色々な一悶着はあったものの、宴に呼ぼうと思っていた奴は全員呼べた。萃香のことはあとでもいいだろう、昔から少し不安定になることもあったからな。
「本当に申し訳ありません、鬼童丸様」
「別にお前が謝ることは無いだろう?」
「私が立場をわきまえて鬼童丸様に接していればこんな事には」
「ストップだ、文。それ以上言うな」
「え…」
「もし文にそんなことを言わせている原因が萃香だとするのなら、俺は萃香を殴り飛ばしに行く」
「そんなことしてはいけません!」
「なら言うな、俺はそれぐらいにお前とは仲のいい友人のままでいたいということだ」
「鬼童丸…様…」
萃香が嫌いな訳ではないが今回の事は少し怒っている、あいつは自分の勝手な理想を押し付けて見たいものだけ見ようとしている。そんな奴に俺は優しくするつもりは無い。
「ですがそれでは私の気が済みません、何かあれば何でもお申し付けください」
「ん?」
ん?今何でもするって言ったよね?ならどうすっかなぁ〜。あっ、そうだ(天啓)人里で貰ったあれを着てもらおう。サイズもぴったりの筈だ。文はいつも同じ服しか着てないから新鮮に映るだろう。
そう思い文の顔を見続けると顔を赤らめながらふいっと顔を逸らされた、照れてるのか?愛いやつめ。
「文、来てもらいたい服があるんだ」
「ふ、服ですか…?」
「絶対似合うと思うから着てみてくれ」
「いいですけど…そんなことでいいのですか?」
「文に着てもらいたいんだ」
「し、しょうがないですね…鬼童丸様はほんと私の事好きなんだから…」
また言ったなこいつぅ〜、冗談だと分かりつつぐしゃぐしゃと頭を撫でてやる。ここがね、ここを撫でるとね、喜ぶんですよ。(ムツゴロウ)
「あのさぁ……(クソデカため息)」
「どうしたんだ、にとり」
「目の前でいちゃつくのやめてくんない?」
「いちゃついてなどいないぞ」
「何処がだよ、死ね」
この子の名前はにとり、親友の一人だ。面白い奴で最初の方はめちゃくちゃ緊張して話にもならなかったが色々な開発に手を貸したり材料集めを手伝ってあげたらいつの間にか仲良くなってた。きゅうりの浅漬けを持っていくと喜んでくれるから安い女だ。(失礼)
そんなにとりはどうしたものか不機嫌なようだ、ふくれっ面でこっちをジトーっと見てくる。それに普段は滅多に吐かない暴言を真正面からぶつけてくる。
「別に鬼童丸に怒っても仕方ないのは知ってるけどしょうがないじゃん…友達をほっぽって女といちゃつく奴が悪い…」
「あー、にとり」
「なに」
まだ少し怒っているようだ、まあちょっと放置してた感あるしこれは俺のせいだな。素直に謝ろう。
「すまなかったな、にとりを放っておいた訳じゃないんだ」
「別に」
「今度美味しい飯屋に二人で行こう、手作りのきゅうりの漬物が有名なんだ」
「ぐっ…ま、まぁ私も大人げなかったし?鬼童丸がどうしても行きたいなら」
「あぁ、にとりと行きたい」
「もう、鬼童丸はずるいね…友達にそんなこと言われて許さない奴居ないよ…あとごめんね、私も酷いこと言っちゃったし」
「大丈夫だ、にとりが良い奴なのは初めから知ってる」
あぁ〜癒されるわぁ〜(マイナスイオン)文とにとりは俺の心のオアシスだ、友達として適切な距離を保ってくれるからな。無理にグイグイ距離詰めてくる奴苦手なんだよ俺。(クソ雑魚コミュニケーション能力)
「そういえばあの紅魔館という新勢力が主催のようですがどんな人達なんです?」
「そういえば私も気になってたんだよ、盟友は知ってるんだろ?」
どんなって言われてもまだ全然知らないことだらけだからこの宴で話を聞こうと思っていたんだけどな。今の時点で言えることはメイドはめっちゃ怖いから近づかないでおこうってことと、フランは可愛いってことかな。(思考放棄)まあ、それでも一言で表すならこれだな。
「家族、だったな。少し羨ましく感じた」
「鬼童丸様…」
「鬼童丸…」
