超低速更新。
メインの絵描きの活動のサブでやってる二次創作のサブで書いていきます。
西暦2138年、DMMO-RPG―<Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game>―と呼ばれる、サイバー技術と脳内ナノコンピューター網……ニューロナノインターフェイスと専用コンソールを連結し……早い話が「まるで仮想世界で現実に居るかのごとく遊べる体感型ゲーム」である。
そのDMMO-RPGの中でも、特に「一世を風靡した」と行っても過言では無い程の人気を誇る一つのタイトルがあった。
現在から約12年前の当時の日本メーカーが満を持して発売したゲームである。
このゲームが何故ここまでの人気を博したかというと、当時のDMMO-RPGの中でも「プレイヤーの自由度が異様なほどに広い」という事が要因の一つとして挙げられ、そうした背景もあってか、日本国内において「DMMO-RPGといえばユグドラシルの事を指す」と言うほどの人気を博していったのだ。
……話は変わるが、いかに人気があるとは言え、ユグドラシルにはちゃんとした運営があるわけで、その運営で働く人もボランティアではない訳で、つまりはお金が入らないと運営も滞り無く行う事が出来なくなる訳で。
そういったお金はどこからやってくるのだろうか? 一つの方法として、広告や、グッズ、その他の”商品”を用意してそれを売ることが挙げられる。あるいは背後に巨大なスポンサーがある、とか。
だがその中でも最も直接的かつ明瞭で分かりやすい物が一つある。
『課金』だ。
無論ユグドラシルでも課金は存在した。課金ショップなる物で、有料アイテムをゲーム内のお金ではなく、現実のお金で購入するというもの。
それら有料アイテムは「痒いところに手が届く」といった物から、無料で手に入る物よりも効果が高い物、あるいは無料では手に入らない、特殊な効果を持つ物といった具合だ。
ガチャといった要素も実装されており、娯楽の少ない時代、レアアイテムを求めて多額の金額を注ぎ込むプレイヤーも珍しくはない。
戦闘以外にも色々とできるゲームなので、課金力=強さという訳ではないが。
余談はともかく、そういった課金ショップとはこのユグドラシルの世界……つまりは”設定上”一体どういう扱いなのか。
制作会社の方針としては、プレイヤーには試行錯誤して”未知”を楽しんでもらうというコンセプトで制作されたゲームであるので、つまりはその未知の”答え”もなにかにつけて用意されているものだ。
それは課金ショップであっても変わらない。
そもそもプレイヤーは”どうやって”課金をするのかについて説明をしよう。
まずガチャであるが、これはプレイヤーがコンソールを開けばいつどこでも引けますよという結構雑な作りではあるが、それらしい設定として「リアルマネーという別世界の通貨に秘められた力を使用することにより、かつてユグドラシルという世界樹を襲う巨大な魔物によって失われた世界の産物を蘇らせる事が出来る。ただし、それがなんなのかは、蘇らせてみなければ分からない」
といった設定を説明するフレーバーテキストがゲーム内に存在する。
では課金ショップとはなんだろうか。
無論、リアルの世界に店を構えているとか、専用ホームページでリアルマネーを支払うことでゲーム内の自分のアカウントに購入したアイテムが届くとか、そんな事はない。
ここにも”それらしくなるような工夫”が成されているのだ。
まず、課金ショップはリアルではなくゲーム内に”商人NPC”として存在する。
事前にリアルマネーを支払う事でチャージしたポイントを消費する事で有料アイテムと交換が可能というシステムで取引する訳だが、無論彼ら商人NPCに設定が無いはずもなく。
それも、”彼ら”と言うだけあって課金ショップの商人NPCは一人ではない。
例えば、世界樹の祀る聖堂で祈りを捧げる巫女として、リアルマネーでチャージしたポイントという
特殊技能によって、そういった失われし産物を元の形に戻す事を生業としている、という設定の商人。
そういった産物の中でも釣りや農業といった戦闘に全く関係ない物を専門に扱う、という設定の商人。
