輪廻の花弁   作:社シロ

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タイトルが個性ではなく、力というね……。


輪廻の力

『今日は俺のライヴにようこそー! エヴィバディセイヘイ!!』

 

 頭に響く声で会場全体を包み込むのは、今回の説明役で参上したプロヒーロー『ブレゼントマイク』。

 個性のヴォイスを使って、全員に自身の声が届くように話しているのだろう。

 輪廻は面白い個性だ、と思いながらも余りのうるささに顔を少し顰める。

 

『こいつぁシヴィー! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディー!?』

 

 こうして説明されたのは、今回の試験における概要。

 手元の要項が載った書類に視線を落とし、プレゼントマイクが言った言葉を反芻する。

 演習場には“仮想敵”を三種・多数配置しており、それぞれの「攻略難易度」に応じてポイントを設けてある。

 自身なりの“個性”で“仮想敵”を行動不能にし、ポイントを稼ぐのが主な目的。

 そして他人への攻撃等、アンチヒーローな行為はご法度。

 実に簡単な説明だ、だが手元の書類を見ればプレゼントマイクの言葉とは違い、三種ではなくポイント0の四種目のギミックが載っている。

 確かこれはお邪魔用の仮想敵だったか、薄くなった記憶を引っ張り出したところで、眼鏡の学生が四種目の質問をした。

 どうやら、輪廻の記憶通りお邪魔用だとプレゼントマイクは言う。

 

『俺からは以上だ! 最後にリスナーへ我が校訓をプレゼントしよう』

 

 説明を終えた最後に、プレゼント・マイクが言い放つ。

 醸し出されるプレゼントマイクの空気は、説明時とは異なり何処か挑発しているようにも感じた。

 それは輪廻だけではない。会場の全員が肌で感じ、息を呑み緊張が場を支配する。

 

『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!』

 

Plus(更に) ultra(向こうへ)!!』

 

 身体が震える。心が熱を帯び、四肢に力が漲ってきた。

 静寂が漂っていたはずの会場からは、確かな熱気と一人一人の溢れる闘志を感じとれた。

 

『それでは皆良い受難を!!』

 

 その一言を皮切りに、皆がそれぞれの試験会場(戦場)へと、動き始めた。

 

 1

 

 会場に着くと、全員が動き易い服へと着替え、スタートの合図を準備運動などしながら待っていた。

 斯く言う輪廻も、スポーツウェアのポケットに手を突っ込んで、目を閉じ感覚を研ぎ澄ませている。

 雑多の声が僅かに聞こえるが、集中し始めるとそれは聞こえなくなった。

 まるで深い海に沈んでいるかのように、静謐な感覚が内から膨れ上がる。

 このまま何処までも沈んでしまいそうになった時、合図は放たれた。

 

『ハイスタートー!!』

 

 ────串刺し公(カズィクル・ベイ)

 

 刹那──花弁が空を舞い散り、地面が隆起し鋭利な杭へと変貌した。

 

「なっ!?」

 

 他の受験者が声を上げ動きを止めて驚くが、尚も杭は増えていく。

 その数は尋常ではない速度で増えていき、道路を埋め尽くした所で止まった。

 出来上がったのは杭の山、杭には無残な姿へと変えられてしまった仮想敵が無数に突き刺さっており、目に広がる光景は他の受験者達に悍ましさを植え付けた。

 串刺し公。それが今の個性の名前であり、その能力は『半径二十メートル以内の物質を鋭利な杭に変える』というもの。

 殺傷能力においては、それなり高いものだと輪廻は自負しているが、それ故に、常日頃から扱いに注意している能力の一つだ。

 

『此奴ァスゲェーなオイ!』

 

 輪廻が個性を発動した所をあの高台から見ていたのだろう、人が豆粒程度にしか見えない程遠い所でも、今の串刺し公は目立つものだった。

 

『他の奴らも止まってる暇はねぇぞ! 実践じゃカウントなんざねぇんだよ! 走れ走れ! 賽は投げられてんぞ!!?』

 

 プレゼントマイクの言葉で我に返った他の受験者が、遅れて動き出す。

 さながら津波の様相を呈し、市街地の奥へと広がりながら進んでいく。

 だが、中には茫然自失としながら立ち尽くすものも、少なからず存在していた。

 輪廻が発動した個性を目の当たりにし、格の違いを悍ましさと共に刻み込まれてしまった者達だ。

 そういった者達はすでに諦めムードで、乾いた笑みを浮かべている。

 

(アイツらはもうダメだな……)

 

 立ち尽くす受験者を一瞥し、輪廻は新たな仮想敵を求め駆け出した。

 

 2

 

「彼凄いわね」

 

 そう漏らしたのは、18禁ヒーローのミッドナイトだ。

 SM嬢のような格好が特徴的なヒーローであり、彼女のデビュー当時はそのコスチュームが話題となって、それを機に政府が『コスチュームの露出における規定法案』を制定する事になったある種伝説の人でもあるヒーローだ。