今の俺アンニュイな感じでめっちゃカッコよくない?(ナルシス)何でも様になっちゃうからなぁ〜、困っちゃうなぁ〜。…ふぅ、やめよう。どれだけ自分をよく言っても顔も口調も変えられないんだ、自分は劣っていると認めるところから人生は始まるんだよ、覚えとけ。
そんなことを考えながら歩いていると、どうやら宴の会場である紅魔館に着いたようだ。いやー、相変わらず悪趣味な風貌してますね、何故か赤色しか使ってないその館の配色にケチをつけつつ門に向かう。
「誰ですか、ここは通しませんよ」
「覚悟を決めてるところ悪いが俺は宴の参加者だ、そしてこっちは俺の連れの文とにとりという」
「そうでしたか…申し訳ありません。今開けますね」
ナイスバディの中華服を着たお姉さんは門を開けてくれた、ありがとうと言いながら入るとそこにはかなり見事な庭が広がっていた。前来た時は瞬間移動したからこっちはほぼ知らないんだよなぁ…
「これは誰がやったんだ?」
「庭のことですか?」
「ああ、見事なものだ。毎日見ても飽きないな」
「お、お褒めに預かり光栄です」
「えっ、まさか君が?」
「ええ、余り褒められることは無いですけどね。趣味のようなものなので」
「それは…勿体無いな」
これを趣味で終わらせてしまうのは酷く寂しいと感じた、幽香ももしかしたらこれを見てすぐに帰っていったのかもな。あいつ花を大事にしてる奴には優しいし。
「個人的にまた見に来てもいいだろうか」
「え、ええお嬢様の許可さえ貰えれば…」
「ああ、必ず貰ってこよう」
「えへへ…」
これは俺の癒しパーティーの一員になれる逸材だな、可愛い。本当にこの幻想郷は最高だぜ!おっぱいでかいし!(最低)
そして話をそこそこに館内に入っていく、玄関ホールまで歩いていくと見覚えのあるメイドが立っていた。
「お待ちしておりました、鬼童丸様御一行のみなさんですね」
「久しぶりだな、元気だったか」
「お陰様で」
信じられるか?この会話中に顔面がピクリともしてないんだぜ?正直泣きそう、ほんとなんなの?俺に恨みでもあるの?助けたじゃん!俺助けたじゃん!(半泣き)
そう思っているとメイドが口を開いては閉じ、何かを言いたげにしている。まるで金魚が餌をせがんでいるようだ。怖いからやめて。
「あの…」
「なんだ」
「ありがとう…ございました」
「それは何に対してだ?」
「一つは私の命を助けて頂いたことです、そしてもう一つは…我が主であるレミリア・スカーレットお嬢様と妹君であるフランドール・スカーレット様の仲を戻して頂いたことです」
「そうか、受け取っておこう。だがあの二人は自分達で自分達の問題をどうにかしただけだ、俺は背中を押したに過ぎない」
そのとき、地雷を踏み抜いた音がした。
「…そんなこと…そんなこと言われなくてもわかってます…お嬢様は!貴方の手なんか借りなくてもどうにか出来た!最初見たときから貴方のことは気に入らなかった!私はいつもいつもどうにかしようと四苦八苦してたのに!貴方は!当たり前のように解決した!私の苦悩なんて知ったことではないと言わんばかりに!」
「っ!貴方、それは自分勝手過ぎるのでは…!!」
反論しようとした文を抑える、これは最後まで聞かなくてはいけない。何故ならばこれは咲夜の自己嫌悪による懺悔のようなものなのだから。完璧なメイドなどここには居ない、いるのは家族を一番に救おうとした優しい従者だけだ。
「澄ました顔をして、私がやろうと思っていたことを全部完璧にこなして、お嬢様を一番理解してるのは私なのに…ぽっと出の貴方なんかに!」
「……………」
「知ってますよ!!貴方は優しくて強くて、私に無いものを持ってるってことは!!…私が目指していた完璧な従者の姿は貴方のような人だから…わかるんですよ…」
「………………」
「私が…あんなに悩んで、苦しんで、考え抜いていたのに。貴方は一日で…」
