうしても体力が落ちてしまう。ヴァイスの見立ては正確で、実際にティアナはバテるのが少し速くなっていた。

 

「わ、分かってますよ」

 

 問題点を的確に突かれ、焦ってしまうティアナ。しかし、それだけヴァイスが自分のことを気に掛けてくれていると思い、何故か嬉しくもなるのであった。

 

 

◇◆◇

 

 

 ティータイムを終え、エリオ達はルーテシアの提案で野草を摘みに行くことにした。

 

「この辺りのハーブはいい香りがするのよ~」

 

 と言い、メガーヌはエリオに巨大な籠を渡した。ガリューも行くようで、既に籠を背負っていた。怪人が野草摘み用の籠を背負っているという聊かシュールな光景が広がっているなぁ、とエリオは考えていた。

 

「ルーちゃん、どっちが多く採れるか競争しよう?」

「面白い……受けて立つ」

 

 そして、隣ではキャロとルーテシアが火花を散らせていた。仲のいい2人だが、好敵手意識は少なからずあるようだ。

 

「勝ったらエリオとデート」

「ええっ!?」

「いいよ!」

「よくないよっ!?」

 

 勝手に賞品にされ、戸惑うエリオを余所に2人の少女は盛り上がっていた。

 

「あらあら」

「どうしてこんなことに……」

 

 娘達のやりとりを微笑ましく見守るメガーヌ。1人状況が全く理解出来ない内に話が進んでしまい、エリオは困惑した。

 そんなエリオを不憫に思ったのか、励ますように肩を優しく叩くガリューであった。

 

 森に入ると、3人と2匹はそれぞれ分かれて野草を摘みに行った。

 

「この勝負……もらった」

 

 キャロとの対決は、この周辺のことをよく知るルーテシアが有利だった。薬草の種類も把握しており、次から次へと順調に集めていく。

 

「これは……あっ、こんなのもあるんだ~」

 

 しかし、キャロも自然保護隊に所属していた時の知恵があり、負けていない。生えている薬草と自身の知識を照らし合わせ、こちらも支障なく採集していった。

 

「ガリュー、これは大丈夫かな?」

 

 ただ1人、エリオは野草の知識に乏しいので薬草集めに慣れているガリューに聞きながら採っていた。言葉を喋れないガリューだが、首を縦か横に振ることで意思疎通を図っている。また、キャロの相棒のフリードリヒもエリオに協力していた。

 後々、「ガリューやフリードリヒのようにエリオに教えながら摘んだ方が好感度も上がってよかったのでは?」と、キャロとルーテシアは後悔することになったとか。

 

「大分溜まってきたなぁ……あっ!」

 

 そろそろ籠の半分くらい摘んだ時、キャロはある光景を見つけた。

 

「この辺は無人だから狩り放題だな」

「管理局が来る前に早く済ませちまおう」

 

 森の中、しかも無人世界に似合わぬ怪しげな2人組の男達が話し合っていたのだ。小太りの男は捕獲用の機械の点検をしているようで、もう1人の背の高い方の男は質量兵器である猟銃を担いでいる。この男達が密猟者であるとキャロはすぐに察した。

 このような自然豊かな世界には珍しい動物が数多く存在する。それ等を捕獲し、高値で売ろうという者が後を絶たないのだ。管理局によって自然保護区域に指定されているにも関わらず、密猟者はやってくる。このカルナージも例外ではかった。

 

「どうしよう、フリードはエリオ君と一緒だし……」

 

 いつも連れているはずのフリードリヒも今はエリオに付いている。質量兵器を持った密猟者達を後方支援担当のキャロ1人で相手にするのは難しい。だが、召喚魔法を使えば相手に気付かれる可能性が非常に高い。

 

「とにかく、エリオ君に連絡しなきゃ……」

「キャロ?」

 

 草陰に隠れ、気付かれないよう静かにエリオへ連絡しようとするキャロ。丁度その時、何も知らないルーテシアがやって来てしまった。

 

「ルーちゃん、しーっ!」

「?」

「誰かいんのか!?」

 

