学園艦誕生物語   作:ariel

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前回のあとがきでふれましたが、マジノ女学院と聖グロリアーナ女学院の第1回戦を外伝4として投稿します。台風のため暇が出来たため、急遽書き上げました。

フランスVSイギリスは、今でもそうですが、お互いに絶対に負けたくない相手。ラグビーでもサッカーでもこの二つの国の対戦となると、お互いに物凄く白熱します。個人的には、今回のあとがきでもふれていますがフランス贔屓なので、完全にマジノ女学院からの視点で書いています(ガルパンの世界のダー様は結構好きなキャラなのですが、ほんまもんのエゲレス人はあまり好きでないので…w)。


外伝4 マジノ女学院に栄光あれ

翌日 マジノ女学院 観戦席

 

 

翌日、既に敗退した知波単学園の生徒達は昨日応援してもらったお礼も兼ねてマジノ女学院の観戦席に来ていた。昨日の自分達を応援してくれた観戦客とは客層が少し異なり、どことなくお金持ちそうな観戦客が多く、またフランス人教官達も多く居たため、少し居づらい感じもあったが、それでも昨日応援をしてくれたお礼をしようと、観戦席の一角を占領していた。隊長の村上早紀江と副隊長の高橋節子は、パトリシア達に応援に来たことを知らせるために、マジノ女学院の戦車整備場に足を運んだ。

 

「なぁ早紀江、あんな戦車、練習試合には出てこなかったよな?」

 

「なにあれ?パトリシアさん達、あんな大きな戦車持ってたんだ。でもあれって何処の戦車なんだろう。私は初めて見たんだけど。」

 

早紀江と節子の視線の先には、ドイツ戦車にも負けずとも劣らない戦車が2両あった。しかし二人にはフランスがこんな戦車を使っていた記憶はない。最初は何処の国からの借り物か?と思ったが、あのパトリシア達がフランス以外の戦車に乗るとはとても考えられないため、不思議に思っていた。

 

「あら、やっぱり不思議に思いますわよね。」

 

背後から声がかけられたため、振り向くとパトリシアが立っていた。

 

「あんな戦車、フランス持っていた?戦後のではないよね?」

 

早紀江がパトリシアに尋ねると、パトリシアは心外だという顔をしながら答えた。

 

「失礼ね。あれはちゃんとしたフランスの戦車ですし、第二次世界大戦中に存在した戦車ですわ。もっともドイツが降伏した後、終戦ギリギリで試作車が完成していただけですから、ルール的にはギリギリ範囲内といったところですけどね。貴女達に練習試合で負けてしまったので、その後教官達が本国から急遽取り寄せたのですわ。といっても、フランス本国にも可動状態にあったのは2両だけだったようですわ。」

 

パトリシアの説明では、本国に残っていた試作車を全て持ち込んだらしい。余程私達に負けたのが悔しかったのだな・・・と早紀江と節子は考えたが、逆に言えばあの敗戦があったからこそ、この戦車が此処にあるということになる。これから聖グロリアーナ女学院と戦うにあたり、マジノ女学院としては心強い味方だろう。

 

「この戦車はね、ARL44という試作戦車で、主砲は90mmDCA艦載対空砲をベースにした新型戦車砲、装甲も前面は120mあるから、ドイツのティガーIIの装甲には負けますけど、攻撃力では負けませんわよ。この戦車さえあれば、聖グロリアーナ女学院などに遅れは取らなくってよ。もっとも、2両しかないのが厳しいところなのですけどね。」

 

これが練習試合に出てこなくて良かった…と知波単学園の二人は思った。流石にこのクラスの戦車が出てくると、知波単学園では撃破判定を出せる戦車は限られてくる。今回聖グロリアーナ女学院の使用戦車は、チャレンジャーMk.VIIIが1両、チャーチルMk.IVが3両、マチルダMk.IIが5両、そして隊長車は、対フランスの代理戦争ということで、イギリスの威信をかけてセンチュリオンMk.Iが登録されている。当初はマジノ女学院側が圧倒的に不利だと言われていたが、このARL44を使うとなると総合力では未だ劣るが、前評判で言われていたような圧倒的な差はないだろう。