探索に役立つアイテムをゲーム内通貨、その上位版を課金による通貨で売る者。
アンデッドの闊歩する地で散っていった冒険者の亡骸からそのような遺物を回収し、それを売る商人というかなりダークな設定のNPCまで存在していた。
そして、ユグドラシルというゲームの世界において存在している9つの葉の世界の各地を渡り歩き、どこからか仕入れた貴重な産物の数々を、行く先々で出会った冒険者を対象に取引を行うという”行商人”という知る人ぞ知るNPCも存在していた。
彼らすらも未知の地で発見する要素の一つであり、その全てを把握するのは至難の業であるし、「このNPCが売っているアイテムを買うといいよ」といった情報は全てプレイヤーが自分で調査していくことだ。
クエストや文献で手に入れた情報を統合して、点と点を線で繋ぐ事で、ようやくその真実が明らかになるといった、説明が殆どされないNPCも存在する。
ユグドラシルの世界において、「ここはこうしろ」といった決まりも、「ここは確実にこうだ」という情報も、全ては試行錯誤と未知の冒険による、価値ある宝なのである。
◆■ 第一話【プロローグはいくらですか?】 ■◆
私にはうっすらと前世の記憶がある。
年齢や、何をしてどう生きていたのか、細かい事は覚えていないが、確かなのは、自分が女性であるという事と、最期は全身に強い衝撃を受けて死んだという事。ただそれだけであった。
そして、いつの間にか私は私になっていた。
ゲームの中のNPC、その中でも、行商人NPCという位置づけで作り出されたデータ上の存在、それが今の私であるらしかった。
何故それを理解しているのかは分からない。
ただ漠然と、「そうあれ」とされているからとしか分からない。
名をリティス・トゥールと言う、あらゆる世界を彷徨う女商人。夜を切り取ったかのような真っ黒なローブを羽織り、その下には改造された上下のスーツを着込む。彷徨う事で得た遺物から復元せし財宝もとい商品の数々を詰め込んだ黒く輝く魔法のトランクケースを手に、今日も世界を彷徨う。
彼女の目的は、ただ財宝を売り捌きながら、貯めた金でまた財宝を手に入れ、それを売り捌く事であり、金が貯まるという事そのものに興奮を覚える難儀な性的嗜好、敢えて言葉にするなら、貯金性愛を持っている。
ちなみに、こう見えて子供好きで、懐に飴玉を常備している。
……これが私に「そうあれ」と決められた、いわゆる私と言う”キャラクター設定”である。
この設定に従って、私は今日も今日とてこのゲームの世界を歩き続ける。
ゲームだからか、肉体的な苦痛はない。疲れも、痛みも、それどころか風や衣擦れや自分の鼓動すら感じない。
時々遭遇するプレイヤーに、「クックック……見ていくかい?私の財宝を」と話しかけ、商談し、済めばまた歩きだし、時々「綺麗だな」とか「凄いな」とか思った風景があったらそこで少しだけ立ち止まり、飽きたらまた歩き出す。
それを繰り返す日々に不満が無いと言えば嘘になる。
実際に「そうあれ」とされている以上、私はお金も好きだし子供も好きだ。
だがプレイヤーの中に子供なんて全く見られないし、居ても中身はオッサンである事がほとんどだろうし、そもそも私には決められたテキスト以外の言葉を喋る事は許されていない。
貯めた金にしたって、歳を食わず、飲食すらしない私に貯金が必要かと言えば首を傾げざるを得ない。そんなエモート無いけれど。
唯一の楽しみと言えば、景色が綺麗なところで休憩する事位なものだ。
まぁ、要するに何を言いたいかというと……とても退屈だ、という事である。
しかし、今日この日、私はこの退屈な日々から一転する転機……私がNPCとして登場するゲーム、ユグドラシルの”サービス終了”という転機を迎える事になるのだった。
その日も、私はゲームの世界を歩いていた。
今日はとある町を通り抜けたのだが、なにやらプレイヤー達が皆騒がしかった。
あえてそれを言い表すとすれば、祭りのような何かとでも言ったところか。
皆が皆、普段とは全く違う様子だった。
意味不明な言葉の羅列を並び立てる者。
実は俺、から始まる告白または暴露大会。
ありったけの花火を買い込み、街中でそれを打ち上げる者。