 慌ててルーテシアを草陰に引き込むが、彼女の声に密猟者が気付いてしまった。

 

「管理局です! 武器を置いて大人しくしてください!」

 

 気付かれたからには仕方がない。キャロは密猟者の前に現れ、管理局員の証を見せた。

 

「なっ!? って、ガキじゃねぇか」

 

 時空管理局と聞き慌てる男達。しかし、キャロを子供と見てすぐに焦りから小馬鹿にする態度へと変わる。

 

「子供でも局員です!」

「甘く見ないほうがいい」

 

 状況を把握したルーテシアもキャロに加わり、2対2となる。

 

「へっ、罠の中だってのに偉そうだな!」

 

 小太りの密猟者は手に持っていたリモコンを押した。すると、キャロ達がデバイスを起動させるよりも先に周囲に仕込んであった機械が作動する。

 

「これは!?」

「まさか……!」

 

 機械は周囲に特殊なフィールドを張り巡らせているようだった。2人はこの体に走る違和感に覚えがあった。まるで内側から力を奪われるような感じ。

 

「どうだよ? AMFの感じは?」

「へへっ、あの怪しい科学者から高い金出して買った甲斐があったな」

 

 そう、密猟者の仕掛けた罠はガジェット達に装備されているAMFの発生装置だったのだ。密猟者達の発言から察すると、例の科学者マラネロから買ったものの可能性が高い。

 不意打ちによりデバイス起動すら行えなくなってしまった2人に、背の高い密猟者は猟銃を向けた。

 

「大人しくするのはそっちだったな、局員のお嬢ちゃん達」

 

 銃口を向けられ、身動きの取れないキャロ達を小太りの男が縄で手首と足を縛り上げる。

 

「へへっ、コイツ等まだガキだけど中々上物だぜ」

 

 薄汚い笑みを浮かべてキャロとルーテシアを見る密猟者。どうやら2人も売り飛ばす気でいるようだ。

 

「そうだな。だが、売る前にコイツ等には吐いてもらうことがある」

 

 猟銃を持った密猟者がキャロの綺麗な桃色の髪を掴み、顔を近付ける。

 周りに無精髭を生やした口元が醜い笑みを浮かべ、思わずキャロは嫌悪感を覚え眼を背けた。

 

「まだ仲間がいるんだろ? ソイツの居場所を吐け」

 

 無人地帯を局員が2人、しかも少女のみが見回っているはずもない。他にも仲間の局員がいるであろうことは明白だった。

 勿論、キャロもルーテシアもエリオを危険な目に晒すようなことはしない。小さな口を

への字に曲げ、断固として喋ることを拒否した。

 

 キャロ達から十数メートル離れた草叢の影、エリオは密猟者達を見張りつつ2人を救出する策を考えていた。

 現在エリオがいる位置はAMFの範囲外だが、キャロに猟銃を向けられている今は下手に動くことが出来ない。

 

「キュク~……」

 

 主人のピンチにフリードリヒが悲しそうに鳴く。エリオは安心させるようにフリードリヒの頭を優しく撫で、何かを待つように現場を睨んでいた。

 その一方で、エリオと一緒にいたはずのガリューが気配を消しつつ、着実にAMF発生装置を壊していく。マフラーを靡かせ、木岐を渡って機械を破壊していく様は、まるで特撮のヒーローのようだ。

 AMFの発生装置が壊れされていることに、魔力器官"リンカーコア"を持つキャロとルーテシアは気付いていたが、魔法を扱うことの出来ない密猟者達は気付かない。ガリューは順調に次の装置へと飛び掛かる。

 だが、装置の真横に野兎が飛び出し、ガリューは慌てて攻撃を逸らす。間一髪、野兎は無傷だったが今ので大きな音を立ててしまった。

 

「何だ今の音は!?」

「オイ!? 煙が上がってるぞ!?」

 

 ガリューは野兎を逃がしてから機械を破壊するが、時既に遅し。

 密猟者達はガリューの物音、更に設置しているはず場所から上がっている煙から、何者かによってAMF発生装置を壊されていることに気付いた。

 

