魔法戦記リリカルなのはWarriorS   作:雲色の銀

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第32話 セブン・シンズ争奪戦

 狼獣人の出現から数日が経った。マラネロの弟子、ウィネとエリゴスはそろそろ次の作戦の実行へ移ろうとしていた。前回の戦いでは、ウィネはなのはを、エリゴスはヴィータとシグナムを同時に相手にし、獲物の鹵獲まであと少しまで迫っていた。しかし、あろうことか師匠であるマラネロに呼び戻され、2人は渋々戦闘を中断したのだ。

 イレギュラーの狼獣人ことエドワードの調査も終え、いよいよ自身の研究対象を捕獲しょうと動く研究者達。

 

「……それで、今度は何用ですか? 師匠」

 

 しかし、その作戦を練っている矢先に再びマラネロからの呼び出しを受けていた。ウィネは人間態時の知的な雰囲気のまま、マラネロに要件を尋ねる。その隣では、エリゴスが面倒臭そうに欠伸を掻いていた。

 

「あぁ、前回君達の邪魔をしてしまっただろう? そのお詫びをしたくてね」

 

 マラネロは珍しくウィネ達の方を向き、しかしいつもの気色悪い笑みを崩さぬまま話し始めた。話の内容は至って常識的なのだが、相手がマラネロである為か妙に胡散臭く聞こえ、双方とも顔を顰める。

 2人の弟子の様子を気にすることなく、マラネロは床に置いてあった2つのアタッシュケースをデスクの上に置く。

 

「それと同時に、君達には別の任務をしてもらうよ」

 

 キーボードを操作し、マラネロは見やすいように大きなモニターにマークの付いた地図を映し出した。地図の場所である「第94観測指定世界」は、緑の少ない荒野と廃墟の残る世界である。どうやら、内紛によって世界内の生命が死滅してしまった後の世界とされるが、現状ではまだ時空管理局によって調査中だ。

 

「ここに6つ目のセブン・シンズが確認された。先日、アースに確認してもらったけど、本物のようだ」

 

 マラネロの説明通り、地図のマークにはセブン・シンズのものとされる魔力反応が確認されていた。魔力反応だけでは外れの可能性もあったのだが、今回はウィネ達が作戦を行っている間にアースが確認したので、間違いない。

 セブン・シンズ。その言葉の登場に、弟子達の眼の色が変わった。本来、彼等の目的はセブン・シンズという7つのロストロギアなのだ。その6つ目ということは、そろそろ全てが集まる時が近い。

 しかし、機動六課側もマラネロ達がセブン・シンズを狙っていることを知っている。もし、あちらにも発見されていたなら争奪戦になることは簡単に予想できる。

 

「そこで、君達の手助けにこれを預けるよ」

 

 マラネロは持っていたアタッシュケースの蓋を開く。ケースの中身を見て、ウィネとエリゴスは更に驚くこととなった。

 

「師匠、これは……!」

「ああ、「暴食(グラトニー)」と「嫉妬(エンビー)」だよ。封印はしてあるから安心していいよ」

 

 マラネロが持ち出したのは、既に確保したセブン・シンズだった。

 暴食を表す像は食のイメージがよく似合う豚を象っており、トパーズの黄色い輝きはどれだけ食べても満たされない「暴食」を表すかのような鈍さである。

 その隣、嫉妬を示すセブン・シンズは醜く狡猾な蛇の象とこれまたイメージによく似合っているが、マディラシトリンの橙色は最も醜い感情とは対照的に深く澄んだ輝きを放っている。これは、人間の心の奥底に眠るどす黒い嫉妬を比喩しているからだろうか。

 見れば見る程、美しいが不気味な像にウィネもエリゴスも息を呑んだ。当然、マラネロの手で封印を施してあるので、触っても効果は発動しない。

 

「これをどう使うかは君達に任せるよ」

「はっ! ありがとうございます!」

 

