学園艦誕生物語   作:ariel

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今年は雪が大量に降ったり寒くなったりと、結構大変な冬ですね…。私の周りではインフルエンザが流行っており、職場の席も櫛の歯が抜けたような感じになっていたりします。皆さんもインフルエンザ気をつけてください。私は…ナントカは風邪(インフルエンザは風邪ではありませんが)をひかないようで、今の所元気にやっています。


第54話 戦車道への復帰

1975年5月下旬 東北大学 金属材料研究所

 

 

巨大プロジェクトを研究所に持ってきた西佳代は、昨年の10月に助教授に昇任しており、自身の研究遂行のために忙しい日々を送っていた。また、佳代を大学に残す事を決断した元指導教授も佳代を全面的にバックアップしてくれており、佳代としては非常に幸せな研究生活を送る事が出来ていた。そして、そんな佳代の元に東京の戦車道連盟から一本の電話がかかってきた。

 

「はい、東北大学の西です。えっ?岸会長ですか?…はい、分かりました。明日そちらに伺います。…はい、よろしくお願いします。失礼します。」

 

電話は、戦車道連盟の会長岸信介からの物で、『急で申し訳ないが、明日東京の戦車道連盟の本部まで来てくれ』という事だった。たとえ形式とはいえ、現在佳代が行っている研究のための資金は戦車道連盟の基金から出ている物であり、その会長である岸が『どうしても来て欲しい』と言っている以上、佳代としては選択の余地はなかった。

 

ただ佳代が気になったのは、これまで戦車道連盟が、まして会長の岸が直接佳代にコンタクトを取ってきた事はなかったため、一体何があったのだろうか?という事だった。自分の研究に関連する話であれば、毎年報告書を提出している。そして、これまで一定の成果が出ているため、特に叱責されるような理由はない。佳代には、今回の呼び出しに全く思い当たる節はなかったが、逆に何か大きな変化があったのではないかと予想した。そして、どうやら明日以降の予定はかなり変更が必要だな…と感じ、自分が面倒を見ている研究チームの部屋に急いだ。

 

「皆さん、ちょっと手を止めてください。」

 

佳代は、自分が割り当てられている研究室に向かうと、自分の下で研究を行っている学生やスタッフ達を注目させた。佳代は現在、戦車道関連の研究ということで、砲弾が戦車に命中した際、その衝撃を自動的に検出してそれに応じた信号が発生する装置の開発を行っていたが、昨年ついにそのための材料開発に成功していた。しかし、この材料が本当に有効なのかどうかの実証試験は終わっておらず、現在はその実証試験の準備と、発生した信号の判定システムの開発などに取り組んでいた。

 

「明日、私は急用で東京に向かわなくてはなりません。ですから私が留守の間、実験の安全管理だけはしっかりやってください。間違っても、教授に迷惑をかける事だけはやめてくださいね。それではよろしくお願いします。それと、ひょっとしたらこれ以降の予定が大幅に変わる可能性があります。ですから、今やっている測定はなるべく早く纏めて私に提出してください。」

 

本来、助教授の佳代に学生やスタッフがつくことはなかったが、直属の教授の好意で佳代の研究にスタッフがつけられている事から、佳代としては教授には頭が全く上がらない状態だった。そのため、間違っても自分が留守の間に教授に迷惑をかけるような事だけは避けてもらう必要があったため、改めて自分のスタッフに指示を出して、その日は移動の準備のために帰宅した。

 

 

 

翌日 東京 戦車道連盟 会長室

 

 

翌日の午後、佳代は仙台から上京し、その足で戦車道連盟本部の会長室を訪ねた。そして会長室に入ると、会長の岸、そして池田流と西住流の家元が佳代を迎えた。佳代は集まっている面子を見て、一体何があったのだろうか?と少し不安を感じたが、まずは話を聞いてからだ…と考え、これまでお世話になってきた池田流家元の美代子の横に腰掛けた。

 

「佳代、久しぶりですね。今年の正月以来でしょうか。元気そうで何よりです。今日は、佳代に少しお願いがあって、ここに来てもらった訳ですが…」

 

「家元、そのお願いは私から伝えた方がいいだろう。一応、その方が筋も通っているからね。」

 

佳代は戦車道関係で自分にお願いがあるようだと理解したが、そのお願いの内容を美代子が話そうとすると、会長の岸が制止した。どうやら、戦車道連盟としての正式な希望という事なのだろう。そうなると、名目とはいえ自分のスポンサーである連盟の希望を断る事はおそらく自分には出来ない。