「チッ! いつの間に!?」

「ダメだ、リモコンも利きやしねぇ!」

 

 突然の事態に驚く密猟者達。しかし、装置はまだ全てが破壊されたわけではなく、猟銃もキャロに向けられたままだ。

 

「余計な真似しやがって!」

「キャロ!!」

 

 計画を狂わされて怒った背の高い密猟者が、キャロを殺そうと猟銃を構える。焦ったルーテシアが叫び、キャロは恐怖に目を瞑る。

 一瞬、脳裏に映ったのは赤毛の少年の姿。そして、乾いた銃声が森の中に響いた。

 

「大丈夫? 2人共」

 

 しかし、銃弾はキャロに届くことはなかった。代わりに、目の前に現れた少年は特徴的な赤毛と白い上着を風に揺らし、電光を纏わせた青い槍を構えている。

 間一髪、エリオが自身のアームドデバイス"ストラーダ"で猟銃を斬り裂き、弾道を逸らしたのだ。

 

「エリオ君!」

「エリオ!」

「フリード、2人の縄をお願い」

「キュクル~!」

 

 助けに来てくれた槍騎士に歓喜の声をあげるキャロとルーテシア。そこへ、遅れてやってきたフリードリヒがキャロ達を縛っている縄を噛み千切ろうとする。

 エリオは2人の無事を確認すると表情を一変し、密猟者達を睨む。

 

「自然保護法違反、質量兵器の無断所持、公務執行妨害……そして、2人を傷付けようとした罪で、お前達を逮捕する!」

 

 普段は温厚なエリオの怒りが珍しく爆発していた。ストラーダを振り回して構え直し、卑劣な密猟者達へ激昂する。

 

「やれるモンならやってみろ!」

 

 使い物にならなくなった猟銃を捨て、今度は拳銃を乱射する密猟者。

 

〔Sonic move〕

 

 しかし、電気を帯びた高速移動でことごとく躱していく。AMFへの対処法はガジェットとの戦闘で既に慣れていた。

 フィールド外で魔力を結合させておけば内部に入っても魔法が多少使えるが、行動にも制限時間が生じる。エリオは素早く終わらせることにした。

 

「はぁっ!」

 

 高速移動をしたまま槍の柄で拳銃を叩き落とし、背の高い密猟者の背後に回り込むと強く蹴り上げる。

 

「ぐぁっ!?」

「まだまだぁ!」

 

 続いて前方に回り込み、その速度のまま蹴り飛ばした密猟者より高く飛び上がる。

 

「紫電一閃!!」

 

 そして、雷を纏った拳を密猟者の腹に容赦なく叩き込んだ。鍛えられた怒りの一撃に加え、雷のダメージもあり、密猟者は苦しみながら意識を手放した。

 残った小太りの密猟者も逃げようとしていたところを、AMF発生装置を破壊し終えたガリューによって捕らえられた。

 その後、逮捕された密猟者はエリオ達の通報を受けた局員によって連行された。幸いにも被害はなく、これにて一件落着である。

 

「エリオ君、さっきはありがとう」

「あ、うん……」

 

 キャロは先程のエリオの活躍を思い出し、改めてお礼を言った。その姿は囚われの姫を助ける騎士のようで、格好良さに思わず頬を染めてしまう。エリオもまた、急に照れ臭くなり顔を赤くしてしまった。

 

「さぁ、帰ろう?」

「え? ちょ、ルー!?」

 

 そんないいムードを壊すように、ルーテシアがエリオの腕を引っ張って行った。彼女も囚われの姫の位置にいたはずだが、美味しい役目をキャロに取られて不満であった。

 

「む~、エリオ君待ってよ!」

 

 負けじとキャロも空いている腕に抱き付く。この3人の関係に決着が着くのは、まだまだ先のようだ。ガリューとフリードリヒは肩を竦めながら3人の後に続いた。

 因みに、野草摘みはガリューとフリードリヒのアシストがあったエリオが勝ったそうだ。

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