 アタッシュケースを受け取り、2人の弟子は師匠へ感謝の念を込めて頭を下げた。

 そんな弟子の様子に、マラネロは丸眼鏡を光らせながらニヤリと笑みを零していた。その内面では別の目的を潜ませていることに、誰も気付いていなかった。

 

 

◇◆◇

 

 

 一方、機動六課側も第94観測指定世界に現れたセブン・シンズを発見していた。

 この件について、はやては早速フォワードメンバーを会議室へ呼び出し、セブン・シンズの捜索作戦を実施するよう伝えた。

 

「今回はスターズ、ライトニング両隊に出動して欲しいんや」

「待って。確かにセブン・シンズは大事だけど、全員で行く必要はないと思います」

 

 はやての指示に、なのはが異議を出す。観測指定世界とはいえ、セブン・シンズ1つの捜索に10人ものフォワード部隊をフル出動させるのは戦力過多である。加えて、六課側の戦力を削いで、隊舎の方を襲撃されてしまったら元も子もない。囮を使って本丸を叩こうとするのは相手側の常套戦術でもあるので、なのはの心配は当然のことでもあった。

 しかし、はやてにもちゃんと考えがあるようで首を横に振った。

 

「セブン・シンズももう6つ目。相手側も残り少ないセブン・シンズを放っておかんやろし、どれだけの戦力を注いでくるかも分からん。こちらとしても、もう奪われる訳にはいかん」

 

 現在拘置所に収監されてるマラネロの弟子の1人、フォラスの発言からマラネロ側のセブン・シンズは5つであると判明している。残りたった2つのセブン・シンズを放ってはおかないとはやては踏んでいた。管理局としてもこれ以上奪われる訳にはいかず、今回のセブン・シンズは全力で確保すべきものである。

 

「それに、六課なら108部隊や315部隊にいつでも応援申請出来るから大丈夫やよ」

 

 仮に六課が攻め込まれたとしても交換部隊がしっかり控えている他、協力体制を結んでいる陸士108部隊や陸士315部隊がいる。セブン・シンズを放置して大戦力を送り込むはずはないと予想しているはやては、特に問題として考えてはいなかった。

 

「転送後は各分隊で別れて、敵部隊に注意しながら捜索に当たってもらいたい。他に質問はええか?」

 

 はやての呼び掛けに、全員が敬礼で返す。こうして、六課とマラネロ側のセブン・シンズ争奪戦が開始された。

 その頃、同じように陸士315部隊でも機動六課のセブン・シンズ捜索任務について話がされていた。

 ラウムは各オペレーターには緊急時の対応をマニュアル化して渡し、ギンガ達含む前線メンバーにはいつでも出動できるよう体勢を整えるよう指示を下した。

 

「と、いう訳だ。こちらのことは気にせず、お前はセブン・シンズを奪われないことだけを考えていろ」

〔あぁ、協力感謝する〕

 

 全ての状況を確認したラウムは、こちらの様子を旧友で六課の隊員でもあるエドワードに通信で伝えた。

 エドワードもラウムの言葉を信じ、素直に感謝した。が、相変わらずラウム本人の様子に違和感を感じていた。

 恐らく、エドワードが狼獣人としての本性を取り戻した時の対応を未だに悔やんでいるのだろう。エドワードは微塵も気にしてせず、寧ろ適切な対応だったと感謝すらしていた。しかし、ラウムにとっては許せなかったのだろう。

 

〔……これでチャラだ〕

 

 エドワードはフッと笑うと、突然ラウムにそんな言葉を掛けた。

 ラウムは一瞬、エドワードの発言の意味が分からなかったが、彼の意図に気付くと同じように口元を緩めた。

 

「……あぁ。お前の家族も、居場所も俺が守ってやる」

 

 エドワードに宣言し、通信を切ったラウム。そこへ、チンクが茶を持ってやって来た。

 約一月、ラウムの傍に付いていたチンクも、頼れる上司の悪癖に気付いていた。

 

「ラウム殿は、一人で何でも抱え込み過ぎです」

 

