学園艦誕生物語   作:ariel

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昨年の9月から約半年にわたって書いてきた学園艦誕生物語も、今回で第四章は終わりのため、残りはあと一章分。ようやく終わりが見えてきたな…と思っています。最初に予定していたように五章構成に収められそうですが、最後はきちんと纏められるのだろうか…と少し心配な今日この頃だったりします。

なんとか、ガルパンの新作までには終わらせたいところですが(新作で新しい設定が出てきてしまうと、色々とやっかいな事になりそうなため、現在公開されている設定分までで書きたい所です)、どうなることやら^^;


第55話 いざ戦いへ

1975年 6月 上旬 大洗女子学園 学園長室

 

 

その日、大洗女子学園の学園長青山は、満面の笑みで一人の客を学園長室に迎え入れた。

 

「西先生、ようこそ大洗女子学園へ。学園長の青山一郎です。今回、我が学園が旧帝国大学の研究のお手伝いを出来るという事は大変名誉な事です。県教育委員会からもくれぐれも失礼がないようにと言われていますので、何かありましたら遠慮なく私に言ってください。これからしばらく、どうぞよろしくお願いします。」

 

「東北大学金属材料研究所の西佳代です。学園長先生にそのように恐縮されてしまっては、私が困ってしまいますから、気楽にしてください。しばらくこちらでお世話になりますが、こちらこそよろしくお願いします。」

 

先日の県教育委員会に召喚された大洗女子学園学園長の青山は、委員会の間は針の上の筵状態だった。県を代表する学園艦である茨城学園ですら、戦車道は地区大会しか出られない事に対して、新設校の大洗女子学園が全国大会に出場する。教育委員会の席では青山の説明に対して、ほぼ全ての委員から『青山先生は、政治力がおありですな』などと厭味たっぷりに言われた。しかし大洗女子学園の全国大会出場は戦車道連盟が既に認めており、その会長である岸信介や、前年から副会長に就任した中曽根康弘など、中央政界の実力者を相手に逆らう事は当然出来ないため、委員達も厭味を言う事がせいぜいだった。そのため委員会の席は紛糾したが、最終的には青山の希望通り、大洗女子学園で戦車道を行う事が決定され、それに必要な臨時予算も認められた。

 

またその席で、東北大学の教官が大洗女子学園に研究を手伝ってもらうために、しばらく学園に滞在する事も青山から伝えられたが、こちらについては特に紛糾もせずに認められた。これは現在の教育委員長が東北大学の前身である第三帝大の出身者のため、東北大学には並々ならぬ愛着があり、そこの教官が研究の手伝いを依頼してきた以上、自分のお膝元で断る事は出来ないという意思が働いた結果だった。いずれにせよこの件では、青山は教育委員長から直々に『東北大学の研究に関連する案件を、よく我が県に持ってきてくれた。』とお褒めの言葉を貰っていた。その事もあってか、青山の西に対する感情は、非常に良い物だった。

 

さらに戦車道連盟の会長である岸からは、今度東北大学から来る西は戦車道を教える事が出来るだけの資格があるため、大洗女子学園の戦車道を少し見てもらうようにとも言われていたため、青山はそちらの方でも西に期待していた。そして願わくば、暴走生徒の辻を抑えてくれることも。

 

「いや…我が学園が東北大学の研究のお手伝いが出来るとは、考えても居ませんでした。よろしかったら西先生には、うちの学園で化学や物理の授業を少し担当してもらいたいくらいですよ。」

 

「青山学園長…それは、無理ですよ。いえ、私が希望したとしても、私には授業をする資格がないので…。」

 

元々、本当に授業をやってもらえるとは思っていなかったため、青山も『やはりな』とは思ったが、『資格がない』と言うのは言い過ぎだろうと考えた。おそらく、うちの学園の生徒相手では授業をやっても無駄だと思っているのではないだろうか…。

 

「西先生…資格がないという事はないのではありませんか?岸会長からお聞きしていますが、西先生は東北大学でも若手のエースと言うではありませんか。たしかにうちの学園の生徒では西先生にとってレベルが低すぎるのかもしれませんが、それでも大学の先生の授業を聞く事が出来れば、彼女たちにとって何かの切欠になるかもしれないと、私は考えたのですが…」

 

「いえ…学園長。本当に資格がないのです。不思議に思われるかもしれませんが、大学の教官にとって教員免許は必要ではありません。ですから、私は高校の教員免許を持っていないのです。つまり高校で授業をする資格がありません。申し訳ないのですが…学園長の希望は叶えられません。」

