クソ眼鏡は光を求めた 作:コズミック変質者
「か、かっ・・・ちゃん?」
舞い散る血が出久を染める。とめどなく流れ吹き出る血が世界を染める。鍛え上げられた肉体は剣によって腰まで容易く切り裂かれ、心臓は一刀両断され、破壊されている。
ふらり、と体が揺れる。バランスを崩し、自らが作り出した赤に仰向けに倒れる。血で濡れた体が更に赤く染め上げられる。
「かっちゃん・・・!かっちゃん・・・!」
歯を食いしばって身体を引き摺り、芋虫のように這って勝己へ手を伸ばす。出久の手が勝己の頬に到達する。血の気がなくなった、冷たい肌。それは生者の色にあらず。生命を失った色に変貌した。
「ね、寝ているだけなんだよね?個性の使いすぎで疲れただけなんだよね?ちょっと無茶しただけなんだよね・・・?」
身体を揺する。当然、反応はない。
出久の瞳から大粒の涙が血溜まりに零れ落ちる。何度も何度もとめどなく。
「ほら、いつもみたいに怒りながら僕のことをデクって呼んでよ。いつもみたいに悪態をついて立ち上がってよ。ねぇ、いつも・・・みたいに・・・」
声が震える。言葉が掠れる。もう声は届かない。爆豪勝己はそこにはいない。もう二度と、勝己の声は聞けない。勝己の身体を揺らす手、出久の声が止まる。
「やだよかっちゃん。かっちゃんがいなくなるなんて、そんなの・・・!」
爆豪勝己はいつだって緑谷出久の憧れだった。幼い頃、無個性だった出久。強力な個性だった勝己。オドオドした性格と豪快な性格。水と油のような関係で彼らは存在していた。
勝己にとって出久は人生の道の石ころでしかなかった。でも出久にとっては、勝己はいつだって憧れで、ヒーローだった。
出久は知っている。勝己がみんなの何倍も何倍も努力してきたことを。裏では誰よりも、自分に厳しかったことを。いつも言っていた、頂点になる、一番になる。それは自分への戒めだと、出久は知っていた。
背中しか見れなかった。オールマイトから個性を引き継いでも、追い越せたように思えない。隣に立てたとしか思えなかった。どんなにすごく成長しても、勝己はいつも、出久の前に存在していた。
「・・・審!」
痛みを堪えて立ち上がれ。手足が動かなくても動かせ。敵を倒すまで倒れることは許されない。
出久は正しくないかもしれない。光ある未来は審の描く未来に存在するのかもしれない。いや、するのだろう。誰もが未来を見て進める光の世界が、審の理想の先にはあるのだ。きっとその世界はヒーローも、
「巫山戯るな・・・!」
認めない。そんな世界を緑谷出久は認めない。誰もが未来を見て努力し続ける世界。嗚呼、言葉にすればなんて素晴らしい世界だろう。努力し、成功すればプラス何点。怠ければマイナス何点。
何もかもが正しさという点数で評価される世界。そんな世界はクソくらえだ。人は正しく居続けることは出来ない。オールマイトでさえ完璧な正しさはなかったのだ。
それは無限の如く強いるなど、それは輝く世界とは言えない。人を努力の、光の奴隷に陥れる行為にほかならない。
正しく居続けられないから人なのだ。正しさの中に迷いも悪もあるから人でいられるのだ。
ヒーローとして矛盾していると言われればそうだろう。そんなことは百も承知。矛盾しようがどうしようが、緑谷出久は光の奴隷を認めない。
「行くぞ・・・!勝つのは僕だ!」
出来ることは、ただ己の信じた
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「ぉぉぉぉオオオオオオオオオオ!!!」
『
「全く・・・こうもままならないとはな」
対する審は呆れながら迎え撃つ。大剣を拾う暇などない。武器に固執する必要もない。大剣がないなら拳で戦え。拳がないなら脚で戦え。脚がないなら頭で戦え。輝く未来を求める限り、
(単調な。速さはあってもまともに当たらなければ———これは・・・!?)
