1975年 7月 知波単学園
「はぁ~、終わった…。もう講演はコリゴリ・・・」
翌日の午前中、池田美紗子は機甲科の在校生達に対して一時間の講演を無事に終了した。途中、西佳代や村上早紀江による手助けもあったが、学園長の星野の評では、期待以上の講演会だったようで、在校生達からも非常に受けは良かったようだ。
佳代によって知波単学園に連れてこられた大洗女子学園組は、この後新幹線で九州に向かいその日の内に熊本にある西住流本家に移動しなくてはならないため、美紗子の講演会が終了すると直ぐに荷物を纏めて、知波単学園の校門前に集合した。校門前には、月曜日から今日まで戦車道について色々教えてくれた知波単学園の隊長福田遼子や副隊長の三杉枝里子、そして知波単学園の機甲科の生徒達が既に待っていた。
「辻さん、短い間だったけど私達も楽しかったわ。来年度の全国大会から辻さん達の学校も出場してくるみたいだけど、本番で戦う事になったらお互いに頑張りましょう。それと、これから練習大変だと思うけど頑張って。」
たったの三日間であったが、辻達は知波単学園の福田達から様々な操縦技術や戦術などを教えてもらっていた。そして来年度から本格的に戦車道の試合に参加してきたら一度練習戦をしようと約束をしていた。そのため、福田の激励に辻達も『来年度からよろしくね!』と返した。そしていよいよ辻達が知波単学園を後にしようとした時、一緒に居た美紗子が福田に何か耳打ちした。美紗子の耳打ちに福田は少し緊張したが、やがて意を決したような表情になると、自分が大切に持っていた指揮刀を辻に差し出した。
「辻さん、これ・・・私達がずっと借りっぱなしだったけど、辻さんが戦車道をやる以上は、辻さんに返した方がいいかな、と美紗子様達と相談してね。指揮刀にはちょっと大きいかもしれないけど、使って頂戴。」
辻は、一体なんでこんな物を自分に渡すのか?と不思議そうな顔をしたが、よく分からないままに福田が差し出した日本刀を受け取った。
「あの・・・この刀は?」
辻の疑問に対して福田は沈黙していたが、横から美紗子が答えた。
「あ~、ごめん。辻さんは知らないか。これ・・・私が知波単学園に入学する時に、辻さんのお祖父さんから指揮刀として受け取った刀なんだよね。それで、私が卒業する時に次の隊長に決まっていた佳代ちゃんに渡したら、いつのまにか知波単学園の隊長が代々受け継いでいく事になったの。ただ辻さんが戦車道を始める以上、辻さんに返した方がいいかな・・・と思ってね。」
「これ、お祖父様の刀?」
「えぇ、あなたのお祖父さんが行方不明になる前に、私が受け取ったの。今は指揮刀というよりは、知波単学園の隊長のシンボルというか・・・守刀のような役割になっているけど、辻さんに返すね。その方が、あなたのお祖父さんも喜ぶと思うから・・・。」
辻は、美紗子の言葉を聞いて、自分の祖父が使っていた刀をジッと見つめて胸に抱えこんだが、ふと周りを見ると福田や周りに居る知波単学園の生徒達が、残念そうな顔つきで自分が抱えている刀を見つめている事に気付いた。
「美紗子さん、ありがとうございます。でも・・・これは知波単学園で使ってください。私はお祖父様に会った事も話した事もないけど、たぶん私のお祖父様ならそれを望んでいると思うから・・・。それに私は辻家の人間だけどお祖父様とは違うし、これから自分の力で新しい戦車道を行うと決めているの。だから、これは私には必要ないわ。福田さん・・・これは、あなたが使ってください。それと、これまで私のお祖父様の物を大切に受け継いできてくれてありがとう。」
そう言うと辻は、抱え込んでいた刀を再び福田に手渡した。福田は少し驚いたような顔つきになったが、再び自分の手元に戻ってきた刀を大切そうに抱えた。