そして、顔を覆いながら、さめざめと泣く者。
そうして聞いた彼らの「今日で最後だからなぁ」という寂しそうな声で、私はようやく知ったのだ。
あぁ、このゲーム、終わるんだ、と。
考えてみれば当たり前の事ではあるのだが、これが何かしらのオンラインゲームである以上、どんなに栄えていたとしてもいつかは時代の流れと共に客足は遠のいていき、最後にはサービス終了してしまう。
そして、このゲームが終わると言う事は、この世界でNPCとして存在する私の役目が終わる事と同義であり……それはつまり、私という存在が、その理由が消えると言う事に他ならない。
この世界が終わる事に恐怖は……ある。
だが既に一度死んだ命だ。
むしろこのゲームの世界で得たおまけのような時間を得た事で、記憶が無いなりに整理はついたつもりである。
役目が終わったというなら、是非も無し。
データ上のNPCという役目を終え、無駄に意思を持ってしまったNPCとしての私は今度こそ無に還るのだろうと思い、しかし、最期まで役目を全うする為、私は歩き続けた。
気付けばどことも知らぬ森に囲まれた街道に出ていた。
ふむ、こんなところにこんな道があっただろうか?転移門でも踏んでしまったか。罠という訳ではなさそうだが。このまま誰にも知られぬまま、最後の時まで一人でひっそりというのも私らしくて、いや、このキャラクターらしくて良いじゃないかと思い、私はその街道を歩くことにした。
一つ失敗した事があったとしたら、今日の何時にゲームが終わるのか、という情報を聞きそびれた事である。
0時キッカリに終わるのか、深夜4時まではやってくれるのか、はたまたもっと早いのか。
私はこの世界に来てから時計というものを持ったことが無いので知り得ないのだが、最期の瞬間がいつ来るか分からないというのは色々と不都合である。
まぁ、その時が来れば分かるだろう。
じわじわと痛みを感じながら消えるとかじゃなければいいが、と下らない事を考えながら私は道を歩く。
おかしい……私がそう思ったのは見ていた方の向こう側の空が、徐々に白みがかって来た時である。
今日終わるハズではなかったのか?彼らと私はとんでもないデマに騙されまんまと踊らされてしまったのだろうか?
だがそれにしてもおかしい。
何故なら、周りが段々と明るくなっていくにつれ、それが今まで歩いていた森のそれではないという事がハッキリと理解でき、全く別の場所に迷い込んでしまったかのようだという事が分かったからだ。
さらに言うと、いつの間にか私には今までは感じなかった心臓の鼓動が、表情の有無、服と肌が擦れる感触、ズシリと確かな重みを感じる身体と荷物、一歩踏みしめるごとに、ブーツ越しに感じる地面の感触。明け方の冷たい風が身を撫でる感触……それらが、まるで今まで通っていなかった神経が、心臓の鼓動と共に血流が運ばれ、その役目を思い出したかのように。
生きている、その事実がハッキリと感じられる事。
何かが変わったのは間違いない。
何かが終わり、何かが始まったのだ。
異変に対する疑念は尽きない、だが、それでも道を歩き、とうとう見た事も無い街に辿り着いてしまった時には、すっかり朝になってしまっていた。
私は辿り着いた街の検問所らしい場所を見つけ、とりあえず、街の様子を見てみてからどうするか決める事にした。
――――――――
それは、夜の世界から迷い込んできたかのような、真っ黒な女だった。
見たことの無い、直角なカバンらしきものを手に持ち、長く艶やかな黒い髪、同じく真っ黒な瞳、しかし全体的に整った顔を、そしてそれが無ければ女性だと思わなかっただろう女性らしさを強調する胸、頭の先からつま先まで黒々しい装備を身に纏う、女商人と自称する彼女は、朝方に突然現れ、「入るにはどうすればいい?」と聞いてきた。
入るには身分を証明する物と、銅貨が二枚必要だ。と言ったのだが、何故かそのまま首を傾げられてしまったので、「銅貨が分からないって訳じゃないだろう?これだこれ」と言うと、その女は困ったように顔を伏せ、何か考える素振りを見せた後、苦笑いでこう言った。
