邪神系女子のワンピ生活   作:菅野アスカ

9 / 10
☆9評価をしてくださったヘスティアさん、四季の民さん
☆5評価をしてくださった凱龍さん
ありがとうございます!



わたしはなに

「…お前がぶっ飛ばしたせいで、斬り損ねた」

「ハチさん、しっかりしてください」

「ニュ~…お前ら、とんでもないことしたな…」

「…ま、仕方ないわね。ルフィのやることだし」

「ですね」

 

リアルな付き合いが短い自分でも、それくらいはよくわかった。

原作知識に加え、ダイジェスト部分の詳細まで知った今、もうそれしか言えない。

 

「…さて。あとは…」

「何としても、ケイミーを助け出しましょう!一度手を出しちゃいましたから、これ以上手を出しても変わりません!」

 

笑顔で言い放つと、周囲の人々が小さく悲鳴を上げた。

既に、ゾロやサンジ、フランキーたちは、迫りくる衛兵たちをなぎ倒している。私もちょっとくらい、羽目外していいよね?

 

「行くよ、七星剣」

 

呟いて、すっかり愛刀になった七星剣を抜く。

ここ数ヶ月で、剣の腕も随分上がったと思う。両刃のこの剣でも、ある程度手加減できるようになった。…はず。

 

…あらら。もうちょっとしか残ってない。残念。

 

「えいっ!」

 

近くに来た衛兵の足を狙い、斬撃。

そこまで深く切ってはいないけど、立てないだろう、たぶん。

 

「ぐうっ…!『海軍大将』と『軍艦』を呼べ!!!」

 

サンジに銃が仕込まれた杖を蹴り飛ばされた、えーっと…名前なんだっけ、忘れたから天竜人(父)でいいや。そいつが吼える。

 

「この世界の創造主の末裔たる我らに手を出せば、どうなるか!!目にものを見せてやれ!!!」

 

客たちはいっせいに悲鳴を上げ、驚くほどの逃げ足の速さを発揮して逃げだした。

天竜人にとって、人命は尊いものではない。彼らにとって、尊いのは自分たちだけなのだから。

 

…さあて、そろそろ来るかな?

 

天井から轟音が聞こえる。よし、グッドタイミング。

落下してきたのは、もちろんウソップだ。そして…

 

「うわあああああああああああああああああああ!!!」

「ギャアアアアアアアアア!!!」

「お父上様~~~~~~!!!!!!!!!!」

 

はい、見事天竜人(父)の上に着地。

天竜人(娘)さんや、高貴なお嬢さんがその顔はどうかと。

 

「ナミさん、みんな集まりましたよ!」

「よし、じゃあサッサとケイミー助けて逃げましょ!急がないと海軍が来ちゃう!!」

 

「…海軍なら、とっくに来てるぞ…麦わら屋」

 

その声は、やけにはっきりと聞こえた。

声の主は、ハートの海賊団船長、「トラファルガー・ロー」だ。

 

「オークションが始まる前から、海軍が会場を取り囲んでる。最悪の世代がここまでそろってると、誰を捕まえたかったのかわからねェが…まさか『天竜人』がぶっ飛ばされるとは思わなかったろうな」

 

そう言ってから、実に楽しげに笑って、面白いものを見せてもらったと続けるロー。

対するルフィは…

 

「何だ?その白熊」

 

それは今言わなきゃいけない事か、ルフィ。こんなこと言っても無駄とはわかってるけど。

見ろ、ハートの海賊団クルーの皆様、「まあ、そうだよね…初見なら気になるよね…」って感じの微妙な顔になってるぞ。

 

「えっと、確か、トラファルガー・ロー…死の外科医、でしたっけ。同じ海賊だよ、ルフィ。で、向こうのチュ…逆立った髪の人もね、海賊。ユースタス・キッド」

 

チューリップ頭と言いかかって、飲み込む。

 

「ええ!?ルフィさんより懸賞金が上だという、あの!?」

 

ブルックが戦慄する。

 

「へー、じゃあそっちのクマもか?」

 

無言でうなづく白熊、もといべポ。

あの巨体に対して抱くべき感想ではないかもしれないけど…可愛い。

けれど、和んでいる場合じゃない。天竜人(娘)が、ケイミーに銃を向けている。撃つ気満々だ。

 

正直言うと、私はあまりシャボンディ諸島編を覚えていない。「ケイミーさらわれてレイリーがおいしいとこ持ってってくまに分断された」程度なのだ。インペルダウン編が面白すぎたのが悪い。あとエースが死んだのも。あれのせいで、うちのお母さんワンピース買わなくなったんだからな。