 チンクは空いた左目でラウムをジッと見つめる。ラウムの悪癖は、自分を疎かにしすぎることだった。仲間を大事に思い規律を守る誠実な男だが、その反面で自身の失敗を許そうとせず、時には命すら軽視する程だ。ラウム自身の危うさに、チンクは何度も冷や冷やさせられてきた。

 

「もう少し、自分に優しくしてください」

「自分に優しく、か……世話を掛けるな、チンク」

 

 チンクの淹れた茶で一服したラウムは、無意識の内に彼女の頭を撫でていた。

 チンクはナカジマ家では次女という立ち位置だが、体型はどういう訳か十代前半かと思う程小さい。

 内面は姉妹の中でも落ち着いているのだが、それでも体系が原因で幼く見られるのは気分のいいものではなかった。

 しかし、何故かラウムにだけは頭を撫でられても悪い気がしなかった。

 

「おっと、済まない」

「あ……いえ」

 

 無意識に頭を撫でていたことに気付き、ラウムは手を引っ込める。実は、ラウムもまたチンクに対し他の誰よりも心を許していた。その結果、今のように馴れ馴れしい行動を取ってしまったのだ。

 チンクはラウムの手の感触を少し名残惜しく感じながらも、普段通りのしっかりした雰囲気で受け答えした。

 

 

◇◆◇

 

 

 第94観測指定世界に転送されたフォワード部隊達は、まず同時に各デバイスに送られた地図データを確認していた。

 ところが、早くも部隊長のはやてにすら予想出来なかった事態が起こってしまった。

 

「えっと、反応が1、2……」

「4つあるな」

 

 エリオが数えている横でヴィータが即答した通り、セブン・シンズの反応が4つに増えていたのだ。それぞれ反応の場所は離れており、廃墟でもある為にどの場所にあるのか一目では判別しづらい。

 捕えたセブン・シンズの反応は他のロストロギアの場合もあるので、どれか外れが混ざっているのだろう。最悪、全てが外れの可能性もある。

 

「どうするの、はやて」

「これは……どれかが罠やろなぁ。まぁ、別れて探すしかない」

 

 フェイトが指示を仰ぐと、流石に反応が分散することは予想外だったはやては苦笑しながら答えた。この内のどれかは恐らく、マラネロが仕込んだ罠であるだろう。

 しかし、全員で回る余裕はない。5人ずついる両分隊を更に手分けした場合、3人と2人に別れることになる。

 

「このメンバーで分けるとなると……私はスバル、ソラトとでいいかな?」

「んじゃ、アタシはティアナとだな」

 

 スターズでは、遠距離タイプであるなのはが前に出て戦えるスバルとソラトと組み、逆にショートからロングまで戦えるヴィータは司令塔をこなせるティアナと組むこととなった。

 

「テスタロッサ。私はエリオとクラウンを連れていくが、いいか?」

「はい。キャロ、よろしくね」

 

 ライトニング分隊は接近戦で真価を発揮するシグナムが狙撃手であるエドワードと高速戦闘でどちらのフォローにも回れるエリオと、オールレンジで立ち回れるフェイトはフリードリヒに乗って動きながら、補助魔法でサポートするキャロと組んだ。各チーム配分が決まると、それぞれがロストロギアの反応を追い始めた。

 

「しっかし、このロストロギアの反応。相手も本気でこっちを嵌めに来てるな」

「皆、大丈夫でしょうか……?」

 

 司令室では、はやての補佐として残った人形サイズの小人、リインフォース(ツヴァイ)とアギトが状況の異変に対し呟く。

 彼女等は見た目こそ人間に近いが、融合騎(ユニゾンデバイス)と呼ばれる列記としたデバイスだ。古代ベルカの技術で製造され、使用者と融合することで内部から補助し能力を高める非常に高性能なデバイスだ。

 しかし使用するには適正が必要であり、更に融合事故等の様々な問題点から汎用性が低く、現在では使い手の少ない希少な存在とされている。

 