「自分は商人なのだが、生憎道中でモンスターに襲われ、身分を証明する物を失ってしまった。残るはこのトランクケース……いや、この魔道具に入った物しかなくてね……悪いがこれで入れてくれないか」
……怪しい女だと思った。
だが、手に持たせられた物を見て驚愕し、それが銅貨2枚なんてはした金で買えるようなものではない、キラキラと光る装飾の施された”金貨”であり、恐らくは装飾の、金としてだけの価値で、自分のような者が一生でそれを目に出来るかも怪しいほどのもの。
本物なんて見たことは無かったが、ズシリとした重みが、黄金に輝くその光が、間違いなく本物の金であることを訴えていた。
しかも、それが3枚もあるのだ。
誰かに見られてしまう前に、慌てて懐に仕舞い込み、彼女に道を開けた。
「ど、どうぞお通り下さい!」
「どうもありがとう。次はちゃんと身分証明をする物を持ってから来よう」
そう言って笑う彼女は、最後にご苦労様と一言労うと、甲冑の胸の辺りを軽くぽんっと叩いて、軽やかな足取りのまま、街の中へと颯爽と去っていった。
「アレは一体何だったんだ……?」
間所で働く一人の兵士は、そう呟きながら、懐に仕舞った金貨が幻じゃない事を確かめるかのように手で弄び、その使い道を想いながらだらしなく笑うのだった。
――――――
リティス・トゥールは、まずこの街で情報収集をする事にした。
本屋でもあればと思ったが、どうもそれらしいものは見つけられず、他の方法を考える事にした。
……最優先で解決すべきはお金の問題。
門番にユグドラシル金貨を渡した際の反応を鑑みるに、今までの金貨は使えそうになさそうだという事が判明したのだ。
それだけではなく、その門番の男から見せてもらった銅貨。
あれにリティスは全くと言っていいほど見覚えが無かった。
早急に解決すべきは、相場の把握と、そういった銅貨等のこの街での貨幣の入手である。
そしてどうするか少し考えて、人通りの多い場所を目指すことにした。
出来れば、武具を装備した者の往来が多いところ……冒険者なんかが多く訪れそうな場所が良いのだが。
そこに行くまでに気付いたのは、どうもこの街は中央に商店が、物流が集中して居るという事であり、街の名前は城塞都市エ・ランテルというらしい事と、この街がリ・エスティーゼ王国という国の国領にある街である事だった。
どれも行くまでに客寄せをするおじさんおばさんの「さぁよってらっしゃいみてらっしゃい!~~~が買えるのは、ここエ・ランテルでもここだけだよ!」とか「リ・エスティーゼ王国屈指の~~~が買える~~~はうちの事さ!さぁ見てらっしゃい!」とか言っていたからだ。
調査する手間が減った。
私は頭のメモ帳にこの国での貨幣の価値や、飲食物や装飾品などの相場をメモしていく。
「やあ、ちょっといいかな、おじさん」
「ん?なんだ?」
私はこの国における商売がどのように行われているのか、そのシステムを雑貨屋のおじさんから聞き出してみることにした。
金がないので、お近づきの印に、と、パッと商店街を見渡して「これなら渡しても問題ないだろう」という程度のマジックアイテム、【スモールボトル・オブ・リキュール】という……まぁ言わばお酒の入った、小綺麗な小瓶。
中に入っているのは、「一定時間、使用した相手を泥酔状態(弱)にするが、雪原地帯等の極寒の地での温度によるバッドステータスをある程度緩和する」というアイテム。
泥酔になると。プレイヤーであれば視界がぐにゃぐにゃと揺れてとても酔う。モンスターにも効果があり、小瓶を投げつけて中身をぶち撒けると、同じく泥酔状態にすることができる。
まぁ、状態異常に耐性があるならそうそう泥酔状態になどならないのだが。
技能があれば火炎瓶の材料にもなる優れものだ。
おじさんには「水で割って飲んでください、とても強いので」と言って渡し、おじさんは小瓶を一嗅ぎすると、次の瞬間、強いアルコールの匂いに驚き、少し口に含んで見ると、カァッと赤くなった顔でくしゃりと微笑み、とても喜んでくれた。
「私は見ての通り遠いところからこの国にやってきたんだ。この国で商売をしたいんだけど、そういう時ってどうすればいいのかな?」