 

…話が脱線した。それでつまり、何が言いたいかというと。

たぶんレイリーさんがケイミーを助けてくれるんだろうなとは思うんだけど、バタフライエフェクト起きるかもしれないし普通に心配だから助けたい。

 

「なっ!?おやめくださいシャルリア宮!!」

「うるさいアマス!!」

 

止めようとする司会を、一喝して撃つシャルリア宮。

 

「さあ、魚…死ぬアマス!」

 

銃を構え直す。自衛のためか、それとも趣味か、奴隷のしつけのためか、かなり銃を撃ちなれているように見える。

 

私は、腰を落として、深く息を吸う。もちろん、七星剣を握りしめたままで。

余計な力を抜いて、けれど足はしっかりと地面を蹴る用意。

 

シャルリア宮は、引き金に指をやる。安全装置などとうに外され、あとは撃つだけだ。

 

ポンと、純粋な瞬発力でまっすぐ前へと跳ぶ。あいにく私は縮地など使えないけれど、速度と瞬発力なら自信がある。

力のゾロと、速度のブルック。2人の剣士を間近で見てきたけれど、非力な私には、速度を磨く方が合っていた。

というわけで、私の得意分野は速度の剣である。

 

あと少しで、届く…その瞬間に、ぞわりと悪寒がした。

 

慌てて七星剣を床に突き刺し、止まる。今のところ、ブレーキがなかなか効かないのが悩みどころ。

 

見る間にシャルリア宮は気を失い、倒れる。

そして、会場の奥からは、1人の老人…うん?

 

「ほら見ろ、巨人君、ズェピア。えらい騒ぎだ。オークションは終わりだ、金も盗んだし、ギャンブル場へ戻るとするか…」

「相変わらず賭けが好きと見える」

「あわよくば、私を買ったやつからも盗む気だったが」

「それは無理があるだろう。何も知らなければ、お前のような老いぼれを買う酔狂な奴は確実にいない」

「はは、違いない!!」

 

ちょ…巨人とレイリーさんと一緒に、ズェピアさんまで出てきてる!?

待機場所でもあったんだろうか…

 

「何だ、あの巨人と男と老人…!?」

「ありゃ商品じゃないか!!どうやって錠外して檻を出た!?」

 

「おやおや、ずいぶん注目されているぞレイリー」

「ああ、そうだな」

 

レイリーさんはゆっくりと視線を動かし、ハチを見つけた。

 

「ハチ、久しぶりじゃないか。…ふむ、なるほど。君たちが助けてくれたわけだ」

 

1人で納得して、そう言うレイリーさん。

 

「…少々ギャラリーがうるさいな。黙ってもらおう」

 

ズェピアさんはそう言うと、すうっと右腕を前へと伸ばす。

その途端、彼から何かが…覇王色の覇気が発せられ、耐え切れないものは次々と倒れていく。覇気習得済みですかそうですか。

 

「おや、この距離で食らって耐えられるとは…大したものだ、お嬢さん」

「ど、どうも」

 

※現在地=あと数歩でケイミーの水槽。余裕でレイリーさんと会話できる距離。

 

それから、レイリーさんはルフィに話しかける。

 

「…その麦わら帽子は、精悍な男によく似合う。会いたかったぞ、モンキー・D・ルフィ」

 

「D」の部分を少し強く言ったのは、わざとだろうか。それとも、無意識にだろうか。

 

驚くルフィたちを尻目に動くのは、ズェピアさん。

ただ、立って歩く。それだけなのについ目が行くのは、素晴らしく姿勢がいいからだろうか。

歩いた距離は、ほんの数歩。ちょうど私の目の前で止まった。

それから、胸に手を当てて。

 

「お初にお目にかかる。…ああ、初でもないか。まあ、今はそれはいい。私はズェピア・エルトナム・オベローン、この世界を見届けるもの。あなたの名を訊ねよう、当代の落とし子殿」

 

…落とし子?

本来の意味であれば、落とし胤と同じ意味。けれど、クトゥルフ的な意味であれば、それは…

 

邪神たちが生み出す、奉仕種族。

 

思い当たる節はいくつもある。

例えば、私の肩にある奇妙な模様。入れ墨でもペイントでもない、いくら洗ったって落ちないそれ。

後からついたものではなく、元々そうなっていたものだったとしたら?

私の体は、やけに頑丈だし、人より傷の治りが早い。

それが、漫画補正でもなんでもなく、自分自身の機能だったとしたら?

 

ならば、私は。

わたしは、なに?




さあSANチェックだ
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SANチェック

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