「辻さん、本当にいいの?」
「うん。これからも大切にしてね。」
『知波単学園に辻を連れてきて、この刀を辻に返さなくてはいけない』と考えていた佳代や美紗子は、辻が受け取らなかったことを最初は少し驚いたが、辻が言った理由を聞いて『たしかに、自分達が知っている辻の祖父ならば、そう考えるかもしれないな』と考えた。そして佳代は『受け取る、受け取らないは辻さんの判断だから良いとして、新しい戦車道を本気でやるみたいだから、これからもガンガン鍛えてあげるわ。』と辻に言い、それに対して辻は『お手柔らかに・・・』と返した。
東海道新幹線内
当初辻達は、一度大洗女子学園の学園艦に戻り、そこからヘリコプターで黒森峰女学園の学園艦に向かう計画だったが、事前に西が連絡した西住なほからの提案で、熊本にある西住流本家に移動し、翌日そこからなほ達と共に黒森峰女学園に移動する事になっていた。そのため知波単学園を出た辻達は、名古屋駅から新幹線で一路九州に向けて移動していた。また今回が辻達にとっては初めての新幹線であり、特に一度乗ってみたいという夢を持っていた副隊長の中村は興奮していた。
「辻さん、新幹線だよ!新幹線。私、一度乗ってみたかったんだけど、夢が叶ったよ。教授、こんな素敵な計画を立ててくれてありがとございます!」
「中村・・・それは、もういいから、真田や近藤を見習って静かに乗りなさいよ・・・。ところで教授?西住流の本家で西住なほさん達と合流するという事はさっき聞いたけど、なほさんって教授の現役時代はどういう人だったの?」
中村の興奮とは対照的に、砲手の真田や通信手の近藤は、知波単学園の練習で相当絞られたようで、新幹線に乗ってすぐに寝てしまった。そのため中村としては、自分の話し相手として辻を選んだようだが、辻はそんな事よりもこれから行く西住流の人間について気になっていたようだ。
「なほさんの現役時代ね・・・。他のみんなは近寄りがたい感じだと言っていたと思うけど、私や美紗子には結構気さくに接してくれたから、私にとっては面倒見のいいお姉さんと言った感じだったかしらね。もっとも私にとっては、その時副隊長だった島田真由子さんとの関係の方が多かったから、現役時代はなほさんとあまり深い関係ではなかったかな・・・。」
「あの・・・教授?その島田真由子さんというのは、広島カペラの島田選手の事ですよね?教授は、島田選手とも関係していたのですか?」
「あれ?中村には言っていなかった?私と真由子さんは当時副隊長同士で、お互いに騙したり騙されたりした仲だったのよ?まぁ、肝心の天覧試合の時は私の方が騙し勝ったから、その後の懇親会の席では相当悔しがっていたけどね。」
「騙したり、騙されたりする仲って・・・教授、現役の時から何やっていたのですか?」
佳代の告白に、辻も中村も若干引いていたが、続いて佳代から聞かされた当時の事情や、実際に佳代が天覧試合の時に行った事を聞かされた二人は、半分呆れたような表情を浮かべていた。
「あなた達、何を呆れたような顔しているのよ?それくらいやらないと、勝てない相手だったのよ。どうしても勝ちたい時は、それくらいやる覚悟でないと駄目よ。」
西の言い訳がましい言葉に、二人は『やっぱり教授は西住流の師範だ』と変な納得をするのと同時に、これから西住流本家ではその真由子とも会う事になるため、一体西はどのように挨拶するのだろうか・・・と考えていた。
夕方 熊本 西住流本家
「佳代、久しぶりだな。それと、そっちが佳代が話していた子達か?」
「えぇ、なほさん。この子が辻さんで、副隊長の中村さん、砲手の真田さんに、通信手の近藤さん。私が今教えている子達です。辻さん達もなほさんにご挨拶しなさい。」