「咲夜、俺はな寂しかったんだよ」
「えっ…」
「いつもぽっかりと心に穴が空いてる、生まれたときから。何か足りなくて足りなくて求めて求めて人を傷つけ、殺め、後悔し続けた」
「そんな筈…」
「俺はどうしようもないクソ野郎だった。だけど、だからこそ俺のような奴が増えるのを見たくない」
「……」
「フランは俺のそんなエゴで助けたに過ぎないんだ、これが正しかったのかなんて誰にもわかんねぇよ」
「………」
「だからそんなに自分を追い詰めるな、お前は間違ってなかった」
「う」
「う?」
「う、うっうっうあっ、うわぁぁぁあん!!!」
「うおっ!ちょっ、待て!ど、どうすれば!文!にとり!」
「鬼童丸様…そんなことを考えて…」
「鬼童丸ぅ〜!!私が居るからね〜!!」
「お前らもか!!」
やべぇ、ちょっとシリアスな感じで自分のことを語ったら泣かれちゃった、これレミリアさんに殺されますかね。フランに「お兄ちゃん…最低…」とか言われたら閻魔様のところまでノンストップで行く自信があるわ。
「あらあら、来るのが遅いと思えばまさかうちの従者が泣かされているとはねぇ…」
ギギギ…と首を後ろに回して声のする方を見てみるとそこにはカリスマたっぷり配合のレミリア・スカーレットお嬢様がいた。あ、殺される。
「まあいいわ、うちの従者が失礼したわね。ここを真っ直ぐ行ったら宴の会場に着くから行ってらっしゃい」
「いいのか?」
「あとは私の番よ、出番を横取りする気?」
「そうか…わかった。ありがとう」
「いえ、むしろこっちがお礼を言わないといけないわね。ありがとう」
そう言って優雅に礼をしてくるレミリア・スカーレットお嬢様。咲夜が忠誠を誓うのも無理は無いな、俺もひれ伏しそうになったわ。
「咲夜、ちょっと私の部屋に行くわよ」
「れ、レミリアお嬢様」
「あぁもうせっかく綺麗な顔が台無しじゃない」
そう言って消えていく二人、とりあえず行くか。俺は酒でも飲んで気分を変えようと意気揚々と会場に歩いていくのであった。
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「咲夜、あの鬼の男をどう思ってる?」
「完璧な存在…です」
「ほうほう」
「それともう一つは…完璧であっても完全では無いと感じました…」
まだ泣き跡が残る真っ赤な目をこっちに向けつつ咲夜は語った。咲夜があの鬼童丸に感じたことは概ね私と同じだ。完璧な手順、完璧な戦い方、しかしその精神は余りにも優しすぎる。妖怪の中でも鬼という存在は傲慢で自分勝手な輩というのが通例だろう。
「そうだな、だから私達を助けてくれた」
「…っ」
「お前の言ったことを否定する訳では無い、お前なりに私達をどうにかしようとしてくれていたのは知っていた」
「ですが…私は…何もできなかった…」
「咲夜、私がお前をこの紅魔館に連れてきた理由は何故かわかるか?」
「何で…ですか…?」
「いわば一目惚れだよ、こいつは紅魔館にとっても私にとっても絶対に必要な存在だと思った」
「一目惚れ…」
少し照れたような顔を見せる咲夜、相変わらず可愛い奴だな。だがそんな咲夜だからこそ、私は伝えなければならないことがある。
「私はお前が居なくなったら終わりだ」
「え…」
「自暴自棄になり毎日酒を飲み漁りながら人里を襲撃する」
「れ、レミリアお嬢様…?」
「だから、咲夜」
「……」
「お前は私にとって家族なんだよ、お前じゃなきゃ駄目なんだ」
ああもう!伝えるの下手だな私は!!もっとはっきりと!!
「だから!!お前は鬼童丸のようにならなくても私のそばに居てくれるだけで私の支えになってるってこと!!わかった!?」
「はっ、はい!!」
「分かったらもう悩まない!!宴行くぞ!!」
「はい!!」
なんだ、そんな顔で笑えるじゃないか。久しぶりに見たぞそんな嬉しそうな咲夜の顔は。私はスキップしそうな程に軽やかに宴に向かった。