振られた拳を余裕でパン!と逸らす。同時に審の顔が歪む。審が使った技術は衝撃を完全に逸らし、逸らした手に来る衝撃を0にする、特殊な格闘術。審が本気の末に、とある武術家に頼み続け、教えを受けられたもの。
「バカな・・・!なんだ・・・」
審の手に鈍い痛み。手は鈍器で殴られたように痛覚を脳へ伝えていく。だが戸惑っていても行動は止まらない。逸らし、横から反対の手を突き出して出久の手首を掴み取り、一本背負いで投げつける。
「ウゥっ!」
出久が地面へ背が当たる前に、その二本の脚でイナバウアーで大地へ踏ん張る。あまりの投げの勢いに脚が地面に少しだけ埋まるが、これはチャンスとなる。
「ハァァァアアアアアア!!!!!」
「有り得———ゴァッ!」
そのまま、力技で身体を起こして審を地面へ叩きつける。審は言葉を言い切る間もなく地へ叩き付けられ、口から血を吹き出す。
「まだだ・・・!」
折れたであろう背中の骨に気を使う余裕など既に審から消えた。想定外の出久の一瞬での成長は、審から余裕を完全に奪っていった。
脚を出久の足に絡めとり、そのまま関節技でキメようとする。だがその寸前、またも力技で投げ飛ばされる。
地面を何度も転がる。三半規管はグチャグチャになり、急激に気分が悪化する。着ていた軍服は何箇所も破れ、そこから血が滲んでいる。骨もたった数瞬の戦闘で何箇所も折れてしまった。
一瞬で満身創痍になった審。だがその瞳に輝く闘志は一分も衰えずに爛々と輝き続けている。
「は、はは、ははは、はははははははははは!!!素晴らしいぞ緑谷君!幾度も努力を重ね限界を超えてきた君が、とうとう、とうとうあの人を超えたぞ!!」
拳を受けて理解した。対面して直感した。緑谷出久は至り超えたのだと。誰も到達出来ず、空に浮かぶ月のような手を伸ばし、重ねることしか出来ない場所に、緑谷出久は足を踏み入れたのだ。
「あぁ、やはり爆豪勝己を斬り捨てたことは間違いではなかった!彼の成長と目まぐるしいものがあったが、君には及ばない!やはり君しかいないの!幾多もの困難を乗り越え、悲しみを踏み越えた・・・あの人のようなヒーローになれるのは、緑谷出久しか存在しないのだよ!!感謝するぞ爆豪勝己!君の死が、新たな光をこの世界に齎したのだから!」
近くに刺さっていた大剣を抜き、両手を上げて喝采する。これまでよりも盛大に、これまでよりも敬意を込めて。
無論、審は己の理想を忘れた訳では無い。だが素晴らしいではないか。今宵この時この場所で、先代の英雄を超えた英雄が、努力の果てに誕生したのだから。
嗚呼、素晴らしきかなハレルヤ。やはり努力は人を裏切らない。人は努力がなければダメなのだ。
「黙れ」
喝采する審を睨みつける。何が喜ばしいんだ。人が死んだんだ。勝己が死んだのだ。その死を、感謝だと?巫山戯るな巫山戯るな。そんな戯れ言認めない。誰かの死が感謝されるなんて、あってはならない。
ただ生きて欲しかった。そのためならこの個性をなくしても、出久は勝己に生きて欲しかった。
「オオオオオオオオオオ!!!」
大剣が振りかざされる。全力を超えた力を集約させた右腕で迎え撃つ。力はこちらが上。拮抗せずに押し抜くも、
だがその程度の痛みはもう慣れた。引こうとする脚を無理矢理進まれる。左腕に120%の力を込め、殴る。左拳は大剣にその道を阻まれ、すぐに引き戻す。同時に身体を沈め、ローキック。だがキックは審の足に当たらず、審は跳び、出久の頭にかかと落とし。
両腕を交差させてガード。そのまま力で弾き、同時に全身に個性を10000%で使用。これで決める。その意思を固め、両の拳を振りかざす。出久はもう戦いを引き伸ばすつもりは無い。ここで、今、審を倒す。絶対に。
「素晴らしい速さだな———まだ伸びてくれるか」
一発一発の拳は、常に進化している。力の込め方。力の伝導。単純な力の量。
だが忘れるなかれ。楽土審は光の奴隷。敵が強くなり、自分の力が及ばないのならばそこに辿り着くほど力を出せばいい。出せないのなら気合いを出せ、本気で本気を超えろ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
出久の拳と審の大剣が交わり会う。火花は焔と見間違えるほどに迸り、血はとめどなく宙へ撒き散らされる。
だが緩むどころか更に過激さを増していく両者の攻撃。彼らは防御など一切考えていない。ただ己の攻撃した所に
削れていく出久の両拳。ぶつかり合う、と言っても審の攻撃には全て
