今日も今日とて鬼童丸様と稽古をする、この人はどうやら試行錯誤しながら私に合った稽古を模索してくださっているようだ、もうそろそろ師匠として認めてあげても良いと最近は考えている。今日は試合をした後素振りをしている。少しでも気が緩めばすぐ矯正され、構えを直される。かなり合理的な稽古方法だ。
「妖夢、何故お前の剣が俺に届かなかったと思う?」
「速度や腕力や技の冴えなど明らかな私の実力不足だと思いましたけど…それも踏まえて明日の試合では必ず当ててみせます!」
「はぁ…(クソデカため息)」
「何ですかそのため息はー!」
「今のままではどれだけやろうと俺に勝つことは不可能だぞお前」
「なっ…!それはどういう…」
「お前は戦うことは好きか?」
「はい!試し合いお互いを高める戦いこそ武人として最も好むことかと!」
「ふぅ…(ホモは二度刺す)」
「だからさっきからそのため息はなんですかー!」
そう言って近づいて糾弾しようとすると頬に冷たいものが当たった、思わず飛び退いてしまったが鬼童丸様の手にあったのは氷の入ったお茶だった。どうやら休憩のようだ、渋々それを受け取り縁側に座る。
鬼童丸様は意味の無いことは言わない人だ、ならばあの言葉にも何らかの意図がある筈。
「戦うことが好きなのはいけないことなのでしょうか…」
「ダメじゃあ無いさ」
「か、勝手に独り言を聞かないでください」
「すまんな、聞こえただけに答えざるを得なかった」
「ふんっ!もういいですっ!早く稽古始めましょう!」
「まあ待て。妖夢、お前は何の為に戦う」
「なんの…為に…ですか?勿論幽々子様の為ですが…」
「あぁそれも答えとしては間違いじゃあない、けどもっと単純で良いんだ。お前がその答えに行き着くことを楽しみにしてる、頑張れよ」
「…わかりました、頑張ります」
半人前の半人半霊は頷き稽古に戻る、もっと憧れに近づきたいから、お爺様みたいになりたいから。そんな思いを胸に今日も剣を振り続ける。
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クセになってんだ…若い奴に図々しくアドバイスすんの(イキルア) まあ妖夢は固すぎるところはあるが筋は良いので一つ壁を乗り越えもっと柔らかくなればすぐにある程度まで強くなるだろう。問題は
どうすればそこに行き着くかという方法はいくつかあるが俺の場合は『守る』という意思がそうさせた、萃香や勇儀や…まあ色々な奴らを陰陽師や鬼を乱獲しようとする人間達から。
そういうある種狂気的なまでの妄執が強さには必要なんだ、妖夢にはそれが無い、ただの少女にそれを求めるのも酷な話だが…どうしたものか…
「鬼童丸様、今日もご指導ご鞭撻ありがとうございました」
「ああ、しっかり自分の中で復習しておくんだぞ」
「はい!」
狐の面を被り少女は街を駆ける、想い人からの頼みを断れる訳は無く、むしろ自分に頼ってくれたことに喜びを隠せずに居た。何をしてもらおうかと心の中で考えながら依頼された通りの時間に目的の場所に向かうのであった。
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妖夢は鬼童丸に稽古を受けた後人里に買い物に来ていた、健啖家である自らの主に美味しい料理を作ってあげる為である、八百屋や魚屋など安くなっている旬のものを物色しつつ今日の献立を考える、その時、不意に肩を叩かれた。
「………」
「あの、どうしたの?」
そこには『何の変哲もない狐の面を被った少女』がいた、どこかで祭りでもあったのだろうかと妖夢は思いながらその少女に自らの肩を叩いた理由を聞いた。
「…………」
「…こっちに来てってこと?」
「………」