「いざという時はお願いね、2人共」

 

 4つもある反応の中、当たりは1つ以下。つまり敵は3つもロストロギアとそれを持つ強敵を待ち構えさせているということだ。

 心配する融合騎2人に、はやては笑顔で頼む。アギトは本来シグナムをマイスターとしており、リインフォースもはやてが従えるヴォルケンリッター達との相性は良い。いざとなったら2人をそれぞれヴィータとシグナムの元へ送り込むつもりだった。

 今はただ、そうなるような状況に陥らないことを祈るのみのリインフォースとアギトだった。

 

 

◇◆◇

 

 

 フォワード達が別れてから暫くして、最初に動きがあったのはスターズ分隊の隊長、なのはが率いる小隊だった。

 元は高層ビルが立ち並んでいたと思しき、廃墟の道を行くなのは達。だが、反応まであと少しまで来たところで、なのははスバルとソラトに止まるようハンドサインを見せた。

 

「……来る!」

 

 なのはは叫ぶと同時に、右上に桃色の防御魔法を展開。すると、間髪入れずに防御魔法へ何かが着弾し、少量の爆煙を周囲に漂わせた。

 何かが飛んで来た方向を見ると、既にクワガタ獣人と変身したウィネ・エディックスが背中の羽を羽撃かせながら、クワガタの顎を模したライフルをなのはへ向けていた。

 

「ほぅ、良く気付きましたね。流石、長年エースと呼ばれることはあります」

 

 縦に割れた口をカタカタと鳴らしながら、ウィネは低いエフェクトの入ったような声でなのはを称賛する。前回、自分と愛娘を狙った不気味な存在に、なのはは表情を険しくする。

 ソラト達も強敵の登場にデバイスを構え、臨戦態勢を整える。相手のことはよく知らないが、なのはが警戒する程の敵であることは分かった。

 

「2人は先に行って」

 

 しかし、なのはは戦おうとしていた2人に、ロストロギアの元へ行くよう指示した。

 3人で戦った方が倒す確率が高い。そのことはなのはが一番分かっているはずなのに、だ。

 

「あの人の狙いは私だから」

 

 杖を構え、その場から飛び立つなのは。ここで、ソラトはなのはの指示の意味が分かった。

 自分達の目的は、あくまでセブン・シンズの確保。ここでまとめて時間を潰され、ロストロギアを奪われれば元も子もない。

 

「行こう、スバル」

「うん。なのはさん、気を付けて!」

 

 なのはの言う通り、ソラト達はロストロギアの反応へ向かう。ウィネは発砲もせずにそれを見送り、同じ高さまで来たなのはを見据える。

 やはり、ウィネの狙いはロストロギアではなく、なのはの方だったのだ。

 

「任務優先とは、ご立派ですね」

「貴方には、貸しもありますから」

 

 なのははヴィヴィオやアイナを危険な目に合わせたこの男を、決して許すことが出来なかった。頭の中では冷静さを保ちつつ、闘志と怒りを燃やしてウィネを睨む。

 対するウィネも、前回あと一歩のところで逃した標的を再び得られるチャンスに喜びつつ、見逃がした歯痒さを忘れられずにいた。

 

「ウィネ・エディックス。貴方を逮捕します」

「出来ますかな?」

 

 不屈のエースオブエースと、不敵な怪物科学者。短い言葉を交わした後、上空で二本の刃と桃色と金の杖が激突した。

 そして、先行したソラト達の元にも更に敵の手が迫っていた。

 

「ソラトォォォォォッ!!」

 

 怒号を響かせながら猛スピードで迫ってくる相手を、ソラトは即座にフォルムツヴァイに変形させたセラフィムで迎え撃つ。

 次の瞬間、スバルの目の前で似た容姿の男2人が青緑と紅色の光を撒き散らしながら、大剣を交じり合わせていた。

 

「アース!」

 