「あん? そんなもん、好きにすればいいよ。場所と、格好さえ整っていれば、次の日からは露店商人さ。やっちゃダメな事……禁制品だとかを売らなければ、特に制限は無いと思っていい。あとは、そうだな、商人ギルドのお墨付きが降りた店の前じゃない、とか、周囲の商人の人へのマナーがなってりゃ、誰も文句言わないさ」
「なるほど、どうもありがとう。あ、ついでに空いてる場所に心当たりがあれば教えてくれるとありがたいんだけど」
「それは流石に分からないな。まず、何を売りたいかによるだろ。自分の足で、自分の店に合いそうな場所を探すんだな。まぁ、メインの通りは空いてないだろうけど」
「そうかい、親切にどうもありがとう」
「いいってことよ、良い酒も貰ったしな」
良い人で助かった。名前を聞き忘れたけれど。
そういえば、いつもは私に話しかけるプレイヤーが自分で購入する商品を選んで買うので考えていなかったが、今回は自分で人に売る商品を考える必要があるのだと今更気付く。
それに、この市場をパッと見た印象からして、前のように最高品質の物を売るわけにもいかない。
ガチャの大当たり枠で手に入る願いを叶える指輪とか、不眠不休で動けるようになるネックレスや、毒を無効化する腕輪も、種族が人間から悪魔に変わってしまう魔道具も、売りに出したら大騒ぎになってしまうかもしれない。そういうのはもっと、貴族とか、大金持ち相手にしか見せない方が良いだろう。
そういう相手になら装飾品の類は売れるだろうか? 売れるとしても、買い叩かれないように相場を理解した後にしなければなるまい。
一般的な市民に対して売れるのは、先ほどの酒の小瓶とか、何の効果もない、みてくれだけの剣だとか……役立つ魔道具や魔法の武具も売れるだろうか?
ともあれ、方向性として、ここでいう私の店のターゲット層は「冒険者、あるいは戦闘を生業にする者」だ。
どうやらこの世界にも存在するようだし、彼らが喜びそうな、しかし市場が崩壊しかねない物を除く、それでいて、売れそうな、そういった物を売る必要がある。
私は少しメインの通りから逸れて、鉄の剣だとか、メイス、革の鎧なんかが出されている露店市場にたどり着いた。
聞けばこの辺りは冒険者組合の近くでもあるらしい。国の騎士や兵士等は武具は専属の鍛治師でもいるのかもしれないな。
私はその市場の空いている場所に……隣り合ったイカツイおじさんに先ほどと同じ手を使った後、そこに露天商を設けた。設けたと言っても時間は殆どかからない。何せマジックアイテムを使えば済む事だからな。
「うおおっ!?」
「なんだそれ、マジックアイテムかっ!?」
「ええ、私の家宝です(嘘だが)」
マジックアイテム【
黒を基調とした紫をアクセントに異国情緒溢れるアジア風の模様が繊細に編み込まれた絨毯の魔道具で、小さな木の棚と共に、座布団、そして、これは飾りだが、黒い布に覆われた何かが配置される。本当はテントがよかったんだが、大きいものとなると場所が足りなかったため仕方ない。
見た目は完全に『怪しい商店』。だが、人はこういう怪しい物に「好奇心」を覚えてしかたのない生物であることも事実である。別の言い方をすると「怖いもの見たさ」ともいう。
それに、このマジックアイテムはただの絨毯に見えるが、強盗対策として、商品を盗んだりしようとすると警報音が鳴るようになっているという便利な代物だ。街でしか使えないと言う欠点があるが。
「……あっ!見た目はこんなんですが、ただの雰囲気づくりで、禁制品なんかは一つも扱っておりませんので、安心してくださいね」
「お、おう」
まぁ禁制品というのが何かは知らないんだが。恐らくは、麻薬とか、ドーピング剤とかだろうな。
「なんか面白そうな店が出来てるぞ」
「まだ準備中だってよ、明日来てみるか」
「マジでえ?ちょっと怖くね?」
「なんだよ、ビビってんのか?」
「ビビ、ビビってねーし!!」
お化け屋敷ではないんだが……まぁいいか。ニーズに応えて呪われた武具でも置いといてやるか。
こうして、私が露店に商品を並べ終わる頃には、武具の露店が集まる市場の一角に、やたら黒々とした怪しさ満点の露店が爆誕したのだった。
現在、時系列的にはモモンガ様が
「アイツら、マジだ!(ビコーン)」
とかやってた次の日位を想定していますが後で変わるかもしれません。