対する審も無傷とはいかず。出久の攻撃を受けたわけではないので。審は出久の拳を全て手に持つ大剣で相殺している。それが問題だった。出久の攻撃は左右の拳。攻撃範囲は狭いが手数は二倍。だが審は攻撃範囲は広いが一本の大剣だけである。だが得意の攻撃範囲はこの超近接では意味は無い。そして出久の攻撃を拳で受けようものならそれは大きな隙となってしまう。そもそも、成長し続ける出久の攻撃を、マトモに受けるわけにはいかない。結果、審は本気を出し続ける。そして己の身体が耐えきれず、自壊してしまう。
止められない。止まらない。もう二人は互いを倒すことだけに全てを注いでいる。それこそ、かつてのオールマイトとオールフォーワンのように。ただ一心不乱に己の全てを賭け、己の全てを以て。違うのは、二人とも誰かのために戦っていることだけ。
「はああああああああああ!!!!!」
「ハハハハハハハハハ!!!!!」
拮抗していく実力。突き放すことは出来ない。突き放そうとも成長すれば互いはすぐに追い抜いてしまう。正に無限の如き拮抗。致命傷はどちらも与えることは出来ず、ただ傷が増え、体力だけが減っていく。
「ギァッ———」
だが、それも終わる。人に無限はない。どんな力も必ず限界は訪れる。それは誰もが承知している、何においても当然の事実。故に大剣から身を守り続けてきた出久の右拳は、とうとうここに来て崩れた。
「フッ・・・!」
これは致命的すぎる。今この状況、かつてないほどに力を出している審の前では、少しでも無防備を晒すなど、自殺行為に等しい。
だが、死ねない。緑谷出久はヒーローなのだ。故に負けるわけにはいかない。
「うわぁあああああああああ!!!!!」
情けない声を出しながら、足をバネのようにして個性を最大使用。身体はバネのように跳ね上がり、審の大剣に自ら突き進んでいく。だが跳ねると同時に、突き出された左拳。さしもの審も、こんな状況で個性を使用するなど思っていなかったのか、眉がピクリと動く。
「スマァァァァァァァァァァァァッシュ!」
叫び、殴る。それだけで気合が入り、同時に無意識に力が増幅する。そして振られた拳は大剣とぶつかり合い、
だが、多大な効果はあった。
バキり。
軽い音と共に審の大剣が半ばから折れた。何年もそばに居て、審と戦ってきた武器がここに来て壊れた。だが審は武器に固執しない。折れた大剣を手放し、己も拳を握り、出久に拳打をいれようとする。
「グォっ———折れた切っ先を・・・!」
出久はすぐさま足元の大剣の切っ先を蹴りあげる。折れた切っ先は一直線に飛び、審の腹部に突き刺さる。だが審は止まらない。筋肉が迸り、逆に力が満ちていく。
「ヴっ———」
強力な右ストレートが出久の頬に入る。足に力を込め、仰け反る体を留まらせる。だがどうしてか、体が思うように動かない。力が完璧に入り切らない。
戸惑っているうちに何十もの審の拳打が出久を穿つ。同時に拳に付与された
「ふん!」
「ズバァっ」
二ーキックが心臓を穿つ。息が出来なくなり、呼吸困難で苦しみがます。同時に疲れとは違い、流れ出る嫌な汗。
反撃しなきゃ、反撃しなきゃ。でも身体は言うことを聞かない。
「これで———ッ!」
「うごぉっ・・・」
「終わりにしよう!」
強烈なアッパーが決まり、出久は衝撃を受けながら宙を舞う。空が近くなり、浮遊により身体の感覚がなくなる。それを認識した次の瞬間、視界には審がいる。
「ガッ———」
審の最大の拳が出久の心臓に突き刺さる。それは心臓を破壊するには十分な威力。出久は地へ落ち、更に上から
「ハァ・・・ハァ・・・」
出久を見下ろす審は肩で大きく息をする。それもそうだ。出久の個性の防御を上回る攻撃を放ち続け、限界以上に筋肉を動かして身体能力を向上させ、更には限界以上の
「まだだ・・・!」
崩れ落ちそうな膝に喝を入れる。勝ったという実感を得てしまったせいで、マトモに動くこともままならない。だが、倒れるわけにはいかない。叶えるべき理想があるのだ。救うべき世界があるのだ。それが叶うまで、審は倒れるつもりはない。
血を流した。だからどうした?意識が途切れそうなら本気で堪えろ。
身体が自壊した。だからどうした?痛いのならば本気で治せ。
筋肉が壊れた。だからどうした?これをバネに本気で鍛え直せばいい。
空を見る。空には数機のヘリコプター。本気で目を凝らして見れば、リポーターがカメラを見て何かを伝えている。恐らく、今のこの状況、審の勝利を知らせているのだ。