 ソラトの元に現れたアースは、ソラトのフォルムツヴァイ「ウィングフォルム」と同じく足に紅色の魔力を纏わせ、宙に浮いていた。手に持った大剣型アームドデバイス「ベルゼブブ」は黒い刀身にホバーを出現させて魔力を噴出させながら、同じくホバーを噴出させているセラフィムと鍔迫り合いを繰り広げていた。

 ウィングフォルムとほぼ同じ姿こそ、ベルゼブブのフォルムツヴァイ「エアーフォルム」だった。

 

「ここで決着を付けてやる! ソラト!」

「くっ! スバル、先に行って!」

 

 本物(ソラト)を突け狙う偽物(アース)は怒りを剣に乗せ、激しく斬り掛かってくる。戦いを避けられないと悟ったソラトは先程のなのはのように、スバルをロストロギアの元へ行くよう言った。

 

「ソラト!」

 

 スバルの呼び掛けに答える余裕のなくなったソラトはアースの剣戟を避けつつ、浮遊してその場を離れた。アースもソラトしか視界に入っておらず、猛スピードで後を追いかける。

 残されたスバルはソラトの無事を祈りつつも、一人でロストロギアの反応へと全速力で向かって行った。

 同時刻、別の反応を追っていたヴィータ達の元にも敵の姿があった。

 

「テメェ……!」

「一人ずつ狩るのは面倒だが、まぁいい」

 

 敵の姿を見るや否や、ヴィータは蒼い瞳を大きく見開いて睨みつける。

 その相手、カブトムシ獣人ことエリゴス・ドマーニは獣人態のまま気怠そうな態度を示しつつ、手にはカブトムシの角を模した巨大な剣が握られていた。

 エリゴスとは初対面のティアナは、ヴィータの反応だけで敵が今まで相手にしてきた獣人とは格が違うことを察した。

 

「副隊長、あの獣人は」

「お前は手を出すな、ティアナ。コイツはアタシでぶっ潰す」

 

 ティアナが敵の情報を聞こうとすると、ヴィータは質問には答えずにグラーフアイゼンをエリゴスに向けていた。

 シグナムと2人がかりにも関わらず、二度も相手にして倒せなかった相手。尚且つ、自分達の大事な主の命すら狙う不届き者だ。ヴィータはどうしても自分の手で決着を付けなければ気が済まなかった。

 

「お前はセブン・シンズを追え。ここからなら、すぐだ」

「……分かりました」

 

 ヴィータの言葉に、ティアナは相手を自分の眼で分析した後、素直に頷いた。

 カブトムシ獣人は、恐らくは近接戦向けのタイプだ。ヴィータと戦っている横で、離脱した自分を追撃する確率は低い。

 ティアナが走り出すと、ヴィータとエリゴスは一気に間合いを詰め、互いの武器を撃ち合わせていた。金属をぶつけ合う轟音が鳴り響くが、ティアナは決して振り向かずクロスミラージュの示す地図を頼りに走り続けた。

 

 

 陸士315部隊の隊舎では六課への出動要請にいつでも対応すべく、緊迫した雰囲気を保っていた。

 特にチンクは部隊長の補佐官として普段以上の仕事を熟していた。何かあればすぐに気負おうとするラウムに苦労を掛けないよう、必死に努めていたのだ。

 

「さて、そろそろ六課の方の動きも見て……ん?」

 

 第94観測指定世界にいる六課の状況も確認しようとしたその時、チンクに念話が掛けられた。相手はラウムかギンガだろうか、と思ったチンクはすぐに応答する。

 

(どうも初めまして。ナンバーズ5番、チンク)

 

 しかし、相手はそのどちらでもなかった。

 相手を嘲笑うようなねっとりとした男性の声、そして自分のことをナンバーズと呼ぶ者。頭に響いてくる声を、チンクは最近一度だけ聞いたことがあった。

 

(まさか、マラネロ!?)

(ご名答。私がマルバス・マラネロだ)

 

 敵の本命にして、この事件の首謀者。マルバス・マラネロが直接チンクに話しかけていたのだった。

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