 

「西君、昨年度の報告書で、西君の研究が順調に行っている事は、私も理解しているし、非常にありがたいことだと考えている。そこでだ、あの研究成果を実際の戦車を使って試験してみないかね?」

 

岸の言葉に、佳代は『どうしたものか…』と少し悩んだ。西の手元には本物の戦車は存在しないため、直接戦車を使用して実験が出来るのは魅力的だが、まだ自分の研究はそこまでの段階に至っていない事は、やっている自分が一番理解している。また実際の戦車を使用しなくても、戦車と同じような装甲板は用意しているため、試験は可能だ。そうなると、わざわざ戦車そのものを使って試験をする事は、佳代にとっては手間以外の何物でもなかった。だが、問題は岸の提案をどのように断るのか?という事だ。おそらくこの場に池田流と西住流の家元まで同席しているという事は、向こうには断られると困る理由があるはずだ。まずは、その理由を知ってからだろう…そう西は考えた。

 

「岸会長、現時点では、わざわざ実際の戦車を使用して実験を行わなくても、うちの研究所にある装甲板と測定装置で事は足ります。それにまだ、実際の戦車に搭載出来るようなレベルに研究成果は到達していないですから…。ですが、わざわざ私に実際の戦車に搭載して実験してみろと希望を出してきたという事は、何かあったという事ですか?」

 

流石に一筋縄では行かないか…と西の回答を聞いて、岸は思った。いざとなれば、池田流の家元から本当の理由を語らせれば良いが、まだ本当の理由を言う必要はないだろう。本当の理由は西が引き受けた後に言えば良い。もう少し突いてみるか…と岸は考え、佳代の質問に答えた。

 

「なるほど…まだ君の研究はそのレベルではないという事だね。だが、実際の戦車に使ってみる事で初めて見えてくる課題もあるのではないかね?一応名目とはいえ、我が連盟の基金から研究をしてもらっている訳だから、私としては本物の戦車に君の研究成果を実装して、その実験結果を早く見てみたいという希望もあるのだが…。」

 

流石に昭和の妖怪と呼ばれた政治家だ、なかなか本当の理由は言ってこないな…と西は感じながら岸の答えを聞いていた。たしかに岸が言うとおり、実際の戦車に使用してみなければ分からない事はあるだろう。したがって、岸の言っている事は一応理に適っている。しかし、どう考えても取って付けたような理由だ…と西は考えていた。おそらくこのまま問答をしていても埒があかない…そう考えた西は、一気に岸に切り込んだ。

 

「会長…、お互いに時間は貴重だと思いますから、腹を割って話しませんか?私としてもスポンサーである戦車道連盟の会長が私に『実際の戦車を使って実験を行え!』と言っている以上、それに逆らうつもりはありません。それに本物の戦車を使用出来る事は、私にとっても利益があることですから…。ですが、理由をきちんと話してもらえませんか?それにこのような話だけでしたら、この場に池田流や西住流の家元が同席する必要はないはずです。本当の理由は何ですか?」

 

西の返答に岸はニヤッと笑った。どうやら本当の理由を話さない限り、納得はしないようだ。

 

「ふむ…やはり本当の理由を話さざるをえんか…。西君、これから茨城県立の大洗女子学園という学園艦で戦車道が開始される。そして、この学園には池田流と西住流の両方から戦車が提供され、全国大会に出場する事になっている。しかし連盟としては、この学園の参入によって全国大会のレベルが下がる事は避けたい。そこでだ・・・端的に言うと、西君に一時的にこの学園の戦車道の面倒を見てもらいたいと考えている。ただし、それだけでは西君も引き受けるメリットがなかろう。それで、この学園の戦車を西君の研究で使用してもらっても構わない・・・という事だ。」

 

「お断りします。」

 

前言撤回で、西は岸の提案を即座に断った。これでは、あまりにも自分に負担がかかりすぎる。たしかに実際の戦車を使えるという魅力はあるが、その代わりに新しい学園で戦車道を教える?冗談はよして欲しい。自分はとうの昔に戦車道から足を洗った人間だ。しかし二点気になる事がある。それは、この新設学園に自分が居た池田流と西住流の両方が揃って戦車を渡した事、そしてこの場に両方の流派の家元が同席していることだ。そして岸の提案を断った瞬間、二人の家元が『まぁ、そうだろう』と頷いたことも気になった。この二人は、私が岸の提案を断る事を望んでこの場に居るのだろうか?