 

西の言葉を聞いて、学園長の青山は大学教官のシステムを知らなかったため、『そうなのか…』と納得した。しかし、それを聞いた青山は別の件について少し不安を感じた。教員免許とは関係ないとはいえ、戦車道を教える資格の方は本当に大丈夫なのだろうか。

 

「西先生、戦車道連盟の岸会長から、西先生に戦車道を教えてもらうようにと言われています。失礼を承知でお聞きしますが、戦車道の教育についての資格は大丈夫なのでしょうか?」

 

青山の質問を聞いて、西は『この学園長はあまり戦車道の教育システムを知らないようだ』と思い、後々のトラブルを避けるためにも少し説明をした方がよさそうだと思い、青山に説明した。

 

「学園長、どうやらあまり戦車道の教育システムはご存知ないようなので、少し説明しますよ。まず戦車道を生徒達に教育する場合、中学生以下対象の場合は戦車道連盟が定めた指導者(丙)の資格があれば指導出来ます。そして相手が高校生の場合は指導者(乙)になります。ただ全国大会のような大規模大会に出場する場合、指導者(甲)があると望ましいと言われていますので、大洗女子学園の場合は全国大会を目指すわけですから、指導者(甲)の資格を持った人間が戦車道を教える事が望ましいでしょうね。」

 

「なるほど…ということは、岸会長が西先生ならば問題ないと言っていたという事は、西先生は指導者(甲)の資格があるという事ですか。たしか、以前私が茨城県の教育委員会に居た際、茨城県下の公立高校で何人かの教員に戦車道の指導者(乙)の資格を取らせて、戦車道を始めようという話がありましたから、あれよりも一段階上の資格の方に教えてもらえると言う事は、ありがたいことです。」

 

「あの…、学園長、まだ話は終わっていません。それに私は、指導者(甲)など持っていませんよ?大学の研究で忙しく、そんな実務経験が必要で取得が面倒な資格を取る余裕はなかったですから。」

 

西の答えを聞いて、青山は『あれっ?』と思った。岸からは、指導者として問題のない人を派遣すると言われていたため、てっきり西が指導者(甲)を持っていると思ったのだが、指導者(乙)しかもっていなかったのか?と考えたようだ。西は、どうやら青山が大きな誤解をしていそうだな…と思い、もう少し説明を付け加える事にした。

 

「ちなみに、私は指導者(乙)も持っていないですからね。戦車道連盟の規定では、指導者の条文にはもう一項ありまして…。元々、外国の支援を受けて作られた学園艦で外国人の教官が教えるための条項なのですが、『戦車道連盟が認めた役職の者および資格を持つ者も指導者としての資格を有する』という文があるのです。たとえば、自衛隊の戦車教導隊の人間などはこちらに該当します。そして私の場合もこちらに該当していまして、私は池田流のしかるべき資格を持っていますので、指導には問題ありません。」

 

「なるほど…そのような条文があるのですか。何も知らずに勝手な事を言ってしまい申し訳ありません。ちなみに、西先生は池田流でどのような資格をお持ちなのですか?いえ、興味本位で聞いてはいけないのかもしれませんが…」

 

「私ですか?私は先日、池田流の師範免状を貰っていますので、一応師範という事になるのでしょうね。ですから指導者の資格としては問題ないと思います。現在、黒森峰女学園で戦車道の顧問をしている野中は私の古い友人ですが、彼女はたしか西住流の師範代を持っていたと思いますから、野中よりも一つ上になりますので、ここで戦車道を教える分には問題ないでしょう。それに私は、西住流からも師範免状をもらっているので…。」

 

西の何気ない答えを聞いて、青山は自分がこれまで非常に失礼な事を西に言っていた事を理解し焦った。黒森峰女学園の戦車道顧問をしている野中美鈴には研修時代に青山は色々とお世話になっていたが、あの名門黒森峰女学園で指導している野中よりも一段階上の資格を西は持っていると言う。そして師範免状を持っているという事は、西は新しい流派を開く事が出来るだけの資格があるという事だ。また池田流だけではなく西住流の師範免状も持っているという事には更に驚いた。あれだけの巨大流派である以上、それなりに師範免状を持っている人間は居ると思うが、それでも両方の流派から師範免状を貰っているこの女性は一体何者なのだ…という思いと、何故そのような女性が大学で研究者をやっているのかという疑問が出てきた。

 