 

「まぁ、よく見ていることですわ。華麗に勝つ…とまではいかないかもしれませんけど、最後に笑うのは私達ですことよ。」

 

「頑張ってねパトリシアさん。私達も応援しているから。どうせなら、パトリシアさん達にも黒森峰女学園と戦って欲しいですから。」

 

早紀江の言葉を聞いたパトリシアは『そんな事は、当然だ。』という顔をして、何も言わずに自分達の戦車に向かって去っていった。

 

 

 

試合開始 マジノ女学院観戦席

 

 

試合開始の信号弾が、試合会場の中央付近で打ち上がる。マジノ女学院の観戦席では、マジノ女学院の音楽科の生徒達による『老親衛隊行進曲』特有の太鼓の音が響き渡り始めた。モニター画面には隊長のパトリシアがアップで映る。パトリシアは自分の姿が観戦席のモニターに映っている事を意識しているのか、片手を上げると叫んだ。

 

「La Victoire est à Nous! (勝利を我らに!)」

 

そして勢いよく進行方向に向かって手を振り下ろした。

 

「Les Char de Combat … Avance ! (戦車隊前進!)」

 

その瞬間、これまで演奏されていた曲が行進曲『勝利を我らに』に変わり、ファンファーレが鳴り響いた。観戦席に居たマジノ女学院の生徒達は立ち上がって学園旗を振り、パトリシア達を送り出す。そして観戦席のあちらこちらでフランス人教官と思われる人達からの

 

「La Victoire est à Nous! (勝利を我らに!)」

 

という声援が飛び交う中、マジノ女学院の戦車隊は前進を開始した。そして、その姿を半分呆然としながら知波単学園の生徒達は見ていた。

 

「何これ!ここ日本だよ。なんでこんなに華やかなの?おかしいよ。うちと全然違うよ?うちはこんなにお洒落じゃないのに…それに、なんでこんな軽食まで配られてるのよ!」

 

「早紀江、落ち着けって。そりゃ、うちはこんなにお洒落じゃないけどさ、それでもうちの時だってたくさんの人が応援してくれただろ?応援してくれた人達の層が全然違うのも分かるけどな…。それにしても、これ旨いな!」

 

節子が早紀江を宥めるが、自分自身も早紀江と同じように考えていたため、全く説得力がない。しかも配られた軽食を休む間もなく口に運んでいる。知波単学園の試合の時は、こちらの応援は元陸軍軍人達が多かったため、観戦客達は日本酒を片手にドンチャン騒ぎをしていたイメージが残っている。そして自分達が出撃する時も、顔を真っ赤にしながら『知波単学園、万歳!』と叫んでいた。それに比べて今周りを見ると、顔を赤らめて騒いでいる人間は見えないし、来ている観戦客もスーツ姿であったり着物姿の上品そうな人間ばかりだ。またアルコールは入っているようだが、日除けの傘を立ててワインを片手に談笑している姿を見ると、一体この差はなんなのだ…と思いたくもなる。

 

「おかしい!絶対におかしいよ!それに出撃していく時の曲だって、こんな華やかな曲うちにはないよ…こんな音楽の中で出撃出来たら士気も上がるんだけどね…、それにしても、これ美味しいね。」

 

マジノ女学院は音楽科と共に調理科もあるようで、その成果が今回の観戦席に並んでいるようだ。パトリシアから調理科に一声あったのだろう、知波単学園の生徒達の傍にはかなりの量の軽食が並んでいたが、それが並べられた傍から次々と消えていく姿は優雅さとは程遠いものだった。

 

「いや~、本当これ美味しいわ。こんな料理が食べられるなら、今回は是非パトリシア達に勝ってもらって、黒森峰女学園戦でもまたご相伴に預かりたいわ! ハハハ」

 