 

「西君、先程と言っている事が違うようだが、一応理由は教えてもらえるかね?」

 

「はい、理由は三つあります。一つ目は、私は大学の研究者として研究がメインの仕事ですから、片手間で戦車道を教えるような余裕はありません。二つ目は、私は昔戦車道をやっていましたが、それを止めてからもうかなりの時間が経過しています。今更戦車道を教えられるとはとても思えません。三つ目は、二つ目に絡んでいると思いますが、そもそも私は戦車道を指導出来るような資格を持っていません。ですから、たしかに実際の戦車を研究で使えるのは魅力的ですが、これだけの条件がついている以上、諦めざるを得ません。」

 

おそらくここまで言ってしまっては、岸は激怒するだろうな・・・と覚悟していた西だったが、意外にも岸は苦笑いするだけで、不愉快な表情すら見せていなかった。そして岸は、西が理由を言った事を受け、同席していた家元達の方に話をふった。

 

「まぁ、ここまでは我々が先程予想していた通りの反応ですな、美代子さん。あとの説得は、家元の方からお願いしますよ。」

 

「そうですね。ここから先は、この子をしばらく預かっていた私の仕事でしょうね。」

 

岸と美代子の二人のやり取りを聞いて西は、『ここからどうやって、家元は自分を説得するつもりなのだろうか・・・』と考えた。岸が『ここまでは予想通り』と言っている以上、最初から自分が断る事は想定していたようだ。そして、この状態でも自分を説得出来ると考えて家元達をこの場に同席させている以上、何らかの秘策があるのだろう。

 

「佳代。おそらく、あなたが不思議に思っている事を一つずつ説明しましょう。まず、新設校である大洗女子学園という学園に何故、私達二人が戦車を渡したのかという事ですが、これはこの学園のとある生徒にお願いされましてね・・・。この生徒は、私達は勿論の事、佳代、あなたにも関係がある子です。」

 

自分に関係している子?と言われて、西は不思議そうな表情を見せた。二人の家元と自分の三人に関係していると言われても、西は全く身に覚えがなかったからだ。そうしていると、美代子は話を続けた。

 

「17年前、あなたが私の元に連れてこられた日の事を覚えていますか?」

 

勿論、忘れるはずがない。17年前の1958年、自分は祖母と共に辻に連れられて池田流本家にやってきた。そして、そこから自分の人生は大きく変化し、現在の自分がある。

 

「あの時、あなたを私の元に連れてきた辻さんのお孫さんが、その学園の一期生として入学していましてね。その子が、その学園で戦車道を始めたいから戦車を譲って欲しいと私達にお願いに来たのです。辻さんから多大な恩を受けた私達としては、その子のためにもその学園を全面的にバックアップする義務があります。それは、あなたも理解出来ますね?」

 

「えっ?辻さんのお孫さんですか?ですが、何故そんな子が新設学園の一期生に?普通に考えれば、知波単学園か黒森峰女学園に行くと思うのですが・・・」

 

西の反応に、西住流家元のかほは、笑いながら「受験番号を書き忘れて黒森峰女学園は落ちた」という理由を教えてやった。西はその理由を聞くと大笑いしたが、しばらくして笑い止むと岸に向かって答えた。

 

「岸会長、先程の話ですが、引受させていただきます。私に池田流の戦車道が教える事が出来るかは自信がありませんが、やれるだけやってみます。私も辻さんに恩がある人間の一人ですから、これは確かに私の仕事です。」

 

岸は西の言葉に頷いたが、横から美代子が更に言葉を続けてきた。

 

「佳代?そこで教える戦車道は池田流のものではありませんし、西住流の物でもありませんよ。二つの流派から持ち寄った戦車で行うわけですから、使用する戦車もバラバラで統一性はありませんので、全く新しい戦車道になるでしょう。ですから、あなたが思うようにやってくれれば良いのです。私の孫の美紗子では、そのような事は出来ないでしょうが、うちに居た時から色々考えていたあなたなら、それが出来ると私は信じています。それと先程あなたは、自分には戦車道を指導出来る資格がないと言っていましたが、これがあれば誰もあなたの資格に文句をつける人はいないでしょう。」

 