西住流本家に到着した佳代達は、玄関の所で西住なほと会う事になった。どうやら来る時間は大体分かっていたようで、少しでも早く会おうと考えていたなほが、玄関で待っていたようだ。辻達は、佳代に促されて少し緊張しながら目の前のなほに挨拶した。なほは、隊長である辻に対して特に興味を持って四人を眺めていたが、玄関でこれ以上話すのもどうかと思い、すぐに居間に案内してくれた。居間には既に黒森峰女学園の卒業生である島田真由子や当時の小隊長達、そして佳代と同級生の桜井芳子が待っており、久しぶりの佳代との再会を喜んでくれた。
辻は、佳代は知波単学園の出身者の筈なのに黒森峰女学園の人間とも仲が良い事に驚いたが、特に新幹線の中で佳代から話しを聞いた『騙し騙された仲』だった島田真由子に興味を持ったようで、自己紹介が一段落ついた時に真由子に話しかけた。
「あの・・・教授から、島田さんは教授と現役時代に騙したり騙されたりした仲だと聞いたのですが、知波単学園と黒森峰女学園の間では、そんなに凄い駆け引きがあったのですか?」
辻の質問に、一瞬周りは静まり返ったが、次の瞬間当事者の真由子と佳代を除いた全員が吹き出すように笑い出した。そして周りの人間が大笑いする姿を真由子と佳代は睨みつけたが、なほが辻に対して事情を話してくれた。
「そんな事を佳代から聞いていたのか。たしかに、天覧試合で戦うにあたり知波単学園と黒森峰女学園の間で様々な駆け引きがあったし、その中心人物はこの二人だった事は間違いないな。だがあの時の話は、騙したり騙されたりと言うよりは・・・黒森峰女学園の私達が一方的に騙されたという方が正確だと・・・」
「その通りよ!そこに居る知波の魔女に完全にしてやられたと言っても過言ではないわ。佳代、勝手にあなたも被害者に入ってもらっては困るわね。いい、辻さん?そこに居る知波の魔女は、本当にいい性格しているから、指導してもらう時は気を付けないと、碌でもない性格になるわよ。」
なほの言葉にかぶせるように真由子が話すと、笑いの輪は更に大きくなった。そして一人憮然とした表情の佳代は、言い訳がましく答えた。
「真由子さん、そこまで言いますかね・・・。第一、あの時は勝手に皆さんが私の性格を誤解していただけですし。知波の魔女と言うのは酷いと思いませんか?それに、西住流は勝つためにあらゆる努力を惜しまない流派ですよね?私は皆さんを見習っただけで・・・」
「佳代、あんたあの時は完全に池田流でしょ!第一、一万歩譲って天覧試合の時は勘弁したとして、その後の二回の練習戦の時も色々やってくれたじゃない。特に桜井が隊長をしていた時の三年目の練習戦なんて、この私ですらあそこまでやるか・・・と思ったくらいよ。桜井なんか終わった後、放心状態だったし・・・、そうでしょ、桜井?」
「えぇ、今はもう笑い話として楽しめますが、当時は本当に落ち込みましたよ。佳代さんの事が、本当に魔女だと思えたくらいですから。たぶん、明日会う事になる美鈴も同じだと思いますよ。」
佳代の言い訳に対して、瞬時に真由子と芳子から反論が入る。それを聞いた辻達大洗女子学園組は、西住流の人間からここまで言われる佳代は現役時代一体何をやらかしたのだろうか・・・と考えていた。
「まぁ、佳代が指揮官として優秀な事は私が認めるが、佳代に現役時代に煮え湯を飲まされた黒森峰女学園の人間は大勢いるから、たぶん『教授』と言うよりは『知波の魔女』と言った方が、黒森峰女学園で通じるのは確かだな。」
「なほさんまで、そう言いますか。もう当の昔に戦車道から離れているのですから、そろそろ勘弁してもらってもいいと思うのですけどね・・・。」