「す…すいません。あまりの事に少し驚きまして…。知らなかったとはいえ、先ほどは大変失礼な事を言ってしまいました。申し訳ありません。それにしても、西先生は池田流と西住流の両方の師範免状を持っているという事ですが、これは珍しい事ですよね?両方とも大流派ですから師範免状はそれなりに出しているのでしょうが、それでも両方の流派は全く違う思想で動いていたと思います。何故、そのような全く違う流派の師範免状を両方とも持っているのですか?」

 

「学園長先生、面倒なルールなので知らない方が普通ですから、あまり気にしないでください。それと、両方の流派の師範免状を持っているのはたぶん私だけですかね…。ちょっとした事情がありまして…。あと、池田流も西住流も巨大流派なので師範代を持っている者は各県の支部長クラスを含めてかなりの数が居ますが、師範を持っているのはどちらも私を入れて四人ずつしか居ません。ですから、私がこの学園で好きなように戦車道を教えても、戦車道連盟や池田流、そして西住流から文句を言われる事はないと思います。」

 

西は半分笑いながらそう答えたが、青山は西からの答えを聞き唖然とした。たしかに、以前この学園艦にやってきた西住流家本のかほは、『その子の腕は、この西住流家元の私が保証します。』と言っていたが、保証どころか、西住流の頂点に近い地位に位置する人間を送り込んできた事になる。またもう一方の流派である池田流でも、西は同じような評価を受けていると言ってもいい。そんな女性が、こんな新設学園で戦車道を教えて何かメリットがあるのか?まして、自分の学園にはあの傍若無人な辻正子まで居る。間違っても彼女が西に失礼な事をしないように、あらかじめ一言言っておかなければならない。青山のそんな気苦労を理解しているのか、西は学園長を元気付けるために一言声をかけた。

 

「学園長先生?一応、池田流家元の美代子様から辻さんのお孫さんの件は聞いていますので、安心してください。私はこれでも知波単学園での現役時代は、辻さんよりも更に問題児を二年間補佐してきた経験がありますので、あのタイプの人間の扱い方はよく分かっていますから。」

 

その言葉は、青山にとって正に天の声のように聞こえたのだろう。西の言葉に青山は『是非よろしくお願いします。』と何度も頭を下げた。

 

 

 

同日 学園艦 最上甲板

 

 

「辻さん!戦車が来たよ!港に今移動中みたいだけど、流石にあれだけの数の戦車が揃うと凄いね!大洗の町の人も大洗港に見に来ているみたいだよ。私達も早く港に降りて見にいこうよ。」

 

「あっ!本当だ。これでやっと戦車道始められるよ。さぁ、みんな戦車を受け取りに行くよ!」

 

そう言って、辻正子は中村を始めとして大勢の一期生と共に、学園艦から港に降りる準備を始めた。先月、辻が池田流や西住流から戦車を受け取った話は、あっという間に全校生徒に広まり、辻の積極的な勧誘もあってか、100人程の一期生が辻の誘いに乗って戦車道を行う事を決めていた。その中には小中学校で戦車道を実際に行った経験がある人間も何人か含まれていたが、辻も含めて全く経験のない者も多く居たため、戦車がくるまでの間、戦車道について図書館で調べられる限りの事を勉強したようだ。そして今日、いよいよ引き渡される戦車が学園艦に来る事を知って、辻達は今か今かと学園艦の最上甲板から港の方を見ていた。正午を過ぎた頃、大洗町から港に向かって進んでくる戦車の隊列を中村がいち早く発見し、辻達のボルテージは一気に最高潮に達する。

 

港に降りた辻達を待っていたのは、池田流と西住流からやってきた20両の戦車と大洗町の住民達だった。その日、戦車が大洗町を通過して港に移動する事は、予め住民にも知らされていたが、住民達は茨城学園の戦車道のイメージから、せいぜい2、3両の事だろうと考えていた。しかし、いざやってきた戦車は20両を数え、自分達の想像以上の数の戦車を驚きながら見守る事になる。そして手の空いている住民達が、自然と港に集まってきたようだ。その姿を見た辻は、これは絶好の宣伝の機会だと考えたのか、中村に学園艦からスピーカーを持ってこさせると、その場にあった最も大きな戦車であるポルシェ式ティーガーの上によじ登り、マイクを握った。

 

「皆さん、大洗女子学園の辻です。地元の皆さんが折角こうやって集まってくれたので、この機会に私達大洗女子学園の戦車道開始についてお話したいと思います。」

 

辻の声がスピーカーを伝わると、大洗女子学園で戦車道を行う予定の生徒は勿論、集まってきた住民も一体何を言うのだろうか・・・と興味を持って辻に注目した。

 

