無事帰宅した俺は早速カレーの準備を始める。ツバサ達が帰って来る頃には仕上がっている状態にしたい。
カレーが良い感じになってきたと同時に、外が少し騒がしくなってきた。つまりツバサ達が帰って来たと言う事だろう。外にはそれなりの数のA-RISEファンがツバサ達の帰りを待っていた。まぁ、道の邪魔にならない様には注意喚起をしているから大丈夫なんだがツバサ達の帰宅方法は学校が用意したリムジンだ。もう一度言うがリムジンだ。学生の身分でリムジンとか何様だよ?あれか?毎回移動がリムジンだから金持ちと誤解されるのか?
そんな若干の僻みを考えていると家の玄関が開いた。
「ただいま!ん~!カレーの良い匂い!」
「「お邪魔します」」
玄関からツバサとあんじゅさんと英玲奈さんの声が聞こえた。やっぱりあの騒がしさは3人だったらしく3人が家に入った途端に外の騒がしさは消えた。現金過ぎるだろ。
「お久しぶりです、あんじゅさんに英玲奈さん。ツバサもお帰り、予想よりも少し早かったが何かあったか?……その格好は何だ?」
リビングに入った3人を迎えると“ステージ衣装”のA-RISEが居た。
「久しぶり~!ツカサくん!どぉ?私達のステージ衣装!」
3人の格好に唖然としていると俺に衣装の感想を聞きたいのか、あんじゅさんがその場でクルリと1回転して衣装を見せつけてきた。しかしまぁ何と言いますか……
「……似合ってますよ?」
「む?何だツカサ。我々の衣装の感想が何故疑問系なんだ?」
俺の感想が気に入らなかったのか英玲奈さんが不満げに尋ねる。
「いや、英玲奈さん?俺が言いたいのはですね?」
「私達の姿が可愛すぎてツカサは脳が追い付いて無いのよ。そうよね?ツカサ?」
自信満々にしているツバサ。人の言葉を遮ってドヤ顔しているところに悪いが、そうじゃないんだ。ドヤ顔ムカつくからカレーの量減らしてやろうか。
「普通に理解しているし似合っているとは思うが、まさかその格好でカレーを食べるつもりじゃないよな?だとしたら責任は取らないからな?」
「「「あっ」」」
俺の言葉を聞いてハッとした表情の3人。パジャマパーティーとか言ってたからパジャマはあるだろうし学校帰りだから制服もあるだろうし大丈夫だよな?カレーうどんにしてやろうか?
「大丈夫!制服も私服もパジャマもあるから!いざとなったらツバサちゃんの私服を借りて……」
あんじゅさんが言いかけたその時、ツバサを見てあんじゅさんが静かになった。簡単な話が英玲奈さんとあんじゅさん、そしてツバサは全員が体格が違うのだ。つまり衣服の貸し出しは不可能である。
「ある意味私達ってお互いに持って無い物を補い合っている素敵なチームだと思うわ」
「背が低くて悪かったわね…」
あんじゅさんの発言を聞いて若干いじけるツバサ。それにしても英玲奈さんが静かだ。気になって英玲奈さんを見てみると何やら唸っている。
「私の体格ならツカサとあまり変わらない……上手くいけばツカサのTシャツ等を借りれるか……?いや、しかし……」
何か凄いブツブツ言ってて怖い。触らぬ神に祟りなしと言うから放っておこう。
「とりあえず着替えましょうか。このまま衣装が汚れるのは困るし」
「そうね。せっかく私が作った衣装だもの」
「そうだな、ツカサのTシャツは次回にしよう」
そう言って3人は着替えにツバサの部屋へと消えた。Tシャツって何ですか英玲奈さん?
「ステージ衣装か……結構スカート丈が短めだったが、園田がああいう衣装を着るとは思えないな。衣装担当は南と言っていたが大丈夫か?大丈夫じゃなさそうだよな」
まだグループ名も決まっていないが、他の問題も色々あると実感した瞬間だった。裏方だけで済まなくなったらどうするか……
☆☆☆☆
「「「ごちそうさまでした」」」
パジャマに着替えた3人は早速カレーを平らげた。特にツバサが食べるのが早かった。正に“カレーは飲み物”状態だったぞ。やっぱり今度はカレーうどんにしてやろうか。
「お粗末様。片付けは俺がやるからツバサ達は風呂でも入ってきたらどうだ?」
「そうね。英玲奈、あんじゅ行きましょう」
「ではお言葉に甘えるとしよう。しかしツカサは料理が上手いな……良い婿になれるぞ」
英玲奈さんが俺の作ったカレーを褒める。一生独り身で良いから料理の練習してるんです。
「カレーは誰が作っても美味しい物ですよ」
「前にカレーを作って失敗した私への嫌味かしら?」
「あれは単に牛乳の入れすぎだ。少しで良いのにドバドバ入れるからああなるんだよ。何でカレーの色が白いんだよ」
少し前にツバサがカレーを作った時があったが、隠し味の牛乳を入れすぎて隠し味じゃないレベルになっていた。ツバサはスクールアイドルや勉強に関しては無敵と言っても差し支えないがプライベートでは抜けている所が少しある。
「うっ……あれはそう!カレーミルクよ!新しい料理に挑戦したの!常に挑戦を続けてるのよ!」
「あれ?さっき失敗したって言ってなかったかしら?」
「あんじゅは余計な事は言わないの!」
「私はカレーミルクは嫌だな」
「英玲奈まで……酷いわ。今日の私は枕を濡らして眠るのね……」
「枕を濡らすなら自分の部屋で濡らせよ。俺の部屋は明け渡さんぞ」
その場に座り込んで泣き真似をするツバサ。ここまで素の自分を見せられているツバサを見ると改めて実感できる。A-RISEとしてだけではなく人としての絆がしっかりと出来ているのだと。これが現在のスクールアイドルの頂点に居る3人の強さの理由なのだろうか。