佳代の言葉に対して、黒森峰女学園のOG達は『いつのまにか、西住流の師範まで貰っている佳代が、今更何を言うか』という表情を見せていた。また辻達は、自分達が想像している以上に自分達の指導者である佳代が、黒森峰女学園や西住流からマークされている事を理解した。
「あの・・・こんなに教授が西住流や黒森峰女学園からマークされているのでしたら、どうして今回は私達が黒森峰女学園に見学に行く事が認められたのですか?」
ある意味、当然と言えば当然の疑問を辻が口にしたが、その質問に対してなほは笑いながら答えてくれた。
「まぁ、皆こうは言っているが、佳代は現役時代にそれくらい優秀だったと言う事だ。それとギャラクシーリーグには来ずに自分の道を選んだ佳代が、再び戦車道に戻ってきてくれた事は、私達にとっても嬉しい事だからな。その佳代がお願いしてきた以上、それを叶えてやるのが、仲間としては当然だろう?だから、今回はお前たちにとって折角の機会なのだから、しっかり黒森峰女学園で戦車道を学ぶんだな。それに、お前たちは黒森峰女学園と西住流を戦車道で倒す事が目標なのだろう?お前達の目標がどうであれ、新規参入してきた学校が高い目標を設定して頑張ろうとしている以上、西住流としてはそれを支援する。まぁ、そんなに簡単に勝たせてやるつもりはないがな。」
なほの言葉に、周りに居た真由子達、西住流の門下生達も頷いた。辻達は、既になほ達が自分達の目標が黒森峰女学園を倒す事だというのを知っていた事はうすうす気付いていたが、それを知っていても自分達の手助けをしてくれる事には驚いた。
「なほさんの言った事は本当よ。私は辻さん達を教える事を、西住流の家元のかほさんからお願いされた時に、『例え西住流を倒す事が目標だとしても、それだけの高い目標に向かって頑張っている以上は手助けをするつもりです』と聞いているから。たぶん、家元のかほさんは辻さん達が何処まで成長するのか、楽しみにしていると思うわ。」
「教授・・・なんか、私達モルモットのような感じですね。」
辻の言葉に周りは再び大笑いしたが、真由子が辻の言葉を訂正した。
「モルモットというより、知波の魔女とその弟子たちって所ね。あなた達が、どこまで今の戦車道を掻き回すか、私も楽しみにしているわ。だから、頑張りなさい。ところで・・・佳代?あんた黒森峰女学園に居る野中には、まだ何も連絡していないんでしょ?本当に大丈夫なの?」
「学園長の真由子さんの御祖父様には、私や辻さん達が機甲科を見学に行く事、それとなほさん達も一緒に母校を訪問する事は伝えてありますよ。ですから、宿泊場所などは問題ないと思いますが。」
真由子の言葉を意図的に誤解して佳代は答えた。勿論、真由子達は佳代が意図的に回答をはぐらかした事に気付き、ヤレヤレ・・・と感じていたが、流石に佳代とは同級生である桜井が呆れたような口調で佳代に答えた。
「佳代さん・・・やっぱりいい性格していますね・・・。たぶん、目の前に佳代さんが現れたら、美鈴は物凄く動揺すると思いますし、なほさんや私達まで居たら、卒倒するんじゃないですかね・・・。まぁ、私としては一度くらい美鈴を驚かせたいと思っていましたから、反対はしませんけど・・・知波の魔女さんのお先を担がされるのは・・・。」
「芳子、何を今更な事言っているんですか。芳子も結局、美鈴に連絡しなかったのだから、芳子もこの場合加害者の一員です。勝手に私のせいにされたら困ります。」
「えっ、私も悪いの??そ・・・それに、私はなほ様や真由子さんにそうしろと言われただけで・・・」
「と、このように現役時代は、桜井は佳代に完全に手玉に取られていたわけだ。お前たちも、何故私達が佳代の事を知波の魔女と呼ぶのか、分かっただろう?」