「私達大洗女子学園は、これから戦車道に参入する予定ですが、皆さんが考えているような地区大会などのような小さな大会ではなく、毎年テレビ中継されている全国大会出場を目指して戦車道を行う予定です。この大会に公立艦として参加するのは、私達の大洗女子学園が初めてになりますが、全国大会の優勝旗を大洗に持って帰れるように頑張りますので、地元の皆さんも応援よろしくお願いします!」

 

「正子ちゃん!頑張れよ、俺たちも応援するから。」

 

「流石正子ちゃん、よくこれだけの戦車集めたね!全国大会楽しみにしているよ!」

 

辻の声に、集まった住民達は口々に声援を飛ばした。現在、大洗女子学園の学園艦は出航前の最後の整備のため大洗港に停泊している。そのため、休みになると生徒達は大洗の商店街に繰り出して、買い食いなどを楽しんでいたため、付近の住民は大洗女子学園の生徒達の事をよく知っていた。そのため、その生徒達のまとめ役である辻は、大洗町の商店街では有名人であり、その辻が『全国大会に出るんだ!』と言った事を、ほとんどの住民達は好意的に見ていた。辻が戦車から降りると、池田流から譲ってもらった三式中戦車から一人の頑固そうな老齢の男が降りてきて、辻の前に立った。

 

「流石は、あの辻さんのお孫さんだな。あ、自己紹介するが、俺は池田流本家で戦車の整備長をやっている者だ。今回、家元から言われてしばらくの間、この学園艦で戦車の整備とその教育にあたる事になっている。そういうことで、辻のお嬢ちゃん、しばらくよろしく頼むな!」

 

「池田流の家元さんが、そんな事を・・・おじさん、来てくれてありがとう。私達しっかり勉強するから、整備の仕方とか色々教えてね。」

 

「あぁ、任せておけ!そういえば、辻のお嬢ちゃん。家元からは、西のお嬢ちゃんがこっちに来て戦車を教えると言っていたんだが、まだ来ていないのか?まぁ、今や向こうは旧帝国大学の偉い先生になっちまったから、お嬢ちゃんなんて言っていたら怒られそうだがな・・・ワハハハ」

 

「西・・・さん?いえ、私はまだ何も知らないけど・・・。たぶん学園長が知っていると思うから、まずは学園長のところに案内するね。それと、戦車を学園艦に上げて倉庫にしまいたいから、移動よろしくね。」

 

「へいへい・・・辻のお嬢ちゃんは人使いが荒いな。まぁ、あの辻さんの孫なら当然と言えば当然かもしれんが・・・」

 

そう言うと、整備長と名乗った男は、自分が搭乗してきた戦車に戻ると、学園艦への移動を開始した。そしてそれに続くように、大勢の住民と学園の生徒が見守る中、残りの戦車も移動を始めた。

 

 

 

学園艦 戦車格納庫

 

 

3時間後、全ての戦車が学園艦の最上甲板に移動し、用意されていた赤レンガ造りの倉庫の中に収納された。辻や、集まった大洗女子学園の生徒達は、倉庫内に並んだ戦車の姿を見て、いよいよ自分達も戦車道を開始出来るんだ、との思いに浸りながら、戦車をここまで運んできてくれた男達から、色々と戦車について話を聞いていた。そうすると、倉庫の中に学園長の青山が一人の若い女性を連れて入ってきた。そしてその姿を見た瞬間、先程整備長と名乗った男性が、池田流と西住流から戦車を運んできた人間に対して声を張上げた。

 

「整備員、全員集合!四列横隊!」

 

その瞬間、それまで生徒達と気楽に話していた男達は、弾かれたように動き出し、整備長の指示に従って運んできた戦車の前で四列横隊に並んだ。大洗女子学園の生徒達は、急にモードが切り替わった男達の姿を見て、辻も含めて驚いたようにその光景を見つめていた。並んでいる男達の前に学園長と女性が来ると、整備長が一歩前に踏み出して声をあげた。

 

「西師範!池田流及び西住流より指定の戦車の搬入が終了しました。全20両、移動によるトラブルはなく、直ぐにでも使用可能です!」

 

その言葉を聞き、学園長に連れられてきた女性が答えた。

 

「整備長、ご苦労様です。戦車20両、たしかに確認しました。これからしばらくの間、よろしくお願いします。それと、またご一緒出来て光栄です。」

 