 ミッドナイトが向けるモニターには、輪廻が映っていた。

 画面の中の輪廻は、まるで敵の位置を予め分かっているかの如く動き、出会いざまに即破壊している。

 特筆すべきは、敵の位置を見つけ出す情報収集能力以外にも、異常なまでの機動力と助けるべき所は助ける判断力も持ち合わせている事だ。

 戦闘力は言わずもがなだろう。

 

「周囲の状況を理解しすぐさま敵を見つけ出す、情報力と索敵能力。危なくなった他の受験者を瞬時に助け出す、機動力と判断力。そして一瞬で多数の敵を沈める圧倒的戦闘力! いいね彼! 動きがプロのそれだ!」

「ああ。だが、彼だけじゃない。他の子達もいい動きをしている」

 

 他の教員達も輪廻を褒める中、今年から雄英の教師を務めることになった、No.1ヒーローのオールマイトは、輪廻だけでなくモニターに映る受験生達に視線を動かしながら言葉を紡いだ。

 

「今年はなかなか豊作じゃない?」

「いやーまだ分からんよ、真価が問われるのは……これからさ!」

 

 3

 

 異変を感じのは、もう何十体目かも分からない仮想敵を倒した直後だった。

 小さかった揺れがやがて大きなものとなり、あたりに蔓延っていた空気の質が変わった。

 倒れぬよう足に力を入れ、辺りを見回している時、輪廻を大きな影が覆い隠した。

 瞬時に顔を上げてそれを睨みつける。

 

「で、でけぇっ……!」

 

 周りにいた誰かが呟く。

 高層ビルをかき分けるようにして顔を覗かせたのは、プレゼンで説明をされた第四種目の仮想敵(おじゃまムシ)だった。

 プレゼントマイクが第四種目をマリオのドッスンだと例えていたが、なるほど確かにあれが居ては試験に集中出来ない。

 しかし、おじゃま虫と言うには少し過ぎたるもののようにも感じる。

 緩慢な動きで0P敵が動き始めると、受験生の殆どが蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

 ……だが。

 

「お、おい!」

 

 逃げる受験生達は、一人の受験生が波に逆らい、逃げる方向とは真逆に進み続けているのを見つけた。

「逃げろ」彼にそう言おうとして、輪廻の顔を見た受験者の彼は驚愕に目を見開いた。

 

「笑ってる……のか……」

 

 輪廻が0P敵に向かいながら、凄惨なまでに口元を歪め笑っていたのだ。

 笑顔とは元々は威嚇の表情である。

 輪廻の浮かべた笑みはまさにそれであり、戦闘狂の気色が混ざっていた。

 彼の体から美しき花弁が幻想的に舞い上がる。

 一歩、また一歩と悠然と歩き、その距離をゆっくりと縮めていく。

 輪廻の姿を視界に捉えた受験生達は、逃げる事も忘れただただ彼の背に瞳を奪われた。

 いつの間にか持っていた()()()()を、掲げ──。

 

 ────歪二天礼法

 

八色屍(ヤクサノカバネ)──!

 

 埒外の速度で放たれた、殆ど同時の八つの斬撃。

 鉄をも豆腐の如く両断出来る輪廻の剣に、0P敵が耐えられるはずもなく。

 轟音を立てながら、バラバラとなった元0P敵は重量に従い地へと落ちた。

 

 4

 

「「「YEAR───!!!」」」

 

 モニターを見ていた教師陣は0P敵が倒された瞬間、全員一斉に立ち上がり喜びをあらわにした。

 緑谷出久に続いて、花咲輪廻も理解の及ばない個性(チカラ)で持ってして瞬時に0P敵をバラバラにしたことで、興奮のボルテージがMAXを振り切ったのだ。

 

「彼ら凄いじゃないか!」

「一人はワンパンチでKO! もう一人の彼は瞬きをした次の瞬間には、敵が細切れになってたよ!」

 

 教師達が次々に0P敵を倒した緑谷と輪廻を、手放しで褒め称える。

 こと輪廻に関しては、一人でほぼ全ての仮想敵を倒し且つレスキューPも稼いで、歴代最高の214P叩き出し実技総合の成績では二位に、137P差をつけて一位通過だった事もあって歓声が止まない。

 あちこちから聞こえてくる賞賛の中、オールマイトは緑谷の最後の一撃に口元を緩ませながら、輪廻の情報が記された書類に目を通していた。

 

 ──花咲輪廻。十五歳。孤児。個性『偉人』。

 

 




リィンカーネーションの花弁二巻でヴラドの能力の説明に、数メートル以内の鋭利な物質を杭に変える、とありましたが……アレどう見ても鋭利な物と言うより地面から生えてましたよねぇ(白目)。
という事で、私の作品では半径二十メートル以内の物質を杭へと変えると言う風にしました。
距離が伸びてるのは、輪廻の訓練の賜物という事で……よろしくです。
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