節子は、もうこれ以上考えることはやめようと、食事に集中し始めた。そんな姿を半分呆れて早紀江は見ていたが、たしかにこれ以上考えても悲しくなるだけだと思い、試合が動くまでは、この機会にしっかり美味しい物を食べておこうと行動を開始した。

 

 

 

マジノ女学院 隊長車

 

 

「今回は守備的な配置ではなく、攻撃に出ますわよ。私達でも攻撃に出れば強いというのを、あの子達に見せてやらなければいけませんわ。この前と違って、今回はこちらの戦車は機動力で相手に勝るでしょうから、相手をかき回してやりますわ。ただし伏兵には気をつけなさい。」

 

今回パトリシアが率いるマジノ女学院の戦車隊は、パトリシアとミシェルのARL44が2両、ルノーB1bisが4両、そしてソミュアS35が4両の10両で構成されていた。前回、知波単学園との練習試合で機動力の大切さを大いに学んだマジノ女学院は、中戦車であるルノーD1とD2を編成にいれず、全て速度が発揮できる車両で戦車隊を作ってきた。これら10両が、パトリシアとミシェルにそれぞれ4両ずつ率いられ、二つの小さな楔形陣形を組んで前進していた。当初はドイツ軍のように一つの大きな楔陣形を作る事も考えていたようだが、相手にセンチュリオンが居るため、奇襲を受けてもARL44のどちらかは残るように、安全策をとって二つにチームを分けたようだ。

 

「敵を見つけ次第、左右から挟みこむ形で突撃するわよ。ミシェル!あなたと私の戦車は、センチュリオン、チャレンジャー、そしてチャーチルを優先的に狙うわよ。残りの戦車はマチルダを狙いなさい。それと敵隊列への突撃は、ソミュアS35とルノーB1bisのみで行ないます。私達のARL44は狙撃に集中しますから、みんな頼みますわよ。」

 

チャレンジャー、そしてチャーチルの装甲を撃ちぬけるのは、自分達のARL44しかない。そして、敵の最大戦力であるセンチュリオンをいかに早く倒すかが勝負の分かれ道になるだろうとパトリシアは考えていた。

 

「隊長、北西の方角に土煙が上がっているのが見えます。」

 

「了解、私の部隊は敵の右側から、ミシェルの部隊は敵の左側から突撃しますわよ。それでは行動を開始してください。」

 

パトリシアの指示で、マジノ女学院の戦車隊は二つに別れ、それぞれの方角に散っていった。しばらく土煙がする方向にパトリシアの部隊が進んでいくと、聖グロリアーナ女学院の戦車隊の隊列が見えた。どうやら、歩兵戦車の速度に合わせて前進していたようだ。未だミシェルの部隊は配置についていないようだったが、ここは先手必勝だと考えたパトリシアは、自分の率いてきたB1bisの部隊を敵隊列に突撃させた。

 

「B1bis部隊、突撃しなさい!大丈夫ですわ。今回はあなたたちの戦車の方が機動力はありましてよ。ミシェルの部隊も直ぐに突撃を開始するでしょうから、思い切りかき混ぜておやりなさい。」

 

パトリシアの指示に従い、B1bis部隊は最高速度まで増速し、一気に右側面に襲い掛かった。これに対応して、聖グロリアーナ女学院の戦車隊も展開を始めた。

 

「隊長、どれを狙いますか?センチュリオンの位置を考えますとこの距離からでは撃破判定が出ない可能性がありますが…。」

 

「チャレンジャーMk.VIIIの位置ならこの距離でも撃破できますわね?味方は既に突撃を始めていますから、少しでも相手の手数を奪いますわよ。」

 

