魔法戦記リリカルなのはWarriorS   作:雲色の銀

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第3話 再会

 市街地に突如出現した、馬の特徴を持つ怪人。

 理性もないまま暴れまわっていたその怪物は、高町なのはによって倒された。

 なのはが怪人を退治する光景は六課の隊舎内でも流された。モニターを眺めていた隊員達は脅威が去ったことに一先ず安堵する。

 

「今の、一体何でしょう……?」

「さぁ? 少なくとも、これから私達が関わりそうってことだけは確かみたいね」

「ちょっと、怖いですね」

 

 ティアナ、エリオ、キャロは帰って来た平和よりも怪物について考えていた。

 あんな異形の存在が何故、このミッドチルダに現れたのか。機動六課が再設立されたことも含め、今起きている事件の裏には何か得体の知れないものが潜んでいるのだろう。

 

「ソラト……?」

 

 ティアナ達がこれからの事件の展開を考えている中、スバルだけはなのはの活躍ですっかり隅に追いやられてしまった少年のことを見つめていた。

 

 

◇◆◇

 

 

 市街地の騒動から約1時間後。六課再設立の挨拶も無事に済み、フォワード達は懐かしい訓練場へ呼び出されていた。

 訓練着に着替えたスバル達を待っていたのは各部隊の隊長と副隊長。そして、今回から新しく加わるメンバー2人。

 その内1人は先程果敢にも獣人に挑み、敗北を喫した金髪の少年騎士だった。当然、全員が一部始終を見ていたので、見覚えのある姿にハッと気付く。

 

「よし、全員揃ったな」

 

 ヴィータの号令で、スバル達は姿勢を整える。こうして4人並んで隊長陣を前にするのも久しぶりだ。

 まず、口を開いたのはなのはだった。

 

「皆、久しぶりだね」

「はい!」

 

 にこやかに話すなのはに、元気よく返事をするフォワード勢。但し、連絡自体は結構頻繁に行われていたため、本当に久々に話すのは限られた組み合わせのみだ。

 

「早速だけど、今回六課が当たる事件についての説明をするね」

 

 なのははすぐに本題である、事件の概要を話し始めた。

 

「さっきの事件は覚えてるよね?」

「実は、このミッドチルダ以外でも同様の事件が起こっているの」

 

 なのはとフェイトから告げられた衝撃の事実。さっきと同じような化け物がミッドチルダだけにあらず、別の次元世界でも暴れているというのだ。

 この話はスバル達は勿論、ソラト達も初耳であったため驚きを隠せないでいた。

 

「敵の名は"獣人(じゅうじん)"。名前の通り獣のバケモンだ」

「奴等は人工的に生み出された生物らしいが、まだ詳しい情報が分からない未知の存在だ」

 

 次にスターズ分隊副隊長ヴィータと、ライトニング分隊副隊長シグナムから敵について説明される。都市部を襲撃した馬の怪人もこの"獣人"である。

 人工的に生み出された生物。このフレーズに反応したのは、戦闘機人であるスバルと、人造魔導師のエリオだ。未だに違法な実験で命を弄ぶ真似をする人間がいることに憤りを感じているのであった。

 

「獣人は度々ガジェットによく似たロボット、通称"ネオガジェット"を引き連れて行動してる。今のところは陸戦タイプと空戦タイプが確認されてる」

 

 フェイトの説明で次元世界各地に現れた獣人と共に、JS事件で使われていた機械兵器"ガジェット・ドローン"を思わせる意匠のロボットの写真が映し出される。

 管理局側で"ネオガジェット"と呼称されるこのロボットは内部構造もガジェットに似ており、"(アンチ)(マギリンク)(フィールド)"という魔力結合・魔力効果発生を無効にする結界魔法もガジェット同様標準装備している。

 現在確認されているネオガジェットは、タイプAと称される人型に近く4本の足を持つ陸戦型と、タイプBと称される小さなポットのような形状で黄色いセンサー部からサーチライトとレーザーを放つ空戦型のみである。

 

「敵の目的は、これ」

 

 なのはの操作でモニターに映し出されたのは、それぞれ色も形も全て違う七つの小像。共通点といえば、サイズと動物を模した宝石のような素材で出来た像であることのみ。

 

「ロストロギア、"セブン・シンズ"。全部で7つ確認されているんだけど、効力とかは一切詳細が不明。おまけに1つ1つで形が違い、場所も何処にあるか分からない」

 