これで全てがようやくスタートラインに立てる。光ある未来にようやく辿り着ける。正しき者が救われる世界が、ようやく訪れる。
審はこの瞬間、確かな未来を手に入れた。
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まるで水の中にいるみたいだ。ふよふよと漂う感覚。手足の感覚はもうない。感じているのは、心。目を開けば真っ暗な世界。奥へ行けば行くほど、どんどん真っ暗になっていく。抗うことは出来ない。緑谷出久の魂は、暗い世界へ進んでいく。
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ヒーローがいる。何人ものヒーロー達が、
どんなに身体が壊れても、拳を握って立ち上がる。それはまるで審やオールマイトのように、カッコイイ。
みんな、邪悪と戦っていた。何人もの人達を殺してきた
それは個性の記憶。ワンフォーオールが紡いできた、歴代のヒーロー達。
光があった。どこまでも美しく、神々しく、力強い光が。見るものに希望を与え、力を与えてくれるその光は、いつだって誰かのために戦っていた。その光は、原初の憧れ。緑谷出久という存在が、初めて世界に抱いた憧憬。
『私が来た!』
画面越しに聞こえるその言葉は、
そして運命に出会えた。憧れの人から力を受け継いで、そこから全てが始まった。緑谷出久というヒーローは、そこから始まることが出来たのだ。
行かなきゃ・・・。
思い出す。そうだ、自分は審と戦って、審の拳と
そんなこと、認めていいはずがない。だから必死に起き上がろうと足掻く。でも足掻くだけ。深くまで潜りすぎた。
溺れるように沈んでいく。
意識はここでも途切れ、強大な眠気に身を委ねたくなる。
ここで、緑谷出久は終わるのだ。
『がんばれ!』
誰かの声が聞こえた。とても小さく、心細い声。でもその声はたしかに出久に届いた。だが、それだけだ。出久が目を覚ますことはない。
『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』
声が増えていく。倍々で増えていく声に、意識だけは開かれる。でも動かない。動けない。もうここで負けたのだと、緑谷出久は受け入れてしまった。
『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』
たくさんの声。世界中から届けられた、
(そうだ)
(まだ負けられない)
(僕はまだ、戦える!)
「———!」
声にならない雄叫びをあげ、見えた光へ手を伸ばす。だが深くまで潜りすぎた。どんなに手を伸ばしても、未だ届かず。光はまだ先にある。
トン、と誰かに背中を押された感覚。ふと後ろを振り返れば、そこにはアメリカンなヒーローコスチュームを纏い、力強く、みんなを元気づけさせる笑顔をしているヒーローの姿。
『行ってこい、緑谷少年!』
「オールマ———」
出久は言葉を全て話せずに、意識は覚醒へと至る。
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「バカな・・・」
審は目の前の現実を否定しようとする。だがどうしようもなく現実である。審は今、現実を直視している。それは———緑谷出久が立っているのは夢でも幻でもない。
「有り得ん」
頭蓋骨が陥没してもおかしくなかったはずだ。心臓が破壊されていてもおかしくないはずだ。
「なぜ立てる・・・!」
その声には歓喜が混じっていた。戸惑っているはずなのに、審の声は喜色が混ざる。嬉しいのだ。
「だが今だったところで———」
音を超えて審が移動する。その足さばきは縮地と呼ばれる奥義。一瞬で出久に接近。拳を構え、その身体に向けて放つ。即座に意識を、命を刈り取る拳は更に早い速度で出久の胸へとび、
「———!?」
宙を穿った。出久の身体が斜めに沈んだせいで、拳は出久に当たらずにそのまま空気を切り裂いたのだ。予想外の出久の回避に絶句するも、審は止まらずに二発目を放つ。
「グゥッ———!?」
今度も避けられた。それどころかクロスカウンターを当てられ、後ろへ押し飛ばされた。足を地面に押し付け、地面を削りながら後方へ吹き飛ばされる。殴られた肩にはかつてないほどの痺れが残っている。
「彼に、何が起きたと———」