パトリシアの指示で、ARL44は砲塔をチャレンジャーに指向させると初弾を放った。チャレンジャーMk.VIIIは、イギリスの誇る歩兵戦車で砲塔防御は102mmと重装甲を誇る戦車であったが、元は艦載対空砲でもあり初速の速い主砲を装備しているARL44の砲撃は、その重装甲を一発で撃ち抜いたと判定され、チャレンジャーMk.VIIIに撃破判定が出た。また間の悪い事に、チャレンジャーMk.VIIIに撃破判定が出た頃、ミシェル率いるソミュアS35部隊が左側から突撃を開始しており、聖グロリアーナ女学院の戦車隊に混乱が生じていた。

 

元々聖グロリアーナ女学院としては、マジノ女学院は超守備的な配置をしてくると考えており、マジノ女学院の陣地に対して重装甲を盾に無理やり押し込んで撃破を目論んでいたのだが、まさかのマジノ女学院からの先制攻撃に対応が後手後手になっていた。またパトリシアの部隊の突撃に対応していたところに、背後からミシェルの別働隊が突撃を開始していたため、聖グロリアーナ女学院の隊長の指示に一瞬の空白が生じていた。

 

「隊長、ミシェル副隊長の部隊なのですが…副隊長のARL44も突撃に加わっています。」

 

「あの子はどうして私の指示に従わないのかしら。ミシェルに連絡しなさい。すぐに停止して狙撃に移るように。」

 

パトリシアはミシェルが独断専行で敵隊列に突撃を開始した事を知り、驚くのと同時にこれは拙い事になりそうだと感じていた。自分とミシェルの2両のARL44で敵の重装甲の戦車を封じ込めなければこちらに勝ち目はない。先ほどチャレンジャーMk.VIIIに撃破判定を与えたが、まだ相手には重装甲の戦車が4両残っている。敵は一瞬混乱していたが既にその混乱から回復しつつあり、両側の突撃部隊に対して砲撃を行っていた。その結果、自分の指揮下のB1bisは既に一両撃破されている。

 

「隊長、ミシェル副隊長から通信です。副隊長はこのまま突撃して、敵のセンチュリオンと刺し違えると言っています、隊長に残りの敵をお願いするとのことです。」

 

「…ミシェルに了解と伝えて。それと必ず撃破するようにと。砲手、次の目標は中央のチャーチルMk.IVですわ。準備出来次第、射撃!それとB1bis部隊に、周りのチャーチルの注意を少しでもひきつけるために、当たらなくてもいいですから射撃しなさいと伝えなさい。」

 

長距離からの狙撃では撃破が難しいと考えて、接近することでセンチュリオンと刺し違えるつもりだ。そう感じたパトリシアは、ミシェルの突撃を少しでも援護するために、自分の指揮下にあったB1bis部隊に援護射撃を指示した。

 

「隊長!副隊長がセンチュリオンを撃破しました、副隊長も敵から集中砲火を浴びて撃破判定が出てしまいましたが、これでもうセンチュリオンは居ません。あと、私達の砲撃もチャーチルMk.IVに撃破判定が出ています。」

 

ミシェルのARL44は、センチュリオンに対して500mまで接近して砲撃を行なった。センチュリオンもミシェルのARL44に対してほぼ同時に砲撃を行なったため、結果は相打ちとなったが、それでも敵の最大戦力を沈黙させたのは大きかった。また隊長車でもあるセンチュリオンが撃破されたことで、指揮系統に混乱と動揺が生じ始めており、それを抑えようとチャーチルMk.IVに乗っている聖グロリアーナ女学院の副隊長は苦戦していた。

 

「次!その隣のチャーチルMk.IVを狙うのです。味方の突撃部隊とマチルダの戦闘はどうなっているのです?」

 

「マチルダMk.IIとの戦いですが、チャーチルMk.IVからも砲撃されているようで、こちらが押されています。マチルダの残りは3両、こちらはB1bisが1両とソミュアS35も1両。数的に不利なため突撃部隊に動揺が出ています。…右隣のチャーチルMk.IV撃破。残りのチャーチルは1両。」

 

