輪廻の花弁   作:社シロ

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今更ですが、東京喰種最終巻読みました。
一花ちゃん可愛い……。





戦闘訓練前

 それぞれが自身の限界を理解した個性把握テストから一夜明け。

 初日の時とは違い、輪廻は数学や世界史、英語といった必修科目の授業を受けていた。

 幾らヒーロー科が有名な雄英であっても、高校な事に変わりはなく、生徒の大半はペンを走らせる音が聞こえる時間を過ごす。

 至って普通の高校と変わらぬ内容に、退屈を覚えているのは輪廻のみにあらず。

 視線を少し動かせば、上鳴や爆豪もノートをとる姿とは裏腹に、退屈と言った顔を浮かべている。

 余程の勉強好きでなければ、一分一秒が苦痛なこの午前の一時を耐え凌ぎ、昼食を挟んでいよいよ待ちに待った授業が訪れる。

 

「わーたーしーがー! 普通にドアから来た!!」

 

 お決まりの台詞を唱え、いつもと変わらぬ笑みで教室に現れたのは、全生徒の憧れるヒーロー。

 彼の登場で室内の興奮が跳ね上がった。

 

「オールマイトだ……! すげぇ、本当に先生やってるんだな……!」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ!」

「画風違いすぎて鳥肌が…………」

 

 登場の一つで皆が沸き立つ。

 まるで彼の人気っぷりを体現しているかのようで、目に見えてその人気の高さが伺える。

 この人気も全て、数多もの(ヴィラン)や災害から人々を救ってきた平和の象徴という上に成り立つもの。

 オールマイトの名を叫び、沸き立つ程の人気はイコールオールマイトが築き上げてきた平和と、救われた人々の数の現れだった。

 

「ヒーロー基礎学。ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う科目だ!」

 

 午後から行われるのは、ヒーロー科に所属する生徒にとって、何よりも重視すべき科目。

 今活躍し世間を賑わせているプロヒーローも、この科目を受けて素地を作り上げ、ヒーローの世界へと身を投じた。

 そしてそれはプロとなった今も活かされている。

 ことヒーローになる上で、最も大事だと言える授業の一つ。

 それがヒーロー基礎学だ。

 

「早速だが、今日はこれ! 戦闘訓練!」

 

 BATTLEと書かれたプレートを前に突き出し、高らかに言う。

 

「戦闘……」

「訓練……!」

 

 知らされた授業内容を聞いて、爆豪と緑谷がそれぞれ反応する。

 

(まさか初めから戦闘訓練とはな……。昨日のテストと言い、色々と急すぎないか雄英?)

 

 輪廻としては、訓練より先に講義を行い、戦場での基本的行動をノートに写すなどと言った、もう少しお堅い内容だと思っていたのだが。

 他の学校のヒーロー科でもそうなのか、また雄英が特別なのか知らないが、予想外にいきなり戦闘訓練と来た。

 プロヒーローとして活躍する上で、自分の身を守れる戦闘能力が大前提とされている事は周知の事実だが、まさか初めから戦闘をするとは考え付かなかった。

 しかし、色々と言葉で教わるより手っ取り早いのも確か。

 百の言葉を交えるよりも、一の戦闘を体験する方がヒーローとして色々と学べるだろう。

 

「そしてそいつに伴って……こちら!」

 

 ガゴっと教室の壁が、機械的音を発しながら動き始めた。

 

「入学前に送ってもらった「個性届」と要望に沿ってあつらえた……戦闘服(コスチューム)!!」

「「おおお!!!」」

 

 手渡されたのは番号の割り振られた、それぞれの戦闘衣装。

 オールマイトの言っていたように、入学前に各々が自身の個性を全面的に主張できるよう要望し、作ってもらった代物。

 被服控除と呼ばれるシステムだ。

 入学前に個性届と身体情報の二つを予め提出すると、学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれるというもの。