目の前で、第三者だった筈の桜井がいつの間にか加害者の一員にされかかった事を見て、辻達は、途中で割って入ったなほの解説に非常に納得した。そして心の中で、明日佳代に奇襲される事になる、黒森峰女学園の戦車道顧問である野中美鈴という女性に同情した。
翌日 黒森峰女学園 戦車格納庫前
「浅野!指示が遅いわよ!あなたは隊長なのだから、状況をよく見て、早め早めに指示を出さないと戦車隊全体に被害が出ますよ。それに松井!あなたは副隊長なのだから、隊長をもっと補佐してあげなさい。こんな事では、去年みたいにまた知波単学園との練習戦で遅れを取る事になりますよ!私は、あなた達に私のような経験をさせたくないから、こうやって指導しているのです。頑張らないと、あなた達も知波の魔女にやられるわよ!」
黒森峰女学園では、その日の戦車道の練習が始まったが、練習中に少し気の抜けた対応があったようで、直ぐに顧問の野中美鈴の声が響いた。黒森峰女学園の現役生徒達にとっては、怒られる時に何度も野中に言われるフレーズに『あなた達も知波の魔女にやられるわよ!』がある。現在の隊長である3年生の浅野由紀や副隊長である2年生の松井恵美も、入学した頃から絶えず聞かされてきた決まり文句だったが、野中の言う『知波の魔女』という物を詳しく説明された事は一度もなく、何かの比喩表現なのだろうな…とこれまで考えてきた。
そしてその日も、野中のいつもの決まり文句を聞かされたが、その日はこれまでとは少し異なり、それに続く別人の声が聞こえた。
「美鈴さん、相変わらずですね・・・。もうそろそろ、私の事を知波の魔女と呼ぶのは止めて欲しいのですが。それに、私の作戦にまんまと嵌ったあなた達が悪いだけでしょうに。」
その声に顧問の野中が振り向くと、そこに居るはずのない人間の姿が居ることに気付き、思わず『なんで知波の魔女がここに!』という声を出してしまった。そしてその言葉に、黒森峰女学園の現役生達は、顧問の野中が恐れていた知波の魔女というのは比喩表現ではなく現実に居た人間だという事が分かり、野中の後ろから出てきた女性がその知波の魔女本人だという事を理解し、固唾を飲んで事態を見守った。
「な・・・なんで、佳代さんがここに居るんですか!ここは知波単学園ではなく黒森峰女学園ですよ、佳代さんが来る場所ではないでしょ!いつの間にか、佳代さんは西住流の師範になっているし、最近寝耳に水な事ばかりじゃないですか!また私を現役時代のように苛めに来たのですか!」
野中のあんまりな非難に佳代は少し首をすくめると野中に事情を説明した。
「いや・・・私は、別に美鈴を苛めた事はないですよ?それに今日から週末まで、黒森峰女学園の戦車道を私が今指導している大洗女子学園の子達に見学させるために、ここに来ただけです。学園長の島田先生の許可も貰っていますから、問題ないはずですよ。」
「ちょっと待ってください。私、島田学園長から佳代さんが来る話なんて聞いてないですよ?」
「それは当然です。私が、美鈴には内緒にしておいて欲しいと伝えましたから。久しぶりに会うので驚かせようと思っただけですから、気にしないでいいですよ。あっ、私に会えて嬉しいのでしたら、抱きついてくれても構いませんけど。」
目の前のやり取りを見て黒森峰女学園の現役生達は、どう贔屓目に見ても自分達の顧問の方が劣勢だな・・・と感じていた。そして西に連れられてきた辻達は、『この調子で、現役時代も教授にいいようにやられてきたのか・・・』と目の前の黒森峰女学園の顧問の先生に同情的な視線を投げた。
「佳代さん・・・もう十分驚きましたから、勘弁してください。島田学園長の許可が出ているなら、機甲科の訓練風景は自由に見学してもらって構いませんけど、事前に連絡くらいくださいよ。見学させるのは、そちらの四人ですか?」