自分達の戦車と相手の残っているチャーチルMk.IVも入れると、残りは3対4。数的には不利だが、まだ負けたわけではない。知波単学園と練習試合を戦った後、向こうの隊長は『最後は決して退ない強い精神力が勝負の鍵』だと言っていた。まさにここが正念場だ。そう考えたパトリシアは通信手から無線機を借りると生き残っている戦車に檄を飛ばした。

 

「隊長のパトリシアよ。今は私達が数的に不利ですが、まだ私も健在ですし、こちらの切り札のARL44も健在です。戦力的には決して負けていなくってよ。最後までマジノ女学院の勝利を信じて全力を尽くしなさい。Gloire au Lycée de Jeunes Filles de Maginot ! (マジノ女学院に栄光あれ!)」

 

マジノ女学院の生き残りの戦車達は、パトリシアの檄に答えて遠目からでも分かるほど動きが良くなった。パトリシアはそれを見てこれで行けると感じ、自らの戦車の砲手に指示を出す。

 

「砲手、敵の最後のチャーチルMk.IVを狙いなさい。これさえ倒せばこちらの勝ちです。慎重に狙うのですよ。」

 

ARL44の主砲が最後に残っていたチャーチルMk.IVを捉えた。

 

「チャーチルMk.IV 2号車 命中。判定、撃破。」

 

その頃、突撃部隊とマチルダIIの戦いも終盤を迎えつつあった。パトリシアの檄に答えた突撃部隊は、マチルダIIに対して機動力を駆使して2両に撃破判定を与えていた。これに対して、至近からの直撃弾によりB1bisも撃破されたため、ソミュアS35とマチルダIIの一騎打ち状態になっていた。パトリシアは突撃部隊の状況を確認し、自らも突撃する事を考えたが、グッと我慢して指示を出す。

 

「Echec et mat (チェックメイト)。砲手、最後の敵を狙いなさい。本当は突撃して直ぐに援護に回りたい所ですけど、停止射撃で確実に行きますわよ。」

 

20秒後、ARL44の主砲が火を噴いた。

 

「聖グロリアーナ女学院 マチルダII 4号車に命中 判定撃破。よってマジノ女学院の勝利!」

 

審判長の宣言がアナウンスされ、マジノ女学院の勝利が確定した。

 

 

 

試合後 マジノ女学院 観戦席

 

 

「勝っちゃったよ、パトリシアさん達。たしかに強力な戦車が2両あったけど、それでも総合力は向こうの方が上だったのに。」

 

「あぁ、よく勝ったよな。聖グロリアーナ女学院の動きが鈍かったし、ギリギリの勝利だけど、それでも大金星だよな。」

 

観戦していた早紀江と節子は目を丸くして驚いていた。前評判では聖グロリアーナ女学院の勝利は揺るがないだろうと言われていたが、蓋を開けてみればギリギリとはいえマジノ女学院が勝ってしまった。マジノ女学院の観戦席はまさにお祭り騒ぎで、 La Marseillaiseの大合唱となっていた。知波単学園から応援に来ていた少女達も、歌こそ歌えないが、まるで自分達が勝ったかのようにマジノ女学院の生徒達と抱き合って喜んでいる。

 

「ただ、ミシェルさんの乗っていたARL44、準決勝までに直せるのかな。ちょっと心配だよね。あれがないと黒森峰女学園には歯が立たないよ。」

 

「準決勝まで4日あるけど、かなりこっぴどくやられてるからな…」

 

今回の戦いで聖グロリアーナ女学院のセンチュリオンを仕留めたミシェルのARL44は、センチュリオンの攻撃も含めて集中砲火を浴びたため、ボロボロになっていた。いくら染料弾とはいえ、当たった箇所にダメージはあるし、エンジン部分などにダメージが行くこともある。次戦の黒森峰女学園との準決勝まで4日間時間があるが、それまでに直せるかどうか微妙な状態だ。また今回の戦いで奮戦したマジノ女学院の戦車の多くは、かなり無理をしたため、こちらも準決勝までに完全な状態に整備できるか厳しい状態だった。これに対して、黒森峰女学園の戦車は一回戦ほとんど無傷に等しい。その事に気づいた二人は顔を見合わせた。