そう言うと美代子は、持参してきた鞄から一つの封書を取り出し、佳代に手渡した。佳代が渡された封書の中身を確認すると、中には池田流の師範免状が入っていた。また同席していた西住流家元も、佳代に西住流の師範免状を手渡した。

 

「少し前に、娘のさほと孫娘のなほとも相談したのですが、天覧試合で見せてくれたあなたの実力ならば、西住流の師範免状を渡しても問題ないだろうという結論になりました。新しい戦車道を立ち上げるのにあたって、私達の流派の師範免状が何程役に立つかは分かりませんが、少なくとも文句を言ってくる人は減ると思います。ですから、何かの足しにはなるでしょう。」

 

「家元、こんな物を私に渡してしまっても良いのですか?私は、当の昔に戦車道から出てしまった人間です。たしかに、これさえあれば誰からも文句は出ないと思いますが、それにしても・・・」

 

「構いません。あなたであれば、立派に師範を勤められるでしょう。それに池田流と西住流両方の師範免状を持っているのは、たぶんあなただけでしょうから、そのあなたが新しい戦車道を始める事にケチをつける人は誰も居ないでしょう。佳代、あなたが戦車道に戻ってくるのは12年振りになると思いますが、よろしくお願いしますよ。」

 

「分かりました、家元。これからよろしくお願いします。」

 

そう言って、佳代は美代子とかほに頭を下げた。その光景を見ていた岸は、どうやら自分達が想定していた通りに話が進んだ事を確認し安堵するのと同時に、これで新設校に関する問題は解決されたと考えていた。

 

 

 

その夜 東京 ホテル 西佳代

 

 

戦車道連盟での話し合いの後、西は二人の家元に連れられ夕食を共にし、新設学園の話や辻の孫娘の話を色々と聞くこととなった。そして、自分がこれから教える事になる辻の孫は、一筋縄では行かない事を理解したが、二人の家元からは『この子は間違いなく辻の血を引き継いでいる。そして仲間を引っ張っていくだけのカリスマを持っている』と聞かされ、早く会ってみたいとも考えていた。

 

その後、二人の家元と別れた西は、東京での定宿としているホテルに戻ったが、流石にその日は色々とあり過ぎて非常に疲れていた。しかし、自分が戦車道の世界に復帰する事を、早く知らせなければいけない友人が居た事を思い出し、疲れた体で電話の置いてあるロビーに向かった。幸いにも、今日はギャラクシーリーグの試合がないため、この時間は暇をしているだろう。ロビーに降りてきた西は、ホテルの電話からその友人が居るはずの場所の電話番号を回した。

 

「もしもし美紗子?佳代です。」

 

『あれ?佳代ちゃんから電話かけてくるなんて、珍しいね。どうしたの?』

 

「うん。私、来週から戦車道に復帰する事になったから、一応連絡だけしておこうと思ってね。」

 

佳代の言葉に美紗子は一瞬沈黙したが、次の瞬間『はぁ~~~?』という大声が受話器から聞こえてきた。どうやら驚かせることには成功したようだ。

 

『ちょ・・・ちょっと待ってよ、佳代ちゃん。大学の先生辞めるの?それで、どのチームに所属する事になったのよ?契約金は?』

 

美紗子が矢継ぎ早に質問してくるのを聞いた佳代は、相変わらずセッカチだな・・・と思いながら答えた。

 

「あのね、美紗子。プロリーグに入るのではなくて、戦車道の師範になった・・・みたい。西住流から師範免状もらってね・・・」

 

その言葉を聞くや否や、美紗子のボルテージは一気に上がった。

 

『はぁ~~~?ちょっと、なんで西住流から師範免状もらっているのよ!大体、佳代ちゃん西住流なんかに所属していないでしょ!あっ!なっちゃんね?なっちゃんが引き抜いたのね?これから直ぐに抗議の電話をするわ!あと、うちのお祖母様にも連絡して、直ぐに止めさせるから、ちょっと待ってて!』

 

こちらが想像している通りの反応をしてくれるな・・・と佳代は楽しんでいたが、もうそろそろ種明かしをしてもいいか・・・と考えた。とはいえ、種明かしをしたら美紗子はもっと驚くことになるだろうな・・・とも思っていたが。

 