 コスチューム作成の際、要望を添付することで自身の個性にあった便利で最新鋭のコスチュームが手に入る。

 輪廻の場合は少し特殊で、この被服控除でのサポート会社には頼らず『ある会社』に作ってもらったのだが……。

 そちらは今話すべき事でもないので、一旦置いておくとしよう。

 

「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!」

「「「はーい!!!」」」

「格好から入るのも重要だぜ少年少女! 自覚するのだ、今日から自分は────ヒーローなんだと!」

 

 1

 

「始めようか有精卵共! 戦闘訓練のお時間だ!!」

 

 グラウンド・βへ着くと、それぞれがそれぞれの特徴的コスチュームに身を包んで待っていた。

 輪廻のコスチュームは、軍服をモチーフとした衣装の上に黒のロングコートという、何の変哲もないシンプルな格好。

 コートや軍服の中には投げナイフや拘束具等、ちょっとした小道具が至る所に内包されているが、既存のヒーローコスチュームと比べると、これといった目立つところの無い、言ってしまえばつまらないコスチュームだった。

 元々輪廻は服には拘りは無く、本気で個性を使えば纏っている衣装まで変わってしまうので、戦闘に役立つものであればどんなものでもよかった。

 

「輪廻君」

「ん、緑谷か」

 

 呼びかけられた方向を向いてみれば、飯田・緑谷・麗日の三人組が居た。

 緑谷のコスチュームは名を表すように、全身が緑一色で統一されており、特に目を引きつけたのは額から突き出た二つの角だろう。

 恐らくオールマイトを意識してのものだと思われた。

 

「花咲くんなんか動き辛そうな格好やね」

 

 そう言ったのは、パツパツスーツの麗日だ。

 

「そうか? こう見えても機動性は高いぞ。特殊な素材を使ってるらしいから、制服ほどの重さも無い。動き辛そうというなら、俺は飯田の方がそうだと思うが」

 

 視線を自身の軍服から、全身鎧のような、まるで日曜朝のテレビ番組にでも出てくる見た目をした飯田に送った。

 

「そんな事はない。俺のこのコスチュームも、個性を活かせるようにと、機動性を補佐する機能もついている」

「そうか」

 

 話し合いもそのへんに、そろそろ始まるらしい戦闘訓練の説明の為、全員がオールマイトの前に行く。

 

「先生! ここは入試の演習会場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

 

 最初に質問をしたのは、やはりと言うか飯田だった。

 何か事あるごとに真っ先に先生に聞く、真面目な性分故だろう。

 飯田の質問にオールマイトは答えた。

 

「いいや、もう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ!」

 

 対人戦闘訓練。

 この言葉に輪廻は僅かに眉を動かす。

 戦闘訓練、それもすべての過程をすっ飛ばしての対人となれば、輪廻の個性では大半が扱いに気を付けねばならなくなる。

 加えて舞台は屋内。限られた空間での戦闘は、今後輪廻の凶悪な個性を扱っていく上で大事な経験となるだろう。

 

「君らにはこれから、『(ヴィラン)組』と『ヒーロー組』に分かれて、二対二の屋内戦を行ってもらう」

 

 チーム戦での屋内戦闘。

 輪廻の頭には既にどう戦うかシミュレーションを始めていた。

 輪廻が脳内で戦闘イメージを構成している横で、またしても飯田が手を挙げた。

 

「先生! 俺らA組は全員で21人居ます。ペアを組んで分かれる場合一人余ってしまいます! そういった場合はどう対処すべきかお考えでしょうか!?」

「勿論さ! どこか一チームには三人組になってもらう、そのチームと当たった場合二対三と不利な状況になってしまうが……現場での不利なんて日常茶飯事! どんな状況であっても跳ね除け理不尽を覆すのがプロヒーローってもんさ!」

 