そう言って西が頭を下げると、男達は一斉に敬礼した。その姿に、この目の前の女性が先程整備長が言っていた西という人なのか・・・と辻は理解した。先程の整備長の言葉では、自分の姉が現在居るような旧帝国大学の先生で、なおかつこれだけの男達に指示が出せるような立場の人間・・・、辻はこの人はあまり怒らせない方が良さそうだ・・・と瞬時に認識した。辻が少し緊張して西の方を見ていると、西の方から辻に話しかけてきた。

 

「あなたが辻さんね。先程、港であなたが演説していた姿は学園艦から見ていたけれど、度胸の良さはお祖父さん譲りね。これからしばらく、あなた達に戦車道を教える事になる西です。よろしくね。」

 

「は・・・はい!よろしくお願いします。西先生!」

 

一緒に居た学園長の青山は、あの辻が西にはえらく素直に接している姿を見て、この人なら辻を抑えられる・・・と思ったようで、少しホッとしていた。辻に話しかけた西は、倉庫内に居る大洗女子学園の生徒達にも話しかけた。

 

「全員、少し私の話を聞いてください。これからしばらくの間、戦車道の研究のために学園艦に住むことになりました東北大学の西です。池田流や西住流の家元からは、ここで戦車道も教えるようにと言われていますので、皆さんにこれから戦車道を教える事にもなっています。ですから、よろしくお願いしますね。」

 

その言葉を聞いた生徒達は、この人が自分達に戦車道を教えてくれる先生なのか、という事を理解したようで、口々に『よろしくお願いします』と言い、頭を下げた。そんな中、辻の傍に居た中村は首をかしげるような挙動で辻に小声で話かけた。

 

「辻さん、旧帝国大学の先生に教えてもらえるなんて凄い事だよ!やっぱり、『教授』って呼んだ方がいいのかな?あと・・・私どこかで西先生の名前を見たことがあるような気がするんだけど、思い出せないんだよね・・・。」

 

「へぇ~、そうなんだ。そのうち西先生本人から色々話を聞いていれば思い出すんじゃない?それにしても・・・優しそうな感じの先生だけど、絶対に妥協はしてくれなさそうな雰囲気があるよね。学園長と違って、あまり逆らわない方が良さそうだな・・・というのが私の第一印象だよ。中村はそう思わない?」

 

「辻さん・・・学園長と違ってというのは、ちょっと・・・。でも、私も全く同じ感想。なんというか、私達が池田流本家に押しかけた時にお会いした、家元の人達と同じような雰囲気だよね。でも、そんな先生に教えてもらえるのは、私は楽しみだよ。」

 

「そうそう、あの時に会った家元の人達と同じ雰囲気だよね。まぁ、折角教えてくれるんだから、全国大会で黒森峰女学園を倒せるように私も頑張ろうかな。」

 

自分の傍で繰り広げられている辻と中村の会話は、西の耳にも入っていたが、その様子を西は興味深そうに眺めていた。そして、辻が本当に『黒森峰女学園を倒す』ことを目的に戦車道を行おうとしている事を知り、これは鍛えがいがありそうだ・・・と内心で考えていた。

 

こうして大洗女子学園は公立艦としては初めて、戦車道連盟が主催する全国大会に出場出来る規模の戦車道を開始することになる。そして西や辻によって、池田流でも西住流でもない、非常にユニークな戦車道がこの学園艦で行われる事になる。




以上で第四章は終了です。これで大洗女子学園が出来て戦車道を開始する事になりました。アニメを改めて少し見直したのですが、全国大会の前に予選ってなかったですよね?ですから個人的には、あそこに出てきた学園艦が全国大会に出場している全てなんだな・・・と解釈しています。ですからこの物語では、全国大会は戦車を多数持っている少数の学園だけの大会で、戦車を少数しかもっていない大多数の学園は地区大会という名前の別の大会に出場しているという設定にしています。

正直言いますと、この第四章はかなり難産でした。戦車道の試合が全くない章を書くのは久しぶりだったため、いざ書こうとした時に、さぁどうする…となった部分も結構ありました。そういう意味では、今回の第55話でなんとかこの時代を書ききれたかな…と思い、少しホッとしています(流石にここまで書いてきて途中でヘタってしまうのは、やりたくなかったですから)。

次回からが最終章となる第五章になる予定ですが、第五章の開始は第四章の一年後を予定しているため、その間のエピソードという事で閑話を入れるかもしれません。いずれにせよ、次回の投稿は少し遅れると思いますので、気長に待ってもらえたらな・・・と思っています。

今回も読んでいただきありがとうございました。
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