輪廻の花弁   作:社シロ

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評価を見れば赤バーになっていた。
何を言ってるか……(ry
評価を下さった読者の皆様方、大変御礼申し上げます。




個性把握テストと新たな友人達

「最下位除籍って……! 入学初日ですよ!? いや……初日じゃなくても理不尽過ぎる!」

 

 声を大にして叫んだのは、緑谷と一緒に居た女子。

 麗日お茶子といったか、彼女の言葉は今のA組全員(輪廻や爆豪を除く)の気持ちの現れだった。

 口に出したのが麗日一人であっても、表情を見れば全員似た感情を抱いたのがわかる。

 

「自然災害、大事故、身勝手な(ヴィラン)達……。いつどこから来るかわからない厄災。日本は理不尽にまみれている。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー」

 

 だが、彼らの温い心情を一蹴し、相澤は喝を入れるように甘えを許さぬように、厳しい言葉を投げ付けた。

 

「放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから三年間、雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。────“Plus(更に) Ultra(向こうへ)”さ。全力で乗り越えて来い……!」

 

 相澤の紡いだ言霊は、一人一人の心の内へと突き刺さった。

 不安に陰りが落ちる者、理不尽から目を釣り上げる者、はたまた相澤の言葉をブラフだと高を括って表情を動かさない者。

 それぞれ違う顔を浮かべるも、一つ共通するのは、この場にいる全てがこのテストに掛ける意気込みがガラリと豹変した事だった。

 

 

 ──『第一種目:50m走』

 

 準備運動を軽く済ませ、定位置に着く。

 輪廻は自身を含め、他二名と三人で走る事となっていた。

 輪廻が足場を確認しながら、先のゴールを見据えていると、横から語り掛けてくる声が一人。

 

「よっ! 俺は上鳴電気。お前あれだろ、入試の時に0P敵バラバラにしたっていうやつだろ?」

 

 稲妻状の黒いメッシュの金髪の頭が目立つ、所謂チャラ男風の上鳴が、気軽に輪廻に話しかけてきた。

 入試の時に仮想敵をバラバラに、それは恐らく歪二天礼法(いびつにてんれいほう)の事だろう。

 上鳴の言う通り、それならば確かにバラバラにしたが、何故彼がその事を知っているのか気になった。

 上鳴をあの市街地で見た覚えはない。

 

「そうだが。なんでそれを?」

「俺の中学のダチが、お前と会場一緒だったらしくてさ。さんざん凄ぇ奴が居たって話してきたんでよ」

「なるほど」

 

 上鳴のダチとやらが言っていた、外見的特徴も合っていたため、輪廻に話しかけてきたのだと言う。

 あれだけ派手に個性を披露すれば、輪廻の話が広がっていても不思議では無い。上鳴の話に納得する。

 

「なあなあ、汗で服が張り付いた女子っていいよなぁ」

 

 右横から服を引っ張られ、今度はそちらを見てみれば、背の小さな生徒峰田実がそう言った。

 峰田の視線には、50mを走り終えた女生徒達が話し合っている。

 彼女らを見つめる峰田の視線は、いささか危なっかしいものだった。

 問いかけられた質問に、輪廻はどう返そうか迷っていると、左にいた上鳴が峰田の言葉に同意し、意気投合し始めた。

 輪廻を挟み、実に高校生らしい下世話な話で盛り上がっていると、相澤に早く始めろとお叱りを受けてしまう。

 輪廻に続くようにして、峰田と上鳴も走る準備を始めた。

 

(──あれを使うか)

 

 複数存在する個性の能力のうち、ある一つを使う事に決めた。

 あの個性ならば、飯田が先程出した3秒04という記録も越えることが出来る。

 ただ、個性を使うにあたって横の二人に危害が及ばないか不安はあるが、そこはそれ、何とか耐えてもらいたい。

 合図が下される直前に、一応の忠告は入れておくとしよう。

 

「二人とも、衝撃には気を付けろよ」

 

 へ? と二人が問い返すよりも早く……。

 

 ────進化論

 

 合図と共に衝撃。同時に舞い上げられた砂塵。

 上鳴と峰田は、何とかその場で耐えた。

 そして宙に残る砂塵が引くと、輪廻がいたと思われる場所には、人の足二つ分の陥没した跡。

 遥か先を見て見れば、既にゴールした輪廻の後ろを線を描くように、美しい花弁が舞い。

 降ってくる花弁の雨の中、輪廻は上鳴達の方に振り返っていた。

 

「0秒98!」

 