「えぇ。大洗女子学園の隊長の辻さんとその他3人ね。今年の全国大会は出場しないけど、来年度から全国大会に出場させようと思っているので、一度黒森峰女学園の戦車道を見学させようと思ってね。悪いけど、よろしくね。美鈴も頑張っているみたいだから、一応プレゼントも持ってきているし。それにしても、美鈴もあの頃に比べたら少しは変わったのでしょう?」
「分かったわ、佳代さん。浅野!辻さん達の面倒を頼むわよ。それにしても、佳代さんが私にプレゼントなんて珍しいですね?一体何をくれるのですか?自慢ではないですけど、私、今は黒森峰女学園の戦車道顧問として全国大会を連覇させられる位に頑張っているんですよ。もう現役時代のように、なほさんや真由子さんに怒られていた頃の私とは違いますし、『私の指導をよく見ていろ!』と自信をもって言えるくらいの指導者になっていると思っています。」
美鈴の言葉に佳代は『美鈴が罠にかかった』とニヤッと笑い、一緒にいた辻達は『あ~ぁ』という表情を浮かべた。そしてそんな佳代達の表情の変化に美鈴は気づかず、佳代達に自分が今どれだけ頑張って黒森峰女学園の戦車道顧問として活躍しているかを力説し始めたが、途中で言葉が止まり、表情が固まった。
「あ~、その・・・今更言うのも申し訳ないんだけど・・・。美鈴さんへのプレゼントとして、あの頃の黒森峰女学園のOG達を連れてきたんだけど・・・。たしか・・・もうなほさんや真由子さんに怒られていた頃の美鈴とは違うんだよね?しっかり説明した方がいいと思うよ。」
「美鈴・・・その・・・なんだ・・・。確かに私達が現役時代の頃とは違い、口がよく回るようになったみたいだな。私も悪いとは思ったが、佳代から少し黙って見ていてくれと言われて、そうしていたんだが、美鈴の指導者としての姿を今回の訪問でしっかり見せてもらうぞ。」
倉庫の影から出てきたなほ達黒森峰女学園のOG達は、自分達も佳代の悪戯に加担していたため後ろ暗い事もあり、美鈴の表情の変化を申し訳ないな・・・という気持ちで見ていた。しかし当の美鈴にとっては冗談では済まず、完全にパニック状態になりつつあった。
「佳代!あんたやっぱり知波の魔女よ!隊長達も一緒に来ているんだったら、なんで早く言ってくれないのよ!隊長・・・ご無沙汰しております。そんな・・・さっきのは、ほんの言葉のアヤでして・・・その・・・」
「美鈴・・・佳代さんには、あれだけ油断したら駄目だと、現役時代からズッと分かっていたでしょ・・・。とりあえず、落ち着きなって。別にさっきの美鈴の言葉に隊長達が怒っている訳ではないのだから。」
同僚だった桜井の言葉に多少元気を取り戻した美鈴だったが、それでも目の前の佳代やOG達が怖いのか、桜井の後ろに隠れるような位置に移動していた。そしてそんな姿を見た黒森峰女学園の現役生達は、本来であれば直ぐに飛んでいき話しを聞きたいOG達が大勢いるにも関わらず、この場に居るOG達のヒエラルキーを瞬時に理解し、しばらくの間誰もその場を動くことが出来なかった。
設定の段階で、西が知波単学園に居た時代は黒森峰女学園との試合で知波単学園が三連勝している事にしているため、当時黒森峰女学園を指揮していた側にしてみると、西は某漫画の『魔女の婆さんの呪い』以外の何者でもないですから、今回のような呼び名にしました。次が幕間2の最終話になりますが、予定どおりであれば来週の月曜日のいつもの時間に投稿する事になりそうです・・・なんですが、自分の仕事の予定を考えると結構微妙なんですよね^^;。
今回も読んでいただきありがとうございました。