首を縦に振る少女、どうやら当たったようだ、だが何故だろうか嫌な予感がする。断ろうかと口を開こうとした瞬間凄い力で引きづられるようにして引っ張られる。
「なっ!?」
「………」
妖夢がけして非力な訳では無い、この少女の力が強すぎるのだ、まるで熊か何かを相手にしているような力の差を感じる、ここで妖夢は初めてこの少女に対して敵意を向ける。しかし即座に少女が妖夢を人里の入り口から外に投げ飛ばす。受身はかろうじて取ったが驚きは隠せていない。そうしているとその少女が有り得ないものを目の前に出してきた。
────それは、幽々子の帽子だった。
「貴様ァああぁああ!!!!!」
瞬時に背に担いでいた楼観剣と白楼剣を同時に抜き放ち相手に斬りかかった、しかし相手は事も嘆きに避ける。まるで初めから見切っているかのように。
「幽々子様に何をしたぁ!!言え!!」
「……………」
「言えと…言ってるだろうがぁ!!!!」
連撃、連斬、しかし当たらない、首の皮一枚すら触れさせず全てスレスレのところで避けられる。妖夢はそれでも攻撃をやめなかった、やめてしまえばこちらがまずいと予感していたからだ。
それでも妖夢にも限界はある、少しの速さの変化、しかし相手はそれを見逃さなかった。妖夢の白楼剣の袈裟斬りが掴み取られる。ヤバい、そう思い楼観剣で攻撃を仕掛ける。しかしそれも同様に掴み取られた。ここで相手の実力が鬼童丸クラスであることを妖夢は悟った。
悟った瞬間に凄まじいほどの衝撃が妖夢の腹に炸裂した。妖夢は吹き飛ばされる中でああ、自分は蹴られたんだなと考え、意識を暗くした。
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「ねぇ…妖夢は本当に大丈夫なの?」
「安心しろ、あいつにも手加減しろって言ってある」
「ならいいけど…心配だわ…」
この一連のことは実は鬼童丸が仕組んだことなのだ、妖夢がこのままではどこかでつまづくことが分かっていたので無理にでも強くするきっかけを作ろうとしている。妖夢にしたらたまったものではないだろうが。
「相手はあの
「まあそうだがな」
「やっぱり心配よぉ…」
幽々子はそう言いながら項垂れた、幽々子は元々反対していたのだが鬼童丸に頭を下げられ渋々今回のことに協力したのだった。妖夢を強くする為なら仕方ないと。
「でも実際妖夢は今回のことでどれぐらい強くなれるの?」
「わからん」
「へ?」
紫は惚ける、とうとうボケだしたかこのハゲェエエ工!!(憤怒) とまではいかないが困惑したような表情で鬼童丸を見る。
「わからないということはどこまで行くかわからんということだ、俺の予想もつかないところまで強くなるかもしらんぞ、あいつ」
「そんなにも才能があるの?あの子」
「いや、才能ならもっと凄いやつがいる」
「じゃあなんでそんな」
「あいつはな、元々そんなお行儀の良い気質じゃあないんだよ」
「それはどういう…」
「あいつの武器は剣術でもその種族の性質でも霊力でもない」
「ならなんなの…?」
「その身に秘めた『暴力性』だ」
「なっ!?」
「鞘に収めた剣などに何も斬れはしない、あいつは今鞘に収まって倉庫に入れられた剣だ。ならば一度抜き放たれたらどうなるかなど俺にもわからん」
口の端を釣り上げながら鬼童丸はそう語った、それはまるで自分の娘を自慢する父親のようだった。
萃香は期待外れだ、とため息をついた。鬼童丸が育てた弟子がどんなもんかと思ったからこの依頼を受けた萃香からすれば一撃で終わったことは不満でしか無かった。この後鬼童丸から受ける賞賛の声でこの気持ちを埋めて貰おうと気持ちを切り替える萃香。しかし
「…まだァ…終わってない…でしょォ…?」
後ろでノロノロと起き上がる有象無象の声が聞こえたので萃香は立ち止まる。
第二ラウンドが始まる。