「美紗子、落ち着いて。西住流から師範免状をもらったのは本当だけど、一緒に池田流からも美代子様から直接師範免状をもらってるのよ。だから、私は今両方の流派の師範免状があるの。それで・・・来週から辻さんのお孫さんが一期生に居る大洗女子学園という新設学園に戦車道を教えに行く予定。勿論、大学の研究も絡んでいるんだけど、たぶん戦車道を教える・・・いえ、全く新しい戦車道を作るのが私の仕事になりそう。・・・??美紗子、聞いてるの?」

 

『そんな楽しそうな話、私何もお祖母様から聞いてないよ!大体、辻さんの孫が戦車道始めるなんて、私初耳よ?どういう事なの?』

 

やはり美紗子は知らされていなかったか・・・と佳代は思ったが、当然とも言える質問を美紗子がしてきたため、その日戦車道連盟であった話を美紗子に最初から聞かせてやった。美紗子はその話を黙って聞いていたが、突如佳代に話し始めた。

 

『お祖母様め・・・私が聞いたら、私が何かしでかすと考えて黙っていたわね・・・。それに、この分だとお母様もグルね。なっちゃんは何も知らないようだから、たぶんなっちゃんもこの話から除外されているという事か・・・。ただ、こんな楽しそうな話を聞いた以上は、黙って見ているつもりはないわ!佳代ちゃん、私もそのうち大洗女子学園に遊びに行くから、その時はよろしく。』

 

「駄目よ、美紗子。この話は、私が引き受けた話だから、美紗子の出る幕はないの。お生憎様ね。だいたい、ギャラクシーリーグの有名選手の美紗子が大洗女子学園に来たら、どんな騒ぎになるか美紗子も分かっているでしょ!もっと、自分の立場を考えなさい。ただ、そのうち辻さん達を知波単学園と黒森峰女学園に連れて行って本物の戦車道を見せようと思っているから、知波単学園で合流するくらいならいいよ。お互いにあの学園のOGだから、特に問題ないでしょ?それに・・・あの指揮刀を正当な持ち主に返さないといけないから、知波単学園には一度辻さんを連れて行かなければならないしね。」

 

美紗子は、佳代が自分の願いをあっさりと却下した事に不満をもったが、佳代が代わりに出してきた提案に乗ることにした。

 

『う~ん・・・若干、不満もあるけど、佳代ちゃんの提案に乗るわ。知波単学園に連れて行く日程が決まったら教えてね。ついでに早紀江さんや教祖様にも伝えて一緒に知波単学園に行く事にするから。それと指揮刀の事は了解したわ。たしかに、正当な持ち主が出てきた以上は、返した方が良さそうね。あと・・・佳代ちゃん、おかえりなさい。これからよろしくね。』

 

「ただいま、美紗子。こちらこそ、これからよろしく。」

 

知波単学園には卒業生にギャラクシーリーグの現役選手やその他の分野の有名人が大勢おり、時々そのOG達は学園艦が停泊している際に知波単学園を訪問する事がある。そのため知波単学園の生徒達は有名人が学園艦に来る事には比較的慣れていると言っても良い。また現在は、知波単学園は学園艦が改装中のため陸にあり、その事もOG達の訪問を容易にさせていた。しかし美紗子や早紀江など、開校当時の有名人が揃って来る事は流石にほとんどなく、来たとしても講演などで正式に学園から呼ばれた時ぐらいしかなかった。美紗子の言葉通りならば、今度自分達が学園艦を訪問するときは、美紗子だけではなくあの当時の主要メンバーはほぼ全員顔を揃える事になるだろう。あまり大事にすると、学園長の星野が怒り出すのではないかと佳代は心配したが、久しぶりに皆と会えるかもしれないという誘惑には勝てなかった。そして、黒森峰女学園に行く時は、もう一方の知り合いにも伝えておいた方がいいだろうな・・・と美紗子の反応を聞いて考えていた。




一応、次回でこの第四章は終了となります。ですから予定通りこの章で大洗女子学園で戦車道が開始し、最終章となる次章でいよいよ大洗女子学園の戦いが始まる事になります。最初は、大洗女子学園で戦車道を教える役を自衛隊に行った事にしている第二章・第三章登場キャラの高橋節子にしようかと思っていたのですが、考えてみればこの時代の自衛隊は完全な日陰者でして…とても自衛隊に公立高校が何か頼めるような時代ではなかったわけでして…順当といえば順当なのですが、西さんにその役をやってもらうことにしました。

今回も読んでいただきありがとうございました。
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