 計測器から告げられた記録は、驚異的なものだった。

 彼の打ち出したびっくり仰天な結果に、周りは驚愕で満たされている。

 輪廻の使った個性、進化論はかの偉人ダーウィンに由来する力。

 能力は、状況に応じて自身の望むままに進化できるというもの。

 輪廻が行ったことは至って簡単、その進化論を使って自身の下半身をサバクトビバッタをベースとして進化させ、中の筋肉や繊維を瞬発力や反発力等に優れた動物のものへと進化させた。

 人工には頼らない、天然の速力自慢の動物達の集大成。

 それによりほんの一瞬のうちに馬鹿げた瞬間最高速度(トップスピード)を生み出し、ゴール目掛け()()()()()のだ。

 まるで銃弾とも比喩すべきスピードだが、曲がる事が出来ない、急には止まれない等の大きな欠点がある。

 50m走においては一直線に進み続ければ問題無いので、今回の種目のみ使える裏技のようなものだった。

 

 

 ──『第二種目:握力検査』

 

 こちらは障子目蔵が540キロという記録を出したが、今回も覆す形で、輪廻が測定不能を出した。

 大木すら容易に握りつぶせる握力を発揮する、罪人デサルボに起因する個性を使い行ったのだ。

 デサルボの個性(さいのう)絞殺魔(ストラングラー)』は、本来の使い方とは()()()()()が、輪廻は本来の使い道ではなくこう言った事に使っている。

 これまた同様に周りを驚かせたのは、言わずとも知れたことだろう。

 

 

 ──『第三種目:立ち幅跳び』

 

 こちらでは飯田や障子のような、突出した記録の持ち主はおらず。

 輪廻が、ライト兄弟の逸話が昇華された個性『空の人』を使い、一人だけ無限()を記録し終わった。

 周りはやはり驚いていたものの、流石に慣れたのかそこまでではなかった。

 輪廻が内心で皆の反応を楽しみにしていたので、大して驚かれなくて少しガッカリしたのは内緒だ。

 

 

 ──『第四種目:反復横跳び』

 

 反復横跳びでは、第一種目で知り合った峰田が自身の個性を面白い方法で使用して力を発揮し、記録を伸ばしていた。

 輪廻も負けじと、進化論を使って敏捷性としなやかさを兼ね備えた動物へと体を進化させ、120近くも結果を残した。

 A組の皆は完全に慣れたのか、ああまたか、といった納得の視線を送るようになり。

 上鳴に至っては「才能マンだよ!」と叫び始める始末だ。

 …………肝心の緑谷は未だに目ぼしい記録を出せていない。

 

 

 ──『第五種目:ボール投げ』

 

 今度は麗日が、重力を操る個性を使って無限()の文字を出した。

 輪廻も重力操作の個性を持っているが、距離における制限が存在する為、無限を出す事は不可能。

 よって、ボール投げでは麗日が一位になる事が決定した。

 そして、続く緑谷の番となり……。

 

「緑谷君はこのままだとマズいぞ……」

「ったりめーだ! 無個性のザコだぞ!」

「無個性!? 彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」

「は?」

「……」

 

 輪廻の横で外野陣が緑谷を見守り、口々に言葉を出す。

 飯田や麗日が心配のこもった視線を送り、爆豪は睨みつけている。

 どうやって緑谷がこの窮地を抜けるのか知らない。

 前世に見た漫画の記憶など、とうに擦り切れて無くなったも等しい。

 たまに既視感ある光景を見て思い出すだけで、後は欠片も覚えていないのだ。

 ましてやここは漫画の世界等ではなく、確立した輪廻の生きる一つの世界。

 本来とは違う想定外の事も起こりうるのだ。

 この後緑谷がどうなるか、予想もつかない中で、輪廻は早く脈打つ心と一緒に、目の前を見据えた。

 

「……!」

 

 第一球目、緑谷がボールを振りかぶった所で、個性発動の予兆が見えた。

 しかし、それは不自然に掻き消え、緑谷のボールは力無く地面へ落ちる。

 今間違いなく、緑谷は個性を使いボールを投げようとしていた。

 にも関わらず、個性が発動する事は無く、球は距離が伸びなかった。

 まるで発動を止められたみたいだ、と輪廻は感じた。

 どうやら輪廻の予想通り、個性を発動しなかったのではなく、発動出来なかったらしいと、緑谷の唖然とした表情で理解する。

 

(だとすりゃあ……)

 