 成程と納得し、飯田は一歩引いた。

 ヒーローが常に劣勢などありふれた事、むしろ有利な事は滅多にない。

 周りに人がいるだけで、視界に映るすべてが人質になってしまうのだから。

 今回の戦闘訓練はそういった場面を体験させる事も、一つの目的なのだ。

 

「今回の訓練は入試と違い、ぶっ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

「勝敗のシステムはどうなります?」

「ぶっ飛ばしてもいいんスか?」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」

「分かれるとは、どのような分かれ方をすればよろしいですか?」

「このマントヤバくない?」

「んんん! 聖徳太子ィィ!!!」

 

 詳細な説明を求める生徒達の質問攻めに、オールマイトは叫ぶが、順序だてて話し始めた。

 まず分かれ方及び対戦相手はくじ引きで決めること。

 今回の戦闘訓練には状況が設定されていて、概要としては“敵”が隠した“核兵器”を“ヒーロー”が処理する、といったアメリカンな設定だ。

 今回の屋内対人戦闘では、如何に相手を下すか出し抜くか、が重要になる。

 輪廻はこの段階で既に使用する個性を絞っていた。

 そしてくじで決まったチームは……。

 

 A:緑谷・麗日

 B:轟・障子

 C:峰田・八百万・花咲

 D:飯田・爆豪

 E:芦戸・青山

 F:砂藤・口田

 G:上鳴・耳郎

 H:常闇:蛙吹

 I:尾白:葉隠

 J:瀬呂:切島

 

 ……となった。

 

「よろしくな八百万、峰田」

「ええ、よろしくお願いしますわ花咲さん」

「けぇ、なんだ花咲も一緒かよ。せっかくならオイラと八百万だけで良かったのによ」

 

 峰田のくだらない戯れ言を流し、輪廻はそうそうに二人を交え作戦会議を開く。

 初めに互いに何が出来るか確かめる為に、まず八百万と峰田の個性を改めて聞き確認する。

 

(わたくし)の個性は『創造』。私が知る物を自分の体内で創り出して、素肌から取り出す能力です。大抵のものなら作れますわ」

「オイラのは『もぎもぎ』つって、頭のこれを貼っつけたり出来る。オイラ自身は付かずに跳ねるけどな」

「……なるほど。使えるな……」

 

 八百万の万能とも言える個性に、癖は強いが場面が合致すれば峰田の個性は武器になる。

 輪廻の頭に一つ二つと組み立てられていく戦術は、九割方形となって浮かび上がっていた。

 黙ってあれこれ思考していると、初戦の組が決定したようだ。

 大きな声で対戦するチームを呼ぶオールマイトの声が聞こえた。

 

「初戦は緑谷んとこと爆豪んとこか……」

 

 何かと因縁付けては緑谷に突撃していく爆豪だ、今回の戦闘訓練は爆豪からすれば、いい建前になることだろう。

 目標達成よりも、初っ端から緑谷に攻撃していく爆豪の姿が見ているかのようにイメージ出来てしまう。

 くじ運がいいのか悪いのか分からない緑谷に、輪廻は静かに心の中で合掌した。

 

「あの……?」

 

 建物の中に向かう緑谷達の背中を見送っていると、八百万からお声が掛かる。

 

「ん?」

「それで、まだ花咲さんの個性を教えて貰っていないのですが……」

「ああ、悪い。直ぐに教える」

 

 最後に緑谷と麗日を一瞥したあと、輪廻達はオールマイトに続いてモニタールームへと向かった。

 

(頑張れよ緑谷、麗日)

 

 

 

 

 




本当は戦闘シーンまで行くつもりだったんですけど……すみません、余計な事を書きすぎました。
でも切りがいいので、今回もここで切らせていただきます。
次回は絶対戦闘シーンまで書くので、どうかお待ちを。

それと、誤字脱字の報告をしてくださった読者の方々に御礼申し上げます。
お手を煩わせちゃってごめんね! ありがとうございます!

あ、因みに今回は一つ伏線を撒きました。
その伏線が回収出来るといいなぁ……。

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