 名前の通り、七つの罪をモチーフとしているような像はとてつもないエネルギーを秘めているらしい。

 が、実際に効果を記録した文献は発見されておらず、詳細は分からずじまい。挙句、見つけようにもセブン・シンズが放つ反応は他のロストロギアやエネルギー体に近く、反応を辿っても全く別のものだというケースが殆どなのだ。

 それでもこのロストロギアを探す獣人はしっかりと存在し、事件も確実に起こっている。

 

 

「それじゃ、次は新メンバーの紹介だね」

 

 なのはが次の話題へ移ると同時に、彼女の横にいた2人が前へ出る。

 

「陸士103部隊から、機動六課スターズ分隊所属となりました、ソラト・レイグラントです。よろしくお願いします」

 

 初めに自己紹介をしたのは、先程獣人と戦った少年だった。

 外見年齢はスバルやティアナと同年代で、何処か幼さを残した顔立ちながらも礼儀正しい姿勢で頭を下げる。

 

「同じく、陸士108部隊よりライトニング分隊へ転属となった、エドワード・クラウン。よろしく頼む」

 

 次に、スバル達よりも年上のような、落ち着いた雰囲気をまとった青年、エドワードが挨拶した。

 鋭い目付きと変わらない表情の為、初対面ならば近寄りがたい印象を抱かせる。

 ソラトとエドワード。対照的な2人の新たな仲間を、フォワード達は拍手で迎えた。特に、スバルは嬉しそうに2人を見つめていたのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

 隊長達からの連絡が全て終わると、訓練は明日からということで今日は解散となった。

 その代わりに新メンバーとの親交を深めるため、フォワード達は食堂で歓迎会をすることにした。

 

「ソラト。本当にソラトだよね?」

 

 食堂へ移動する間、スバルはソラトに親しそうに話しかけた。

 対するソラトも、スバルに優しく微笑みかけながら頷いた。まるで昔からの知り合いのように。

 

「うん。久しぶりだね、スバル」

「わーっ! ソラト久しぶりーっ!」

 

 彼が本当に自分の知っているソラト・レイグラントだと分かると、スバルは感極まって叫びながら抱き付いたのだった。

 突然の出来事に、ティアナ達は目を点にしてしまい、エドワードはこの展開を予想していたように苦笑していた。

 

「でも、急に六課に転属だなんて、ビックリしたよー!」

「あはは、ゴメンね。スバルを驚かせたくて、内緒にしてたんだ」

 

 掴んだ腕をブンブンと振って喜ぶスバルに、ソラトは完全に順応しきっていた。長年のパートナーであるティアナですら手を焼くスバルのスキンシップに対応出来ている辺り、本当にソラトはスバルと知古の関係のようだ。

 2人で勝手に盛り上がっていると、そろそろかとエドワードが割って入った。

 

「お前等、再会を喜ぶのはいいが外野を置いてけぼりにしすぎだ」

「あ……」

「ごめんなさい」

 

 エドワードの言葉で、呆然としていたティアナ達に漸く気付いたスバル達は頭を下げる。

 丁度食堂に付いたので、注文を終えて席に着いてから改めてスバルとソラトの関係を説明することとなった。

 

「ソラトとは、小さい時からの幼馴染なの」

 

 予想通り、ソラトはスバルと幼い頃からの付き合いだった。

 まさか幼馴染同士、同じ部隊に配属されるとは夢にも思っていなかったようだが。その証拠に、ソラトの前の所属は陸士103部隊で、スバルの姉のギンガとは違う部隊である。

 

「その証拠に……ほらっ」

 

 スバルがマッハキャリバーに移した写真データをエリオ達に見せる。そこには、無邪気に遊ぶ子供の頃のスバルとギンガ、そしてソラトの姿があった。

 はにかんだ2ショット写真や、共に旅行へ行った時の写真などたくさんあり、スバルの写真好きはこの時からだったようだ。

 相方のティアナは前々から嫌というほど聞かされていたようで、スバルの思い出話にウンザリしていたが。

 

「ティアナさん、ですね。スバルから話は聞いています」

「ティアナでいいわ。貴方の話も散々聞かされたわよ」

「あはは……よろしくお願いします」

 