 視線が相澤へと動く。

 昔一度、個性を消す個性があると聞いた。

 もしかしなくとも、緑谷が言った言葉で相澤消太……否。

 抹消ヒーローイレイザーヘッドの個性が、そうなのだと認識した。

 個性を無効化させる個性、輪廻には無いタイプの力だ。

 是非とも()()()と欲求が湧いてくる。

 だが同時に、手にした事で自身の持つ他の個性も相殺しかねない為、扱いに困難しそうだ、と要らぬ感想を胸に吐露した。

 輪廻が一人で考えている間に、相澤からの説教が終わったらしく、そのタイミングを見計らって緑谷の元に行く。

 これ以上は見てられなかった為に、声の一つでもかけてやろうと考えたのだ。

 

「緑谷」

「……あ、輪廻君」

「さっき飯田にお前の力について聞いてきたが、絶大な力と引き換えに、一度使えばぶっ壊れるんだろ?」

 

 先程、飯田から少し聞いた緑谷の個性。

 入試試験の時に0ポイント敵を殴り飛ばし、その代わりに腕を痛めていたという、何とも言えない扱いの難しそうな個性。

 この話を聞いた時、あぁそう言えばそんな場面原作にあったような、なかったような気がすると輪廻は薄っぺらな記憶を揺るがせた。

 

「あ、いや! ……うん」

「体を壊すのが発動条件なのか分からないが、どちらにしろ壊れるなら損傷はすくなくしてみたらどうだ?」

「損傷を少なく……。……! そうか! 最小限で最大限を……!」

 

 どうやら輪廻の行動は功を奏したようだ。

 輪廻としては怪我はなるべくしないように気を付けて、というニュアンスで声をかけたのだが、どうやら何かしらのヒントは得られたようだ。

 追い込まれた顔から一転して、事件の鍵を掴んだ探偵の如く吹っ切れた顔をしている。

 いい加減に離れないと相澤から怒られそうなので、良かったとその場を離れる。

 

「輪廻君、ありがとう……!」

 

 感謝に頭を下げる緑谷に、一言頑張れよ、と振り返らずヒラヒラ手を振って輪廻は外野に戻って行った。

 運命の二球目、一球目とは違い個性発動の予兆が見られない。

 そしてボールを離す直前、緑谷は指先に力の全てを凝縮させ放った!

 どこまでも上がるボールは、空気を突き破り、一筋の矢となって進み続ける。

 やがて彼方まで飛んで見えなくなったボールは、705.3mという数字になって、ヒーロー科らしい記録として姿を変えた。

 

「先生……。まだ……動けます!」

「こいつ……!」

 

 目を涙で濡らし、尚も痛みに耐え宣言するように緑谷は相澤を見据えた。

 その痛ましくも勇ましい緑谷の姿に、それでこそだと、輪廻は口角を少し釣り上げた。

 

 1

 

 緑谷のボール投げ後、爆豪が個性を使い緑谷に突っかかるという、事件とも言えない事件が起きもしたが、至って恙無くテストは進み、漸く全種目が終了した。

 残る種目のほぼ全てにも、輪廻は一位か二位で首位を独占していた。

 現在、A組は固まって相澤の成績発表に神経を向けている。

 緑谷一人は自身の不甲斐ない結果から下を向いているが、対照的に輪廻は平然と立っていた。

 そうして、空中に投影された画像には、一位に花咲輪廻の名前。

 

「因みに、除籍はウソな」

「………………」

「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

「「「はああぁぁ──────!!?」」」

 

 相澤が画像と共に落とした言葉に、A組の全員が過剰反応する。

 無理も無い、今の今まで除籍を回避する為、神経張り巡らしてテストを行っていたのだ。

 声を張り上げるなという方が無理のある話だ。

 緑谷に至っては顔の原型をとどめてないほどに、驚愕している。

 

「あんなのウソに決まってるじゃない……。ちょっと考えればわかりますわ」

「……どうかな……」

 

 近くにいた八百万の言葉に、反射的に呟いた。

 輪廻の消え入る程小さな声が耳に入ってしまったのだろう。

 え? と条件反射的に八百万は輪廻を見てしまうが、彼が嗤い目を細めて相澤を見ていた事で、声を掛けることが出来なかった。

 輪廻から感じた空気が、一瞬悍ましく見えてしまったから。

 しかし、それも刹那の事。次に瞬きをしてみれば、個性把握テスト中の表情の読めないものに戻っていた。

 

(相澤消太か。面白い人だ……)

 

 輪廻の内に宿った感情は、良きものか悪しきものか……。

 ……それは本人のみぞ知る。

 

 




Q.あれ、最後なんか主人公やばい臭いしない?

A.偉人以外にも罪人の力も宿してるのよ?

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