 

しばらくすると、大歓声に迎えられて、パトリシア達マジノ女学院の搭乗員達が帰ってきた。不利な前評判を覆しての勝利であり、宿敵イギリスが後ろについている聖グロリアーナ女学院を倒しての勝利だったため、関係者達の顔も明るい。

 

「おめでとう、パトリシアさん。次はいよいよ黒森峰女学園戦ね。」

 

「どう?私達もやる時はやりますでしょう?次は、あなたたちを撃破した黒森峰女学園ですけれど、次も勝ちますわよ!」

 

早紀江の祝福に相変らずといった感じでパトリシアは応じる。早紀江は一応謝っておこうと思い、パトリシアに近づくと小声で話す。

 

「ごめんね。私達があまり黒森峰女学園の戦車に損害与えられなかったから、向こうはほとんど無傷で。あとミシェルさんの戦車、準決勝に間に合いそう?」

 

早紀江の言葉に、パトリシアは少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んで答えた。

 

「たとえミシェルの戦車の修理が間に合わなかったとしても、わたくしのARL44は出場出来ますわ。それに、あなたたちがダメージを与えられなくて向こうがほぼ無傷でも、あなたたちに責任を押し付ける程、私は落ちぶれていなくってよ。大丈夫、やれるだけやってみせますわ。」

 

それを聞いて早紀江は安心したのか、パトリシアの手を握ると微笑んで言った。

 

「次も優雅に戦ってみせると言いたいのでしょう?分かってる。準決勝頑張ってね。」

 




今はお互いに母国に戻ってしまったため、2~3年に一度しか会える機会もないのですが、フランスとドイツには昔の仕事の同僚達が居るため、どうしてもこの二つの国については、いつも贔屓目で見てしまいます。そういうこともあり、マジノ女学園が活躍するシーンを一度は書きたかったため、今回の外伝となりました(ドイツの方は黒森峰があるため、ストーリー上で活躍させられますが、フランスは…)。本当の事を書きますと、ARL44は終戦時には木製のモックアップしか出来ていませんし初期型は76mm砲搭載です。ただどうしても強力な90mm砲搭載車をフランスで使いたかったわけでして…本当はルール違反なのですが、終戦時に存在していたという設定にしています。まぁ知波単学園も五式中戦車持っているので、これくらいならと笑って許してください。

今回の外伝で出てきた、マジノ女学院が出撃していく時のフランスの行進曲ですが、『La Vieille Carge(老親衛隊行進曲)』と『La Victoire est à Nous(勝利を我等に)』は下のリンクにある感じの曲です。前半部の太鼓から始まるのが『老親衛隊行進曲』で、途中のファンファーレからが『勝利を我等に』になります。個人的に結構お気に入りの曲のため、今回使いました。どちらも映画「Waterloo」で使われており、戦列歩兵好きの方にはお馴染みの曲かもしれません。

http://www.youtube.com/watch?v=xT1vK8ZNx1Q

最後のマジノ女学院が勝利を決めた後のLa Marseillaiseは超有名曲ですから解説は必要ないと思いますが、こんな感じの曲です。ワールドカップなどで聞いた事ある人は多いのではないでしょうか。

http://www.youtube.com/watch?v=TKtCVblxDRc

また、観戦席で知波単学園の生徒達にフランス料理の軽食が振舞われていましたが、これは私の個人的な経験からこんな感じにしました。あの人達、自分の国の文化を紹介する時は物凄く気前がいいんですよねw。私も何度かフランス料理やフランスワインをご相伴に預かりました(あの人達の中では、いつでも何でもフランスがNo.1です)。性格は以前書いたとおり、とっても高慢なのですが、何処か憎めないところがありまして、個人的には結構好きな人達だったりします。

ということで、外伝4はマジノ女学院の戦いにスポットを当ててみましたが、次はストーリーの方を動かしたいと思います。
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