言葉は最後まで続かない。審の縮地以上の速度で瞬間移動のごとき移動をした出久が、既に審の懐にいた。まさかの接近速度に、流石の審も肝を抜かれ、戸惑ってしまい行動がワンテンポ遅れてしまう。そしてその失態に気づいた頃にはもう遅い。
「1000000%———
DELAWARE———」
出久の拳に全てが込められる。それはかつての『ワンフォーオール』の所有者たちの全てが込められた究極の一撃。
意識が『個性』へリンクする。その事で更に『ワンフォーオール』は出久へ力を与える。100%や1000%ではぬるい。出久の今の力は、1000000%。
その力を見て、審は自然と頬が緩む。まるで何かを諦め、安心したかのように。
「嗚呼・・・やはり君は、私の———」
「———DETROIT SMASH!!!!!」
世界を揺らす一撃が、審の胸に突き刺さった。
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壊れそうな身体を必死に動かしながら、審の前へ立つ。出久の身体はボロボロで、最後の一撃を放った右腕はかつてないほどに破壊されている。それ以外も滅茶苦茶で、見ることさえ痛々しい。
積み重なった瓦礫の山に、審は背中を預けていた。大量に吐血したのか、口元は真っ赤になり、軍服も血で染まっている。顔も生気が失われ、生きているのか判別することも難しい。
「僕の勝ちだ」
「そうだ、君の勝ちだ」
前に立ち、宣言する出久に審は笑って話す。その顔に悔いや苦痛は感じられない。むしろこれ以上ないほどに清々している。
「ああ、信じていたとも。君なら私を倒せると。君なら私の理想を超えられると」
審は知りすぎていた。光も闇も、善も悪も。だからこそ、光を求めた。正しいことを知っていたから。そしてそのすぐあとに、光に目を焼かれたのだ。歪んだ審というヒーローのルーツは、世界最高のヒーローが与えたものだった。審の思想は危険なものだ。それこそかつて審が葬った『ヒーロー殺し』以上に。
だからこそ、審を止める人が必要だった。誰もがそう思った。本人である審でさえも。
だが審は止まれない。審は自分を止めたいが、それ以上に止まることを許さない。だからこそ出久に賭けたのだ。彼ならば、本気を出した審でも止めてくれると。
そのために成長させた。試練を与え、苦しませ、大切な友まで奪った。その果てに、出久は審を止めたのだ。
こんな結果、出久が喜ばないのは重々承知している。それでも、審は出久に救われて欲しかった。正しき者が報われて欲しかった。
審とてヒーローなのだ。正義を愛し、悪を許せないヒーローなのだ。ただその思想が過剰なだけで。
「私が負けた以上、私の部下達は戦闘を停止し、各々撤退するだろう。彼らのことは追わないで欲しい。皆この社会に想いがあっただけなんだ」
敗者の懇願が惨めだと理解している。だが、彼らは審が巻き込んでしまっただけなのだ。
出久が静かに頷くのを確認すると、審は安堵する。
「行け。君はこれからの社会の英雄となる。辛いこともあるだろう。悲しいこともあるだろう。たくさんの悲劇を目の当たりにするだろう。苦痛はこれ以上になるだろう。それでも———」
「止まらないでくれ。救いを、光を求める者達のために」
そう言うと、審はゆっくりと目を閉じた。優しく冷たく、穏やかな寝顔をしている。彼はもう目覚めない。彼はもう喋らない。彼はもう動かない。審は負け、敗者となって死んだのだ。
審から離れていく出久。彼の道筋には、幾多もの透明な雫が落ちていた。
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楽土 審が起こした革命は、日本に大きな変化を与えた。
正義の、ヒーローの在り方。悪の、
審は己と、爆豪勝己を中心とした数多の犠牲の果てに、より良き社会を世界へ提示した。
世界は初め、犯罪者と認定された審の言葉を聞かなかった。だが緑谷出久という平和の象徴の働きかけが、社会に大きな変化を齎した。
世界は確実に平和になった。審の目指した
この度はクソ眼鏡×ヒロアカ短編を読んでいただきありがとうございます。
今作のオリキャラ、楽土審はシルヴァリオ・トリニティの
完璧なギルベルトを求めて読んでいた方々、申し訳ありませんでした。
それでも自分なりに光の奴隷感を出せていたと思っています。
次回作の予定は今のところありませんが、もし書くのならばとある3期を記念して
その時はどうぞ、よろしくお願いします。