 ソラトの方もメールなどのやり取りで相棒の話を聞いていたらしい。

 お互いにスバルの悪癖も知っている者同士。やや強引なスバルに手を焼いてるんだなぁ、と思いながらソラトは言葉を交わした。

 

「ほら、私よりアンタのこと説明しなさいよ。このままだと、スバルの写真を見せられて終わっちゃうわよ」

 

 ティアナの言う通り、スバルの写真を見せる手は相変わらず止まらない。今までに一体何枚撮ったのだろうか、ソラトも把握はしていない。

 歓迎会が写真暴露大会になる前に、ソラトは慌てて自身の能力などの説明に入った。

 

「えっと、さっきの戦闘を見ていたから分かると思うけど、僕は"近代ベルカ式"を使う騎士です」

 

 先程の馬獣人との戦いの通り、ソラトは近接戦闘を得意とするベルカ式の使い手だ。但し、古くから伝わる"古代ベルカ式"ではなく、"ミッドチルダ式"と交じることで発展した"近代ベルカ式"である。

 同じフォワードの中では、スバルとエリオが近代ベルカ式を扱っている。

 

「デバイスは"セラフィム"と言って、展開すれば大剣型になります」

〔よろしくお願いします〕

 

 ソラトが上着の内ポケットから青緑色に輝く長方形のクリスタルを取り出すと、そのクリスタルが電子音声で自己紹介をした。

 このクリスタルこそ、ソラトのデバイス"セラフィム"の待機形態である。

 見た目は同年代の一般男性と比べ、やや小さめで細身のソラトが戦闘となれば大剣を振るう騎士となるのだ。同じく小柄な少年ながら、大きな槍を扱うエリオは早速ソラトに親近感を抱いていた。

 

「獣人相手には手こずったが、ソラトの実力は確かだ」

 

 そこへ、エドワードが口を開く。確かに危ないところではあったが、未知の敵に一対一を挑める辺りに高い実力が伺えた。

 周囲が静かにエドワードの話を聞いているので、説明はそのままエドワードの番へと移行する。

 

「……俺はミッドチルダ式の狙撃手だ。使用デバイスはライフル型の"ブレイブアサルト"。普段は腕輪として身に付けている」

〔皆様、初めまして。マスターは不愛想ですが、仲良くしてください〕

 

 表情を崩さず、エドワードは自身の能力とデバイスについて説明する。制服の袖をめくると、右腕に巻いている腕輪から電子音声が聞こえて来た。

 ブレイブアサルトはセラフィムと比べ饒舌だが、主人に対してやや毒舌なところがあるようだ。

 

「エドワードさんは、スバルさん達とお知り合いなんですか?」

 

 その時、キャロが気になっていたことを聞いてみた。言われてみれば、2人のことをよく知っているかのような素振りだった。

 

「あぁ、108部隊の縁でな。ギンガやゲンヤさんを通じて知り合ったんだ」

 

 エドワードのいた陸士108部隊は、ギンガとスバルの父、ゲンヤ・ナカジマが部隊長を務めているので、その関係で見知った中だったようだ。

 しかも、ただの知り合いだけでなく、スバルとソラトからは実の兄のように慕われていた。

 

「エド兄はちょっと無口で無愛想だけど、すっごく優しいんだよ」

 

 2人が懐いている辺り、悪い人間ではなさそうだ。エリオとキャロはエドワードに内心怯えていたが、怖くないと知ってやっと落ち着いた。

 因みに、"エド兄"とはソラトとスバルが使うエドワードの愛称である。

 

「あ、出来たみたいね」

 

 2人の素性を理解したところで、注文の品が出来たようだ。

 量が多いので手分けして運んでいく最中、スバルはソラトの元に駆け寄った。

 

「これからよろしくね、ソラト」

「うん! よろしく!」

 

 満面の笑みで頷くソラトは、内に秘めた誓いを思い返していた。

 それはソラトがスバルに初めて出会ったあの夜のこと。自らを救ってくれたスバルを一生守る。その為にもっと強くなる。

 そして、越えなくてはならない目標の存在も。

 

「全員グラスは持ったわね?」

 

 ティアナの号令で、全員がドリンクの入ったグラスを持つ。

 

「それじゃ、再び集まったメンバーと、新しく加わった仲間に!」

「乾杯!」

 

 6人の新たなスタートを祝い、グラスを打ち合わせた。

 これから先の苦しい戦いも、力を合わせて乗り越えられると信じて。

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